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「古典派からのメッセージ・2001年〜2002年編」目次へ戻る
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不良債権は原因でなく結果

 

 不良債権処理が構造改革の大事な課題であり、景気回復に資するという議論は正しいのだろうか。不良債権を処理し、非効率企業を退出させ、資源配分を適正化すれば、「創造的破壊」が沸き起こって起業が相次ぎ、景気は良くなる、というのは正しい現実認識だろうか。小生には、どうしてもこの議論は、原因と結果が逆に理解されているとしか思えない。需要が弱く期待収益率が低いデフレ下では、そもそも新事業は起こりにくいし、たとえ希少な投資家、企業家が現れても、「創造的破壊」ではなく「無益な破壊」を招きやすい。不良債権は原因ではなく、結果なのである。不況とデフレで企業が体力を消耗し、担保価値が目減りした結果、銀行の不良債権が増加したのである。

 何はともあれ、デフレを止めて景気を回復させるべきである。そのためには、利益誘導型の財政支出を行うのではなく、また、意味のない金融緩和を唱えるのでもなく、土地と株式にかかっている過重な税を大胆に減税すること、日本人があきらめかかっている住宅の広さを、例えば「四倍にする」といった目標を掲げ、そのための思い切った減税と規制緩和を実施することが適当と判断する。

平成一四(二〇〇二)年一一月一〇日