『さくらプラン』総集編


あにの巻
 4月、就職(教職?)浪人中だった私に一報が入る。 「富岡小学校でさくらプランをやってください」と。 元々高校志望だったが、「何事も経験」ということで勤務させていただくことにした。 とはいえ、小学校を卒業したのは10年以上も前のこと。 全く未知の領域に飛び込むようなもの。 翌日、大きな不安を抱えながら教室へ。 1年生に向かって「一緒に勉強して一緒に遊びましょう。」とあいさつ。 4組である男の子が歓声を上げた。 そのときはまさかこのクラスに配属になり、 その子の面倒を見ることになるとは思いもしなかった。
 教室を出歩く、大声を上げる、すぐケンカを始める…。 入学したての1年生の面倒を見るのは大変である。 それでも1ヶ月ほどで1年生も私自身も慣れた。
 1年生は毎日が驚きと笑いの連続。 HPのいろいろなネタを提供してもらった。 彼らにとって何気ない行動も、大人の私たちが見るととても「おもしろい」ものばかりである。 彼らのそんな行動は、毎日見ていると実感がわかないが、 日毎に成長しているということの証明であろう。
 6月、教員採用試験前ということで長期の休みをもらった(勤務日調整もあるのだが)。 とにかく勉強して早く高校の先生になろうという気持ちでいっぱいだった。 7月1日に授業参観があるということで、出勤した。 勤務の関係で3時間目からということで2時間目の休み時間に教室へ行った。 クラスの生徒が我先にと私のところへやってきて、もみくちゃにされた。 たかが2週間が彼らにとってはとても長かったのか。とてもうれしかった。
 私自身の仕事は最初はわからない子や遅れている子のところにいって援助するものであったが、 2学期になると特定の男の子・女の子につきっきりになることが多くなった。 そして、私の1日がその子(特に男の子)を中心に回るようになった。 別教室で勉強したり遊んだり…。その日の彼の機嫌が私の気持ちを左右した。
 10月、東京農大二高から連絡があった。 来年度からの非常勤のお話である。電話をいただいたとき正直な話、私は迷った。 できれば来年もさくらプランがやりたい、 いや、来年のこのクラスがみたいそういう気持ちがあった。 しかし、私の希望はあくまでも高校。非常勤の話を受けさせていただくことにした。 1年生との残りの時間を有意義に過ごそうと思った。
 12月になり、男の子の面倒を見る時間が増えた。 高校の非常勤の正式な決定はまだだったが、 その男の子には「先生は来年はもういないんだからね」と話した。 「行かないで」と言われ心が痛んだ。
 短い3学期はあっという間に過ぎ去った。 最後の勤務日にお別れ会を開いてもらいクラスのみんなからお手紙をもらった。 「遠足の日に一緒にお弁当を食べてくれてありがとう」「肩車をしてくれてありがとう」 「高校に行っても忘れないでください」みんなの気持ちがとてもうれしかった。 お礼にメッセージカードを送った。
 4月。新しい生活が始まった。 高校での教師生活はとまどいの連続だが、充実した日々が送れている。 14日に退任式があり富岡小学校へ行った。恒例の花束贈呈で例の男の子と女の子がでてきた。 心配だったがとてもうれしかった。 教室(2年1組)へ呼ばれ行くと、またもみくちゃにされた。 一回り大きくなった彼らを見て安心した。
 私自身、小学校の時の担任の先生の印象は年を経るにつれて薄れている。 それは彼らにとっても同じかもしれない。 しかし、私にとっての「教育の原点」である彼らのことは忘れてはいけない、 いや、忘れられない大切な思い出である。

おとうとの巻

 群馬県単独事業として99年度から始まった小学1年生の多人数学級に非常勤講師を配置する 「さくらプラン」。たまたま私が群馬県人であったこと、中学校の免許を持っていたこと、 近くの富岡小学校が対象校になった(しかも急に)ことなどから、お話をいただいたわけですが、 教職浪人がほぼ決まりかけていた私にとっては、わいて出た一筋の光でありました。
 とはいえ、期待よりも不安の方が大きく、どうなることかと思いながら、入学式へ。 そしてそこで出会った、富岡小学校1年生143人、とくに1組の36人は、 私にとって忘れられないくらいの「思い出」を作ってくれました。 遠足と旅行という大きなイベントは勤務日の関係で行くことはできなかったのですが、 必殺代打人としてすべてのクラスの子と接することができ(さくらプラン4人中私だけ?)、 運動会やそれ以外の普通の日の様々な「事件」などは楽しいことこの上ありませんでした。 (詳しくはさくらにっき本編参照)。 彼らにとっても、私を含めたさくらプランとの思い出は、 忘れられないものになっているとよいのですが……。
 1年間1年生を見て、「小学1年生というのはまだまだ甘えたい年頃なのだな」と思いました。 私自身、右も左も分からないまま教師生活に突入し、子どもとまともに接することなどできないと 思っていたのですが、向こうから寄ってきてくれたおかげで、自然と慣れることができました。 そして1年間ずっと寄ってきてくれたので、子どもとのコミュニケーションの楽しさ・大切さが、 とくに分かったような気もしています。
 そんな彼らももう2年生です。もうあまり甘えてばかりいられなくなるわけですが、1年間を通じて、 1年生は大きく成長したことは確かです。きっと大丈夫でしょう。 私自身も、いろいろな経験を積むことができ、少しは成長できたかな。
 今年度も、縁あって富岡市立一ノ宮小学校でやはり「さくらプラン」として、1年生76人、 とくに2組の38人とともに1年間の「楽しい日々」を過ごすことになりました。 再び1年生の成長を見ることができ、またいろいろな思い出ができることをうれしく思い、 またそれを期待しています。富岡小学校で積んだ1年間の経験を、うまく生かせればと思っています。
 ということで、「さくらにっき」続編(第2部)、「さくらにっきRevenge」が…… 始まる……かな?

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