【トップページへ戻る】

海賊〜パ・ド・ドゥ:森下洋子、ブフォネス        (2005.5.22)

森下洋子さんとフェルナンド・ブフォネスが踊った「海賊」のパ・ド・ドゥの映像があります。この映像は、1984年5月のニューヨークのメトロポリタン歌劇場100周年記念コンサートで踊られたものです。著名な世界のアーチストを招いてのオペラ・バレエのガラ・パフォーマンスでした。バレエでは、アリシア・アロンソ、ルドルフ・ヌレエフ、カレン・ケイン、カルラ・フラッチ等が踊りました。この時すでに引退していた65歳位のマーゴ・フォンティーンが、トゥ・シューズなしでほんのちょっとフレデリック・アシュトンと『眠れる森の美女』の一部を踊ったそうです。森下洋子さんとブフォネスが踊ったときは、ファンティーンは舞台の袖で見守っていたとのことです。
森下洋子さん、出演が3日か4日前に決定して前日急遽駆けつけたそうでブフォネスとの練習も十分では無かったでしょうし、彼女が最も尊敬しているというフォンティーンの目の前で踊るのですから、森下洋子さんはさぞ緊張したことでしょう。でも、踊りは見事で、この時長唄の『鷺娘』で出演していた板東玉三郎氏が、「森下・ブフォネスの『海賊』がとてもも素敵だった」と語っていた記事を読んだことがあります。
森下洋子さんとフェルナンド・ブフォネスは、1974年ヴァルナ国際バレエ・フェスティバルのゴールドメダリスト同士。受賞の翌年、東京で共演し素晴らしい踊りでしたが、この映像は、このステージの感動が蘇ってくるような見事な踊りです。
 
アダージョの出だし、ブフォネスが待ち受けるところに森下さんが細やかなブーレで近づいてきます。緊張の為かやや堅い表情ですが、ブフォネスの力強い腕に支えられてアチチュードのプロムナードを美しく決めると、にわかに表情が和らぎました。こうなると後は森下洋子の世界。自ら得意のバランスを楽しんでいるような素敵なアダージョでした。ブフォネスとの息もバッチリ合っているようで、ブフォネスに高々と差し上げられたリフトからの落下も寸分の狂いもありません。 このアダージョで、森下さんのバランスの良さと繊細な魅力が最も生きていたように思います。アダージョは女性の踊りという認識を新たにしました。
アダージョが終わってブフォネスのヴァリエーション。高々と飛び上がるジャンプも寸分狂わないピルエットも、さすがゴールドメダリストというような素晴らしさです。観客は割れんばかりの拍手。
続く、森下さんのヴァリエーション。ブフォネスと対照的な繊細な美しさ。終盤では、イタリアンフェッテを連発。幾分辛そうに感じられたところもありましたが、難しい技を美しく決めました。無事踊り終わってのレヴェランス。大きく肩で息をしながらもホッとした表情が素敵です。
最後のコーダ。二人のエネルギーがぶつかり合う見せ場です。ここではグイグイと森下さんをひっぱていくようなブフォネスの力と技術が光ります。森下洋子さんも頑張ってとても美しく正確で踊っていましたが、ややブフォネスのパワーに押され気味の感じ。また得意のグランフェッテは本調子ではなかったようで、後半力尽きたのか軸足がわずかにずれて、回転を16回位で止めてしまったのはチョット残念。バレエはテクニックだけではないと分かっていても、ガラ・コンサートですから、32回のフェッテに果敢に挑戦して欲しかった、と思うのは贅沢でしょうか。

ともあれ、絶頂期の森下洋子さんとブフォネスの踊りが楽しめる、貴重な映像だと思います。
この映像が、YouTubeにも載っていました。  こちら→

バレエ「海賊」からパ・ド・ドゥ
森下洋子、フェルナンド・ブフォネス
1984年5月メトロポリタン歌劇場
100周年記念ガラ・コンサート

【トップページへ戻る】