「より良い医療と地域福祉を求めて」(講演要旨)
日本難病・疾病団体協議会代表 伊藤たてお氏
■患者数と予算の変遷
昭和49年度 17500名だった患者が平成18年度には550000名に増加している。
疾患数は昭和47年度4疾患だったものが平成15年度には121疾患、平成19年度には123疾患、平成20年度には130疾患に増加している。
? 特定疾患治療研究事業予算は昭和47年度、3億1千万円、、平成18年度239億4千百万円、途中、重症度基準の導入や所得による負担制度の導入があったが、平成20年度予算では36億円の増で280億円、平成21年度予算の概算要求では60%増の451億円が計上されているが、これらの大部分は自治体超過負担の解消のためであって、患者の負担が減少されるものにつながっていない。このようななかで、難病を取り巻く状況は大きく変化してきた。
■患者を取り巻く環境の変化
難病対策開始から35年が経過し、医学・医療がおおきく進歩・発展をしてきた。また診断・治療の大幅な進歩があり、早期発見と生存率がおおきく向上した。さらに社会全体の高齢化などによって患者数が増加、難病の多様化などもあり、対象疾患拡大の要望が大きくなってきている。とりわけ社会の難病に対する認識の変化や、福祉の拡大などによる取り巻く環境の変化が大きいのだが、変わらないのは医療や保険制度ではむしろ患者負担が大きく増加している。
■伊藤私案と諸外国の医療費の現状
そこで、私伊藤たておの案として医療費において、生涯にわたる医療費の負担の軽減は保険医療費の改善でEU諸国並みにし、高額医療費制度の中に長期療養給付制度を盛り込むことを提案している。
ちなみにOECD諸国の医療費負担を見てみると、
?ポルトガルとベルギーでは 通・入院、薬に負担なし
カナダ・オーストリアでは通・入院負担なし、一部薬負担あり。
イギリスでは
通・入・薬に負担なしで児童妊婦高齢者低所得者は負担免除。
デンマークでは通・入院負担なし、薬は3~5割。労働者は負担なし。
ギリシャは通・入院負担なし、薬は2~5割。
スペインは通・入院負担なし、薬4割、慢性と指定疾患は1割。年金生活者は免除
イタリアは通・入院負担なし、保険料の一部負担あり。薬は一部負担で障害者や低 所得者は保険料も負担なし。
オランダは通院無料、長期入院は一部負担のみ。薬負担なし。
ドイツでは通院無料、入院14日まで薬も定額負担、低所得は保険料が免除される
アイルランドでは通院無料、入院は定額負担、労働者は保険料負担が免除。
フランスでは通院の75%が償還される。入院は30日以内なら20%プラスとなる。
薬代は長期疾患や30指定疾病は負担なし。
アメリカでは65歳以上がメディケア、低所得者はメディケイド。
(法研 欧米諸国の医療保障)
などとなっている。
■私たちのスローガン
このような中で、患者や当事者の生き方や考え方が重要になってくる。そのためには、患者自身が自分の病気を正しく知り、病気に負けないためにも仲間を持ち、患者会などを通して社会的な関わりを持つ必要がある。
さらには、自治体の理解と、協働関係を構築すること。自治体は患者会とその事業を地域の社会資源として育成すること、などが大切になってくる。
そして難病患者や障害者・高齢者が安心して暮らせる豊かな社会の実現をめざさなければならない。