築基参証 自序

 

自序

 

 仙道の伝授とは、本来厳しいものである。鍾離権(訳者注: 正陽真人と号する。全真教の五祖の一人。八仙の一人に数えられる。)は呂祖(訳者注: 呂厳、字は洞賓、純陽真人と号する。唐代の道士か。全真教の五祖の一人。八仙の一人。)を試すこと十度、伍冲虚(訳者注: 伍守陽[1565~1644]、号は冲虚子、江西の人。龍門派第八代律師。『天仙正理』『仙仏合宗』を著す。清代に入り、柳華陽に継承され伍 柳派となる。)は曹還陽(訳者注: [1562~?]、明代の内丹家。江西の人。伍冲虚に仙道を伝えた。)を切問すること二十回、白玉蟾(訳者注: 葛長庚[1194~1129?]、全真教南宗第五祖)は三代にわたって師の恩に感じ、十年間真馭を待った。もとより脈々と伝授されたこれらす べてを本来一口で語り尽くせるものではないが、だからといってそれが秘密というわけでもない。筆者はこれまであちこち尋ね求め、また長年師匠 について直伝を受けて久しいので、知見も増し、ようやく門径をおおよそ窺うことができるほどまで学ぶことができた。
 本書は、筆者が師に付き従って獲得し、また実行してみたところ効験があった現実の記録である。最初はなにか教わるごとに書き記していたのだ が、月日が流れるうちに、集めてみると一冊になるまでになった。道友は皆これを見て公開するように促したが、依然として筆者は実力がともなっ ていないので、あえて同意しなかった。だがやむなく、友を求めて啼く鳥の声のごとく、これをみなさんの卓説を引き出す呼び水とすることにしよ う。そして、ここに書名を我が師より賜わった。すなわち、『築基参証』である。
 道を目指される皆様が、見かけに惑わされることなく筆者の真意をくみ取っていただけるとするなら、この本の真似ばかりして杖にすがって離れ られなくなるといったこともなく、ともに真理を求め、あるいはまた本書をもって他山の石とする利点がなくもないだろう。

中華民国53年12月26日

許進忠 台湾台北にて記す

 

 

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