過去の雑記 99年10月

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10月21日
せっかく初めての街に来たので、夕方から、古本屋を廻る事にする。が、これが大失敗。神戸駅〜元町間の高架下商店街も、三宮のサンパル古書の街も軒並み閉まっている。街に向かうのが遅すぎたのか、木曜日というのが悪かったのか、結局、神戸・元町・三宮と歩いて5軒も入っただろうか。収穫は無かった。

まあ、でも少なくとも神戸繁華街の雰囲気を味わう事くらいはできた。面白かったのは、高架下商店街。雑多な商品が並ぶ中に、カセットビジョンだの、ぴゅう太だのを見つけたときには感動すら覚えましたね。いや、いちまんえんと書いてあったんで買わなかったけど。

都市全体としては、名古屋なんぞより遥かに洗練されているという印象を受けた。規模はともかく、都会性では明らかに名古屋より上だろう。三宮のビルの2階を繋いで作った立体的な街並みはかなりかっこいい。これで、店が閉まるのがあんなに早くなければねえ。油断して午後8時になったら、ろくな店が開いてないんでやんの。

10月22日
懸案の発表も無事終り、安心して三宮へ。目的はもちろん、昨日敗北したサンパル古書の街探索だ。
入り口いきなり無人のスペースに文庫本のつまった書棚が並んでいて、「この本は○○書店で会計して下さい」と書いてあったのには驚いた。そうか、それがありか。気を取り直して先に進むと、さほど広くないスペースに、4軒の古書店が並んでいる。品揃えは比較的かためで、個々には面白い品もあったのだが、残念ながら東京まで持って帰りたいほどの本はなかった。
それでもまあ記念にと、中の1軒で『SFX映画の世界』を買い、ふとレジ横を目にすると、目録送付用封筒の一番上に、「ハードSF研究所 石原藤夫様」の文字が。自分のSF視力の高さに感心した一瞬である。

新幹線の指定時刻を早くし過ぎたので、元町のガード下再訪は諦めて新神戸に戻る。帰りの車中で、ツヴェタン・トドロフ『幻想文学論序説』を読了。やはり、幻想小説という言葉を非常に狭いものにとっている点がネックとなって納得できなかった。特に、テーマ論に入ってからの展開はガタガタという印象がある。結局、帯に書かれた「幻想文学は読者に「ためらい」を強要する」というテーゼ以外に得るものはなかったな。

10月23日
昼過ぎに起きだして、明日のゲームのためのデック(モン・コレ)作り……、をしようと思ったのだが、気力がついていかずだらだらと過ごす。『重力の虹』はなかなか読み進まない。
とりあえず近所の本屋で、イーガン『順列都市』と矢凪まさしの新刊を購入。そうですか、創元は2作目の予定が立ちましたか。それはめでたい。

夕方過ぎになっても全然気力がわかないのでどうしようかとおもっていたのだが、そろそろ日付も変わろうかという時刻になり、やっとやる気が出てくる。勢いに任せてOBページの原稿を4本あげて、山田さん(8)に送付する。いや、だからデックを組む必要があるんだってば。

もうどうしようもない時刻になって、やっと気合いが入り、新デック二つと既存デック一つの改造をする。召喚術師「ロビン」の使用を前提とした道(代理地形)デックは弓矢デックとして、「エント」と「篭の中の小鳥」を軸とした重力制御デックはスペルデックとしてそれぞれ作成。スペルデックの火力は少し低すぎるかも。残る一つはいつもの重儀式デック。今回は攻撃型魔法を多少減らし、本陣での戦闘能力を付加してみた。さて、どうなる。

