能美市立博物館

     所在地     石川県能美市倉重戌80
     入館料     無料
     休館日     毎週月曜日、年末年始(12/28-1/4)
     開館時間    9:00-17:00(入館は17:30まで)
     交通手段    北陸自動車道 小松ICから車で20分、JR小松駅からバスで40分/JR金沢駅からバスで60分
             加賀産業道路からも近い。駐車場有り。
     TEL     0761-52-8050
     備考      

旧辰口町立博物館は、改装され、更に合併により能美市立博物館になりました。
展示は良くなったと感じるのですが、以前の手作り風の感じはなくなりました。
ちょっと寂しい感じもありますが、博物館として見るなら、新しい方が優れていると思います。一段成長して帰ってきた、そんな心境です。

新しい博物館は改めて紹介の予定です。

--以下は改装前の博物館の紹介です。---------------------------------------------------------------------------------------------

町立の博物館で図書館併設、展示内容は、郷土の歴史、民俗、治水・・・。
よくある地方の博物館なのだが、この辰口は豊かな山林に恵まれ、また県内最大の手取川に接するため、先人が古くから住み着いた場所でもある。この遺跡から発掘された品を中心に、展示品がとても充実している。それも、手作りの展示が多いように思える。そんな、ちょっと素朴な感じのする博物館である。

さて、展示室を順に見てみよう。まずは第一展示室。ここは、縄文から古墳時代にかけての出土品がある。展示室中央には、縄文時代の住居のジオラマがある。竪穴式住居と男女2人で当時の生活が復元されている。そして、この周囲には、出土品が年代順に並べられている。一見、どこにでもありそうな物に思えるが、よく見ると結構面白い品がある。たとえば、石に溝を切ったようなもの。これは、狩猟に使う矢などの曲がりを直すための道具とのこと。狩猟に矢は必須であり、これが曲がっていれば当然命中率も落ちる。そういう意味では必須の道具のように思えるのだが、以外と見かけない。実際にこういう展示品を見ると、他の地方ではどうやっていたのだろうか?といった疑問を感じてしまう。
続いて弥生、そして古墳。須恵器と続き、窯跡の展示もある。そして、寺院跡に関する展示。こうしてみてみると、辰口近辺は古来、文化の中心地ではなかったろうか。現在の辰口は、丘陵地帯と大きな川がある。海が現在より近い時代などは、先住者にとって、食料の面では非常に恵まれていたことだろう。そういったことも深く感じる展示である。

先に進むと、辰口に関係する人々の美術品が展示されている。絵画や焼き物など、優れた品が並ぶ。今回は、展示室の一部が閉鎖されていたのがちょっと残念である。

次は地下に降りる。ここは、階段にもちょっとした展示がある。私がとても気に入ったのは町内の航空写真である。たしか平成元年の撮影と書いてあったように覚えているのだが、ここ10年の間にもずいぶん様変わりしている。先端大学院が出来、1999年には石川動物園も開園した。こういう移り変わりもまた面白い。いずれ新しくされると思うが、そんなときに古い写真と見比べられるとなお良いのでは?
さて、地下展示は、農機具を中心とした道具類、そして昭和初期の民家の台所と今を中心とした復元である。農機具は古い物もある一方、エンジンを使った農機具など、比較的新しい物まで展示されている。新しい、といってもすでに使われなくなった物。これらももう、貴重な品になり始めているのかもしれない。無造作に展示されているだけのようにも思えるのだが、じっと見ていると意外なほど展示品が語りかけてくるようにも思える。展示室には古い農家独特の臭いが残っているのが感じられた。これは決して不快ではない。むしろ、これも展示品からのメッセージかな?と感じてしまう。

最後は、辰口ならでは、と思える用水と治水に関する展示である。辰口を流れる手取川は、県内でもっとも大きな川であり、ここから大きな扇状地を作る。当然、洪水が起きやすい場所でもある。そして、巨大な扇状地で農業用水を得るための大切な取水口ともなる場所である。
まずは手取川の様子を眺めてみよう。入って左に堤防の模型がある。これも手作りのようだが、とても分かりやすい。扇状地固有の霞提が作られているのがよく分かる。合わせて町内の地名が書かれているのだが、”出口”なんて地名もあり、つい考え込んでしまう。こういう展示で見てると”水の出口?”洪水に関係するのかな?なんてつい考えてしまう。この先には、竹かごに石を詰めた蛇篭などの模型もある。単純だが、いざというときには結構威力を発揮したという。
展示室中央には、決壊した堤防の復元工事に関する模型がある。決壊直後に川側で締め切り、そして堤防の復旧を行うのだが、その締め切り直後の模型である。堤防が切れる位だから、深くえぐられていたりして、大変な工事なのだろうな、などとつい思ってしまう。
次に用水。ここには、岩にトンネルを掘って作った初期の用水に関する説明がある。写真で見るだけだが、結構大がかりな工事だったのだろう。是非実物も見に行きたいものだ。用水に関しては、このほかにも現代の用水の工事に関する写真や図面もある。これらも何気ないようでなかなか見られないものだ。

この博物館には、派手さがほとんどない。建物も新しいわけではないし、どこにでもある、”ボタンを押す”電気仕掛けの展示がほとんどない。でも、展示品の一つ一つが実に地元のことを淡々と説明してくれるように思う。そして、なにげないようで、語りかけてくる言葉は実に多い。なんだか、小さな町の博物館の、一番望ましい姿を示しているようにも思える。そして、また訪ねたくなる博物館でもある。

 

最終訪問日 1999年12月5日

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