Piaキャロットへようこそ!2  

   Short Story#2  嵐の下見旅行っ!?

 注: これは、葵さんとのEDから1年後の夏休みという設定です。
    現在別に創作している「GoGoウェイトレス!」とは全く
   別のお話です。
    ちなみに、主人公の耕治は大学へと進学し、葵さんは引き続き
   Piaキャロット2号店に勤めています。

 注2:ここから先は、Leafの「痕」をプレイされた方は
    おもしろさが2倍になるかもしれません。(当社比)
    未プレイの方は、是非プレイされることをお薦めします。


 第3話 豹変!? 


 「う〜ん、良い海岸ねぇ〜」

 スポーツバックを片手に下げ、水着姿で砂浜を歩く葵さん。

 さすがに駅前みたいにほとんど無人と言うことは無いが、それでもTVで

嫌と言うほど見かける関東地方の海岸線とはまるで別の国のような、のどかな

風景だった。

 延々と続く砂浜に、ぽつぽつとまばらにパラソルが立っていて、お互いに

干渉することなく海水浴を楽しんでいた。

 ただ、この砂浜には「海の家」のような建物は見あたらず、やはり海水浴客と

同じ様なパラソルを立てた下で、アイスクリームやジュースを売っている地元の

人が見かけられるだけのようだった。

 「よいしょ・・・っと」

 ざくっと砂の中に、宿屋で借りてきたビーチパラソルを突き立てて、とりあえず

荷物を置くことにした。

 「お疲れ様、耕治」

 ぴとっ

 「うわぁぁぁっ!」 

 いきなり首筋に冷たい物を押し当てられて、反射的に叫び声をあげてしまった。

 あわてて振り返ると、水着姿の葵さんがコーラを片手に笑っていた。

 「あはははっ、驚いてる驚いてる」

 「そりゃびっくりしますよ

 いきなりそんなもん押し当てられたら」

 「まぁまぁ、いいじゃないの

 それじゃちょっと泳ぎに行きましょうか☆」

 そう言って、両手で僕の腕を掴んで海辺へと進もうとする。

 先に歩き出す葵さんの、大きくカットされた水着から見える白い背中が、

思いっきり目に入ってきてちょっと視線を逸らしてしまった。

 「ちょ、ちょっと待ってよ、葵さん

 少し休ませてよ」

 さっきまでの場所作りで、普段の運動不足の成果が見事に現れていた僕は、

実際の所はかなり息が上がっていた。

 ただ、さすがに葵さんの前でそんな姿は見せられない。

 ずるずると引っ張られている内に、気が付くとすでに足下には波が打ち寄せていた。

 葵さんも、足下を過ぎる水面を見ていた。 

 「う〜ん、冷たくて気持ちいいわねぇ〜」

 目を細めて微笑む葵さんを見て、さっきまでの疲れが不思議とどこかへと

行ってしまった様な感じになった。

 その葵さんの笑顔が、いきなり180度反転した。

 ざっぱぁ〜ん


 えっ!?、っと思ったときには頭が海に潜っていた。

 葵さんに足を引っかけられたと理解した時には既に、当の葵さんはすでにずっと沖の方へと

泳ぎだしていた。

 ピンク色の水着姿が、水中でも鮮やかに映った。

 その姿がとても楽しそうに見えるのが、気のせいじゃないと今は信じたい。 

 さっきまでの疲労はどこへやら、葵さんへと猛然と泳ぎだした。

 〜〜それから約1時間後〜〜

 「・・・まいった・・・」

 「普段全然運動していないからよ。

 ま、日頃の行いの違いかしら?」

 さっき立てたパラソルの下で、ぐったりと突っ伏したした僕と、横に座って悪戯っ子ぽく

笑う葵さんの姿があった。

 さすがに普段からウェイトレスという、動き回る仕事をしている葵さんと、普段教室でじっと

座っている自分という、情けない現実の結果を突きつけられた。

 「む、昔はこんな貧弱じゃなかったのに・・・」

 高校時代はずっと部活とか、Piaキャロットでのバイトとかもあって、海に行っても

