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2002年7月23日

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 ◆今週の記事

◆夏草やアフガニスタンロヤジルガ

 このあと同行している弟子が「ケシの花に金づる見ゆる麻薬かな」と続けたりする。紀行文「絹の細道」より。

 冗談はさておき、もう一ヶ月も前の話を今ごろ書かせてもらおう。
 6月11日、世界の注目を集めていたアフガニスタンの「国民大会議」=ロヤ・ジルガがついに開催された。カブール市内に設置された巨大テントで開催されるあたりは、モンゴルの部族会議「クリルタイ」などを連想させるところである。開会宣言を行ったのは予定通りアフガニスタン元国王のザヒル=シャー(87歳)。これをやるために帰国したようなものだが、開会宣言に続く演説で元国王は祖国の統一と平和を国民に向かって呼びかけた。
 このザヒル=シャー、1973年の革命で国を追われて以来およそ30年ぶりに母国に戻ってきたわけだが、国王の地位に復帰する野心が全く無かったといえばウソになるだろう。一応本人は一貫して「その気は無い」と否定してきているが、本人の意思如何に関わらず、パシュトゥン人を中心とする周囲の人々がこの元国王を国家元首の地位につけようと画策したのは事実のようだ。現時点でアフガニスタンの指導者となっているショーン=コネリー似のカルザイ 議長もけっこうこの元国王には気を使ってて、その帰国を歓迎しロヤ・ジルガの開会宣言を任せたのもその現われだろう。この元国王を国家元首選挙に出すのか出さないのかでまず揉めてロヤ・ジルガ開催日が丸一日遅れるという事態も起こっており、最終的にザヒル=シャー本人が不出馬を明言してどうにかロヤ・ジルガは開催にこぎつけたのである。その背後では元国王の出馬による事態の混乱(実際、勢力間の武力衝突の危険性もかなりあったらしい)を恐れた国連と、「対テロ戦争」継続のためにもカルザイ政権をつぶすわけにはいかないアメリカとが元国王派に物凄い圧力をかけていたことは言うまでもない。

 ロヤ・ジルガは全国から選ばれた地方代表、および「招集委員会」が難民・遊牧民・女性などから選んだ代表を合わせて総勢1551人もの議員で構成される大所帯である。このうち約200人が女性というあたりは、タリバン時代が過去のものとなったということを世界にアピールするという狙いもあるだろう。このロヤ・ジルガの主目的の一つが当面の暫定政権の指導者となる国家元首の選出があるが、この元首選挙に女性の立候補者が出たことも話題を呼んだ。その立候補者は世界食糧計画(WFP)の女性職員、マスーダ=ジャラルさん(35)で、タリバン政権が誕生するまではカブール大学医学部教授だったというお人である。海外マスコミの取材に対して「アフガンの政治史に新たな1ページを開くために女性代議員が支持してくれることを望む」とコメントしていた。もちろん彼女が当選することはなく(本人だって本気で元首になるつもりだったわけではないだろう)、全く予定通りにカルザイ議長が国家元首=大統領に選出されている。ただこの大統領、ってのが国の象徴的トップであるのか(ドイツみたいな形)、それともアメリカみたいな強い権力を持つ大統領にするのかという意見の相違は政権内でもあるようだ。
 この国家元首選出じたいはスンナリいったものの、あとの議題は大荒れだったようだ。一部報道では議員たちがマイクの奪い合いをして「なぜ今日の開会前にコーランの朗読をしなかったのか」「ここには軍閥や殺人者がたくさんいる。参加不適格だ」「ザヒル=シャー元国王は『国父』ではない。だれが父かは自分の母親に聞いたらいい」などなど議事とは関係ない発言を連発し、大騒ぎになったとか(映画「アラビアのロレンス」のラスト近くのシーンを思い起こすな) 。特に揉めたのが新設される暫定的な立法機関のメンバーをどう配分するのかといった問題で、各部族間の駆け引きが激しく交わされたらしい。不満を持った議員が次々とテントを出てしまい、半分以上がいなくなった…という報道もあったけど、どこまでホントかは分からない。さらに物騒なことに6月18日深夜にはカブール市内中心部でロケット弾発射テロが発生し、幸いケガ人すら出さなかったものの、ロヤ・ジルガの混乱を狙う勢力が存在していることを思い知らされることとなった。

