王緑妹（おうりょくまい）
嘉靖大倭寇の首領・徐海の愛人となった女性だが、同じ立場だった王翠翹に比べるとエピソードというものが全く残っていない。想像だが、もともと王翠翹と一緒に江南で妓女として働いていたのであろう。王翠翹の話題を載せるほとんどの史料で緑妹の名もセットで出てくることから、同姓の名コンビ歌手として有名だったのかもしれない。ちなみに姉妹ではないようだ。
嘉靖３４年（１５５５）、崇徳の町を襲った徐海集団に捕らえられ、翠翹とともに徐海の妻とされた。しかし徐海の寵愛を最も集めた翠翹に対して緑妹はおよそ目立つ存在ではなかったようだ。嘉靖３５年（１５５６）８月に徐海が沈荘で官軍の攻撃を受け滅亡した際、翠翹と一緒に発見され、徐海が身を投げた場所を兵士達に教えている。
その後のことは全く分からないが、小説「胡少保平倭戦功」では、翠翹が軍官の妻とされることを恥じて自殺したのち、代わりに緑妹がこの軍官に与えられたことになっている。
ついでながら津本陽氏の小説「天翔ける倭寇」に登場するヒロイン「王緑妹」は、名前だけ拝借したまったくのフィクションである。
主な資料
「紀剿除徐海本末」
「罪惟録」
鄭舜功「日本一鑑」
鄭若曽「籌海図編」
「胡少保平倭戦功」
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