ずっと泳ぎ回っていた事を思い出す。

 あの頃は、朝早く来て、ずっと遊びまくって、最後に、沈む夕日をじっと砂浜に座って

眺めていた。その真紅の輝きが消えるまで、ずっと飽きることも無く。

 過去と違うのは、今の情けない現状と、そして、側に葵さんが居てくれること。

 ずっと黙ってしまった僕が何を考えていたのかを察したのか、葵さんが、砂の上に

横たわっている僕の手に、優しく手を重ねてきた。

 「時間は、ずっと動いてる。

  ただ、それは悲しいこともあるかもしれないけど、その代わり、それ以上の

 嬉しいことを持ってきてくれる・・・」

 そう呟く葵さんの瞳は、どこまでも澄み切った青い海のようだった。

 「葵さん・・、いや、葵」

 「・・・・・・」

 葵さんの顔がが次第に近づいてきた・・・・・



 「さて、一休みしたところで、何か食べましょ!」

 すっくと立ち上がった葵さんは、周りを見回した。

 僕もつられて周りを見る。すると、まばらな海水浴客の中に、クーラーボックス片手に

アイスクリームを売り歩いている地元の人を見かけた。

 すると、嬉しそうに走り出す葵さん。そう、僕はあまり好きではないんだけど、葵さんは

アイスとかケーキとか甘い物がじつは好きだったりする。

 以前、ビールのつまみにクッキーとか出されて困ってしまう事もあった。

 とりあえず、葵さんがどうも財布を持って行かなかったように見えたので、ついて行く。

 「すみませ〜ん、アイスひとつ下さい☆」

 「はい、毎度有り難うございます」

 葵さんの声に丁寧に答えたのは、若い女性だった。腰の近くまで伸ばした、シャギーの

入った髪の上から、麦わら帽子をかぶっている。年齢は、おそらく葵さんと同じくらいだろう。

 全身から、穏やかな落ち着いた雰囲気を漂わせている。

 「えっと、どんなのがあるんですか?」

 葵さんの問いに、その女性は、申し訳なさそうに頭を下げながら

 「もうしわけありません。実は、1種類しかないんです。

 キノコを使った、ヘルシーアイスクリームなんですけど・・・」

 うげ。なんていう物を売ってるんだろう、と思わず1歩引いてしまったが、それに対して

葵さんは平然と、逆に、面白そうな表情になった。

 「あら、なかなか面白そうね。

 それじゃ、そのアイスをひとつください」

 「はい、まいど有り難うございます」

 そう言って、アイスボックスを開けている女性に質問した。

 「アルバイトですか?」


 その問いに、彼女はすこし顔を赤くした。

 「いえ、そういうのとはちょっと違うんですけど・・・

 私は、この近くで旅館を経営しているんですけど、この時期はまだ時間が空いてしまって。

 それで、海辺の様子を見るのをかねて、ちょっと手作りのアイスも作ってみたんですけど、

自分一人では食べきれないんで、こうして売ってみようかな、なんて思ったんです。

 けっして、プレゼント代とか、東京への交通費を妹たちに内緒で作ろうとか言う訳じゃ・・って、

私何言ってるのかしら・・・」

 うつむいて、両手の人差し指をつきあわせてぶつぶつ呟いている。

 ・・・面白い女性だ。

 「さ、行きましょ」

 何となく会話がとぎれてしまったので、葵さんもアイスを片手に歩き出した。

 「ありがとうございました〜」

 アイス売りの女性も、ぺこりと丁寧にお辞儀をしてからまた砂浜を歩き始めた。

 「あ。おいしい、これ。

 キノコの味なんて全然しないけど」

 葵さんは、コーンの上に乗ったアイスクリームをおいしそうに食べている。

 これが、新たな騒動の始まりだとはさすがに僕も気が付かなかった。

 〜〜第3話 終わり〜〜


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