10月24日
中野君がやってきて、ひさしぶりにゲームをする。

最初は、Magicのポータル三国志。酷い酷いという噂は聞いていたし、自分達でもセットの中身を見て惨状を知ってはいたのだが、手元にある物は仕方が無い。これも運命というものである。僕は魏1セットの被害ですんでいるが、中野君は無謀にも蜀、呉の2セットを買ってしまっているので、その両方と対戦することにする。
第1戦は魏(林)VS蜀(中野)。豊富な人材と高い回復力を誇るはずの蜀だが、クリーチャーの回転が異様に悪く、5ターン目になってもクリーチャーを展開できない。対する魏も状況はほぼ同じだったのだが、手の内には「魏の暗殺団」「魏の近衛部隊」「魏公 曹操」と合計5マナ(ランドがすべて沼なので、合計しか意味を持たないのだ)のクリーチャーが揃っていたのが大きな違い。7ターン目に曹操を展開してからはほぼ一方的なゲームとなった。しかも、9ターン目には司馬懿(当時、沼7だったので7/4)まで登場する始末。結局、11ターンになるかならないかで勝負がついた。
第2戦は魏(林)VS呉(中野)。呉は序盤から妨害型ソーサリーと軽クリーチャーで積極的に攻撃を加えるが、ランドの回転が悪く、致命的な打撃を与えることが出来ない。対する魏は序盤こそやや苦戦するものの、完璧なまでのランドの回転に支えられ、7ターン目の曹操、8ターン目の司馬懿登場で一気に戦場の支配権を握る。結局、10ターン、呉の投了でゲーム終了となった。
ゲームとしての出来はほぼ前評判&予想通り。初回プレイということでそこそこ遊ぶことは出来たが、選択の幅がせまいため、再三再四のゲームに耐えうるとは思えない。もちろん、オリジナルデックを組めばまた違うという可能性はあるが、あまり期待できないだろう。なにより、クリーチャーに魅力を感じないあたりで、TCGとして駄目だ。

つづいて、モン・コレ。今回の目玉はもちろん、「黄金樹の守護者」のカード群……、のはずだが、お互い主力はバードマンだったり、大砂蟲だったり。駄目じゃん。
第1戦は、「召喚術師」カードを使用しての対戦。中野君は、エコーを利用し、補助系儀式呪文を組み込んだ、アニマル&聖スペルデック。こちらは、ロビンを使用し、弓矢を中心にまとめた道(代理地形)デック。序盤に一度追い込まれたものの、中盤からは10本を数える矢の威力が炸裂し、無難に本陣を落とすことに成功する。完勝である。しかし、続いて行われた同カードの第2戦では、1つの判断ミスから劣勢に陥り、完璧なタイミングで使用された「ジャングル・キング」によって、本陣を落とされてしまった。1戦目の完勝が実力によるものであれば、このような不用意な敗北はありえないはず。まだまだ強力なデックとは言い難い出来のようだ。まあ、しかし入れたカードはほぼ全て機能したので良しとしよう。
第3戦は、中野君のウィニー&ワルキュリア進軍デック対エントを軸とする重力制御デック。敗北はしても能力はほぼ使いきった前戦とは違い、今回は打ち落としカードがうまく回らず実力を充分に発揮できない。結局、消化不良の状態のまま敗北してしまった。こちらは如実にカードバランスが悪いようだ。要再調整。
第4戦は、前回爆笑させられたオーガパワーブラザーズデック対微調整した重儀式デック。破壊カードを減らしたことがネックとなりやや苦労はするが、スプライトがそれなりに機能し、なんとか戦線を保つことに成功する。そして、相手が大砂蟲の破壊にてこずる隙に、本陣横に張りついていたリヴァイアサンからスプライトを展開し、ファイアーボール!相手のやる気を削ぐ会心の勝利を得ることが出来た。
今回4戦しての結論は、「スプライトは非常に強い」ということ。相手のアイテム(消耗品)を封じた上でスペル全が残っているというのは凶悪なことこの上ない。今後、アイテムデックを作る際にはどうやってスプライトを封じるか、が勝負の鍵を握るようになるだろう。

