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ドン・キホーテ:加治屋百合子、ダニール・シムキン、アメリカン・バレエ・シアター   (2011.8.6)
アメリカン・バレエ・シアターの来日公演の録画が、BSプレミアムで放映されました。この公演、初日は「オープオニング・ガラ」。二日目は第一幕をヘレーラ&カレーニョ、第二幕をレイエス&コレーラ、第三幕を加治屋&シムキンが踊る「スペシャル・ドン・キホーテ」。そして、三日目が今回放映された、加治屋百合子とダニール・シムキンによる「ドン・キホーテ」です。 加治屋百合子は、2000年、ローザンヌ国際バレエコンクールで「ローザンヌ賞」を受賞、2002年アメリカン・バレエ・シアターにコール・ド・バレエとして入団し、2007年ソリストに昇格した、日本人で唯一ABTの正式メンバーです。以前、情熱大陸で紹介されたことがあります。
 
今回の「ドンキホーテ」、第1幕も第3幕も加治屋百合子は、華奢で可愛らしい印象が強く、お転婆娘のキトリにしては上品過ぎるという気がしました。でも身体をコントロールする力は素晴らしい。バランスも回転系も美しいかった。ピルエットも、パッセでくるっと回って5番ポジションに下りるフェアテも正確で綺麗でした。
 
第2幕のドルシネア姫が加治屋百合子に最も合っている感じでした。可愛らしく、ドンキホーテの夢の中のお姫様という雰囲気がとても良くでていました。持っている雰囲気、感性がすばらしい!。グラン・バトマンで蹴り上げた足、爪先立ちのアチュード・ドゥバン・クロワゼのポーズ・・・美しいこと。極め付きは、中盤に片足のポワントでツンツンとバロネする所。時折笑みさえも浮かべた穏やかな表情が魅力的。最後のサーキュラーのピケターンは辛そうでしたが、上手に決めました。
 
第3幕のグラン・パ・ド・ドゥ。アダージョでは、トゥでのひとり立ちのアチチュードのバランスは、もう少し頑張って欲しかった。でも必死に揺れを堪えてバランスをとる姿は感動的。コーダのグランフェッテはいかにも苦しそう。軸足をそのままで、一度も足を下ろさず回り続けるこの技、軸がぶれぶれで時々ぐらつく事があって、今にも崩れそうでハラハラし、内心「がんばれ〜」と応援モードで観ていました。思わずハッとして手に汗を握ったところがあったものの、無事破綻せずに乗り切って、ホッとした表情が美しかった。
 
なお、とても魅力的だったのが、森の精の女王を踊ったヴェロニカ・パールト。ワガノワからマリインスキー・バレエのソリストを経てABTに移籍したそうですが、ワガノワ出身ならではの叙情的な表現と軽やかなステップのとても素敵な踊りです。難しいイタリアン・フェッテ、途中で回転が不安定になりハッとしたところもありましたが、懸命に頑張って踊る姿がかえって魅力的でした。
 
  原振付 : マリウス・プティパ、アレクサンドル・ゴールスキー
  振付改訂 : ケヴィン・マッケンジー、スーザン・ジョーンズ
  音楽 : ルードヴィヒ・ミンクス
  編曲 : ジャック・エヴァリー
  原作 : ミゲル・デ・セルバンテス
  指揮 : チャールズ・バーカー
  管弦楽 : 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
 
  キトリ : 加治屋 百合子
  バジル〔理髪師、キトリの恋人〕 : ダニール・シムキン
  ドン・キホーテ : ヴィクター・バービー
  サンチョ・パンサ〔ドン・キホーテの従者〕 : フリオ・ブラガド=ヤング
  メルセデス〔踊り子〕 : ヴェロニカ・パールト
  エスパーダ〔闘牛士) : コリー・スターンズ
  花売り娘 : サラ・レイン、イザベラ・ボイルストン
  ジプシーのカップル : シモーン・メスマー、ジョセフ・フィリップス
  森の精の女王 : ヴェロニカ・パールト
  キューピッド : レナータ・パヴァム
  アメリカン・バレエ・シアター
  2011年7月23日 東京文化会館

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