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ベルリオーズの「幻想交響曲」    (2003.10.1)
  (副題:ある芸術家の生涯のエピソード)

パリ音楽院の23歳だったベルリオーズは、イギリスの劇団の上演したハムレットを観て、オフェリア役の人気女優ハリエット・スミッソンに激しい恋をします。ベルリオーズは、何度も彼女に手紙を送ったり、楽屋を訪ねたりしたのですが、全く相手にされず、激情したベルリオーズは、スミッソンを恨んで、復讐を考えるようになってしまいます。幻想交響曲は、この一方通行の恋愛経験をもとに作曲されました。「病的な感性を持った若い芸術家が失恋してアヘン自殺を図りますが、死に切れず、夢うつつの中で、ついに恋人を殺してしまう」と、スコアの冒頭に標題がつけられているそうです。
 
BSディジタル放送、BS日テレの「ブラボー・クラシックス」は、私の大好きな番組ですが、先ごろこの中で、エマニュエル・クルヴィス指揮、読売日本交響楽団の、素敵な「幻想交響曲」を聴きました。クルヴィスは、読響について、「彼らはこの曲を大変熟知していると瞬時にわかりました。だから理論的なことを言わずとも、即座に音楽を作っていけたのです」と言っていましたが、読響の面目躍如といったような、力のこもった、それでいて非常に美しい、素晴らしい演奏でした。
 
ところで、「幻想交響曲」といえばこれの右に出ない、と言われているのが、シャルル・ミュンシュ指揮、パリ管弦楽団の演奏です。もちろんアナログ録音。パリ管弦楽団の黄金時代ともいえる1960年代後半のものです。この録音を聴くと、この頃は、オーケストラには、まぎれもない個性というものが存在していたことを感じます。最近は、それぞれのオーケストラの個性が、次第に薄らいできているように思います。
ミュンシュ&パリ管弦楽団は、この曲の主人公の青年が、クスリで、うなされている幻想感覚を、情熱的に表現しいて、ベルリオーズの実体験にもとづいたストーリーなのだということを感じさせる、熱っぽい説得力のある演奏だと思います。
録音は、今となっては、決して高いレベルではないのですが、ミュンシュの気迫とオーケストラの個性を感じる見事な演奏だと思います。
エマニュエル・クルヴィスにせよ、シャルル・ミュンシュにせよ、やはりベルリオーズの作品はフランス人の指揮でないと・・・と、感じてしまいます。

ミュンシュ盤のジャケット

なお、この「幻想交響曲」は、バレエにもなっています。振付は、レオニード・マシーン。 彼は、物語を実にうまく表現していて、ベルリオーズの意図を忠実にバレエに置き換えたと言えると思います。


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