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エリアナ・パブロワを偲んで〜バレエの名曲集/パキータ       (2009.05.07)
「日本のクラシック・バレエ育ての親」とも言われているエリアナ・パブロバ(Eliana Pavlova)は、1927年(昭和2年)、鎌倉にバレエスクールを開設し、日本のバレエ発展の基礎を築きました。かっての稽古場が「パブロバ記念館」としてこの地に残っていましたが、現在は閉鎖され個人の邸宅となっています。数年前に私も行きましたが、建物の中には入れず、わずかに、アーチ型のモニュメントと「日本バレエ発祥の地」と書かれた銅板のレリーフに、稽古場だった昔の様子を想像することができました。 ちなみに、エリアナ・パブロバは、その後、日本名霧島 エリ子という名で日本に帰化しました。
     
 
2008年11月、関内ホールで、「横浜開港150周年記念プレ・バレエ公演」と銘打ったバレエコンサートが開かれました。この公演はエリアナ・パブロワの功績を讃え、彼女が踊った曲を中心に、日本バレエ黎明期の作品を上演するというものでした。出演者は、横浜在住のダンサーが主体で、オーディションで選ばれた子供や若いダンサー、それにゲストダンサーの支援を受け。総勢70名だということです。オープニングとパキータはテープ演奏、ほかはすべて三原淳子さんという方のピアノ演奏。この公演、大好きな岩田唯起子さん、大滝ようさんという二人のバレリーナと、斎藤友佳理さんの「瀕死の白鳥」を同時に見られるとあって、早くからチケットを買い、楽しみにしていたのですが、 突然の妻の入院というアクシデントもあって観に行けなくなってしまったのです。
そんな折り、2008年の年末にTVKテレビが、ダイジェスト版を放送してくれ、さらにそれを、TVKのサイトに掲載してくれました。ダイジェスト版とはいえ、インターネットでいつでも見られるのは有り難いことです。
アートchTV「エリアナ・パブロワを偲んで」
インターネットで見た範囲で、その概要を紹介します。
(1)第1部オープニング  横浜市内の小さなバレリーナたち 音楽:ドリゴ
小学生から中学生くらいの可愛らしい未来のプリマ候補生達が、全員白のチュチュに、頭に白の花飾りでステージに総揃いして踊り。いい笑顔の子、がんばって笑顔を作っている子、緊張して顔の引きつっている子とさまざま。舞台の前端に置いてあるブーケを一つづつとって、大人のソリスト(画面では、沼田多恵、大滝よう、岩田唯起子)にプレゼント。この後このソリスト達が舞台に立つのですが、皆、幕前の緊張がしばし解れたような美しい笑顔が零れていて、とても心和むシーンでした。
 
(2)ワルツ「春の声」  振付:新井雅子 音楽:J.シュトラウス2世
下手奥にピアノ。第1部はすべてこのピアノで演奏されました。踊りはソリストなしの12人のアンサンブル。ジゼルの1幕の村娘達のような、薄いピンクやブルーの落ち着いた色合いの衣装。お祭り気分で、ほのぼのと和む感じでよかったです。
 
(3)ペルシャの市場  振付:服部智恵子 指導:小倉礼子 音楽:ケテルビー
沼田多恵(フリー)
沼田多恵さんというダンサーが一人で踊りました。白地に金のアラブ風の衣装で、金の壺をもって踊る、ゆったりとした踊り。「内面を要求された作品で、自分の気持ちで、自由に踊るように」と言われたと沼田さん。
服部さんがパブロワから直接振付を受けた作品だそうで、地味ですが、興味深い演目です。
 
