Kanon
Short Story#1 雪の辿り着く場所
注: これは、名雪とのED後まもなくという設定です。
ただ、何故か全キャラとの面識を主人公は持っています(笑)
そこらへんの細かいツッコミは勘弁して下さい。(^^;
第1話 白銀は招くよ!?
春休みに入った初日。
東京ではもう春の便りの届く頃だが、この町ではまだ町中から辛うじて
白い山が消えつつあるという状況だった。
「朝〜 朝だよ〜
朝ご飯食べて学校へ行くよ〜」
より深い眠りに誘い込むかのような名雪の声が聞こえる。
布団の隙間から冷気が刺すように入り込んでくる。
「・・・あと5分・・・寝かせて・・・」
より布団を抱え込みながら呟く。
昨日はレベルアップに夢中でつい明け方までコントローラーを握っていた。
結局郵便配達のバイクが走り回る時間になってようやく眠りに就いた。
(う〜ん、昨日は目的の神様と交神するために必要な奉納点を稼ぐのに必死だったしな〜)
注:作者の生活状況が入ってます(気にしないで下さい)
「ほら〜 朝だよ〜 朝御飯食べて学校に行くよ〜」
ゆさゆさゆさ・・・
寝てしまいそうな声と共に、布団ごと体が揺すられている。
「ん〜〜」
(春休みに入ったんだし、もう少しゆっくり眠らせ・・・え? ・・・春休み?)
急に眠気が薄れていく。
「・・・・・名雪」
「何?」
「今日は・・・春休みじゃなかったのか・・・?」
「そうだけど?」
「休みだっていうのにどうして学校に行かなきゃならないんだ?」
むくりと布団を押しのけてようやく起きあがる。
重大な疑問だった。
「やっぱり・・・忘れてる」
名雪が大きくため息をつく。
をや? よく見ると名雪は制服じゃなくて・・・
「今日からみんなでスキー旅行に行く予定だったでしょ?
わすれちゃったの?」
(げ・・・)
そういえばそんな約束をしたような気もする。
「完全に忘れてたぞ」
「やっぱり。
ホントは夕べ確認しに行こうと思ったんだけど、つい私も寝ちゃって・・・」
しまった。準備も何もしていないぞ。
あわてて時計を見ると、戻った記憶にあった集合時間まで、走っていかないといけない時間だ。
「まずいな」
「うん」
確か・・・あゆ、栞、香里、舞、佐祐理先輩・・・あと誰か居たような気もするけど・・・
あゆはともかく、香里には遅刻したら何を言われるか判ったものではない。
どうやら名雪は準備万端のようだが、問題は俺か。
トントン・・・
その時、ドアをノックして秋子さんが入ってきた。
「二人とも、もう行かないと間に合わないんじゃないですか?
・・・あら? まだ寝間着なんて着てるんですか」
俺の姿を見てちょっと驚いた様子だ。
「早く着替えて下さいね。
準備した物は下のリビングに置いてありますよ」
「「えっ?」」
俺と名雪の声がハモる。
「秋子さん・・・いつの間に?」
「それは・・・・・企業秘密です☆」
「それじゃ秋子さん、行って来ます」
「お母さんいってきます〜」
それから3分後。
最高記録で着替え&その他を済ませた俺と名雪は、玄関にいた。
「はい。行ってらっしゃい。
あ、それと二人とも・・・」
出ようとした俺達は止まって振り返る。
「旅行ということで羽目を外すのはちょっと大目に見ますけど・・・
あまりいい加減過ぎるのは駄目ですよ。
私はまだおばあちゃんなんて呼ばれたくはないですからね」
瞬時に名雪が真っ赤になる。
「お・・お母さん・・・・そそそそんな事しない・・・もん・・・」
名雪・・・まともに受けてどうする。
しかも上目遣いでこっちを見るんじゃない。
「今回は大人数での旅行ですよ、秋子さん」
さすがに最近は秋子さんの鋭いツッコミにも少しは慣れてきた。
この程度では動じない。
「今回は、大丈夫そうね」
“今回は”の部分を突いてくるあたりは秋子さんだ。
名雪にすら話してはいないが、次は二人だけで旅行を、と計画しているのも完全に
見抜かれているらしい。
(おそらく、この人には一生頭が上がんないだろうなぁ)
「お、お母さん、もう、学校が集合時間だから、いってきますね」
最初の一言以来動揺しまくりの名雪に引っ張られて、水瀬家を後にした。
これからの騒動を考えれば、この名雪の様子はすごく微笑ましいものだった、と後になって思った。
〜〜第1話 終〜〜
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