☆ゲームで南北朝!!☆

メガドライブ版
NHK大河ドラマ太平記」

(1991年、発売元:セガ)


◎概要◎

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時代の英雄たちが相討つ
壮大な戦いのドラマ!


(パッケージのキャッチコピーより)


◎「NHK大河」と銘打ったタイアップゲーム

 大河ドラマ「太平記」が放映された1991年当時、家庭用ゲーム機は任天堂のスーパーファミコン、NECホームエレクトロニクスのPCエンジン、セガのメガドライブの三機が「三国鼎立」状態でしのぎをけずっていました。トップシェアはもちろんスーパーファミコンだったのですが、大河とタイアップした南北朝ゲームはなぜかスーパーファミコンでは出ず、二番手・三番手のPCエンジン、メガドライブで出ることになりました。理由は分かりませんが、こういうところにも南北朝のマイナーぶりを感じてしまうのですが…

 さてこのメガドライブ版ですが、発売は1991年12月13日。なんとかギリギリ大河ドラマの放映期間内に発売にこぎつけています。発売はセガですがメガドライブのソフトの大半がそうなので、開発元がどこだったかは今のところ分かりません(「NHKソフトウェア」の名がありますが、実開発はさらに下請けがいたはず)。タイトルにばっちり「NHK大河ドラマ」と銘打たれ、「太平記」のロゴも大河ドラマのそれをそのまま使っており、PCエンジンHuCARD版と同様にNHK自体(グループのNHKエンタープライズか)が製作に関わっている可能性も感じます。

  しかしPCエンジン版が尊氏役の真田広之の写真をパッケージに使っていたのに対し、こちらはあくまでロゴだけの使用。パッケージ裏を見ると登場する有名武将たちの顔グラフィックが掲載されているんですが、どの武将も大河ドラマでのものとはまるっきりイメージが違う顔ばかり。佐々木道誉にいたっては片目が傷でつぶれた野性味たっぷりのスカーフェイスにデザインされています(笑)。

  ゲーム内容も大河ドラマとはほぼ無関係。そりゃもちろん南北朝テーマなんで史実を踏まえた部分では全くの無関係ではありませんが、放送中だった大河ドラマの内容とのリンクはまるえ見出せません。。表向き大河と無関係に発売されたPCエンジンCD-ROM版が「ましらの岩」という大河のパロディキャラを登場させてたのと比べても、まるで大河とのつながりが見つからないんですね。

  メガドライブ版「太平記」は、この時代の主要人物である足利尊氏、楠木正成、新田義貞の三人を主人公とし、その戦いの数々を追体験する、というコンセプトで作られています。プレイヤーは北朝方でプレイする「足利帖」と南朝方でプレイする「楠木・新田帖」のどちらかを選び(この「帖」という語は大河原作の「私本太平記」の章立てを真似たもので、ここにわずかに大河とのつながりが…)、鎌倉幕府打倒の戦いから湊川の戦いにいたる、それぞれ15面のシナリオをクリアしてゆくことになります。南北朝のスター、楠木正成を主役キャラとして使えるのは今のところこのゲームだけだと思います。


◎キャラクター成長要素が強い戦術SLG

 メガドライブ版「太平記」は、限定された戦場での勝利を目指す「戦術シミュレーション」に分類されるゲームです。ゲーム中のコマンドで「日本全国」の情勢を見ることができたりしますが、その時点での歴史状況を表示するだけでゲームの進行状況とは無関係で、全国スケールの戦略を考える必要はありません。また支配地域の「国づくり」を行うといった生産・政策要素も全くなく、そこらへんが「信長の野望」シリーズに代表される歴史シミュレーション好みの方には物足りないところでしょうが、実際のところ南北朝時代はそうした要素のシミュレートは史実的に再現しようがないようで、他の南北朝ゲームもそうした要素が入っていません。
 ただ、このメガドライブ版は戦場マップの各所に町や村があり、そこで徴兵や物資徴発を行えるようになってはなっています。その成果には担当武将のパラメータが影響はするんですが、実質ほとんど自由に徴兵・徴発が行えます(もちろん限界はありますが)。

