私が今感じていること


5.川遊び、楽しいですか?(1999/08/24)

 1999年8月14日朝に神奈川県の玄倉川でキャンプ中のパーティが、折からの雨で増水した河川に流され、多数の犠牲者を出すという痛ましい事故が起きたことは皆さんご記憶のことと思います。亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。
奥飛騨温泉郷でも他人事で済ませる事故ではありません。いるんです、流されたい予備軍が沢山。
 河原でキャンプする人には2種類あると考えられます。
1)キャンプ場が一杯で入れず、仕方なく河原でキャンプすることになった。
2)最初から河原でキャンプする気で来ている。
 玄倉川の事故同様、上宝村でも河川敷内でのキャンプは危険なので止めるよう警告に回っています。たとえ雨が降っていなくてでも、です。
それでもキャンプを続ける人たちの言い分は概ね次のとおりです。
1)河川は誰のもの?→「みんな」のものです→だから俺達が河川に入ってキャンプすることは自由だ
2)俺達がここでキャンプをしてはいけないという法律があるのか?→ありません→だから俺達が河川に入ってキャンプすることは自由だ
3)俺達はここでキャンプしたくて来てるんだ。他にキャンプできる場所はあるのか?→キャンプ場以外ありません→じゃあ、宿代出せ
確かにおっしゃるとおりです。誰にもその行為は止められません。
 前にも書いたかもしれませんが、「自由」には「義務」が伴います。この場合の「義務」とはなんでしょうか。
・「キャンプしないほうがいい」と警告されているくらいですから、危険な場所であることは認知しておく
・「キャンプしないほうがいい」と警告されているにもかかわらず続ける「自らの意思」で行動していることを認識しておく
・「みんな」の場所=公共の場所なので、「みんな」に迷惑をかけない
至極当然のことばかりですが、最低限これだけの義務を果たした上で自由を満喫して下さい。その上で起きた事故の責任は当然自分にあることをお忘れなく。
 同じように「みんな」のものである公園で、普通に公園を利用する以外の使い方をした場合(例えば野球するとか、犬を放し飼いにするとか等々)、新聞などに投書されますよね。それを見て「なんて非常識なヤツなんだ」とか思いません?
川に限らず海・湖・沼(合わせて公共用水域と言いますね)だって同じじゃないでしょうか。
「みんな」の場所とは、誰が利用してもいい場所であって、何をしてもいい場所ではないんです。もちろんそこを一人占めすることはできませんし(占用許可という手がないでもないですが、趣旨が違いますね)。
 事故の後、とあるTV局の番組で「今回の事故は天災か人災か?」などということを言ってました。どうやら危機管理体制を問いたいらしい。
また、起きた後の救助活動に不手際が指摘されていますが、それとこれとは別問題。
しかし、
・一般車両進入禁止の道路を通らないとたどり着けない場所であった
・ダム管理者や警察が警告している
・雨が降っている
・ダム放流のサイレンが鳴っている
等の背景を考えると、誰が考えても人災であるはずがありません。役所はそこまで危機管理しなくちゃいけないんですか?ルール無用の行動に対してまで。今回の事故を、赤信号にもかかわらず周りの制止を振り切って「前は大丈夫だったから」と、子供の手を引いて無理矢理横断歩道を渡るようなもんだ、と比喩された方がありました。よくわかりますね。
死人に鞭打つようで申し訳ないのですが、そのパーティの中にも警告を聞き入れて川から上がった人がいたというじゃありませんか。
普通の感覚ではどう考えても「起こるはずのない」事故なんです。だからニュースになるんだとは思いますが。
危なくないときは管理者だってそんなに言いませんて。渋い顔はするだろうけど。
それでも一部マスコミが管理者側の責任を問いたいのなら、たぶん今後日本中の川でキャンプできなくなります。事故となる要因を排除すればいいことなので。既にその動きは出ていますよね。
結局、「自由」を履き違えた一部の人たちの心無い行動が、「みんな」の「自由」を奪うことになってしまうんです。
 アウトドアがブームだといわれて久しく経ちます。
大抵ブームはメディアに乗って広がります。メディアな方、イメージ先行でブームを煽り立てるようなことをしていませんか?煽り立てる記事と同様にスペースを割いて裏に潜む危険性や問題点を指摘・警告していますか?
そして、川でキャンプしたいと思っている貴方、地元の人達に歓迎されていると思いますか?
 蛇足ではありますが、川で遊ぶ場合の注意をちょっとだけ。
日本の地形は急峻です。これが何を意味するかというと、山の上の方で降った雨は短時間のうちに麓へ到達する、ということです。山の方の天気が怪しかったら要注意ですね。
一般的な河川の断面を下に記しています。

ご覧のように、堤防の内側(川側)は増水で水がつく可能性のある場所です。低水敷は普段水がつく場所ではありませんが、洪水時には水がついてもいいような構造になっています。
堤防のないところは水がつかないんじゃなくて、洪水時には河川敷全てが川になると認識しておいた方が無難です。
ついでに水の特性を。
流量(Q)=流積(流水の断面積:A)×流速(v)で表わすことができます。
洪水になると、川の勾配は一定なのに流速が上がるのは何故でしょうか。細かい話は抜きにして、流速は水の接する辺長に比例して大きくなります。従って、洪水で水深が深くなれば辺長が増えますから、同じ勾配でも流速が大きくなるんですねぇ。深みの流速が速いのもこのせいです。よくあるでしょ、「深みにはまって流された」っていう事故が。
さらに、水の運搬力は流速の6乗に比例します。河原の大きな石が移動するのにはこんな理由があるのです。
雨の日に川に近付くのはやめときましょう。




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