Yearly Special 2002
鉄写(テツ)るんです! II(ツー) 〜 キヨスク写真入門(?) 〜

※ 作者より : これは2002年エイプリルフール用の特別企画です。この内容が本気なのか冗談なのかはともかく、画像はすべて「レンズつきフィルム」で撮影していることは申し上げておきます。

「キヨスク写真」ってなに?

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HOT7000系 (京都 2002.3)

キヨスクとは駅構内、おもにホームにある売店 (Kiosk。本来はキオスクだがJR駅の売店としての名称は「清い」にかけてキヨスク) の名称。そこから駅構内で撮る写真を「キヨスク写真」と言ったりする。また構内のはずれなど、駅の近くばかりで撮ることを、例のデパートに引っかけて「マルイ写真」と言うとか言わないとか。

1980年代――ブルトレブームの頃、東京駅や上野駅はカメラを手にした少年たちで賑わっていた。私もその仲間に入っていて、ご多聞にもれずその頃の写真はほとんどが駅撮り、つまりキヨスク写真だらけである。

さて、昨今WWW上の鉄道趣味は花盛りで、撮影地ガイドなども充実しているようだ。しかし、駅での撮影についてはあまり情報が得られない。考えてみれば自然だが、なにも特段に駅撮影を書いたところで意味もなく、雑誌投稿の掲載がほとんど走行写真で占められている現状で、駅撮影に力を入れても仕方のないことであろう。

と言っても、駅で撮られる車両写真の数は決して少なくないし、「走行写真のみ、キヨスク写真など不要!!」という人もいないだろう。ならば、その「キヨスク写真」もきちんと撮れずに鉄道写真云々なぞ、という論理も成り立つというものだ。

そんなわけで、今回はこの「キヨスク写真」について、実際の撮影を通して考えてみようと思う。なお今回の写真もレンズつきフィルムを使用。機材は フジカラー写ルンですシンプルエース (ISO400 27枚 フラッシュつき)。


その前に……

駅での写真撮影は旅客の乗車でないから、本当は駅員の許可を得て、別に入場券を買ってするのが筋だ。現状は黙認ということは頭の隅にでも置いておきたい。

立入禁止場所には入らない。ホームでは白線・黄線から出ない。三脚の脚だけ、というのも本当はダメ。どうしても出なければ撮れない場合は、列車が動いていない、そして後ろから入ってこないことを確認する。後ろに注意するのは、列車に対してだけではない。ほかに写真を撮りたがっている人がいるかもしれない。時期をとらえたらすぐに撮影、そして安全な場所に戻ろう。

けっこうな歳の人でもホームの端で、時に危険と思える撮影光景を見ることがあるが、恥ずべきことだ。駅員などに注意された場合はただちに引き下がる。それよりも注意されないように、そして誤解を与えない行動を取るのが当然。最低限のルールとマナーは守っていただきたいものである。


列車写真撮影の実際

さて、もっとも基本的なアングルについて見てみよう。

写真は京阪神地区の誇り、JR西日本 117系。新快速はもとより、東海道・山陽線の運用からも多くが離脱し、このように原色のままの凝っている車輌はもう数えるほどしかない。

ところでこの3枚の写真は、いずれも同じ場所で同じ車両を撮ったものである。もちろん、単にスペースを埋めるために使っているのではない。これらの違いは何だろうか?

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[いずれも] 117系 (京都 2002.3)

……そう、「目の高さ」が異なっているのだ。

1枚目、すこし不安定に感じないだろうか。ホームに立った場合、床下機器の分だけ下側の領域が多くなるので、見下ろすような感じになっているのだ。こういう写真が意外に多いのだ。白状すれば、私もときたまこれをやってしまうことがあるけれど。

2枚目は上下のバランスがだいぶ良くなった。それでは、この2枚の写真を撮るときの違いは何か?

片ひざをつく。

なんだと思われるかもしれないが、有効の度合にしては簡単すぎるほどで、それにしても意外に使われていない。こうして身体を安定させることで、傾きや手ぶれといった失敗の可能性を確実に低減してくれるのだ。簡単に腰をかがめることをしたくなるが、それでは視覚的にあまり効果がなく、傾きや手ぶれにはかえって悪いので避けたほうがよい。

思うに、身長の低い子供の頃は立って撮っていて (たしかに小学生の頃に撮った写真はこの高さなのである) それでうまくおさまっていたから、そのクセを引きずっているのではないかな。もと鉄道少年のみなさん、あのアングルを思い出して!

