Kanon

Short Story#1  雪の辿り着く場所

 注: これは、名雪とのED後まもなくという設定です。
    ただ、何故か全キャラとの面識を主人公は持っています(笑)
    そこらへんの細かいツッコミは勘弁して下さい。(^^;


   第2話 白銀はすべるよ!?


 「遅刻・・・ね」

 何故か嬉しそうに香里が微笑んでいるのがちょっと恐い。

 後でなにかあるに違いない。

 無理難題を押しつけられなければいいんだけどなぁ・・・

 「あははーっ、ようやく全員が集まりましたね。

  これで無事に出発できますね」

 佐祐理さんが両手をぽんと合わせる。

 良かった・・・佐祐理さんは怒ってないみたいだ。

 ジャキッ

 しかし、喜んだのもつかの間、背後から伸びてきた手が喉元に刀を近づけた。

 「なっ、ま、舞か!?」

 「・・・・・佐祐理に心配させるな」

 じりじりと刃を近づけてくる。

 「事故・・・誘拐・・・相当心配していた」

 そっか、やっぱり心配していたんだ。

 佐祐理さんの親父さんの紹介してくれた運転手の人と話し込んでいる佐祐理さんを見ながら、

ごめんなさいと心の中で手を合わせる。

 「ごめんな。・・・でも、舞は心配してくれなかったのか?」

 そこに悪戯心で突っ込んでみた。

 「・・・・・・・」

 「心配じゃなかった?」

 「・・・・・・・」

 ばしばしばしばし

 すぅっ、と刃が引っ込んだと思った次の瞬間、後頭部にチョップの連打が叩きつけられた。

 「痛い痛い痛いっ!」

 避けて舞の正面に立とうとするが、何故か舞はそのたびに後ろに回り込んでくる。

 ひょっとして・・・顔を見られたくないのかな?

 なおも舞と良く判らない移動合戦を繰り返しているうちに、佐祐理さんの声が聞こえてきた。

 「さぁ〜、みなさん揃ったことですし、出発しま〜す。

  荷物を持って乗り込んで下さ〜い!」

 ぴたっ、と俺は舞の服の襟首を掴んで、舞は高々と上げたチョップを振り下ろそうと

している格好で止まった。

 「・・・・・・・」

 「・・・・・・・」

 くるっ

 一瞬だけ目が合ったかと思った次の瞬間には、舞はもう背を向けていた。

 相変わらず良く判らないけど・・・やっぱり心配してくれてたんだろうな。

 ぱたぱた・・・

 「さて、乗り込むか・・・」

 ぱたぱた・・・

 さっきから視界の脇で白い羽が揺れているが、気のせいだろう。

 バスの横にある荷物用のスペースに、名雪と俺の荷物(もちろん別々の鞄だ)を積み込む。

 名雪が重そうに持ち上げようとしていたんで手伝ったけど、良くこんなの持って走れるものだと

妙な感心をする。

 「ありがと☆」

 「しかし・・・なんでおまえの荷物はこんなに重いんだ?」

 ぱたぱた・・・

 「女の子だからね。

  いろいろとあるんだよ」

 名雪が少し微笑む。

 ぱたぱた・・・

 「俺達が最後みたいだな。ここでも遅れたりなんかしたらまた香里にいじめられからな。

  ・・・急がないと」

 「・・・もうそのくらいにしてあげたら?

  可哀想だよ〜」

 名雪が苦笑しながら俺の横を見る。

 「・・・おぉっ、あゆじゃないか。

  今来たのか? 遅刻だぞ」

 「うぐぅ〜・・・・・・・・さいしょからいたもん!」

 涙目になりながら首を振っている。

 そのたびに、背中の鞄の羽がぱたぱたと揺れている。

 「いや、あまりにちっちゃくて気が付かなかっぐあっ・・・」

 最後まで言い終わらないうちに臑を蹴られた。

 「うぐぅ〜・・・意地悪っ!」

 ぷんすかとあゆはそのままバスに乗り込んでいってしまった。

 「今のは言い過ぎだよ〜」

 「そんなこと言って女の子いじめる人は嫌いです」

 名雪の声と同時に、バスの窓から栞が顔を出して非難してきた。

 ・・・ちょっと言い過ぎたか、やっぱり。

 まぁ、あとでちょっと謝っておくか。


 さて、バスに乗ろうかと思って初めて入り口を見て疑問に思った。
 
 なにかてっきり普通のマイクロバスかと思ったら、コレって・・・

 どう見てもレンタルとは思えないような豪華な内装、しかもきらきら灯りがシャンデリア風に

光ってるし、やたらと大きさの割に座席数が少ないし、って何かこれ妙に豪華なバスなんですけど・・・佐祐理さん。

 運転手さんも黒スーツにサングラス・・・ちょっと、いや、かなり恐い。

 そして、搭乗口の扉に貼られたガムテープが妖しさをさらに増大させていた。

 さすがに気になったので、ちょっと剥がしてみようか・・・

 ベリ、と1センチも進まないうちに、いつの間にか側に来ていた佐祐理さんの手が俺の手の上に重なった。

 「あ、それは駄目です〜

  見なかったことにして下さい」

 にっこり微笑みながら手を重ねる佐祐理さんに反論できる勇気はなかった。

 「ほら、はやくはやく」

 後ろから名雪にも押されてずるずると中に入ってやたらと柔らかいシートに名雪と並んで腰掛けた。

 「さぁ、それではスキー場に出発ですね」

 バスガイドよろしく、前に立った佐祐理さんがぱん、と手を打つと同時にドアが閉まり、バスは動き出した。
 
 スキー場へ向けて・・・


 第2話 終わり


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