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ウィーンフィル・ニューイヤー・コンサート2011    (2011.01.02)

今年もNHKテレビで、ウィーン楽友協会大ホールから生中継された、ウィーンフィル・ニューイヤーコンサートを楽しみました。 今回の指揮者はフランツ・ウェルザー・メスト。彼はオーストリア出身で、2010年秋から小澤征爾に替わってウィーン国立歌劇場の音楽監督になったそうです。フランツ・ヴェルザー・メストは、クレメンス・クラウス、ヨーゼフ・クリップス、ヴィリー・ボスコフスキー、ヘルベルト・フォン・カラヤン、ニコラウス・アーノンクールに次いで、1月1日にウィーン・フィルの指揮台に立つ6人目のオーストリアの指揮者とのことですから、ウィンナワルツやポルカはお手の物といったところでしょう。

ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートは、1941年にクレメンス・クラウスによって開催され、1955年からウィーン・フィルのコンサートマスターであったウィリー・ボスコフスキーの指揮になりました。ヴァイオリンを弾きながらの洒落た粋な感覚の優雅な演奏でしたが、ボスコフスキーが健康上の理由から1979年を最後にニューイヤーコンサートの指揮を降り、80年台になると、マゼール、カラヤン、アバド、クライバー、メータ、ムーティ、アーノンクール、小澤征爾、プレートル、バレンボイムといった巨匠と言われる指揮者の個性的な演奏が多くなり、優雅なウィーンの味わいが薄れて、特にワルツについては、リズムが重かったり、妙に表情をつけたりして、これがワルツ?と首をかしげたくなるような、昔ながらのウィンナ・ワルツの味わいとは違うものになってしまった演奏もありました。今回の生粋のオーストリア人あるウェルザー・メストは、大げさな個性的演奏は目指さず、ウィーンフィルの団員には、自発性に任せて、演奏させているように感じました。ただ、彼は、未だ50歳そこそこの若さで緊張していたせいか、演奏は真面目で規律正しく、ニューイヤーコンサートのお祭りを楽しんでいるという感じには今一歩という感じもぬぐえませんでした。先輩のクレメンス・クラウスやボスコフスキーの域に到達するには、更なる年齢的な経験と熟成が必要なのかなと思われ、それだけに、今後の活躍が益々楽しみです。
 
バレエ振付はジャン・ギョーム・バール(Jean-Guillaume Bart)。ソリストはウィーン国立歌劇場バレエのマリヤ・ヤコブレワとエノ・ペーチでヨーゼフ・シュトラウスのポルカ・マズルカ「遠方から」作品270を踊り、同じくヨーゼフ・シュトラウスのワルツ「わが人生は愛と喜び」作品263は、ウィーン国立歌劇場のダンサーたちがウィーン郊外のラウドン城で舞いました。今年は、例年のような大スターは出なかったものの、踊りも演出もとても充実していて良かった。生で踊られた「美しく青きドナウ」は、国立のバレエ学校の生徒達。未来のスター候補たちが、とても初々しくて楽しかった。
 
なお、今回のテレビ中継は、ゲストにウィーン在住の音楽ジャーナリストの山崎睦、ソプラノ歌手の佐々木典子、それに中條誠子アナウンサーで進行。 第1部と第2部の間の休憩25分に、豪華客船のウィーンフィルツアーの録画や、ペテルスブルグ、サンクトペテルブルクなどの美しい風景が放送されました。 昨年は、女性アナウンサーが、第1部と第2部の冒頭に、簡単に説明しただけで、ストレートにウィーンから中継をそのまま流していましたが、これはこれで良かった。 一昨年までは、場違いと思えるようなゲストが沢山出てきて、ろくでもない賛辞を繰り返すのにうんざりでしたが、次回以降も、昨年や今年のように、解説はあっさりとして欲しいと思います。ともあれ、地球の裏側で行われているニューイヤーコンサートを、同じ時間に日本に居ながらにして、ハイビジョンの高画質で観ることができるなんて、本当に素晴らしいことだと思います。
 
ちなみに、来年の指揮は、マリス・ヤンソンスだそうです。マリス・ヤンソンスは日本での人気は今一つですが、1943年にラトヴィアで生まれの旧ソ連出身の世界的指揮者の1人です。2006年のニューイヤーコンサートに続いて2回目ですが、その素晴らしい指揮振りから、特にウィーン・フィルの内部より再起用の極めて強い希望があったそうです。期待しています。
    ウィーンフィル・ニューイヤーコンサート2011
     
    第1部
     
    騎兵行進曲 作品428(ヨハン・シュトラウス)
    ワルツ「ドナウ川の乙女」作品427(ヨハン・シュトラウス)
    アマゾン・ポルカ 作品9(ヨハン・シュトラウス)
    デビュー・カドリーユ 作品2(ヨハン・シュトラウス)
    ワルツ「シェーンブルンの人々」作品200(ヨーゼフ・ランナー)
    ポルカ「勇敢に進め!」作品432(ヨハン・シュトラウス)
     
