表紙へ戻る

近況メモ(平成21[2009]年7月〜8月)

 

平成21(2009)年〜「起き出でて見つけし朝顔」から「歴史的な選挙の日」へ

 

7月6日(月)曇り時々雨

  東京は梅雨らしい天気が続きます。洗濯物がなかなか乾かないと妻が愚痴っております。ただし、梅雨にふさわしい紫陽花(あじさい)の花はもう散ってしまい、街や里で見かけるのは百合や朝顔といった夏の花です。右写真も、散歩の途中で見つけた朝顔です。幕末の越前の国学者・歌人、橘曙覧(たちばなの・あけみ)にこんな歌があります。


     楽しみは 朝起き出でて 昨日(きのふ)まで 無かりし花の 咲ける見る時


早朝に朝顔の花を見つけたときにふさわしい清々しい情感が平明な言葉で綴られていると思います。橘曙覧も本居宣長の孫弟子に当たる人ですが、江戸期の国学者には、小生の知らない才人たちがまだ数多く居るようです。


 

7月25日(土)曇りのち晴れ

 前回の朝顔に続き、最近撮った写真の中から、夏らしい水桶や百合を載せてみました。東京は湿度の高い日が続いています。背広とネクタイを着用して外出した際など、耐え難い思いをしますね。

 さて、衆議院選挙が8月30日に行われることになりました。政権交代をテーマに立てた民主党が優位に選挙戦を進めそうです。日本も政権交代が常態化すれば、与党が政権にしがみつくことはなくなるでしょうし、野党も批判の為の批判では済まなくなりますから、早く政権交代が常態化すればいいと思います。その際、必ずしも英米型の二大政党になる必要はないと思います。日本の場合、国民の利害なり思想なりがきれいに二つに分かれているわけではないのですから、合従連衡でその都度いろいろな連立政権ができた方が自然ではないでしょうか。もっとも、そうなると、一貫した政策を強力に推し進める政府の効率性は落ちるかも知れません。金融危機後の資本主義のあり方が問われている今は、日本にとっては日本的価値観を世界に宣揚するチャンスになり得るはずです。政権交代の常態化の中で、一貫した世界戦略に基づいた政治指導力をどう確保するかが国民の課題でしょう。


 

8月1日(土)曇り

 今週木曜日、汗を拭き吹き都心を歩いていると、威勢のいいミンミンゼミの鳴き声がすぐ近くから聞こえます。鳴き声のする木を探してみると、小生の背の高さより低い位置で、必死にしっぽを振り声を振り絞って鳴いているセミを見つけました(右写真)。こんなに至近距離で鳴くセミを見かけるのは珍しいことです。

 さて、本日の「日本経済新聞」では、米国商務省が発表した4〜6月期の実質GDP速報値が前期と比べて年率換算で1.0%減少し、4四半期連続のマイナス成長だが、数値は改善したことが報じられました。しかし、政府支出増が成長率を1.2ポイント押し上げており、GDPの7割を占める個人消費は1.2%減で、2四半期ぶりに減少に転じたとのことですから、まだ本格的回復とは到底言えません。。また、日本の大手銀行6グループの4〜6月期決算が出そろい、みずほ以外の5グループは最終利益が黒字に転じたことが報じられていますが、こちらも本格回復とは言えなさそうです。ところで、小生が気になったのは、その関連記事として、景気回復と共に、各行が信用リスクヘッジのために取り組んだクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の評価損が膨らんだという記事です。CDSは真っ当なヘッジ取引として組んでいる限りは、それに評価損が生じるのと同時に、ヘッジ対象資産たる貸出等の信用リスク軽減に伴う貸倒引当の減少を伴うはずです。従って損益はおおむね相殺されるはずです(尤も時間差で4−6月期にはCDSの評価損が先に出ることはあり得ますが)。デリバティブ側だけの損失発生を報道すれば、あたかも銀行が博打を張って失敗したかのような印象を与えます。ヘッジ対象の資産の価値増加があったのかどうか、きちんと調べた上で報道すべきでしょう。


 

8月8日(土)曇り

 昨日は旧暦で「立秋」。夏の甲子園も今日から始まり、お盆の帰省ラッシュもいよいよ本番です。広島・長崎へ原爆を投下された日も過ぎ、来る8月15日は終戦記念日です。この時期は濃厚な季節感が胸に迫ってきます。左写真は、家内が学校の校庭で拾ってきたセミの抜け殻です。学校で児童たちが木の下で抜け殻をたくさん拾っていたのをプレゼントされたそうです。

 さて、このところ、旧交を温める機会がいくつかありました。まず、先週、大学の先輩でもあり銀行のOBでもあるN氏を訪ねました。N氏は今のオーナー系メーカーの管理部門の責任者を10年務めておられます。この方は小さい頃から金剛流の能を習っておられ、今でも金剛流の素人の催し物では地謡を謡ったり仕舞や舞囃子を舞われています。我が府中市謡曲連盟は文化祭で各流の出し物を出しますが、そこで金剛流の指導をされているH女史のことはN氏もよくご存じでした。ビジネスの話はさておき、能の話題で盛り上がりました。


 先週はもう一件、銀行の同期で今は転職して各方面で活躍している連中と飲み会がありました。今週は、高校と大学を共にした某銀行勤務の友人や、大学時代同じクラブ活動をしていた仲間と酒を酌み交わす機会がありました。これらの連中は、小生と同世代の友人たちですから、皆、30年近く職業人人生を経ています。従って、職種もポストも様々ですし、いくつか仕事を替わっている者もいます。また家庭事情も、既に孫が居る者からまだ3歳の娘が居る者(!)まで様々です。しかし、こうして再会して酒を酌み交わせる連中には共通点があります。それは、それぞれの仕事場で、たとえ苦境にあっても環境に不満を言わず、自らの個性を信じそれを拠り所にして明るく働いていることです。小生も彼らからおおいに元気をもらった次第です。