晩飯を食った後、日本シリーズを見ていたら、川上が打ち込まれてノーアウト満塁になったので(*)、SSシリーズ最高傑作の呼び声も高い、「太平記」をプレイする。
*:この「ので」を説明していると、ぺのように長くなってしまうので省略する。
「太平記」はその名の通り、足利尊氏ら武家方と、新田義貞ら公家方の勢力争いを再現した戦略級ゲーム。最大の軍団でも、7ユニットという規模なので、比較的気軽にプレイできる。ゲームは、初心者の僕が悩みの少ない公家方、中野君が武家方を担当。イニシアティブの賽の目は致命的に悪いが、調略の賽の目は奇跡的に良いというついてるんだかついてないんだか分からない状態の中ゲームは進み、北陸を治める武家方に対して新田義貞の軍勢で戦いを挑む、……というところで突然、来客が。
なぜ、ここに水鏡子先生が?大森御夫妻や堺三保さんもいるところを見ると、多分
  1. パーティーか何かで東京に来た
  2. 遅くなったので大森邸に泊まることになった
  3. みなで西葛西に来たついでに僕の部屋を見に行こうと言い出した人がいた
ということなのだろう。つくづく西葛西というのは油断のならない街である。ゲーム中でなければ、喜んでお相手するところだが、いかんせん、日本の覇権を賭けた戦いの最中である。勝手に見て頂くことにして、ゲームに集中する。いや、しかし、ゲームボードの方を見ながら後ろから聞こえてくる話し声に対応するのは難しいですね。

苦戦しつつも、新田が北陸を制覇する頃、満足したのかSFの人々は去っていった。ああ、本当にゲーム中じゃなきゃもう少し話をさせて頂きたかったところ。とは言ってもゲームが面白くなかったわけではない。本当に来客が無ければもっと集中してやりたかったところなのである。なんか、虻蜂とらずな感じでもったいない事であった。ま、それが人生というものだろう。
ゲームの方は東海以東を制圧し、逆に西国一帯を落とされ、東西を二分する一大決戦が始まるか、というところで武家方が勝利条件を満たしてしまった。勝敗を決めるのは戦況ではなくVPであることを軽視し過ぎたのが敗因。ゲームとしては面白かったので、次回再戦を挑みたいところだ。

10月25日
なんだか風邪の症状が悪化しているようなので、定時で帰る。定時で帰ると残業時間がマイナス1.5時間になるのは、不可抗力って奴なので僕に責任はない。

今月は、少し金に余裕があったので、ブロードウェイでケップフ『ふくろうの眼』とラングドン・ジョーンズ編『新しいSF』を買う。
『ふくろうの眼』は本は持っているし、読みおわっているし、あまつさえ肌に合わなかったのだが、持っている方には帯がついていなかったので、買い直してしまった。常々、自分はコレクターではないと主張している以上、このような行動は非常に心苦しいのだが、書棚に並ぶ<文学の冒険>すべてに帯がついている事に気づいてしまったものは仕方が無いのだ。
そしてまた、そんな無駄なことに金を使ってしまった今、スラデックが載っているという大義名分がある『新しいSF』を買う事に、何のためらいがあるだろう。いや、3500円という値段は十分にためらうべきという気もするんですが。

10月26日
風邪がいよいよ悪化したので、出社は諦めて寝てしまう。寝てしまうのは良いが、会社に連絡くらいはするように。> おれ

寝てしまったので、特に何かをしたという事はない。SFマガジンの12月号と、すえひろがり『CIRCLE』を買ったことくらいか。

10月27日
ふとしたはずみで、浅井R(10)と世界の株式市場について(メールで)話し込む。どうやら、名大OBページ最新号の彼の記事は、世界の株式市場分布に関する取材に基づいているらしい。そうか、そういうとこまで調べて書く芸風だったか。

やっとのことで二章に入った『重力の虹』は脇に置き、『順列都市』を読み始める。上巻の190ページ現在では、ほとんど文句が無い。さて、残り三分の二でどうなるか。

意表を突いて、'98 東京ファンタ更新してます。万が一、気になっていた方はどうぞ。いや、対象者は一人しか思い浮かばないけど。

10月28日
グレッグ・イーガン『順列都市』(ハヤカワ文庫SF)読了。『宇宙消失』に比べて、小説の作りが格段に上手くなっている。わずか2ヶ月でここまで成長するとは、おそるべし。 < 違います

