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ベルリオーズの「幻想交響曲」 (2003.10.1)
(副題:ある芸術家の生涯のエピソード)
パリ音楽院の23歳だったベルリオーズは、イギリスの劇団の上演したハムレットを観て、オフェリア役の人気女優ハリエット・スミッソンに激しい恋をします。ベルリオーズは、何度も彼女に手紙を送ったり、楽屋を訪ねたりしたのですが、全く相手にされず、激情したベルリオーズは、スミッソンを恨んで、復讐を考えるようになってしまいます。幻想交響曲は、この一方通行の恋愛経験をもとに作曲されました。「病的な感性を持った若い芸術家が失恋してアヘン自殺を図りますが、死に切れず、夢うつつの中で、ついに恋人を殺してしまう」と、スコアの冒頭に標題がつけられているそうです。
第一楽章(夢、情熱)、序奏付きの全6部からなるソナタ形式。恋人に出会うまでの不安や憧れが描かれ、甘美な恋人の主題が演奏されます。
第二楽章(舞踏会)、全4部からなるワルツ形式。夢の中で、芸術家は、恋人と舞踏会でワルツを踊ります。華麗なワルツの中に、恋人の主題が現れますが、やがて乱暴にかき消されます。
第三楽章(野の情景)、全8部からなる緩徐楽章。夏の夕暮れ、芸術家の青年は遠くで、雷鳴を聞きながら、野原をさまよっています。イングリッシュ・ホルンとオーボエの奏でる羊飼いの笛を聞くと、若者は、恋人のことを思い出して不安になります。
第四楽章(断頭台への行進)、全10部からなる行進曲風の楽章。夢の中でついに恋人を殺してしまった青年は、断頭台へと連れて行かれます。恋人の主題が一瞬現れた後ギロチンの刃がが落ちて、青年は死にます。
第五楽章(ワルプルギスの夜の夢)、全5部からなるロンド(輪舞曲)形式。青年の葬式に集まった魔女や妖怪たちが踊っています。化け物のうめき声の中から、恋人の主題が、奇妙なメロディーに姿を変えて現れます。終盤にはグレオリオ聖歌の「怒りの日」の旋律が流れ、壊滅的なクライマックスとなります。
BSディジタル放送、BS日テレの「ブラボー・クラシックス」は、私の大好きな番組ですが、先ごろこの中で、エマニュエル・クルヴィス指揮、読売日本交響楽団の、素敵な「幻想交響曲」を聴きました。クルヴィスは、読響について、「彼らはこの曲を大変熟知していると瞬時にわかりました。だから理論的なことを言わずとも、即座に音楽を作っていけたのです」と言っていましたが、読響の面目躍如といったような、力のこもった、それでいて非常に美しい、素晴らしい演奏でした。
ところで、「幻想交響曲」といえばこれの右に出ない、と言われているのが、シャルル・ミュンシュ指揮、パリ管弦楽団の演奏です。もちろんアナログ録音。パリ管弦楽団の黄金時代ともいえる1960年代後半のものです。この録音を聴くと、この頃は、オーケストラには、まぎれもない個性というものが存在していたことを感じます。最近は、それぞれのオーケストラの個性が、次第に薄らいできているように思います。
ミュンシュ&パリ管弦楽団は、この曲の主人公の青年が、クスリで、うなされている幻想感覚を、情熱的に表現しいて、ベルリオーズの実体験にもとづいたストーリーなのだということを感じさせる、熱っぽい説得力のある演奏だと思います。
録音は、今となっては、決して高いレベルではないのですが、ミュンシュの気迫とオーケストラの個性を感じる見事な演奏だと思います。
エマニュエル・クルヴィスにせよ、シャルル・ミュンシュにせよ、やはりベルリオーズの作品はフランス人の指揮でないと・・・と、感じてしまいます。
ベルリオーズ:幻想交響曲
作曲、初演:1830年、パリ音楽院の演奏会にて
形式 5楽章からなる標題付きの交響曲
(副題:ある芸術家の生涯のエピソード)
オーケストラの楽器編成
木管楽器群:ピッコロ、フルート、イングリッシュホルン、オーボエ、小クラリネット、クラリネット、ファゴット
金管楽器群:トランペット、コルネット、ホルン、トロンボーン、チューバ
弦楽器群:ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス
打楽器群:ティンパニ、大太鼓、小太鼓、シンバル
その他:ハープ、教会用の鐘
ミュンシュ盤のジャケット
なお、この「幻想交響曲」は、
バレエにもなっています。振付は、レオニード・マシーン。
彼は、物語を実にうまく表現していて、ベルリオーズの意図を忠実にバレエに置き換えたと言えると思います。
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