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ドン・キ・ホーテのパ・ド・ドゥ:森下洋子、清水哲太郎   (2004.5.16)

この映像は、1984年のロスアンゼルス・バレエ・フェスティバルのものです。ロスンゼルスバレエ団、パリオペラ座バレエ団、ニューヨークシティバレエ団などのダンサー達に混じって、森下洋子と清水哲太郎も参加しました。 森下洋子・清水哲太郎とも、当時、30歳半ば。最も油のっていた頃だと思います。
私は、森下洋子の踊りを、彼女が15歳のころから見てきましたが、軽快なピルエットや一糸乱れぬフェッテのような回転に秀でていると思っていましたが、バランスの良さも相当なzものです。
このビデオで森下洋子はアダージョで、胸のすくような驚異的なバランスの良さを披露しています。アダージョの終盤近く、ポアントのアチチュードで立ち、清水哲太郎のサポートの手を慎重に離して、わずかなふらつきをぐっとこらえて真剣な表情でぎりぎりまで頑張って長〜いバランスを保ちました。客席からブラボーの声が飛び交います。思わず美しい笑みが漏れました。 森下洋子のバランスの評が、彼女の著書「バレリーナの羽ばたき」(ゆまにて出版)に載っています。「彼女は完全なクラシックの中におり、そのバランスは喜びであり、彼女の踊りの位置づけは完璧であった」(ニューヨークタイムズ)。「彼女は非の打ちどころのないテクニシャンであり、ポアントでのバランスはこれまでの世界記録を破ったものであった」(ニューヨークポスト)。 この著書の中で森下洋子自身も、「緊張過ぎるような状況でもバランスが良くとれたのは、パートナーの清水さんが、『軸の足をきっちりセンターにとるように』と、毎日教えてくれているおかげだと思います。」と言っています。 終盤のコーダでは、アダージョやヴァリエーションの疲れも見せず、グランッフェッテを寸分のずれもなく回り切ったのは、さすがです。大変な重労働なのに、後半になっても全く疲れを感じさせず、軽快に回っていました。再び、観客の大喝采を浴びました。
このビデオは、1987年に仕事でニューヨークへ行ったとき、メトロポリタン歌劇場の近くのバレエ・ショップで見つけて買ったものです。 この公演は、パ・ド・ドゥからなるバレエコンサートで、ドン・キホーテ、眠りの森の美女、ラ・シルフィード、海賊ほかのパ・ド・ドゥが踊らました。発売元は、VAI(VIDEO ARTS INTERNATIONAL,INC.)となっています。メジャーなレーベルではなく、小さなビデオ制作カンパニーのようです。
最近この映像が、「パ・ド・ドゥの花束」というタイトルで、DVDで発売されましたが、映像が見違えるように美しくなっているのに驚きました。 オリジナルの映像からビデオカセットへの変換工程で画質が落ちていたようです。もちろん、最新の映像には及びませんが、このような貴重な映像が、DVDで復刻されるのは歓迎です。
 
ところで、森下洋子さんは、天才バレリーナと言われますが、本当は人一倍努力をする人だそうです。彼女の師であり母でもある、松山樹子さんが「バレリーナの羽ばたき」(ゆまにて出版)の中で言っている言葉にそれが良く現れています。引用、掲載させて頂きます。
「森下洋子は努力の人です。彼女は天才と人から言われることが好きではないのです。ただしこういうことは言えます。彼女はチャンスを逃がさないし、それを成功するために死にものぐるいで努力する人なのです。」
最近の彼女は、派手さはなくなりましたが、控えめな踊りの中に、情緒というか、円熟した人間的魅力というか、・・・が感じられ、私と同世代の彼女が、高齢にも拘わらず、懸命に一線で頑張っておられるのには頭が下がります。

You Tube にこの映像が載っていました →こちら

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