いや、2年での成長だとしても偉いものだ。前作は、ストーリーの一貫性が頭三分の一しか持たなかったのに、今度は三分の二を越えている。これを成長と言わずして何と言おう。しかも、テーマの一貫性、SFとしての衝撃力は驚くべき事に前作をも上回りかねないレベル。小説としての技巧が上手くなればなるほど、SFとしての破壊力は失われるのが通例だというのに、レベルを全く落とさないとは、イーガンはよっぽど変な奴なのに違いない。

前作同様、終盤の展開にはやや不満があるのだが、序盤・中盤を支える徹底的な議論の楽しさの前にはそんな些細な不満は吹っ飛んでしまう。「人工知性は自意識を持ちうるか」という重いテーマはさらっと流し、「自意識を持ったとしたら、どんな事態が想像されるか」に的を絞るあたりに、イーガンのセンスが感じられる。もちろん、自分の選んだテーマの中では逃げはない。感情を制御しても自分は自分なのか、記憶を制御しても自分は自分なのか、性向を制御しても……、人格を制御しても……、「自分とは何か」についてここまで徹底的に議論するSFもそんなに多くはない。

もちろん、SFとしてのテーマはそればかりでは無い。仮想空間の中で行われる浮世離れした実験が導き出す途方もない世界観、単純なロジックが膨大な計算の果てに生み出した真の異人(エイリアン)、そして多次元セル・オートマトンに過ぎないはずものが創り出す酷薄なる神学。ネタのわかりやすさ、爽快さでは『宇宙消失』に一歩を譲るが、その壮大さでは全くひけを取らない。よくもまあ、これだけのネタを詰めこめたものだ。

一部のキャラの存在意義など、欠点の存在を認めながらも、最大級の支持と賛辞を送りたい傑作。

8月末『宇宙消失』、9月末がSFMの個人特集、10月末が本作なんだから、11月末は京フェスでパネル、12月末に創元から"Distress"か?
# それは無理だろう。

10月29日
ジョー・ホールドマン『マインドブリッジ』読了。定型文書の引用を多用した(ジャンルSFの範囲内で)凝った作りなんで少し驚く。ホールドマンってこういう作家だったんだ。
中身の方はまあ普通。保存則の関係から一定期間経つと出発地点に戻されるワープ装置だの、惑星開発局員の主な仕事が性交と出産であるという設定だの、無敵のル・ブレ族の描写だの、個々には面白いところはあるけど、全体としては、だからどうといったインパクトに欠ける。何より、「凝った」しかけのおかげで、全体が陳腐に見えるのがどうも。この話なら、正攻法で行けたんじゃないかなあ。

『宇宙消失』の時はやり損なったので再挑戦、というわけでイーガン布教のため、掲示板二つと某MLに『順列都市』レビュー、というか宣伝を書き込む。『宇宙消失』ではなく『順列都市』を宣伝する事になったのは、本当にタイミングの問題だけで、別に創元より早川が大切などという事はない。いや、ほんと。
まあ、『宇宙消失』はかなりいろんなところで騒がれていたし、いまさら僕が宣伝しなくても、と思った事は確か。"Distress"も刊行予定に入ったようだし、それなら今度は『順列都市』が売れて、"Diaspora"が早川の刊行予定に入る事を期待するのは至極当然の事でしょう。
実は、『宇宙消失』の方が好みなんだけどね。

