私が疲れている時、いつも無意識に取り出すバレエの映像があります。平山優子と森田健太郎の「エスメラルダ」のパ・ド・ドゥです。
この二人の踊りを見ていると自然に心がなごみます。それほど、この映像の二人は、息が合っていて微笑ましさがあふれているのです。
「パ・ド・ドゥのパートナーシップとはこういうもの」という感じがします。
これは、1994年の「青山バレエフェスティバル」の中の演目の一つです。 この青山バレエフェスティバルは、毎年趣向を変えた企画をして、楽しみなステージでした。この年は、「パ・ド・ドゥの楽しみ」という題で、新進ダンサー達の競演で、NHKが録画し放送しました。 宮内真理子、酒井はな、榊原弘子他のバレリーナが技を競う、とても楽しいステージだったのですが、 その中で、当時ユニークバレエシアターの平山優子と立脇千賀子バレエの森田健太朗の「エスメラルダ」のパ・ド・ドゥは、アダージョのみの放送でしたが、特に印象に残りました。 実は、平山優子を見たのは、これが初めてでした。
正直のところ、こんな素敵なバレリーナが居たのかとびっくりしたのです。
ステップは軽快、アダージョはしっとりしなやかで、赤いチュチュがよく似合っていて、ほんとうにバレエのプリンセスといった感じの小柄で可愛らしい舞姫でした。
もっとも、平山優子の素晴らしい踊りは、パートナーの森田健太朗のサポートのによるところも大きいと思います。
バレエのパートナーはこうでなくちゃと思うほど、二人の息はぴったりなのです。森田健太朗は平山優子に不安を与えないようにとしっかりサポートしていたし、
平山優子も森田健太郎を信頼しきって伸び伸びと踊っていたのです。
女性は男性のサポートがなかったら何も出来ない。男性のがっちりとした支えがあればこそ、女性は細いポアントで立って不安定な難しいポーズを決めることができるわけで、
サポーターとしての男性の役目を改めて感じました。
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アダージョ終盤近く、舞姫の平衡感覚が試される見せ場。それまでにこやかな笑顔を浮かべていた平山優子の表情がにわかに険しくなりました。
左足を後方に上げたアラベスクのポーズで、右手で、森田健太郎の左手に掴まります。
森田健太郎は、ゆっくりと、しかもしっかりと、平山優子の右手をアンオーの位置まで持ち上げていきます。
そして、平山優子がバランスを確保したのを見届けて、握っていた指の力を緩めます。
見ている方は、「離せるかな、離せるかな、気を付けて!!」と息を呑んで見守る中、平山優子は、恐る恐る、でも意を決して、森田健太郎の指を離して独り立ちし、グッと堪えてバランス。
一瞬、後方に伸ばした左足が大きくグラリ。「あわや!!」と思ったものの、平山優子、必死に立て直し、懸命にバランスを維持します。
森田健太郎は、「いつ掴まってもいいよ、僕が支えてあげるから」と、優しい眼差しを注いで構えていますが、平山優子は、森田健太郎に手を触れず懸命に頑張りました。
平山優子は、体がギクギク揺れだし危うくなっても、ポアントの右足首を小刻みに動かして
もはや、これ以上粘ったら崩れてしまうという、ぎりぎりまでの6秒近くも、長〜い〜長いバランスをとり続けたのです。
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この踊りはNHKが収録し教育テレビで放映したものですが、最近は日本人ダンサーが出演したバレエの放送が少なくなったように思います。
日本にも素敵なバレリーナがいっぱい居ます。ぜひテレビ局が日本人ダンサーのバレエの放送を増やしてくれることを期待します。
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