 と、なんだかんだとやってるうちに別の騒ぎも起こった。アメリカ軍がまたぞろ「誤爆」してアフガニスタン市民を多数殺しちゃったのである。7月1日の午後1時ごろ、南部ウルスガン州デラワド地区の三村落にアメリカ軍のB52爆撃機とAC130攻撃機が爆撃を加えたのだが、これにより結婚式会場が爆撃をくらって一般市民に死者48名、負傷117名もの犠牲者が出てしまったのだ。このときアメリカ軍はオマル(そういえば、この人が見つからんというのも奇怪千万)の出身地でもあるこの地区にタリバン幹部やアルカーイダメンバーが潜んでいるとの情報を得て空から調べていたというのだが、村から「対空砲火」を受けたため反撃として迫撃に踏み切ったとしている。カルザイ議長の暫定政府では「結婚式に空に向かって撃った祝砲を攻撃と誤認したのではないか」とかなり早い段階から指摘していたが、アメリカ側はその可能性を否定しないまでも「攻撃を受けたという証拠がある」と言い続けてなかなかスンナリとは認めず(国防総省の一部では謀略説まで流れたという)、結局6日になって米軍司令官が「我々は無実の市民を標的にしない。命中していたとしたら事故だ」とコメントし誤爆と認めた(でもまだ公式に認めたわけではない)。事故って、ああた、真昼間に結婚式場に爆弾落っことしておいて交通事故みたいに言わないで欲しいな、ホント。この件ではブッシュ大統領が即座に「憂慮」と「弔意」を示したりはしているのだが、誤爆をなかなか認めなかったことから、4日にアフガニスタンの市民団体による抗議デモがカブールで行われたりもしている。
 この話ばかり注目されているのだが、結婚式場の「誤爆」はこれが初めてではない。それもつい先ごろ、5月16日に東部のホスト州ブルキル村を米軍機が数時間にわたり空爆し、結婚式場が爆撃されて少なくとも10人以上の死者が出たことが報じられている。このときも「祝砲を攻撃と誤認したのでは」との見方があったはず。それからひと月ちょっとで同じような「誤爆」をしているとなると…(補足:この記事のアップ直前に国連の調査結果が出て、「どちらの誤爆事件も祝砲すらなかったのに爆撃した」との内容だそうで驚いている。真相はさらに藪の中)

 この誤爆騒ぎの余波がさめやらぬ7月6日、さらに大事件が起きた。カルザイ政権の閣僚の一人、アブドゥル=カディール副大統領(兼公共事業相兼ナンガルハル州知事) が公共事業省庁舎から車で出た直後、15mほど離れた木陰に隠れていた2人組から自動小銃の乱射を受けて運転手もろとも殺害されてしまったのである。犯人たちはそのままタクシーで逃走。まるでギャング映画さながらの暗殺劇だが、その背景にも政治的な要素だけではないギャング的な匂いがチラチラとしている。
 カディール氏は「副大統領」とは言っても五人いる副大統領の中の一人。タリバン打倒に連合した軍閥の寄り合い所帯ともいえる暫定政権を象徴するポストとも言えるようで、彼自身は東部ナンガルハル州のジャララバードを拠点に勢力を持つ軍閥の指導者だ。彼自身はパシュトゥン人だが、タリバンに抵抗してタジク人が多い北部同盟に加わって活躍してきたという経歴を持つ。なお、弟さんには昨年10月にCIAのドジな手引きで反タリバン工作のためにアフガンに入国し、即刻逮捕・処刑されてしまった悲劇の人物・アブドゥル=ハク氏がいる。兄弟そろって悲惨な死に方をしてしまったものだ。
 このカディール氏だが、以前から麻薬密輸に関わっているとの噂が絶えない人物であったらしい。アフガニスタンが内戦の家庭で世界最大のケシの産地となり、麻薬産業が各軍閥の莫大な資金源となっていたことは良く知られるところだが(この件では一時タリバン一人が悪者にされるところがあったが、むしろタリバン政権の方が取り締まりに積極的だった側面がある) 、内戦がひとまず終息している今でもこの麻薬および密輸の利権をめぐる黒い噂は絶えない。で、このカディール氏が知事をつとめていたナンガルハル州ってのがパキスタンとの国境を控える地域でまさにこの手の利権と切っても切れない関係にあった。カディール氏が副大統領兼閣僚として中央政権に入った後もこの州の知事職を手放さなかったのもそのためだと言われている。今回の暗殺もそうした麻薬・密輸利権をめぐるトラブルが背景にあったんじゃないか、とは誰もが考えるところ。実際、7月16日からこのナンガハル州の国境地帯で北部同盟系の武装グループとカディール氏系の軍閥との間で銃撃戦が発生しており、カディール氏暗殺の動揺を突いて国境地帯の利権を狙った武装グループの攻撃であると推測されている。ほんと、戦国時代みたいだ。
 カディール氏の暗殺を受けて、彼の率いる軍閥側はカディール氏の後任に、閣僚ポストには彼の兄のディン=モハマド氏を、州知事の方は彼の長男のザヒル氏をつけるよう、カルザイ大統領に要求した。しかしカルザイ氏は閣僚ポストには別の人物をつけ、閥族ポスト状態になるのを防いだ形だ。

 最後にちょっとは明るい話題を。
 タリバン政権下では御法度になっていた「宝くじ」が6年ぶりに復活したことが小さなニュースとして報じられていた。商品は「日本製の“三種の神器”」 などと見出しにあったので、「剣と鏡と勾玉か、それとも白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫か」などとツッコミを入れた方は多いはず(笑)。答えは日本車・日本製バイク・日本製TVだそうで、どっちかというと“新三種の神器”とも言われた「3C(カー、クーラー、カラーテレビ)」に近いのでありました。