10月30日
昼過ぎから、神保町ブックフェスティバルを見物するため、神保町へ。出版社系のワゴンはかろうじて一通り覗いたが、余りの人の多さに圧倒され、古本はほとんど見ずに終わった。なにをしに行ったんだか。
しかたがないので神保町の書店/ゲームショップ/古書店を巡回。以下のものを購入した。
  • Game Journal 56号(特集:斜陽の大帝国、ローマ崩壊)、57号(特集:源平合戦)
  • 幻想文学2冊、奇想天外4冊、SFワールド1冊
  • ジョン・ウィンダムの未訳ペーパーバック3冊
  • 諸星大二郎『鬼市』(アクションコミックス)
  • 内藤泰弘『トライガン・マキシマム』3(ヤングキングコミックス)
われながら、あまり頭の良くない買い物だと思っているので非難の声は必要無い。

まあ、何はともあれ時間は潰れたので適度な時間に渋谷に移動。ふだん、めったに足を踏み入れない渋谷なんぞにやってきたのは、もちろん東京国際ファンタスティック映画祭99のためである。

今年は全席指定&前売りが一瞬で完売ってことで、席は2階の遥か後方。ところが、おかげで神保町で買い込んだ大量の荷物をさほど気にせずにすんだのだから、世の中何が幸いするかわから無い。
オープニング開始時点では、いつものファンタという雰囲気だったのだが、ゲストが登場し始めると開場の空気が一変した。香港のスターが呼ばれると、会場を揺るがさんばかりの黄色い歓声が上がるのである。そうか、ファンタには、そういう客層もいるんだ。いや、もう、サム・リーが呼ばれたときの甲高い歓声と、薩摩剣八郎が呼ばれたときの地響きのような歓声の対比は、なかなか凄いものが有りましたね。
まあ、前2回との客層の違いに戸惑っているうちにオープニングイベントは終了。オープニング作品にして香港ムービー・セレクションのとりを飾る作品でもある「GEN-X COPS 特警新人類」が始まった。しかし、これがなんだか。いまどきそれはないだろうというくらいに、脚本も、演出も出来が良くない。見始めて数分で完成度という方向性は諦めて、残りの時間はくだらなさを楽しむ事にする。くだらなさの方に注目すると、これはなかなか秀逸な作品。ヒロインの名前が「Y2K」というのには本当に呆然としてしまったよ。いや、香港人おそるべし。中村トオルのたどたどしい日本語や、ゆったりとしたカンフーアクションも良い感じで、実に楽しめた。とどめにジャッキー・チェンが出てきて説教までされちゃった日にゃ、もうまいるしかないでしょう。いや、ほんと、どうしようもないものってのは、どうしようもないね。

脱力しながら飯を食った後は、お待ちかねのゾンビリベンジ ホラー・オールナイトのお時間だ。今回の作品は「HALLOWEEN H20」「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 30周年記念版」「ファンタズムIV」「オペラ座の怪人」の4作。4作中3作が続篇ないしリメイクだというのに、過去の作品を一本も見ていないというのは我ながら実に良い度胸である。

一本目、「HALLOWEEN H20」は驚いた事にそれでも楽しめた。序盤は、前作の影が色濃いので、何が起こっているのか推測しか出来なかったが、前提条件を説明しおわってからは、ほぼ文句無し。終盤の展開は、ちょっと違和感があったが、見せ場の間の取り方がいちいちはまっているのでまったく気にならない。いや、ほんとシーケンシャルな芸術は「間」がすべてだね。

次の「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 30周年記念版」は、「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」に賛否両論の落ちを付け足したもの(だそうだ)。初見なんで、どこが付け足しなんだかわからなかったんすが。中身の方は、何がどうなったんだかわからなくなるくらいに設定の矛盾が登場していっそ清々しいくらい。ゾンビの出現した原因が分からないのは良いとして、「死ぬとゾンビになる」のか、「ゾンビに殺されるとゾンビになる」のか、「ゾンビにかまれるとゾンビになる」のか、さっぱりわからないというのはなんだか。「ゾンビが死肉を食う」という設定も、「殺された人がゾンビになるからゾンビが増える」という設定と矛盾しているとしか思えない。ただ、それらが欠点に見えないくらい、映像が変で魅力的。なんか不条理劇を見ているような気分で、わりと楽しめてしまったことである。