(4)ハンガリア舞曲(ブラームス) 振付:木村公香
配られた解説によると「大正時代、多くの舞踊家たちが好んで演じた舞踊曲」なのだそうで。ソリストの二人は所属が書いてなかったので、「ゲスト」扱いではないのでしょう。女性のアンサンブルつき。いわゆるチャルダッシュなので、長靴に民族衣装です。ところどころ結構なスピードのあるところもあり、なかなかに楽しかったです。途中の曲想が変わるところからは、男性ソリストの田中さんがドラマチックに盛り上げてました。どうしてそこからいきなり「悲恋モード」になるのかはよくわからなかったけどな(^^)。わからないなりに、えらく色っぽかったです(^^;)。
(5)枯葉と詩人(ショパン) 振付:横井 茂
大滝よう(東京バレエグループ)、小林洋壱(東京シティバレエ団)、他
袖のたっぷりした白のブラウスに薄いグレーのズボンの詩人と、茶色のチュチュを来た「枯葉」との踊りが中心で、時々アンサンブルがからみます。小林洋壱の力強さに圧倒された感じ。 パートナーの大滝ようをサポートするというよりも強引にホールドするという感じでした。 「まかしとけっ!」と言わんばかりに、大滝ようの細いウェストをガシッと掴み、放り上げて肩上にリフト。あまりの過激さに、 大滝ようは足をバタつかせ必死に堪えていましたがご愛敬。続いて、大滝ようのビスチェ部分を腕で抱えてグイッと持ち上げ、長身の怪力にものを言わせ、小柄で華奢な大滝さんを分回す・・・。 文字通り「枯葉」が舞うように大滝ようは、ビュンビュン振り回されましたが、懸命に耐えていました。「枯れ葉は、詩人が描く理想的な女性像であり、可憐に彼を誘うような気持ちで踊りました」と大滝よう。 小林洋壱の力強さと、大滝ようの繊細さが調和した美しい踊りでした。

(6)第2部 パキータ(ミンクス)
振付:マリウス・プティパ 再振付:丸岡浩
岩田唯起子(岩田バレエ団)、小林洋壱(東京シティバレエ団)、他
大好きな岩田唯起子のパキータです。コールドバレエは茶系の落ち着いた色のクラシックチュチュ。ソリストはそれぞれ色々な色の、コールドとお揃いのデザインのチュチュ。 女性エトワールは白地に濃紺のガラの入った清楚でシンプルなクラシックチュチュでした。 クラシックチュチュ姿の岩田唯起子は本当に可愛らしい。 日本人でクラシック・チュチュがこんなによく似合う人も珍しい。そしてトゥで立った姿の美しいこと。 「パキータは、ジプシーでもなく、村娘・町娘でもなく、お姫様でもなく、だけど皇室の血が流れている女の子。 キャラクターのカラーが無く、全部を備えている性格を表現するのが難しかった」と岩田唯起子。 技術力にも表現力にも定評があり、自他共に認めるプリマなのに、「難しかった・・・」の言葉。 奢らない、謙虚な気持ちの表れなのでしょう。とても好感を持ちました。 時折、「失敗しないよう、正確に、落ち着いて」と自分に言い聞かせるように、幾分不安げな表情も見せ、 思わず「頑張って!」と声をかけたくなる位の健気な感じ。踊り方には真面目な人柄がでていて、丁寧に、精一杯踊る姿に惹かれます。 名前のとおり、とても頑張り屋さんという感じで、優雅さと気品、それに力強さも兼ね備えた素敵なママさんバレリーナ。 「若さの芸術」と言われるバレエ。アラフォーになり肉体的にはピークを過ぎているのに少しも衰えを感じさせず、 初々しさを保って、清楚で繊細な美しさが加わって一層の魅力を増した魅惑の舞姫・岩田唯起子。日頃のたゆまぬ努力の賜物でしょう。 ますますのご活躍を祈っています。

公演のプログラム第1部の最後は、斎藤由佳里の「瀕死の白鳥」でしたが、この放送では斎藤さんの話だけで、肝心の踊りはカット。何か出し惜しみのような気がして不満でした。
 
ともあれ、とても楽しく素敵な舞台の記録。出来ればWEBサイトでの公開だけでなく、DVDにして販売してくれたら有り難いです。 その時には、WEBではカットされた、斎藤由佳里の「瀕死の白鳥」も是非加えて頂きたいと思います。
 
エリアナ・パブロワを偲んで〜バレエの名曲集/パキータ
・ 横浜開港150周年記念プレ・バレエ公演
[演目]
@オープニング 横浜市内の小さなバレリーナたち
A第1部 パブロワが踊った小品集を集めて
 ・ワルツ「春の声」(J.シュトラウス) 振付:新井雅子
 ・ペルシャの市場(ケテルビー) 振付:小倉礼子   沼田多恵(フリー)
 ・ハンガリア舞曲(ブラームス) 振付:木村公香
 ・枯葉と詩人(ショパン) 振付:横井 茂  大滝よう(東京バレエグループ)、
  小林洋壱(東京シティバレエ団)、他
 ・瀕死の白鳥(サン=サーンス) 振付:ミハイル・フォーキン 指導:木村公香
  斎藤友佳理(チャイコフスキー記念東京バレエ団)
B第2部:パキータ(ミンクス)振付:マリウス・プティパ 再振付:丸岡浩
  岩田唯起子(岩田バレエ団)、小林洋壱(東京シティバレエ団)他
  2008年11月22,23日 横浜 関内ホール

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