◆アメリカに神のご加護はあるのかな

 6月末、アメリカではある裁判の判決をめぐって国中が大揺れに揺れていた。連邦第9巡回区控訴裁判所(日本の高等裁判所に相当する)が、カリフォルニア州の無神論者・マイケル=ニュダウさんの「学校で“星条旗への忠誠の誓い”を子供に強制することは憲法の定める政教分離の原則に違反している」との訴えを認め、公立学校での「星条旗への忠誠の誓い」の暗誦を違憲とする判断を下したのである。この裁判、一審ではニューダウさんの訴えを棄却していたのだが、この控訴審では「誓い」の中にある「神のもとに国は一つ」という文言が「無神論者やユダヤ教・キリスト教の信仰を持たない人にとっては宗教的な強制になる」との判断を示し、2対1の多数決で「違憲」の判断を下したのである。だが、この判決は宗教感覚には無頓着な日本人からすると、ビックリするほど大きな反響をアメリカ中に引き起こしてしまったのである。
 この判決が下った直後、ワシントンの連邦議会下院では下院議員100名以上(共和党議員が中心)が議事堂の前に集まって「誓い」を支持する示威行動を起こしたし、ホワイトハウスのフライシャー報道官も「ホワイトハウスとしては、この判決は間違っていると考える。司法省が対応を検討している」とコメント。また報道官はブッシュ大統領自身がこの判決について「バカバカしい」と口走ったことも明らかにした。各地の議会で反対声明・決議が相次ぎ、各マスコミが行った緊急世論調査でも実に9割の国民が判決に不満を示し、マスコミにはキリスト教団体幹部らによる「だったら“神”が何度も出てくる独立宣言も違憲なのか」「この判決はアメリカの歴史と伝統への挑戦だ」といった反論が乱舞した。もともと無神論者であることを公言しているニューダウさんは、娘さんが学校で「誓い」を毎朝暗誦させられた(毎朝やってんのかそんなの、と僕もビックリした)ことに反発して州政府および連邦政府を相手にこの裁判を起こしたのであるが、彼の元には「地獄に落ちろ」といった脅迫電話も相次いだという(こういう嫌がらせ反応はどこの国も一緒だな)
 で、この大騒ぎを受けて判決を下した裁判長本人が翌日にアッサリと「判決の効力の停止」を表明、審理をやり直して判事3人による判断ではなく11人の合議制に変更するとの方針を示した。そ、そんなにアッサリと一度出した判決を引っ込めちゃっていいんかいな…とこれまたビックリしちゃうところだが、よくよくこの判決はアメリカ人の禁忌に触れるものであったようだ。こういう判決が出るあたりもアメリカらしさだと思ったんだけど、アメリカの「神の国」ぶりを改めて思い知らされる結果ともなった。

 この「星条旗への忠誠の誓い」というやつ、恥ずかしながら僕はこの騒動で初めて存在を知ったのだが、アメリカの公立学校では毎朝、教室に掲げられた星条旗を前に起立し、右手を胸に当てて国家への忠誠を誓っているのだそうだ。その文言は19世紀末にニューヨークのバプテスト派牧師が考案したものだそうで、第二次世界大戦の最中に愛国心高揚をねらって法制化された。ただ、今回議論を呼んだ「神のもとに」の部分は当初は無く「国は一つ」とあっただけだった。それが1954年に連邦議会の決定で「神のもとに」という言葉が追加され現在に至っているという経緯だそうだ。なんでこんな時期に「神」の文句が追加されたのかというと、当時アメリカがソ連との冷戦真っ最中であったことを想起されたい。アメリカ人の「ソ連」「共産主義」に対する嫌悪感というのは、経済的なものだけでなくそれが掲げる「無神論」「唯物主義」に対するところが大きかったのだ(特に一般国民では)。超タカ派で知られた名優ジョン=ウェイン の「私は神の実在を信じる」といった晩年のコメントを見ていてそうした感覚を強烈に感じたことがある。無神論であるソ連に対し自らの正義を保証する根拠としてアメリカは「神」を強烈に意識して「誓い」に付け加えたわけだ。まぁ冷戦も過ぎ去った今、そこまで強烈にこの誓いの「神」の文言を意識しているかというとそうでもないんだろうけど、歴史的にアメリカは自らの正義を「神のもとに」振りかざしてきたところがありますからね。
 現在のアメリカ合衆国につながる歴史は宗教的自由を求めてイギリスからアメリカに移住した清教徒、「ピルグリム・ファーザーズ(巡礼始祖)」から始まるとよく言われる(実際には非清教徒も含んでいたらしいが) 。アメリカはその発端から信教の自由に対する強い欲求があったわけだが、それと同時にとくにプロテスタント系の、聖書に基づいたキリスト教信仰が社会の根っこに深〜く存在している国でもある。聖書の記す天地創造を信じている人が相当数に上り、進化論を教える教えないで揉める地域もあるというのは良く聞くところ。アメリカ大統領が就任式にあたって必ず聖書に手を置いて誓いを述べるのもその一つの表れだろう。あれだって厳密には政教分離に抵触するとしか思えないのだが、あれをやることで大統領およびアメリカ国家は神のご加護を受けている、という神聖化および正当化を演出しているんだろうな。西部開拓でインディアンの土地を侵略した昔から世界に我が物顔でふるまう今日まで、「アメリカの正義」の根源にこの「神のご加護を受けている」という宗教的意識が少なからずあることは確かだと思う。だからこそ今回の判決にアメリカ全土が異様なまでに拒否反応をしめしたのだろう。

 この騒動とほぼ同時に、もう一つ宗教に関する憲法判断を下した裁判があった。
 オハイオ州クリーブランドの都心部で、貧困地区に住む人で子供を私立学校に通わせたいと願う人には、州が「学校券」を発行して公費で学費を援助するというシステムが試験的に行われていた。貧困層の教育を州が補助するというのは教育の機会均等をすすめるという意義はあるのだが、この「私立学校」ってのが大半がカトリック系であることが問題となった。民主党議員などの反対派は「特定の宗教に特権を与えるもの」として公費による補助が憲法違反であるとして訴えを起こしたのだ。
 6月27日にアメリカ連邦最高裁は2審の判決をくつがえして「学校券発行はあくまでも教育の機会均等を目指すもので合憲である」との判断を示した。この学校券制度は共和党の保守層が進めてきたものらしくブッシュ大統領も大統領選の際に公約に掲げていたもので、この判決にブッシュ大統領は「全米の親たち、子どもたちの勝利」と大喜びのコメントをしている。いきなりそこで「全米の親・子供の勝利」って言っちゃえるところが凄いというか何と言うか…。



◆テロリスト悔い改めれば救われる?

 アメリカのブッシュ政権は「対テロ戦争」とやらを進めているが、どうもこれが定義のよく分からない戦争だ。これまでに無い戦争の形態、と位置づける向きもあるが、それでいてやってることは時代がかった帝国主義的な戦争をより露骨に一国中心的に押し進めているだけというようにも見える。特にこのところブッシュ政権は「イラクのフセイン政権打倒」を明言し続けているが、これほど露骨に他国の政府打倒を目的とした戦争開始を長期にわたって明言しているケースって珍しいんじゃ無かろうか。周辺諸国もみんな迷惑がってるんだけど、このところのブッシュ政権にふりかかっている経済スキャンダルの数々を見ていると、年内にはないだろうと言われていた戦争開始は早まるような気もする。そうした見え透いた政治演出をホントにやるのがこの国の怖いところだ。
 ホント、次期アメリカ大統領選挙からは世界中の国々にも一国一票でいいから投票権がほしいものだ。

 さて、ブッシュ政権の悪口はそのぐらいにして、一方のテロ組織に関する話題を2つ。
 
 7月初めにエジプトの週刊誌が伝えたという話だが、エジプトでかつて最大の規模を誇ったイスラム原理主義過激派組織「イスラム集団」の幹部らが過去に起こした数々のテロ行為について「完全な誤りであった」として謝罪する声明文を用意しているとのこと(その後続報がないのでどうなったのかわからんが)
 この「イスラム集団」が行ったテロとして日本人の記憶に強烈に残っているのは、1997年に観光地ルクソールでの無差別殺害事件(62人が犠牲となった)だろう。彼らはイスラム穏健派であるエジプト政府を揺さぶるべく外国人や非イスラム教徒などへの襲撃事件を繰り返し、またイスラエルと和平を結んだサダト大統領が暗殺された事件(1981年。僕が初めてリアルタイムで意識した世界史的事件でもある)にも計画を実行した別の組織「ジハード団」と連携する形で関与している。まぁとにかくイスラム過激派武装組織の典型であるとはいえるだろう。
 その組織の幹部5人はサダト大統領暗殺事件に関与したとして逮捕され、つい最近まで服役していた。そして出所した直後になっていきなり「これまで行ったテロ活動は完全な誤りだったから謝る」と言い出したのである。なんでもサダト暗殺については「神の定めに従わない統治者だからといって暗殺という行為は肯定されない」と明言し、外国人・非ムスリムへの襲撃も「完全な誤りであり、何も生み出すことはできなかった」などと至極まっとうなことをそこに書く気らしい。この5人の幹部達は国外に逃亡している他の幹部とも連絡をとって承認を受け、近々正式に公表するとしているとのこと。なお、当然想像される治安当局からの圧力については否定しているという。
 いわゆる「イスラム過激派」もここに来て分裂気味のようで、アル・カイダみたいに徹底した武装テロ組織の路線を進むものがある一方で、武装闘争に見切りをつけ「政党」への脱皮を図る動きも見られるようだ。謝罪については何を今さら、って気もしなくはないが、暴力によっては解決なんて見えてこないということを認めただけでも大変な前進だと思う。

 続いてはアイルランドから。アイルランドでテロと言えばやはりカトリック系のアイルランド共和国軍=IRAがよく知られている。長いことイギリスの支配下にあったアイルランドは20世紀初頭にテロ活動も含んだ反英闘争で自治さらに独立を勝ち得たが(このあたりの歴史は映画「マイケル・コリンズ」が参考になる)、プロテスタント系住民が多く入っていた北アイルランド地域がイギリス領として残ったため、反英闘争のテロ活動の部分が今日のIRAへと引き継がれ、北アイルランドやイギリス本土で連綿とテロ活動を続けてきたという歴史がある(韓国南部の一道を日本がいまだに領土としていたら同じようなことになったと思う)。そのIRAも1990年代に入ってから次第にプロテスタント系と折り合う姿勢を見せるようになってきている(もちろん紆余曲折はやっているが)ことは「史点」でもリアルタイムに見てきたとおり。
 このIRAの方も別にイスラム集団と示し合わせたわけでもあるまいに、この7月に「謝罪声明」を行って注目を集めた。あくまでこれまで彼らのテロ活動によって犠牲になった「非戦闘員」(=民間人)に対して謝罪する、というものだが、IRAが自分たちの活動の結果を「謝罪」するというのはもちろん初めてのこと。また必ずしも「非戦闘員」の枠には入らない警察官や兵士の犠牲者およびその家族に対しても「悲しみ」を表明しているという。こちらも何を今さら、って気もしなくはない謝罪だが、これも時代の流れかもしれない。

