前立腺ガン検査


(近隣県の新聞記事より抜粋・要約)  2011/10/3

− 前立腺がん 放射線治療 組織内照射療法 −

 男性特有のがん・前立腺がん。高齢になると加速度的に患者が増え、年間の死亡者は約1万人に上る。一方で、比較的進行が遅く、早期に発見できれば根治も期待できる。初回は診療の概略や近年進歩の著しい放射線治療について紹介する。

 がん細胞が前立腺内にとどまっている場合の放射線治療は、根治を目指す有効な手段として注目されている。前立腺を摘出する切除手術とほぼ同等の結果が期待できる上、予後の経過をみたときに排尿障害や男性にはナーバスな問題となる性機能(勃起)障害などの副作用が起きにくいのが大きなメリットだ。
 治療は体の外から病巣に放射線を当てる外照射療法と、放射線を発する線源を病巣に挿入する内照射療法(小線源療法)に大別され、後者はさらに放射線の強弱などによって2種類に分かれる。
 微弱な放射線源を体内に永久に埋め込むLDR(低線量率組織内照射療法)と、強力な線源を一時的に留置するHDR(高線量率組織内照射療法)で、ここ数年、目覚ましい進歩を遂げている。
競合から協調へを合言葉に2006年から、LDRを得意とする大学病院とHDRを得意とする医大病院ですみ分けを行い、県内連携を深めている。

<低リスク群にLDR>
 どんな治療なのか。・・・1年がかりで死滅
 LDRは1990年ごろから米国で普及、国内では2003年に認可され、主に早期がんの低リスク群の患者を対象に急速に普及した。60〜70代を中心に毎年50人前後が治療を受けている。
 最新のコンピューター技術を駆使した手術はわずか1〜2時間。下半身に麻酔をかけ、あおむけになった患者の会陰部(性器と肛門の間)から特殊な針を刺入し、その針を通して低線量率線源(ヨード125)を密閉した微細なカプセル(直径0・8ミリ、長さ4・5ミリ)を50〜100個程度埋め込めば終わる。
 カプセルからは常時、微弱な放射線が放たれ、約1年がかりで周囲のがん細胞をじわりじわり死滅させていく。カプセルは前立腺内に永久に残るが、強度は60日ほどで半減し、1年もたつと消滅する。
 治療は保険が適用され、患者の負担は約30万円。前立腺を摘出する開腹手術に比べて体への負担が軽く、入院期間も約2週間かかっていたのが4泊5日で済む。外照射療法と比較しても周辺の正常な臓器への影響が少なく、退院後に長期的な通院治療の必要もない。
最先端の医療を担う自負と責任の重さをかみしめながら放射線治療のみならず、遺伝子治療の研究やロボット技術の導入などの新たな課題に意欲的に取り組んでいる。

<中・高リスク群はHDR>
HDRのイメージ・・・入院は2泊3日 
 がん細胞を殺すのに必要な線量を100とすると、LDRが1年かけてゆっくりと100を照射するのに対し、HDRでは短時間で済ませる。両者の違いは合計線量の多い少ないではなく、放射線を当てる時間というわけだ。
泌尿器科として国内で初めて同療法を導入して以降、トップ集団を走り続けている。  治療原理や針の刺入手法など手術の流れはLDRと大差ないが、こちらはがんが進行した中・高リスク群の患者に適応される。高線量率線源(イリジウム192)を使用、その威力はLDRの4500倍にもなる。
 イリジウム線源を通すために一時的に刺入する針は平均13本。前立腺に刺して1回約15分で1日に2回、午前と午後に分けて集中的に放射線を照射し、夕方には針を取り出す。
 入院は2泊3日。治療中は針が刺さったままで自由に身動きできないが、痛みは少ない。LDRと同じく治療には保険が適用され、3割負担で約15万円。
 原則的に外照射療法を併用、13回程度通院するため全治療は3週間ほどになる。また、前立腺肥大を合併している場合はホルモン療法で体積を小さくしてから実施する。
 欧米では切除手術よりも放射線治療が主流。再発率も低く、何より施術後のQOL(生活の質)が高い。



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