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眠りの森の美女:K-バレエ     (2003.5.11)

2002年11月、K-バレエは、ヴィヴィアナ・デュランテを招いて、「眠りの森の美女」を上演しましたが、このときのDVDが発売になりました。私は、この公演を生で見ましたが、その時のデュランテの素晴らしさをもう一度味わいたいと思って、DVDを買いました。しかしながら、このDVDを観たところ、この録画は、私が観た日(2002年11月23日)とは別の日のもので、デュランテは、私が観た日の方が、調子が良かったように思えました。
 
この映像でのデュランテは、特に、ローズアダージョのバランスに、今一魅力が感じられませんでした。私が見に行った時デュランテは、出だしのバランスも、そして終盤のプロムナードのバランスも、どちらも、3人目の手を離して、アンオーに上げたまま、差し出された4人目の手に一切触れず、ずっと長くバランスを保ちました。トゥの先から根が生えているかのように、この間全くぐらつかなかったのです。
ところが、今回の映像では、出だしの一人目の手を離してから、二人目の手を触れず、バランスを保ちましたが、三人目の王子が手を差し出すやいなや、ガシッと手を握りました。全く余裕が感じられませんでした。終盤のプロムナードでは、アンオーまで手を上げたものの長いバランスに挑戦せず、無難にまとめました。
ローズ・アダージョの楽しみは、バランスの長さがすべてではありませんが、熟練したバレリーナでも極度に緊張するというこのバランスの妙技は、ローズ・アダージョの見所の一つには違い有りません。少なくとも、この映像では、バランスの場面に魅力を感じなかったのです。デュランテ自身「ローズ・アダージョのように、高度で洗練されたテクニックを要求される場面が数多く登場するという難しさもあります。それだけに、バレリーナにとってはとても踊りがいのある役なのです。」(この公演のチラシより) と言っていますが、この映像で観る限り、彼女のベストな踊りではなかったように思います。彼女自身も納得しなかったのでしょう、踊っている最中は笑みが見られなかったし、ローズアダージョを踊り終えたレヴェランスでも、完璧にやり遂げた満面の笑み・・・とは、ほど遠いものでした。せっかくDVDにして売り出すのですから、彼女の調子がベストであった日のものにしたら良かったのに、と思います。
 
また、第三幕のグランパドドゥでも、私が観た生の舞台では、デュランテはパ・ド・ポワッソン(フィッシュダイブ)を危なげなく決めたのですが、今回は、ドキッとするところがありました。受け止める熊川哲也がぎこちなく、三回のうち、はじめの二回は、キャッチが遅れ、特に二回目は、もう少しでデュランテが床にぶつかりそうでした。「しっかりしろよ!!」と言いたくなりました。どうも、熊川哲也はソロの踊りは上手いのですが、優れた女性のサポーターとは言いがたいようです。アダージョは女性の踊りですから、男性は女性の最高の美しさを引き出すよう、支え役に徹しなければならないのに、熊川は、次に続く、男性のヴァリエーションの為に力を温存しているようで、悪く言えば、アダージョで手抜きをしているように感じられてなりません。また、このパ・ド・ドゥ、デュランテも、表情が全体に暗く、感情の高まりが感じられず、ただただミスをせずに踊ったという感じで、なんとなく物足りないのです。
 
そんなわけで、このDVD、主役の二人には期待はずれのところもありますが、映像の鮮明さと、音の良さは、特質すべきです。でも、あまりに鮮明なので、デュランテの痩せた胸のあばら骨や、顔のしわまではっきりわかってしまって、彼女には気の毒なようにも感じました。(カメラは意地悪ですね)
 
 オーロラ姫:ヴィヴィアナ・デュランテ、王子:熊川哲也、
 カラボス:サンドラ・コンリー、リラの精:榊原有佳子、
 フロリナ王女:長田佳世、青い鳥:スチュワート・キャシディ、
 演奏:東京シテフィ・フィルハーモニック管弦楽団
 指揮:ポール・ストパート

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