 などと言っているうちに大きなテロ事件がまた一つ起きるところだった。フランスでシラク大統領暗殺未遂事件が起こったのである。7月14日、1789年のフランス革命の発端となったバスティーユ牢獄襲撃の日(革命記念日)にパリのシャンゼリゼ通りで恒例の軍事パレードが行われたが、これを閲兵していたシラク大統領を狙ってライフルを取り出した男がその場で逮捕されるという事件が起きた。逮捕された男はマキスム=ブルヌリー(25)という右翼政党「共和国民運動」ルペン党首の「国民運動」から分離した団体)に属して市議会議員選挙に出たこともあったという人物で、さきの大統領選ではたまたま新聞の取材を受けて「ルペン候補に投票する」と言っていた人物だった。もちろん「共和国民運動」のメグレ党首(おお、ルペンに続きメグレまで…などとフランスミステリファンは喜んではいけません)は「我が党とは何ら関わりはない」として暗殺未遂を非難しているし、逮捕された本人も精神異常の疑いもささやかれているのだが、この事件、どうもこのところのEUの極右台頭の流れと無縁ではないようにも思われる。
 なお、僕もそうだったがこの事件の一方を聞いたとき多くの人が「ジャッカルの日」を連想し、世界のマスコミもそればっか書いていた。「ジャッカルの日」とは実際にあったド=ゴール大統領暗殺未遂事件をモデルに暗殺のプロを描いたフレデリック=フォーサイスの名作小説で、フレッド=ジンネマン監督の映画でもよく知られている(数年前にもブルース=ウィリス主演で設定大幅変更で再映画化された)。当然のようにフォーサイス氏のもとにもマスコミが押し掛けコメントを求めていたが、
「パリ祭のような休日を選んだのは正しい選択だが、あんなところにライフルを持ち込むとは…。最悪だ。ライフルは数秒のうちに人目につく。大勢の群集の中では、プロは短銃を使うものだ。あの男はアマチュアだ」
 という暗殺のアドバイス込みのコメントには恐れ入りました(汗)。



◆イスパニやジブラルタルは波高し

 つい先頃イギリス軍部隊が間違ってスペインの海水浴場に上陸作戦を敢行してしまったという微笑ましい話題があった。原因はこのジブラルタル海峡のイベリア半島側にイギリスの領土がチョコンと存在していたためなのだが、このジブラルタルの地がイギリス領になってしまったのは1713年に結ばれたスペイン継承戦争の講和条約「ユトレヒト条約」にまでさかのぼる。スペイン継承戦争というのはあのルイ14世が孫をスペイン国王位に押し込もうとして起こした戦争で、結果的にスペイン王位はフランス側が獲得したものの(このため現在のスペイン王家はブルボン朝なのである)対抗したイギリスに見返りとして多くの植民地を譲るハメになった。このとき譲られた植民地の中に現在のカナダの一部とこのジブラルタルがあったのである。
 以後、なんだかんだで300年弱、イギリスはこの地中海の出入口の要所を押さえ続けてきたわけだ。もちろんその間スペイン側から返還要求はたびたびあったのだが、こんなおいしいところをイギリスが手放すわけもなく、また3万人ほどいるジブラルタル住民もイギリスへの帰属を求めていたこともあって、返還などというのは遠い先の話ではなかろうか、と思われた。
 ところが、去る7月12日。イギリス議会においてストロー外相が「ジブラルタルの領有問題についてはスペインとの間に主権の共有を含む原則的な合意ができている」と初めて公式に表明した。つまりジブラルタルをイギリスとスペインの共有地にしちゃおうというわけで、自治権も大幅に拡大し、住民は両国どちらの国籍も取得できるようにするということで話し合いが進んでいるらしい。一応スペイン側は「完全な主権回復」を主張して揉めているようだが「原則合意」が出来ているとなると、まぁ同じEU加盟国どうし今さら領土がどうの主権がどうのというのもアホらしい、ということになったということかもしれない。
 ただし、先述のようにジブラルタルの住民は大半がイギリスへの残留を望んで「主権共有方式」には反対の姿勢を示している。この手の問題では常だが、最終的には住民投票により住民の承認を得なければ主権の帰属は決められないことになっていて、実際にこの主権共有が実現するのはまだまだ先じゃないかと思われるところ。