    第2部
    喜歌劇「騎士パスマン」からチャールダーシュ(ヨハン・シュトラウス)
    ワルツ「別れの叫び」作品179(ヨハン・シュトラウス)
    リストの主題による「狂乱のギャロップ」作品114(ヨハン・シュトラウス父)
    メフィスト・ワルツ 第1番(フランツ・リスト)
    ポルカ・マズルカ「遠方から」作品270(ヨーゼフ・シュトラウス)
    スペイン行進曲 作品433(ヨハン・シュトラウス)
    バレエ音楽「イベリアの真珠」から ロマの踊り(ヨーゼフ・ヘルメスベルガー)
    カチューチャ・ギャロップ 作品97(ヨハン・シュトラウス父)
    ワルツ「わが人生は愛と喜び」作品263(ヨーゼフ・シュトラウス)
     
    -アンコール-
     
      ポルカ「ブレーキもかけずに」作品112(エドゥアルト・シュトラウス)
      ワルツ「美しく青きドナウ」作品314(ヨハン・シュトラウス2世)
      ラデツキー行進曲 作品228(ヨハン・シュトラウス1世)
     
    管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮:フランツ・ウェルザー・メスト
     
      2011年1月1日 オーストリア・ウィーン楽友協会から中継       
歴代ニュー・イヤー・コンサートの指揮者 ( )は回数
1941 クレメンス・クラウス(1)1942 クレメンス・クラウス(2)1943 クレメンス・クラウス(3)1944 クレメンス・クラウス(4)1945 中止
1946 ヨーゼフ・クリップス(1)1947 ヨーゼフ・クリップス(2)1948 クレメンス・クラウス(5)1949 クレメンス・クラウス(6)1950 クレメンス・クラウス(7)
1951 クレメンス・クラウス(8)1952 クレメンス・クラウス(9)1953 クレメンス・クラウス(10)1954 クレメンス・クラウス(11)1955 ボスコフスキー(1)
1956 ウィリー・ボスコフスキー(2)1957 ウィリー・ボスコフスキー(3)1958 ウィリー・ボスコフスキー(4)1959 ウィリー・ボスコフスキー(5)1960 ウィリー・ボスコフスキー(6)
1961 ウィリー・ボスコフスキー(7)1962 ウィリー・ボスコフスキー(8)1963 ウィリー・ボスコフスキー(9)1964 ウィリー・ボスコフスキー(10)1965 ウィリー・ボスコフスキー(11)
1966 ウィリー・ボスコフスキー(12)1967 ウィリー・ボスコフスキー(13)1968 ウィリー・ボスコフスキー(14)1969 ウィリー・ボスコフスキー(15)1970 ウィリー・ボスコフスキー(16)
1971 ウィリー・ボスコフスキー(17)1972 ウィリー・ボスコフスキー(18)1973 ウィリー・ボスコフスキー(19)1974 ウィリー・ボスコフスキー(20)1975 ウィリー・ボスコフスキー(21)
1976 ウィリー・ボスコフスキー(22)1977 ウィリー・ボスコフスキー(23)1978 ウィリー・ボスコフスキー(24)1979 ウィリー・ボスコフスキー(25)1980 ロリン・マゼール(1)
1981 ロリン・マゼール(2)1982 ロリン・マゼール(3)1983 ロリン・マゼール(4)1984 ロリン・マゼール(5)1985 ロリン・マゼール(6)
1986 ロリン・マゼール(7)1987 ヘルベルト・フォン・カラヤン(1)1988 クラウディオ・アバド(1)1989 カルロス・クライバー(1)1990 ズービン・メータ(1)
1991 クラウディオ・アバド(2)1992 カルロス・クライバー(2)1993 リッカルド・ムーティ(1)1994 ロリン・マゼール(8)1995 ズービン・メータ(2)
1996 ロリン・マゼール(9)1997 リッカルド・ムーティ(2)1998 ズービン・メータ(3)1999 ロリン・マゼール(10)2000 リッカルド・ムーティ(3)
2001 ニコラウス・アーノンクール(1)2002 小澤征爾(1)2003 ニコラウス・アーノンクール(2)2004 リッカルド・ムーティ(4)2005 ロリン・マゼール(11)
2006 マリス・ヤンソンス(1)2007 ズービン・メータ(4)2008 ジョルジュ・プレートル(1)2009 ダニエル・バレンボイム(1)2010 ジョルジュ・プレートル(2)
2011 ウェルザー・メスト(1)2012 マリス・ヤンソンス (2) (予定)

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