「ファンタズムIV」はさすがに駄目。ストーリーが全くわからないので、眠気を押してまで見ようという気力が起こらない。次の作品のために体力を回復する時間と成り果ててしまった。しかも、やっと目が覚めて最後の10数分を見たら、話が落ちてなかったし。誰かついてきてるのか、このシリーズ。

最後の「オペラ座の怪人」はダリオ<映像美>アルジェントの監督作品。さすがは、<映像美>の二つ名を持つ巨匠(持ってないって)、見せ場のシーンは実に美しい。しかし、「オペラ座の怪人」ってのは、あれですか。「下水に捨てられ、ねずみに育てられ、ねずみの能力が使えるようになった美しき<ねずみ男>が、オペラの歌姫に恋をし両想いになるが、互いに生きる世界が違う事を悟り、自らを犠牲にして、歌姫を光の世界に送り返す」ってぇ悲恋物語なんですか。ガストン・ルルーもよくわからない話を書く作家だね。

以上、4作を見終わると外は白々と夜が明ける、……どころか、しっかりと日が昇っている午前8時。ときどき気を喪いつつも、Game Journalを読みながら家路につく。……あ、大熊君に無理言って持ってきてもらった本を受け取るのを忘れた……。

10月31日
オールナイト空けとは思えないくらいにちゃんと目が覚めたのは何が理由だったのか。ともかく、これなら上映に間に合うどころか行列に間に合ったりするかも、と思ったら、つい『鬼市』を読んでいて出遅れてしまったり。結局、なにがあろうとぎりぎりにしか到着しないらしい。それでも、動き出してからすぐに渋谷に向えばかなりマシだったのだが、葛西郵便局で現実と対面する用があったので、そうもいかない。行列するのは、若い人達に任せて、自分の現実を取りにいく。

葛西の本局まで取りにいくはめになったのは、ジグゾーハウスに冗談で申し込んだら注文が通ってしまった大量のSF雑誌群の為。SFイズム14冊に、SFワールド5冊、NW-SF3冊、SFの本3冊の〆て25冊というのは、ちょっと対面するのが怖い量である。これで、都合2万円強というのだから、あまり効率の良い買い物ではないのだが、それ以前に今更そんな物を買うというのがあまり頭の良い行動ではないので、値段のことはどうでもいいのだ。
なにはともあれ、SFイズムがあと2冊(7号、10号)、SFワールドがあと1冊(7号)、SFの本があと1冊(4号)。いきなり、揃いまでカウントダウン状態の雑誌が増えてしまったことである。これにSF宝石があと1冊(80年12月号)、SFマガジンがあと14冊(創刊号、2号、4号、20号(61年9月増刊号)、87年1月増刊号、ハヤカワHi!9冊)を加えたものが、現在コンプリートを目指している雑誌ということになる。協力して頂ける方はぜひご一報を(笑)。

まあ、それはともかくファンタだ、ファンタ。今日は、大熊君、小菅君、蔭山さんと「13F」を見る。1時間半前から並んでいたという小菅君や蔭山さんのおかげで開場20分前に着いたというのに、えらく良い席で見る事ができた。本当に申し訳ない事だよ。
映画の方の評価は難しいところ。整合性の無い設定が多く、いまいち入り込めなかった。映像の方も、主人公のいる世界があまりにも陳腐な近未来都市で、どうも愛を感じがたい。ストーリー自体も収まるところに収まってしまった感があり、驚くという事が出来なかった。ただ、仮想空間のなかの1937年の街並みは、かなり魅力的。もう一度見に行こうとは思わないが、人が見に行くのを止めようとも思わないってところか。

映画終了後、大熊君に『カムナビ』他一冊を借りる。本当は、昨日も持ってきてもらってたんだけど、受け取るのを忘れてたんだよね。いや、どうも本当に色々とありがとうございました。
さて、いつ読もう、これ。

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