 などというニュースが報じられて間もなく、同じジブラルタル海峡の反対側でややキナ臭い事態が起こっていることが報じられた。7月11日、海峡の北アフリカ側にあるスペイン領セウタの近くのレイラ島にモロッコ兵士10人ほどが「不法移民を監視するため」として上陸、監視所を設けてモロッコ国旗を掲げたのである。スペイン側は翌12日にモロッコ側に撤収を要求したが、モロッコ側は「当然の主権行使」とつっぱね、いきなり両国間の緊張が高まってしまったのである。
 このレイラ島(スペイン名ペレヒル島)というのはたった13.5ヘクタールぽっちの岩だらけの小島である。現在のモロッコ王国は1956年にフランスの保護国から独立し、スペイン領のモロッコを併合する形で成立した国だが、まだジブラルタルの北アフリカ側セウタの地はスペイン領として残されている。今回騒ぎとなったレイラ島はそのセウタ及びモロッコ本土の目と鼻の先にある島で、領有権をめぐっては両国の見解が真っ向からぶつかる形となっていた。人なんか住めっこない岩だらけのちっぽけな島なのだが、領有権問題というのは島の大きさ重要性いかんに関わらず単純に加熱しやすいもの。日韓間の竹島、日中間の尖閣諸島と身近にも例が多い。
 それだけにこの手の問題は過熱化を避けてあえて棚上げにしちゃうケースも多い。1960年にスペイン側がこの島から守備隊を撤収して以来、両国ともにこの島に手を出さなかったのもその一例だろう。しかし今回いきなりモロッコ側が兵士をこの島に上陸させ「主権」を主張したことで、スペイン側も態度を硬化させ、一気に緊張が高まっちまうことになったのである。
 7月17日早朝、陸海軍の支援を受けたスペインの特殊部隊がレイラ島を急襲、モロッコ兵士6人を拘束し、スペイン国旗を掲げて島の奪回を宣言した。死傷者も全く出ないいたって穏やかな奪回作戦ではあったが、モロッコ側はスペインの行為を植民地主義と非難してスペイン兵の撤収を要求し「関係断絶も辞さず」と強気の構えを見せ、スペイン側もEU及びNATOの支持があるとして奪回を正当な行為とし、両国そろって国連安保理に訴えるという事態に発展した。
 で、結局どうなったかというと国連、EU、アラブ連盟など周囲がいろいろとりなして、スペイン側も撤収しモロッコ側も再派兵はしないと表明。20日になって両国政府が「原状回復で合意した」と声明することでこの騒動はひとまず幕を下ろした。本質的な領有問題解決はやはり「原状回復」と言う名の「棚上げ」という形になったが、まぁ決着がつくとは思えない話だし、その辺りが賢い解決法であると言えるだろう。
 この騒動の背景には不法移民問題、漁業権問題、さらには西サハラ問題などが複雑に絡み合って両国関係が悪化していたことがあると言われているが、13ヘクタールの島をたった10人で占領、それを奪回して6人拘束、とまぁスケールの小さい話で世界が盛り上がるものである。こんなつまらん話で死傷者ゼロってのが何よりではあった。




あらいやだ国家機密が漏れてます

 6月12日、原爆を広島に投下した爆撃機「エノラ・ゲイ」号の飛行日誌や投下直前まで原爆についていたプラグなどの歴史的な品物の競売がサンフランシスコで行われた。結局このプラグはサンディエゴ市の不動産業者が競り落としたのだが、ここでなんとアメリカ政府が介入してくる。アメリカ司法省はこのプラグの形状が「国家機密」にあたり、これを売ることは国家安全保障の侵害である、との判断から競売の無効を求めて提訴を行ったそうである。半世紀以上前のプラグが「国家機密」ねぇ…とも思うのだが。

 7月4日にはブッシュ政権の政治顧問が今年11月の中間選挙に向けて立てた戦略提言の入ったディスク(媒体は不明)がホワイトハウス裏の広場に落ちていて、民主党の上院スタッフがこれを拾い、民主党側からディスクの内容が暴露されるという珍事が起きていた。暴露されたその提言の中身だが、アーカンソーとニューハンプシャーの2州の共和党の上院議席が危ないと指摘し、ヒスパニック系、カトリック教徒などを重視するよう進めているという(カトリックの話は史点記事にもありますな)。その一方で黒人票対策にはあまり力を入れないつもりだとか。ディスクは共和党の会合に出席していたホワイトハウスの実習生が落としたんじゃないかと推測されている。

 この一件だけでなくこのところブッシュ政権の、特にイラク攻撃などに関する機密事項が次々とマスコミにすっぱ抜かれ話題を呼んでいる。怒り狂ったラムズフェルド国防長官は国防省の高官らに「記者に情報を漏らすのは悪いことだ。違法でもある」と警告する内部文書を送り、さらに「テロ組織は報道からテロ対策を調べている」とのCIAのメモもそれに添付してマスコミ対策を徹底するよう指示を出していた…ということが内部文書の内容ごと即座にマスコミに伝わり、7月16日に一斉に報じられてしまっている(笑)。

