ひのでやエコライフ研究所  かんきょうもんだい一日一言

 森林は二酸化炭素を吸収しない

1999年4月21日
 自然の森は二酸化炭素を吸収していると考えている人も多いと思いますが、実際には吸収はしていません。

 もし森林が二酸化炭素を吸収して酸素を放出する一方だったら、長い歴史の中で大気中の二酸化炭素がなくなってしまい、酸素だらけになってしまうはずです。そうはならないのは、成長した木は倒れて分解して二酸化炭素に戻ったり、一部は動物に食べられて二酸化炭素に変わったりして、ちょうど成長して二酸化炭素を吸収した分だけ放出しているのです。自然の中の森はこうして、バランスがとれているのです。

 じゃあ全く二酸化炭素を吸収しないかというと、そういうわけではなく、今から成長していこうとする若木はちゃんと二酸化炭素を吸収しています。ですから、砂漠を緑化する(新しい木を植える)ことは、二酸化炭素の吸収には役立つことになります。日本の森は戦後植えられた杉が多く、これは多少は二酸化炭素吸収に寄与しているようです。

 逆に、今ある森を切り倒してしまうと、「木材」として蓄えられていた炭素がなくなることになりますから、二酸化炭素が放出されることに結びつきます。吸収されることよりは、こちらの排出のほうが世の中にとって大きな問題になります。

 また確かに新しく植林したら二酸化炭素を吸収してくれるかもしれませんが、ただ木がはえればそれでいいというものではありません。もともとの森は動物がいて多様な種類の木が植わっていて生態系ができており、これを植林で復活させるのは至難の技です。
 先ほどの話を逆手に取ると、今ある森を伐採して木材として利用し、新しい木をたくさん植えたらそれで二酸化炭素の吸収が始まることになります。しかしそれは、二酸化炭素の吸収には役に立っても、生態系は大きく壊すことになってしまいます。森林は二酸化炭素のかたまりとみるより、豊かな生物の宝庫、とみたほうが妥当かもしれません。

 日本でも、植樹祭というイベントが続けて行われてきましたが、今年は私の地元の伊豆で行われるようです。確かに何本か植林をするみたいですが、そのために自然林を切り開き、山の中の道路を整備してと、本末転倒なことが行われています。戦後直後の「杉を植えて日本を豊かにしよう」という時代は終わり、今は「いかに自然林と林業を維持していけるか」が問題になっているので、ちょっとやりかたを変えていく必要があるのではないでしょうかね。

 まあ自分の家庭では二酸化炭素を出しているので、どうにかその分だけでも吸収してくれたら安心して暮らせるのにと考えがちですが、あまりそれは考えずに、素直に家庭の省エネを進めた方がいいかもしれません。二酸化炭素とは別に、純粋に森やそこに生きる生き物たちを楽しんでみてはいかがでしょうか。こんなに森に囲まれた国はないのですから、それを活用しないのはもったいない話です。
 
 

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