バルカン諸国史映画
歴史映画コーナーのトップに戻る

Боj на Косову
"Battle of Kosovo"
"コソボの戦い"
1989年/ユーゴスラヴィア
カラー映画(117分)

スタッフ ○監督:ズドラフコ=ショトラ○脚本:リュモビル=シモヴィッチ○撮影:クリス=メンゲス○音楽:マイク=オールドフィールド○製作:デビッド=パットナム
キャスト ミロシュ=ズティッチ(ラザル・フレベリャノヴィチ)、ゴリカ=ポポヴィッチ(ミリカ妃)、ザルト=ラウセヴィッチ(オブリッチ)、リュウバ=タディッチ(ムラト1世)、ブラニスラヴ=レチッチ(バヤジット1世)ほか
ストーリー 1389年。オスマン帝国のスルタン・ムラト1世はバルカン半島へ進出、セルビア公ラザルに臣従を求めた。セルビア諸侯は力を合わせてコソボの決戦でオスマン軍を阻止しようとするが多勢に無勢でセルビア側は大敗。しかし騎士オブリッチは偽りの投降によりムラト暗殺に成功して一矢を報いる。
解説 コソボの戦い600周年を記念して製作されたユーゴスラヴィアの歴史映画。「コソボの戦い」はセルビア人にとって民族的な思い入れのある敗戦で、かなりの物量を動員した「国策映画」な民族叙事詩映画となった。オスマン史にとってもムラト1世からバヤジット1世に交代する重要な転換点となる場面が見どころ(オスマン帝国名物「兄弟殺し」の発端も描かれる)。この映画の数年後にはユーゴスラヴィアは内戦に突入、やがてこのコソボの地も泥沼の紛争地になっちゃったりしたのだが…
メディア 日本では公開もソフト化も実現していない模様。

Vlad Țepeș
"Mヴラド・ツェペシュ
"
1979年/ルーマニア
ルーマニア映画
カラー映画(114分)
スタッフ ○監督:ドル=ナスタセ〇脚本:ミルチャ=モホル○撮影:アウレル=コスtラシュヴィッチ○音楽:ティベリウ=オラー
キャスト シュテファン・シレアヌ(ヴラド3世)、エルネスト=マフテイ(マンジラ)、エマノイル=ペトルツ(アルマシュル・ストイカ)、アレクサンドル=レパン(メフメト2世)、ミハイ=パラデシュ(教皇ピウス2世)ほか
ストーリー 15世紀半ば、オスマン帝国は怒涛の勢いではバルカン半島に進出していた。ワラキアの君主で「ドラクラ公」と称されるヴラド3世は、反抗する貴族たちや民衆を串刺し刑などで粛清して中央集権化を図り、侵攻してくるオスマン帝国に対抗しようとする。オスマン皇帝メフメト2世の首を狙って奇襲をかけるなど奮戦を続けるが、オスマン帝国や貴族らの策謀で失脚、幽閉のみとなってしまう。
解説 「吸血鬼ドラキュラ」の元ネタとなったことで知られる「串刺し公ヴラド」の伝記映画。基本的にオスマンと戦った民族英雄として描くが「串刺し」の大粛清もバッチリ描いて単純にな英雄物語にはしていない。主演俳優が肖像画ソックリの姿で熱演。物語は幽閉されてしまうところで終わり、その後のことは説明で済まされてる。
メディア 日本未公開でソフト化もされていない。

虐殺軍団
"Mihai Viteazul
"
1971年/ルーマニア
ルーマニア映画
カラー映画
第一部100分/第二部102分
国際公開版106分
スタッフ ○監督:セルジウ=ニコラエスク〇脚本:ティタス=ポポヴィッチ○撮影:ゲオルゲ=コルネア○音楽:ティベリウ=オラー
キャスト アムザ=ペレア(ミハイル勇敢侯)、ニコラエ=セカレアヌ(シナン・パシャ)、イリーナ=ガルデスク(ロッサナ)、イオン=ベスーウ(ジギスムント)、ジョルジュ=コバックス(アンドレイ)、アウレル=ロガルスキ(ルドルフ2世)、セルジウ=ニコラエスク(セリム三世)ほか
ストーリー 18世紀末、ワラキアの貴族ミハイルは友人のオスマン軍人シモンの仲介でイスタンブールに赴き皇帝セリム3世に謁見、ワラキア地方の支配権を得る。だがミハイルは勢力を拡大して逆にオスマン軍をジュルジュの戦いで激闘の末に破ってしまう。その後もミハイルは近隣のトランシルヴァニア、モルドバの諸侯と戦ってこの地域の統一を目指し、ハプスブルグ帝国とオスマン帝国の間を巧みに遊泳、ルーマニア全土の支配者となる。しかし栄光は長くは続かず、敗北し領土を失ったミハイルは流浪の身となり、危険視したハプスブルグ皇帝の指示で暗殺されてしまう。
解説 日本公開されてたことを更新作業時に知ったが、なんちゅうひどい邦題をつけたものだ。ルーマニアの民族英雄の栄光と没落の生涯を叙事詩的に描く2部作3時間超の大作で、シナリオの出来の良さに一時はハリウッドオールスターで映画化、という話もあったが、あえてルーマニア国内のみで製作したという逸話もあるとのこと。たびたびある合戦シーンは社会主義国時代らしい大量動員の大迫力で結構スプラッタ(邦題もそこから来たんだろうな)。主人公が二つの帝国の間を巧みにウロウロするあたりはこの地域の独自事情もかいまみられて面白い。
メディア 日本公開はされているが、ソフト化はされていない模様。

アンダーグラウンド
"Подземље"
"Underground
"
1995年
フランス・ドイツ・ハンガリー・ブルガリア・ユーゴ
    CIBY2000)
パンドラ・フィルム
ノヴォフィルム
カラー映画(170分)
スタッフ ○監督:エミール=クストリツァ〇脚本:デュシャン=コヴァチェヴィッチ/エミール=クストリッツァ○撮影:ヴィルゴ=フィラチ○音楽:ゴラン=ブレゴヴィッチ〇製作総指揮:ピエール=スペングラー
キャスト ミキ=マノイロヴィッチ(マルコ)、ラザル=リストフスキー(クロ)、ミリャナ=ヤコヴィッチ(ナタリヤ)ほか
ストーリー 1941年4月、ナチス・ドイツの軍隊がユーゴスラビアに侵攻した。マルコとその友人のクロはチトー率いるパルチザンに参加しドイツ軍に抵抗、マルコはクロや仲間たちを地下室に幽閉状態にして武器製造を行わせる。やがてナチスは敗北しチトーによる新ユーゴ国家が発足し、マルコは共産党幹部に出世するが、クロたちには終戦を知らせず地下での生活を続けさせてしまう。十数年後、ひょっこり地上に出たクロは、自分を「救国の英雄」に描く映画の撮影現場に踏み込み、ドイツ兵の役者たちを本物と思い込んで攻撃してしまう。さらに時が流れ、1990年代にユーゴスラビアは激しい内戦により崩壊してゆく。
解説 内戦によりユーゴスラビアという国家が崩壊してゆく、まさにそのリアルタイムで製作された「ユーゴ」への哀惜漂う一本。全体的にコメディ調で登場人物も展開も全くのフィクション、チトーも記録映像で登場するのみだが、失われた国家「ユーゴ」の現代史を寓話的に描いた「歴史映画」ともいえる。
メディア DVD発売:紀伊国屋書店 BD発売:復刻シネマライブラリー

ノー・マンズ・ランド
"Ničija zemlja
"
"
No Man's Land"
2001年/ボスニア=ヘルツェゴビナ
スロベニア・イタリア・イギリス・フランス・ベルギー
カラー映画(98分)

スタッフ ○監督・脚本:ダニス=タノヴィッチ○撮影:ウォルター=ヴァンデン=エンデ○音楽:ダニス=タノヴィッチ○製作:フレデリック=デュマ/マルク=バシェ/チェドミール=コラール
キャスト ブランコ=ジュリッチ(チキ)、レネ=ビトラヤツ(ニノ)、フィリオウ=ショヴァゴヴィッチ(ツェラ)、ムスタファ=ナダレヴィッチ(老兵)、ジョルジュ=シアティディス(マルシャン)、カトリン=カートリッジ(リビングストン)ほか
ストーリー 1990年代半ば、ユーゴスラヴィア連邦は崩壊しその一国であるボスニア=ヘルツェゴビナではセルビア人とボスニア人の血みどろの民族紛争が勃発していた。ボスニア兵のチキとツェラは前線の「無人地帯」の塹壕に迷い込み攻撃を受けて負傷、ツェラは意識を失ううちに体の下に地雷を仕掛けられてしまう。チキはセルビア新兵のニノを捕虜にしてツェラを救おうと画策、チキとニノは言い争ううちに次第に協力関係を持つようになる。この状況を知って国連防護軍やマスコミが三人のいる塹壕に押しかけて来て…
解説 ついこの間まで隣人同士で普通に暮らしていた人々が訳の分からぬうちに凄惨な「民族浄化」戦争をやってしまったボスニア紛争の悲劇の一コマを描いた一本。敵味方の兵士同士が一緒になって…という古典的かつ普遍的な素材だが、特に本作は互いの距離がかなり近いだけにやりきれない。米アカデミー賞外国語映画賞やカンヌ映画祭脚本賞など世界的に多くの賞を受賞した。
メディア DVD・BD発売:IVC


歴史映画コーナーのトップに戻る