 同じ16日付ワシントン・ポスト紙電子版は今年初めにブッシュ大統領がCIAに対しイラクのフセイン政権を打倒するためにフセイン大統領の暗殺も含むあらゆる方策の活用を命じた、とすっぱ抜いた。しかしこのスクープに対しノーコメントを貫いたCIAはともかくとして、この手段を選ばぬフセイン政権転覆計画を連邦議会の共和・民主両党の幹部が即座に支持表明したってのには驚くというか呆れるというか…。
 さて、このワシントン・ポストのスクープ記事を書いたのはこれまでも何度か史点に登場した名物記者ボブ=ウッドワード氏だ(くどいようだが映画「大統領の陰謀」ではロバート=レッドフォードが演じている)。この人カール=バーンスタイン(こちらはダスティン=ホフマンが演じていた)ニクソン大統領による民主党本部盗聴の陰謀を暴き、最終的にニクソン大統領を辞任にまで追い込んだ「ウォーターゲート事件」の発生(1972年6月17日の民主党本部侵入事件)から30年ということで、この6月はこの事件についてなんやかんやと賑やかであったらしい。ウッドワード・バーンスタイン両氏はTV番組に出演し、ウッドワード氏は「ニクソン氏は犯罪的な大統領だっただけでなく、犯罪の意図があった」と改めて強くニクソンを非難していたそうで。
 映画の方でも出てくるが、この「ウォーターゲート事件」ではウッドワード記者にスクープの手がかりなど重要な情報を与えた謎の政府関係者、あだ名を「ディープ・スロート」と呼ばれる人物が登場する。この「ディープ・スロート」が何者であるかは当時からあれこれと推測され、有名どころでは今もブッシュ政権の外交に影響を持ちNY復興CMで華麗なベースランニング(もちろん合成)を決めていたキッシンジャー博士なんかも候補に挙がっているのだが、ウッドワード氏は「彼が生きているうちは絶対に正体を明かさない」と一貫して沈黙を守っている。ということは、確実に存命の人であるわけで、もし亡くなったら明かすということなのかな。
 事件から30周年を期にまた「ディープ・スロート」の正体探しが盛り上がっているようで、イリノイ大学ジャーナリスト学科が3年間かけて資料を調べた結果、当時大統領の側近でスピーチライターを務めていた右派論客パトリック=ブキャナン氏だと断定したりしている。名指しされたブキャナン氏は激怒して「ニクソンに恩義のある者は裏切りなどしない」「私がポスト紙に協力したのは少年時代にあのクソ新聞を配達していたのが最後だ」とTVで悪態をついていたそうな。他にもジョーン=ディーン元ホワイトハウス法律顧問が「30周年にディープ・スロートの正体を特定する」と宣言していたが、結局絞り込めず敗北宣言。中には「複数情報源を一人物に仮託した創作なのではないか」という「創作説」まであがっているとか。



◆このひと月小ネタ特集その2だよ

 さて、前回に引き続き休載中の小ネタ落穂拾いを。

◇犯罪は憎悪を越える?
 いつまで経っても泥沼の憎悪の連鎖を繰り広げるイスラエルとパレスチナだが、正直感心はしないものの「そういうことってやっぱりあるんだな」と思わされる報道があった。7月16日、イスラエル軍の職業軍人3人および予備役兵1人が軍の施設から弾薬を盗み出してパレスチナ側に密売していたという疑いで逮捕されたというのだ。売買に関与したとしてパレスチナ人も一人仲良く逮捕されている。
 イスラエルの兵士がパレスチナに武器を横流しってこと自体にも驚くけど、彼ら4人全員が対パレスチナ強硬派が多いと言われるヨルダン川西岸のユダヤ人入植地の住民であったことに、イスラエル国内では衝撃が広がっているという。彼らは過去3年間にライフルの銃弾15000発を盗み、1発0.5シェケル(約12円)で売っていたとのこと(総額約18万円にしかならんが…)。
 以前コソボ紛争の時に激しい民族紛争を戦っていることになっていたセルビア系とアルバニア系の組織の「合作」による密輸事件ってのがあったのだが、あれをチラッと連想する話題ではあった。

◇犯罪は国境も越える?
 このタイトルはいたって当たり前のことなんだけど、この国境を越えたがために両国の軍隊が衝突して死者が出るとなると穏やかではない。ごくごく小さな報道しかなされなかったが、中国とヴェトナムの国境で去る5月に両国の軍隊が銃撃戦を交わしていたことが明らかになった。
 ヴェトナム人民軍筋から流れた報道によれば事件があったのはヴェトナム北部ラオカイ省の国境付近。最近この中越国境地帯は両国共に市場経済化が進み交流も盛んになってきているせいもあってか麻薬密輸など犯罪も増加しているようで、このときも麻薬密輸団が中国側から越境してきてたためヴェトナムの治安部隊がこれを追跡していた。そのとき、やはりこれを追いかけていた中国側治安部隊がヴェトナム側に越境し、どういうわけかヴェトナム治安部隊に向けて発砲。双方の間で銃撃戦になってしまい、中国側で一人が死亡、双方で6人の負傷者が出たという。
 ヴェトナムと中国は共に世界でも少数派となった共産党一党独裁による社会主義国家であり、同様に市場経済導入による改革を進める似たもの同士でもある。しかし歴史的にみると決して良好な関係ではなく、カンボジア内戦にヴェトナムが介入したときには中国はポル=ポト派を援護するためにヴェトナム国境付近に砲撃を加えて牽制したこともある。また南シナ海のいわゆる南沙諸島の領有をめぐって対立も続けている関係でもあり、近ごろでは中国の経済圧力にヴェトナム側が警戒感を抱いているとの観測もある。そんな両国関係だからヴェトナム側がこの事件が中国側の意図的な国境侵犯ではないかと疑ったのも無理はなかった。ヴェトナム側は一時中国兵士の数人を拘束したが、その後数週間にわたる交渉の結果、中国側が越境の事実を認めて謝ったため兵士達は中国に返還されたという。
 とまぁ、報道ではこんな感じなんだけど実のところ銃撃戦にいたった過程に不透明な部分も多い。僕などは一つの可能性として中国側の治安部隊じたいが密輸に絡んでいたんじゃないかって疑いも持ってるんだけど…