3枚目はひざを突いて、さらにもっとかがんで撮った(すこし傾いているのはご愛敬ということで)。線路わきではもっと視点も下がり迫力のある画面が得られるが、駅でこれは少し下すぎる。三脚を立てた場合、足を伸ばさずに使うとこんな形になる。少しは伸ばしたほうがよい。


フラッシュについて

フラッシュを装備したレンズつきフィルムも多い。コンパクトカメラ、ライト級一眼レフではほぼ標準装備だ。屋根に覆われた暗い構内や夜間の撮影時にはありがたい。が、使い方を誤ると効果がないし、列車(特に動いている場合) に対して不用意に炊くのは好ましくないことに気をつけたい。

コンパクトカメラやレンズつきフィルムのフラッシュが届く範囲は、ISO400でおおむね1〜3mくらい。数字で言われてもあまりピンとこないだろうが、隣の線路に停まっている列車までは届かないと考えてさしつかえない。どのくらいまで光が届くか、実際に撮影して実感するのもよいだろう。出来上がったプリントのコントラストが低かったり、暗い部分がざらついているような場合は露光不足だ。なんとか見えているのはプリンターの補正のおかげで、ネガを見れば真っ白である。

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[いずれも] 嵯峨野線113系 (京都 2002.3)

上の写真は、同じ車両を一方は隣、もう一方は乗車するホームで撮ってみたものだ。使用したカメラはISO400でフラッシュは3mまで。明らかに足りない。ホームを移動して、これが最低限といえる。反射が大きいとカメラの調光に誤差が出る場合もあるので、特にステンレス車などを撮影するときは気をつけたい。……といってもコンパクトやレンズつきでは無理な相談なので、できれば昼間、外で……という結論になる。

フィルムの感度を上げることによって調光範囲(フラッシュの届く長さ)は広げることができる。ネガならISO800でも一定の画質を得られるので、場所に応じて使い分けたい。5〜6mまでフラッシュが届くのを売りにするレンズつきフィルムも多いが、大抵それらはISO800〜1600を使っているのが実状だ。

より強力な外付けフラッシュを使えば確かに光量不足は解消する。しかし、それを使うような一眼レフ等では長時間露光に逃げられるし、あまり派手に炊くのは運転士やまわりの人にも迷惑である。結局のところフラッシュのパワーがあっても鉄道写真にはあまり意味がない、といえる。

なお応用例として、「スローシンクロ」というフラッシュ併用の長時間撮影がある。ここでは説明しないが、興味のある方は調べてみるとよいだろう。


駅の風景

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JR京都線207系2000番代 485系<雷鳥>

列車を撮るだけが鉄道写真でない、なんて改めて書く必要もないだろうが、せっかく駅にいるのだから、そこに点在する光景にもぜひ目を向けておこう。ただし、他の乗客にやたらレンズを向けたりすると肖像権などの問題が発生しないとも限らないし、その前にマナーとして控えたい。

各駅停車の発車。たまたま入線していたのはデビューしたての新車であった。「これ(207系)2000番代車。車椅子スペースがあってね」と、すこし誇らしげに車掌氏が教えてくれた。

長距離特急列車<雷鳥>の入線風景。最近では貴重な国鉄色ボンネットの車両。乗車口に並ぶ列の長さで、今も変わらぬ人気が分かる。頭上に巨大な京都駅ビルが覆いかぶさるように建っているのも見える。


……というわけで、いかがだろうか。キヨスク写真もきちんと撮れればモノになるし、「写ルンです」等でも能力を理解して正しく使えば充分に役立つ (言い替えれば、いくら高級な一眼レフでも正しく使えなければ……) ということがお分かりいただけただろうか。準備の都合によりあまり作例がないのはご勘弁願いたいが、あとはご自身で試していただきたい。


余談

前回の問題 (一眼レフ vs. 写ルンです) 左が一眼レフ (Nikon F5, AF ED 80-200mm F2.8D, RVP) 右がレンズつきフィルム (フジカラー写ルンです望遠800) です。……え、あれ問題だったんですか?