ONE 〜輝く季節へ〜

  みさき先輩SS 「輝いていた季節」


 第2話 そして、出会い・・・


 「みさきぃっ! 出てきなさいっ!」

 可愛いけど、ものすごく恐そうな雪ちゃんの声があたりに響く。

 その声に、見つかってないのは判っているけど一瞬びくっと震えてしまった。

 いつもながら怒ったときの雪ちゃんは、すっごく恐い。 

 (やだよ〜)

 雪ちゃんが近くまで来ていたので、声には出さなけど、心の中で呟いた。

 (だって、ああいうときの雪ちゃんって、かならずべしべし頭たたくんだもん)

 それで、私が「ごめんなさい」って言うまで許してくれない。

 もう多分、雪ちゃんの頭の中は写生大会の事よりも、いかに私に仕返しするかという

事でいっぱいだと思う。

 いや、もしかしたら写生大会のことも忘れているかも。

 そんなところに、自分からわざわざ謝りに言っても手加減してくれないのは、幼稚園の

頃からのつきあいで良く知ってる。

 パタパタパタ・・・

 早足で公園内の道路を歩く雪ちゃんの足音が、はっきりと聞こえる。

 私は、道路脇のツツジの木の陰に飛び込んで息をひそめた。

 パタパタパタパタ・・・・・・・

 (こっちに気が付かないでね、雪ちゃん)

 ドキドキする胸を押さえながら、木の間から見える足下を見る。

 「みさきぃ〜〜〜」

 ・・・パタ・・・パタ・・・

 私の名前を呼びながら雪ちゃんは遠ざかっていった。

 「ふぅ〜」

 助かった。しばらく隠れていれば、雪ちゃんも怒りがおさまるかもしれない。

 (雪ちゃんは怒りっぽいけど、結構その後はさめやすいから、すこし隠れてよっと)

 今までの経験から、雪ちゃんの性格はよく判ってる。

 ・・・・つまりはいつも怒らせている訳だが・・・・

 「・・・ん?

  今誰かに変なこと言われたような気がしたんだけど」

 辺りを見回したけど、誰もいなかった。

 「何か酷いこと言われたような気がするんだけどな」

 ま、いいか。

 「良かった、なんとか見つからなかったみたい」 

 「そうだね」

 私の独り言に、何故か後ろから男の子の声で返事が戻ってきた。

 「え?」

 あわてて振り返ると、そこには小さい男の子がいた。

 しかも、私と同じように、隠れるように屈んで。

 私より2つ位年下だろうか、そのくらいの顔立ちだったけど、どこかこの年頃の

男の子とは全く違う、何かが表情から見えるような気がした。

 そう、まるで、この子だけ他の子の2倍も3倍も生きているような・・・

 ただ、近寄りがたい雰囲気とかは無くって、なんか暖かそうな感じがした。

 「え〜っと、きみ・・・だれ?」

 とりあえず、なんて声をかけて良いのか判らないので質問した。

 「・・・折原、浩平。お姉ちゃんは?」

「私? 私は、みさき。川名みさきって言うの」

 「そういえば、浩平君は学校どうしたの?」

 今日は平日。私たちは写生大会だからここにいるけど、よく考えたら普通の子は

学校に行ってるはず。

 「今日は休んだ。病院に行ってたから・・・」

 「浩平くん、どこか具合が悪いの?」

 みたところ、どこも怪我とかして無いみたいだけど。

 そう質問すると、浩平君はちょっと寂しい顔をした。

 「違うんだ。具合が悪いのは妹のみさおなんだ。

 もうずっと、入院してる。」

 「そう、妹がいるんだ」

 私は一人っ子だから、兄弟とかがすごく欲しかった。

 (そう、浩平君みたいな弟がいたら楽しいかもね)

 「ねぇ、暇だったら一緒に遊ぼうか?」

 「遊ぼうって言っても、みさきさんたちは絵を描きに来たんじゃないの?」

 あ、忘れてた。

 「でも、大丈夫だよ。

 私はもう描いちゃったから」

 そう言うと、浩平君はちょっと疑わしそうに目を細める。

 ・・・信用されて無いみたい。

 「みさきさんは何を描いたの?」

 「青い空と白い雲とお日様と鳥」

 あ、今度は呆れられた。

 「それって反則じゃないの?」

 「だって、公園の中で描きなさいっていっても、公園を描かなきゃいけないなんて

 いわれてないよ」

 私がにこりと笑うと、浩平君もなにか肩から力を抜いた。

 「まぁそれは良いとして、みさきさん」

 「ん? 何?」

 「とりあえず、ここから移動しようよ」

 ・・・・・・

 そういえば、道端の植木の陰で、しゃがみながらずっと話していたことに気が付いた。

 〜〜第2話 終わり〜〜


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