◇コカを栽培して何が悪い!
 麻薬の原料と言えばアフガニスタンの話題でも出てきたケシと並んでコカインの原料「コカ」が有名。コロンビア、ペルーなど南米各国がその主な生産地で、ボリビアは世界第三位の生産量を誇る。そのボリビアでは、麻薬の流入に苦しむアメリカが政府を援助してコカ栽培撲滅を押し進めているのだが、ここに来て「コカ栽培はボリビアの文化だ!」とコカ栽培合法化を主張する政治家が、なんと大統領選で決選投票に残ってしまったことが話題を呼んでいる。
 その政治家とはエボ=モラレス前下院議員(42)。インディオ系出身で、3月に出馬したときは泡沫候補扱いだったが、政府のコカ伐採政策を「政府はアメリカのいいなりになって我々の生活を破壊しようとしている!」と非難し、コカ栽培で生計を立てているインディオ農民層の支持を集めて、有力候補に急浮上。TVなどマスコミにも連日登場し、「コカはボリビアの歴史であり、生活の一部だ」 と公言(実際アンデスでは2万年まえからコカが栽培され日常的に使われていた)、世論調査でも支持が急速に広まってしまう。そしてとうとう6月30日の投票で全候補中第二位に食い込み、8月上旬に行われる決選投票に残ってしまった。なお、第一位は元大統領で再選を目指すゴンサロ=サンチェス候補で得票率は22%。これに対しモラレス候補は得票率21%とまさに僅差で、下手するとこの人、ほんとに大統領になっちゃうかもしれないと言われているとのこと。もっともそうなったらアメリカが黙ってないだろうなぁ…選挙で民主的に選ばれようとアメリカの国益に反するならその政府は転覆していいってことになってるらしいから。
 
◇そのネーミングは偶然か?
 6月半ばごろの話だが、アフリカ中部のコンゴ共和国(ここで何度かネタにした元ザイールのコンゴ民主共和国の隣国です…ややこしいったらありゃしない)の首都ブラサビルでサスヌゲソ大統領派の政府軍とコレラ前首相派の民兵組織との間で銃撃戦が発生し、政府側は民兵組織側に60人の死者が出たと発表している。サスヌゲソ大統領自身は外遊中で、騒乱が収まった後に帰国している。このコンゴ共和国もコンゴ同様に各派がそれぞれ民兵組織を抱えて内戦が絶えない国で、1999年に停戦合意したものの今なおこうしたドンパチがよく起こるらしい。特に今年3月にサスヌゲソ大統領が再選されてからまた対立が深まっていたらしい。
 このニュースがふと目に留まったのは、このコレラ前首相派の民兵組織の名前がなんと「ニンジャ」という名前だったからだ。たまたま現地語が日本語と一致したのかなと思ったが、調べてみたらサスヌゲソ派民兵組織は「コブラ」といい、リスバ前大統領派民兵組織は「コヨーテ」というのだそうで…ホントに「忍者」からとった可能性も濃厚(^^; )。

◇嫁・姑争いは世界の定番?
 ヨーロッパの小国ルクセンブルグ公国が、君主である大公家内の嫁姑争いに揺れている。アンリ大公(47)の妃、マリア=テレサ大公妃(46)が国内主要メディアの編集長15人を宮殿に招き、その席で姑のジョゼフィーヌ・シャルロット前大公妃(74)がアンリ大公と自分の仲を引き裂こうと陰謀をめぐらせている、と涙ながらに語ったというのである。オフレコで、という話だったがこりゃ報道してくれと言っているようなモン。大々的に報道されて世界の注目を浴びてしまうことになった。
 なんでも最近アンリ大公と女性閣僚との不倫スキャンダルが報じられたりしたそうで、これについて大公妃は「あのでたらめな噂は義母が私達夫婦の仲を裂くためにいいふらしたもの」と言っているから穏やかではない。大公妃によれば前大公妃は貴族出身でない大公妃を毛嫌いし、ことあるごとにいじめていたそうで、20年間の忍耐がついにブチ切れたということらしい。夫である大公は「妻に全幅の信頼を置く」と言っているそうで。
 このマリア=テレサ大公妃(しかしまぁよくある名前なんだな、これ)のご出身であるが、実はカリブ海はキューバの生まれである。キューバ革命が起きた際にスイスへ亡命、その後ルクセンブルク大公妃になるという、今どきなかなか数奇な一生を送っているお妃様だ。しかしそれゆえに貴族出の前大公妃には「下賎の者」と見えたようで、大公妃を「キューバの小娘」と呼びすて、彼女がキューバに帰りたがっているとの噂をばらまいたりしたらしい。国民の間でもこの嫁姑の不仲はすでに有名だったようだが、今回嫁サン側がマスコミを使って露骨に反撃に打って出たことについては賛否両論であるようだ。
 日本では「菊のタブー」の皇室なので報道こそされないが、現皇后も初の平民出ということでいろいろといじめにあったという噂がないわけではないんだけどね。
 

2002/7/23の記事

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