 各シナリオごとに敵味方の登場武将、兵力が決定されており(一部武将については出陣の有無をプレイヤーが設定できます)、そのなかでシナリオごとに決められた勝利条件(たいていは敵の全滅、あるいは自キャラの脱出)を達成してクリアとなり、ストーリーを語るビジュアルシーンが流れて次のシナリオに進む、その繰り返しでゲームが進行します。戦闘中に自身の主要キャラ(足利・楠木・新田兄弟など)が戦死してしまうと即ゲームオーバーです。

 ゲームに登場する武将たちにはそれぞれの個性を示す各種パラメータが設定されています。各自の生命力(?)を表す「体力」、戦闘能力の「武力」、策略の成功に関わる「知力」、敵将の説得や徴発・召兵に関わる「人徳」、戦場での移動速度を示す「機動力」、その武将が率いられる兵力と関わる「統率力」、そしてその武将の寝返りにくさを示す「忠誠度」といったパラメータがあり、これらの数値は戦闘を重ねていくことで「戦歴」(つまりは経験値)がたまり、「戦級」という名前のレベルがアップすることで徐々に上昇してゆきます。この点はシミュレーションRPGと同様で、他の南北朝ゲームに比べてキャラの成長要素が強くなっています。そうそう、戦場内の神社に参拝すると「人徳」が上がり、寺院で座禅を組むと「知力」が上がる、というヘンな成長もあります(笑)。

 ただしこのゲーム、やりこんでみると分かるんですが、武将の価値は断然「武力」で決まってしまいます。このパラメータは武将個人の武力というより軍勢全体の強弱にモロに影響してしまうからです。武力に差がある武将同士が戦うと、ビックリするほど一方的展開で勝敗がついてしまいます。
 初期設定での「武力」数値は130以上で最強クラス、90〜100で中流クラス、80以下は雑魚クラスといった感じで、実のところ100以上、いや110以上の「武力」がないと使い物になりません。各シナリオでかなりの数の武将が出陣しますが、役に立つのはほんのひとにぎり。シナリオの数も考えると中流クラス以下の武将を成長させてもあまり意味がなく、ひとにぎりの「使える武将」の成長に力を注ぐことになります。

 「使える武将」たちを集中的に成長させると、ゲーム後半ではほとんど無敵状態になってしまい、彼らさえ戦わせていればだいたいクリアできるようになっています。ということは、それ以外の「その他大勢」の武将たちはほぼ存在価値がなくなってしまうわけで、この点いささかバランスが悪くて残念なところです。こうした「その他大勢」たちの唯一の使い道は「兵力輸送部隊」。このゲーム、慢性的に兵力不足になりがちなので、こうしたザコ武将たちに兵隊を率いさせ、それを「使える武将」たちに「調整」コマンドでごっそり引き渡す、という使い方です。南北朝マニアとしては割と著名な武将もそんな扱いになっちゃうので、もの悲しさを覚えます。

 先述のように各シナリオで敵味方の登場武将は決定されています。このため、敵方の武将の部隊を全滅させる、あるいは一騎打ちでその武将を倒しても、あとのシナリオで登場する武将は戦死せずにいったん降伏、直後に逃亡、というヘンなことになります。あとで登場しない武将はあっさり戦死するので、この辺もどうにかなんなかったか、と思うところです。
 また戦場のなかの町や村、神社や寺院で「探索」コマンドを実行すると埋もれた人材、新武将が発見されることがあります。まぁその大半がザコなのですが、たまに使える人もいるのであなどれません。もっとも史実に照らし合わせると「なんで、この人がここに?」なケースばっかりですが。


◎陣形、自動戦闘、シューティング、アクションまである合戦

 歴史ものながらシミュレーションRPGタイプとなっているこのゲーム、戦闘システムがかなり特殊です。
 敵部隊と接触し、「攻撃」を実行すると、戦闘場面に切り替わります。するとまず敵武将のパラメータが表示され、その部隊が陣形を組んで登場します。それを受けてプレイヤーは自軍の編成、陣形を選択して戦闘に臨みます。
 武将が率いる兵士たちは「騎馬」「歩兵」「弓隊」「槍隊」(グラフィックは「長刀」ですが)の四種類があります。騎馬隊はスピードと破壊力、弓隊は遠距離攻撃が可能、というわけですが、歩兵と槍隊hそれほど強味はない印象です。部隊編成は武将の能力をもとに自動的に行われますが、一応プレイヤーが編成しなおすこともできます。ですが自由にやれるわけでもないし、結局は自動編成のままで戦うのがベストのようです。武将の「戦級」つまりレベルがあがってゆくと、自動編成で騎馬隊や弓隊が多くなり、どんどん強くなるのが分かります。

