さよなら向ヶ丘モノレール

飛ばない飛行機

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指定の時間が近づいた。遊園を出て駅に並ぶ。

人数は一回15分で30〜40人くらいで、これなら撮影・見学も各々ゆとりをもって行える。整理券の配付が早々に終わるのが難点だが、安全上もこのくらいがベストだろう。

車両はホームに据えつけられている。廃止の経緯が経緯だけに、走行は不可能。下り方には特製のマークが付けられていた。

コルゲートのついた銀色の車体にオレンジ・白のロマンスカー塗色は、SE車を想起させる。そう、これは小田急で最後までロマンスカー塗色を守った車両だった。

溶接のスポットが並ぶ車体は軽合金製。航空機の技術を盛り込んで制作された車両である。この車体は日本ロッキードでの研究・開発目的で作られたいわば試作車。アルウェグに標準の座を奪われたためなのか、実用化はわずか2例に留まった。


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外吊り戸のドアを中に入ると、一方向に向いたシートが並んでいる。紫の柄模様になっているのは、最近更新されたものか。ホームは向ヶ丘遊園・正門駅ともに同じ側にあるので、扉は片側しか開かない。

運転席は客室の前に突き出した格好で、中央に位置する。運転台と言うより、操縦席……その形態から呼ばれた「コクピット」の趣だ。だが覗いてみると、並んでいるのはマスコンにブレーキハンドルと、見慣れた電車のレイアウトだ。

係員に話を伺ったところ、運転は喜多見電車区の担当、モノレールを運転できる選抜グループがその任にあたっていたという。


想像してたより未来は……

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ホーム壁面にはこれまでの写真が飾られ、並んでロッキード社のカタログ的資料も掲示された。なんだか超未来的な都市交通の姿も見える。右側通行になっているのはご愛敬としても、40年前の21世紀交通展望像が垣間見えて興味深い。私も子供のころ、鉄道の未来図を図鑑などでみたものだが、こうして21世紀が来てみると、未来はかなりにおいて現実の延長にすぎない、ということがわかる。

正門駅は検修庫も兼ねている。検査時は車体も下に降ろしていたそうだ。二度と走ることのないこの車両だが、今後の処遇についてはっきりとした話は聞けなかった。あとでもれ聞くところでは、しばらく後に解体されたようだ。部品はファミリー鉄道展2001の即売会に回った。


私の手元に、モノレール現役時代の写真は一枚もない。乗ったのも一回、片道だけで実は日付も不明。最近に及んでもNSE他鉄道線の方に気を取られて、その「ロマンスカー色」がなくなっても、そのうち撮れるだろうとみていたのが甘かった。

小田急モノレールの姿は、「未来の夢」を描いたのだった。で、その描いた未来に到達してしまってちょうど役目も終わった、というふうに捉えることもできるのではないだろうか。


加筆修正: 2002年1月

参考: