小田急ファミリー鉄道展 - 2001.10.7〜8

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「鉄道の日」恒例の「小田急ファミリー鉄道展」が海老名検車区で開催。今年もまた1日目 (7日) の公開をのぞいてみることにしました。新通勤車両3000形のお披露目の日でもありました。

昨年(2000年)の「ファミリー鉄道展」


車両展示

2200形, 3100形 (NSE : 最終運用車3121×11のうちの6両), そして2002年2月にデビューする予定の新型通勤車両3000形を展示。また別の場所にある保存庫では旧3000形 (SE) が公開された。

今回は新3000形の展示が目玉のひとつ。というわけで、車両撮影組の列に並んだ。

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前回まで3100形(NSE)は11両連接のフル編成だったが、今回の展示前に中間の5両を抜いた6両編成となり、残念ながら「もう自走は不可能」 (9000形4連に牽かれての到着、だそうだ)。ヘッドマークは変わらず「さようなら3100形(NSE)」ステッカー、「The Last Running」ロゴも残っている。

今回は廃車以降はじめて車内見学・運転台見学(小学生に限る)も可能になった。結構な人数が並んでいたと記憶している。余談だがイベントにも使われた10000形「イタリアンエクスプレス」はこの日も通常運用だった。


3000形インプレッション - 外観編 -

さて、新通勤車両3000形。NSE - 3100形の形式消滅により空いた3000番代の再利用である。今回登場するのは6両編成で、これまでの伝統にならい車号は3200〜。

この車両はメーカーを出場するまでその外観がほとんど明かされなかった。特徴はいろいろあるが、ひとことで言うと「小田急らしからぬ」物で、EXE以上に反応は分かれるようだ。性能面でも革新的なのだがそれは実際に走らないとわからないもので、ここでは外観を中心に感じたことを書き連ねていこうと思う。


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まず目につくのは、裾絞りのある幅広車体をやめたこと。通勤の混雑が目に見えてきた2600形の導入以来、通勤車も含め幅広車両がつづき、それまで「通勤形」は狭かった国鉄〜JRでも最近では幅広車体を導入しているのに何故? という疑問もある。ただ、最近の1000・2000形は (千代田線乗り入れの関係もあって) それほど広くしているわけでもない。これをやめることで構体の軽量化をはかったという。裾の一番下、ほんの一部が斜めになっているのは、ささやかな抵抗なのだろうか!? (他社の車両と台枠を同じにしたためという話もあるのだが……)

正面は、通勤車両では2200形以来の非貫通型で、地上線専用(箱根登山線乗り入れは可能とのこと)。ただ、正面窓は2枚に分割してあり、なんとなく左端に扉を設置できるようなスタイルである。他車との併結は可能だが、6両編成の小田原方には電気連結器を装備しない。



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車体はステンレス製。JR209系以来多くの社で採用されている、コルゲーションもビードもないフラットな外板である。扉の枠が樋部まで伸びているのは、京王9000系のデザインに通ずるものがある。外板をユニット分割できる、ということなのだろうか?



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客用扉は2000形の流れを汲む1600mm幅(先頭部除く)。2000形では2枚だった扉間の窓は一枚の下落とし窓になった。他社では省略の相次ぐ戸袋窓だが、その関係もあってか辛うじて残った、というか、残さざるを得なかった感じだ。似た大きさの窓が連続する窓配置は、1000形ワイドドア車を連想させる。

エアコンは最近の主流にならい集中式を採用。ユニット自体の重量バランスの関係だろうか、カバーを見ると車体の中央にないのが目につく。


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台車はすっかり定番となったモノリンク式ボルスタレス台車。インバータ装置ははじめて見る形。おや、これまでは黒だった台車以外の床下機器がグレー塗装になっている。


3000形インプレッション - 車内編 -

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客室の一部も開放されている。全体としてはオーソドックスな通勤車両のそれだ。これは貫通路越しに非公開部分を撮影したもの。まだ床には敷紙、座席にはカバーがかかっており、納入直後の新車の雰囲気だ。



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まず目につくのはシート。赤系統から紫へグラデーションがかかっているモケットはこれまでに例を見ない。最近では定番の着座区分明示のバケットタイプで、座りごこちは堅め。2000形3次車と同様に、運転室後ろには車椅子スペースが設置されているが、折り畳み式の座席が設けられているのが異なる。


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座席にかけて見上げると、そこには吊革吊革また吊革……吊りも吊ったりという感じである。扉間の一区画で32本。実際には広告でかなり見えなくなるのだろうが、何もないとうっとうしくもある数だ。車端部優先席付近では握り棒ごと位置が下げられているのは2000形3次車と同じ。

ドアの部分が木目調になっているのも特徴的だ。窓押さえの黒枠が目立つ。ガラスは全面的にUVカットガラスを採用している。


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運転台は貫通型の制約から解放されてぐぐっと中央に寄り、これまでに比べゆとりのある配置。特急車では7000形で採用した(すなわち現有全車)ワンハンドルマスコンを一般車としては初採用。しかし特急車の右手と違い左手操作である。

いろいろ評価も分かれようが、大手私鉄といえども安穏といていられない現在、いろいろな意味で小田急を変える、また「変わる」という姿勢をアピールする車両であるといえよう。3000・3100という車番をあえて上書きすることも、そのあらわれではないかと個人的には思う。

ただ、単独運用なら問題無いが、在来車と併結した場合に生じるであろう「段差」の存在がどうもひっかかる。1000形の開発はデザインの面でも鋼製車との併結を念頭においたとされ、ステンレス車としては異例の張り上げ屋根を採用し、さらにオールダルフィニッシュ(梨地)仕上げ、窓の高さ・ドア枠の形にもこだわって仕上げられた1000形が「日本一美しいステンレスカー」とも評されただけに……。


展示・即売会

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保線関係でもいろいろブースが出ている。今回は電力区で話を聞いてみた。

使い古しの架線が並んでいる。手に取ると、下がきれいな平面になっている。もともと下部が丸かったものが、電車の通過で物理的・電気的にすり減ってゆき、場所にもよるが1年から2年で取り替えるのだそうだ。

小田急線で主に採用されているのはもっとも一般的なシンプルカテナリ方式と、それを2本束ねにしたツインカテナリ方式 (小田原線 : 新宿〜相武台前間)。2本にすれば架線の寿命も伸びる (2倍ではないそうだが) が、一方パンタグラフへの負担は大きくなってしまい、そのあたりのバランスは微妙なところだという。

「それじゃ記念に……」と1本買ってみたら、それをつり下げるハンガー (左でトロリ線をはさんでいるもの) までついてきた(笑)。


その他の展示

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最近声高に叫ばれる「環境への取り組み」。この点のアピールも忘れていない。声高にチラシを配っていたのは、つい先日「高架訴訟」の判決が出たばかりの微妙な時期だからなのだろうか……!?

3000形の省エネ性能を強調する展示、再開発がはじまっている海老名駅の環境対策などの展示があり、「きしみ音を低減させる」防音車輪を、これまでの一体車輪と「叩き比べる」というコーナーもあった。明らかに「響き」が違っていた。


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[左] 毎年グループのバス会社が即売会に参加しているが、今年は神奈中バス (神奈川中央交通) の「本物」がやってきた。「スヌーピーバス」、神奈中独自の下降式ステップの前扉が見える。

[右] 保線車両の実演展示。今回はマルタイ、削正車、陸軌両用車。削正車、マルタイについては 昨年の実演 をご覧ください。