  部隊の編成を決定すると、次は陣形を決定します。陣形は五種類用意されていて、三角に敵陣に突進していくタイプ、横一線に並ぶタイプ、大きく左右に開いた鶴翼の陣タイプ、重層布陣タイプといったもので、敵の陣形を見てそれに応じて有利と思えるものを決定します。武力が強い武将だとどの陣形でもあまり変わりはないようですが、スピードの速い騎馬隊がどう動くかだけは気を付けて陣形を決めた方がいいです。

  陣形が定まると、いよいよ戦闘開始です。このゲームの戦闘は基本「オーとバトル」になってまして、プレイヤーが何もしなくても武将や兵士たちが勝手に動いて敵と戦闘を繰り広げます。楽と言えば楽ですが、思い通りに動いてくれないと困る場面もあり、その時はボタンを押して命令コマンドを出し、武将や各部隊に進行方向やその場にとどまるといった指示を出せるようになっています。
  特に気を付けるべきは指揮官である武将。放っておくと勝手に敵陣に向かって突進してゆき、あっという間に討ち死に、という事態になりかねません。基本的に戦闘開始直後にすぐさま命令コマンドを出し、武将自身は後方にとどまって安全をはかることになります。それでも陣形の組みあわせによっては敵の騎馬隊が指揮武将めがけて押し寄せてくるので、まともに相手すると危険なのでコマンドで進行方向を指定し、逃げ回ることになります。
 状況がヤバイと感じたら、「退却」も可能。ただし戦闘がかなり進まないと退却は実行できません。また退却コマンドを出しても武将の位置によっては逃げられない場合も出てきます。

 そんなわけで指揮官は後方にいた方が無難なのですが、場合によっては敵陣に突進してしまった方がいい場合もあります。それはまともに兵士どうしをぶつけて戦っても勝ち目がない場合。指揮官の武将自ら敵陣に突入、敵の指揮官に直接襲いかかり「一騎打ち」にもちこむことができるのです。ここがこのゲームの変わったところで、この一騎打ちだけはプレイヤー操作による「アクションゲーム」あるいは「シューティングゲーム」になってしまうのです。シミュレーヨンゲームの中で純然たる指先勝負のアクションが含まれているというのは他になかなか例がないのではないでしょうか。
 一騎打ちは「弓」と「刀」の二種類があります。私がプレイした限りでは「弓」での一騎打ちになるケースが多かったのですが、「刀」になる場合もたまにありました。どちらになるのか条件は不明で、あるいはランダムになってるのかもしれません。

 「弓」での一騎打ちは武将二人が馬に乗って画面内を走り回り、相手を狙って矢を放ち、命中させることで相手の体力を削ってゆき、体力がゼロになった方が負け(戦死あるいは降伏)になります。プレイヤーは自身の武将を方向キーで操作し、ボタンを押す長さで矢を放つ強さを調整、狙いを定めて撃つことになります。敵将はかなりのスピードで走り回りますので、じっくり狙って、なんて余裕はありません。ボタン長押しで矢の距離調整なんてのも正直なところ難しい。
 そこでどうするかといいますと、自身の武将をうまいこと操作して敵将の背後に回り、ボタン連打で矢を当てまくることになります。慣れてくるとこの作戦で負けることはほぼなくなります。軍勢での戦いでどうしても勝てない場合、この「弓」での一騎打ちに持ち込めさえすれば、敵将を討ち取って一発大逆転勝利、ということが可能なわけです。

  もう一つの「刀」による一騎打ちは、武将同士が徒歩で向かい合い、左右に移動してボタンを押して攻撃・防御を繰り返し相手の体力を奪っていく形で進みます。相手の防御の隙をついて切りつければ体力を奪えるんですが、うかつに近づくとこちらが斬られてしまう。コツがあるのだろうが、弓でのい一騎打ちよりはリスクが高いと思えました。

 こうしたアクション要素が入っているのは、あるいは、数多くいる武力の低いザコ武将たちに活躍の場を与えるためだったのかもしれません。あくまでクリア優先でプレイするなら少数の武力の高い主力武将たちだけに戦闘を任せ、その他大勢の武将たちは兵士提供役に徹してもらうことになるでしょう。当時の戦闘をリアルに再現してるとはあまり思えないのですが…


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