渡邉順子さんが「瀕死の白鳥」を踊りました。今年二度目、通算20回を数えるそうです。8年ほど前、彼女の踊りに他のダンサーとは違った新鮮な魅力を感じて以来、ずっと彼女の「瀕死の白鳥」を見てきました。今回も自然に足が向いてしまったかのように劇場に足を運びました。
今回は、今までと違います。N&Y CONCERTという発表会への客演です。
しかも渡邉順子は、三部からなるバレエコンサートの第一部のトップバッターを任されたのです。
トップバッターとしての責任は重い。最初良ければそれ以降の演目も引き立つでしょうが、つまらなければ以降の舞台は色あせてしまう。
客演ということで注目されている上に、数十の演目の先陣をきるのです。まして「瀕死の白鳥」は、わずか3分ほどの踊り。
失敗しても取り返す余裕がない。楽屋で出を待っ順子さんのプレッシャーは、はかりし得ません。
でも、渡邉順子は頑張りました。出だしのブーレにこそ、やや硬さが感じられたものの、おそらく今までの「瀕死の白鳥」の中で
最高の「瀕死」だったと思います。いつも通りの波打つ腕のしなやかさ、「黄金の甲」のまろやかなカーブ、
しっかりためたアラベスク・・・、それにほのかな円熟して艶やかなお色気が加わって。
そして極めつきは、ラストの死に至る場面。
薄暗い舞台の中から、ギシギシときしむ順子さんの体の悲鳴が聞こえてきたと思うほど、背骨が折れんばかりに上体を反らせて天を仰ぎ、ギリギリまでそのポーズを堪えてみせた順子さんのひたむきな姿。
思わず身を乗り出して、ゴクンと生唾を飲み込みました。
今までこんなに背中を反らせたことはなかった。「限界までしなったラインを見て下さい!!」と言わんばかりで、この舞台に賭けた彼女の意気込みを感じました。そして、最後の力を振り絞って起き上がるけれど、
再び倒れ込んでしまう・・・。その表情の穏やかだったこと。「コンテンポラリーの要素を取り入れたい。
コンテの呼吸法を使い踊り方に美しい流れを作り出したい」と彼女は言っていましたが、このラストシーンで彼女の意図がわかったような気がしました。
踊り終わったレベランス、額に汗を滲ませた順子さん、満面の笑みをたたえた穏やかな表情が美しかった。
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そして、第二部中盤の「叶わぬ恋」。
「叶わぬ恋」は渡邉順子が初めて取り組んだコンテンポラリー。私はコンテンポラリーは理解でなかったのですが、こんな面白さもあるのかと思いました。クラシックにはない躍動感とスピード。ラスト近く、片足で立って、最初僅かにふらついたものの、グッと堪えて持ちこたえたアチチュードのバランスは、まさに「不安定の中の安定」の美しさがありました。「魅せるのよ!!」という彼女の気迫を感じました。今回「瀕死の白鳥」がことさら新鮮だったのも、この技術を体得したからでしょう。
ただ、一つだけ不満があります。渡邉順子は「叶わぬ恋」をバレエシューズで踊りました。コンテンポラリーとはいえ、トゥシューズで踊って欲しかった。順子さんの惚れ惚れする「甲」の美しさは、トゥで立ったときこそ輝くのです。トゥで立って踊ることは、足首や脹ら脛に数倍の負担がかかり、右足に古傷をかかえる順子さんには酷かもしれません。でも、いつか「叶わぬ恋」をトゥシューズを履きポアントで立って踊ってくれることを期待します。
私は、渡邉順子の「瀕死の白鳥」の舞台では、いつも新たな発見と新鮮な魅力を感じます。なのに順子さんは、「瀕死の白鳥」はもう踊らないとのこと。これは是非とも撤回して欲しい。渡辺順子の「瀕死の白鳥」は、いつも私に勇気を与えてくれます。これからも「瀕死の白鳥」を踊り続けながら、新しいコンテンポラリー分野の開拓もしてくれることを期待します。
(2008年10月11日、テアトルフォンテ)
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舞台感想を読ませて頂ました。
たぶん、今回の舞台感想を「N&Y CONCERT」に一緒に出演したダンサーさんたちが読んだら、
こんな感じで話すのではないでしょうか。
「JUNさんはこの日、電車の中に白鳥の頭の羽と化粧品バックを忘れての楽屋入り。
白鳥の湖の出演者から羽を借り、一緒の楽屋のメンバーから化粧品をかり、
出演時間の1時間前にスーパーでチョコレートを買い、同じ楽屋のメンバーにチョコを配って
袖幕で出演者とおしゃべりして舞台に立った。
舞台なれしている人と言う感じがした」、そんなコメントになると思います。
「瀕死の白鳥」はまた踊るチャンスがあれば、踊っていきたいと思います。
来年もまた「N&Y CONCERT」の舞台にも出演したいと思います。
来年はどんな舞台に立つのかまだ何も決まってはいないのです。
コンテンポラリー・ダンスの舞台にも立ってみたいし、まだまだ自分の中になる可能性を引き出せればと思っています。
私はバレエの仲間とおしゃべりしている時が一番楽しいです。
8歳からバレエを習らい舞台・舞台で人生を生きてきたので楽屋にいる待ち時間とか客席でダンサーのリハーサルを見る時や
舞台袖で本番に踊るダンサーの後ろ姿を見て生きてきたように思うんです。
やっぱり、舞台はいいですね。
年に3回ぐらいは舞台に立っていた私が来年からは舞台のお誘いがあるのかどうかが不安です。
是非JUNさんに会ったら舞台にお誘いください。
2008年、バレエの先生になってから初めて「発表会」に出演させていただきました。 出演料もお支払いして出演しました。 「N&Y CONCERT」の舞台にお誘いくださりありがとうございました。 JUNバレエ塾 渡邉順子 |