 

8月16日(日)晴れ

 残暑の厳しい日が続きますが、いかがお過ごしですか。先週の日曜日に、妻の発案で、高尾山へ家族三人で登りました(下の写真をご覧下さい)。我が家は中央線沿線ですから、高尾山は比較的手頃に行けるのですが、小生は初めての参拝になります(^^; 暑い日でしたが、久々に山歩きを楽しみました。山を歩くと、地上では見かけないような種類の蝶々を見かけたり、大きなきのこに遭遇したり、鳥のさえずりが森に響いたりと、普段使わない感性が研ぎ澄まされ、自然との一体感を味わえます。

 高尾山頂の薬王院は天平16(744)年に、聖武天皇の勅令により東国鎮守の祈願寺として、行基により開山されました。薬王院の名は創建当初、薬師如来をご本尊とした事に由来します。現在は真言宗智山派で、成田山新勝寺、川崎大師平間寺と並び三大本山です。ご本尊は飯縄大権現。飯縄大権現は、不動明王の仮の姿として衆生を救済する仏神。不動明王のほか、迦楼羅天、荼吉尼天、歓喜天、宇賀神、弁財天の五相合体をした姿をしています。戦国期、飯縄大権現は戦国武将の守護神として崇敬され、上杉謙信や武田信玄の兜表にも奉られました。JR高尾駅のホームには巨大な天狗の顔が置いてありますが、高尾山の天狗は飯縄大権現の眷属として、衆生救済の利益を施す力を持つとされ、多くの天狗伝説を生みました。高尾山は、飯縄信仰と共に天狗信仰の霊山でもあるのですね。古来、高尾山は修験道のお山です。修験道を修める人は山に臥し野に臥しながら修行することから「山伏」と呼ばれるようになりました。山伏が深山幽谷に籠もって難行苦行を重ね、やがて高尾山の霊気と融合して、呪力、験力を体得して大先達となったことから、山伏の姿が天狗と同一視されることも多いそうです。小生の習った謡曲「鞍馬天狗」では、鞍馬山の大天狗が、牛若丸の修行のために、日本全国の天狗たちを招集しますが、その中に「飯縄の三郎」というのが出てきます。これがまさに高尾山の天狗だったのですね。


    
行きはリフトに乗って         高尾山頂から東京都内方面を臨む           帰りは吊り橋を渡って

 

8月23日(日)晴れ時々曇り

 21日(金)に、渋谷のセルリアンタワーの能楽堂で催された「第二回 和の会〜NOH AGE〜」に出かけました(右写真はそのチラシ)。この会は、宝生流の若い宗家である宝生和英(かずふさ)さんが主宰して昨年始めた能楽公演会です。宝生和英さんは、昭和60(1985)年生まれの23歳、昨年、東京藝大邦楽科を卒業後、宝生流の宗家を継いだばかりです。「和の会」は、シテ方だけでなく、ワキ方も地謡も囃子方も、殆ど若手能楽師が務めます。「今という時を敏感に感じて生きている若者だからこそできる舞台が確かにあるのです」(この日の公演のチラシより)という心意気には好感が持てます。この日は、仕舞三番と能「巻絹」が演じられました。仕舞の最初は、小生の金沢時代から縁のある藪克徳さんが「氷室」を舞われました。この舞は、あまり「豪快さ」を強調しようとすると粗雑になりかねませんが、藪師は堅実に柔らかく型の美しさも保ちつつ、氷室の神の神威を示す力強い舞姿を見せてくれました。
 能「巻絹」のシテをされた澤田宏司さんも神が憑いた巫女になりきっていました。小生はその面からも装束からも、小生自身の内にも確かに存在する古代から連綿と流れる日本人の美意識を強く感じ、不思議な感動を覚えました。「第二回 和の会」は若手ばかりの会ですから、もちろん個々の技術には不十分な所もありますし、観客に与える感動の深さといった点では、まだまだ物足りません。しかし、世阿弥が言うところの「時分の花(=若い頃の特有の美しさ)」が抗しがたい魅力を発散することも確かなのです。小生は、このような若手の会も大好きです。この日は、以前から「西洋古典派音楽マイナー作曲家」仲間である五月女実さんも来ておられました。元々西行法師を敬愛する五月女さん、このところ西行を機縁に、能楽鑑賞にも嵌っておられます。小生としては嬉しい限りです。


 

8月30日(日)曇り時々雨

 空にはうろこ雲、朝夕は空気がひんやりする日もあり、夜は庭から秋の虫も聞こえ、秋の気配が漂うようになりました。左のような芙蓉の花が見られるのも9月初めまででしょうか。旧暦では、きょうは文月十一日、あさっては「二百十日」、立春から210日目に当たり、台風などで悪天候になりやすい日とされ、稲の開花期に当たるため農事では重要な日です。その通り、台風11号が明日あたり関東地方にやって来そうです。今朝はもう風が吹き雨も降り始めて台風の予兆を感じさせます。そんな中、朝食後、一家三人で衆議院議員選挙の投票に行ってきました。今回の選挙は事前の予想では民主党の圧勝となっていますが、どうなりますか。
 夏の高校野球で、我が愛知県代表の中京大中京高校が43年ぶりに優勝しました。43年前と言えば、小生が10歳の頃。確かにあの頃、中京大中京の前身の中京商業は強かったです。春夏連続優勝とか、夏3年連続優勝とかを達成していました。小生たち小学生が野球に夢中になったのも、地元の中京商業が全国制覇していた影響が大きかったと思います。


 

表紙へ戻る