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先日、NHK BSで映画「黒部の太陽 特別編」を観ました。特別編は、石原裕次郎の追悼記念で上映されたもので、196分の全長版を1時間近くカットしたものだそうです。
私は、黒四ダムがある「立山・黒部アルペンルート」へ3回も旅行し、この映画の舞台の最大の難工事だった「破砕帯」を通過していたのに、まだこの映画を見たことがなかったので、旅行した時のことを思い出しながら興味深く観ることができました。
映画「黒部の太陽」が作られたのは1968年。私が大学生の時です。世紀の難工事と言われた黒四ダム建設の苦闘を描いたものです。黒四ダムの工事に必要な資材を運ぶための関電トンネル工事の話が主体で、それも、大量の冷水が噴出し、死者が多数出る大変な難工事となった「破砕帯突破」の描写に映画の大部分が費やされています。
Wikipediaによると生前の石原裕次郎が「映画館の大迫力の画面・音声で見て欲しい」と言い残したという理由から、現在DVDなどのソフト化はされていないし、まれにイベントで上映会が催されている程度で映画館での上映も数回に留まっているそうです。
この映画を見ると、戦後の高度経済成長期に逼迫した電力需要に対して、水力発電用のダム建設が急務であったあったことがわかります。
それを難工事の末成し遂げた当時の土木工事者の偉大さもよく分かりますが、
一方、黒四ダムの難工事により、建設費は膨れ上がり事故による多数の死傷者が発生したことから、世論は水力発電への否定に傾き、かつ原油価格が高騰したこともあり、世間は原発を支持し、日本の各地には次々と原発が建設されてしまったというのも皮肉です。
福島原発に大事故が発生した現在、このような背景を踏まえて「黒部の太陽」を観ると、水力発電のような自然エネルギーを見直すことが切に必要と思われるし、
当時のダム工事関係者のプライドを賭けた工事の意味がわかるような気がします。
今回観たのは短縮版。ぜひともノーカット版を観たいし、石原裕次郎の意思には反するけれど、願わくばDVDを発売して欲しい。じっくりと観てみたいと思います。
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映画:黒部の太陽
【監督】熊井啓
【出演】三船敏郎、石原裕次郎、滝沢修、
宇野重吉、志村喬、辰巳柳太郎 【製作】三船敏郎、中井景、石原裕次郎
【原作】木本正次
【脚本】熊井啓、井出雅人
【撮影】金宇満司
【音楽】黛敏郎
〜1968年 三船プロダクション、
石原プロモーション制作〜 |
破砕帯を通過する関電トンネルトローリバス 2010年8月9日
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