今年もNHKテレビで、ウィーン楽友協会大ホールから生中継された、ウィーンフィル・ニューイヤーコンサートを楽しみました。
今回の指揮者はフランツ・ウェルザー・メスト。彼はオーストリア出身で、2010年秋から小澤征爾に替わってウィーン国立歌劇場の音楽監督になったそうです。フランツ・ヴェルザー・メストは、クレメンス・クラウス、ヨーゼフ・クリップス、ヴィリー・ボスコフスキー、ヘルベルト・フォン・カラヤン、ニコラウス・アーノンクールに次いで、1月1日にウィーン・フィルの指揮台に立つ6人目のオーストリアの指揮者とのことですから、ウィンナワルツやポルカはお手の物といったところでしょう。
ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートは、1941年にクレメンス・クラウスによって開催され、1955年からウィーン・フィルのコンサートマスターであったウィリー・ボスコフスキーの指揮になりました。ヴァイオリンを弾きながらの洒落た粋な感覚の優雅な演奏でしたが、ボスコフスキーが健康上の理由から1979年を最後にニューイヤーコンサートの指揮を降り、80年台になると、マゼール、カラヤン、アバド、クライバー、メータ、ムーティ、アーノンクール、小澤征爾、プレートル、バレンボイムといった巨匠と言われる指揮者の個性的な演奏が多くなり、優雅なウィーンの味わいが薄れて、特にワルツについては、リズムが重かったり、妙に表情をつけたりして、これがワルツ?と首をかしげたくなるような、昔ながらのウィンナ・ワルツの味わいとは違うものになってしまった演奏もありました。今回の生粋のオーストリア人あるウェルザー・メストは、大げさな個性的演奏は目指さず、ウィーンフィルの団員には、自発性に任せて、演奏させているように感じました。ただ、彼は、未だ50歳そこそこの若さで緊張していたせいか、演奏は真面目で規律正しく、ニューイヤーコンサートのお祭りを楽しんでいるという感じには今一歩という感じもぬぐえませんでした。先輩のクレメンス・クラウスやボスコフスキーの域に到達するには、更なる年齢的な経験と熟成が必要なのかなと思われ、それだけに、今後の活躍が益々楽しみです。 バレエ振付はジャン・ギョーム・バール(Jean-Guillaume Bart)。ソリストはウィーン国立歌劇場バレエのマリヤ・ヤコブレワとエノ・ペーチでヨーゼフ・シュトラウスのポルカ・マズルカ「遠方から」作品270を踊り、同じくヨーゼフ・シュトラウスのワルツ「わが人生は愛と喜び」作品263は、ウィーン国立歌劇場のダンサーたちがウィーン郊外のラウドン城で舞いました。今年は、例年のような大スターは出なかったものの、踊りも演出もとても充実していて良かった。生で踊られた「美しく青きドナウ」は、国立のバレエ学校の生徒達。未来のスター候補たちが、とても初々しくて楽しかった。
なお、今回のテレビ中継は、ゲストにウィーン在住の音楽ジャーナリストの山崎睦、ソプラノ歌手の佐々木典子、それに中條誠子アナウンサーで進行。
第1部と第2部の間の休憩25分に、豪華客船のウィーンフィルツアーの録画や、ペテルスブルグ、サンクトペテルブルクなどの美しい風景が放送されました。
昨年は、女性アナウンサーが、第1部と第2部の冒頭に、簡単に説明しただけで、ストレートにウィーンから中継をそのまま流していましたが、これはこれで良かった。
一昨年までは、場違いと思えるようなゲストが沢山出てきて、ろくでもない賛辞を繰り返すのにうんざりでしたが、次回以降も、昨年や今年のように、解説はあっさりとして欲しいと思います。ともあれ、地球の裏側で行われているニューイヤーコンサートを、同じ時間に日本に居ながらにして、ハイビジョンの高画質で観ることができるなんて、本当に素晴らしいことだと思います。
ウィーンフィル・ニューイヤーコンサート2011
第1部
騎兵行進曲 作品428(ヨハン・シュトラウス)
ワルツ「ドナウ川の乙女」作品427(ヨハン・シュトラウス)
アマゾン・ポルカ 作品9(ヨハン・シュトラウス)
デビュー・カドリーユ 作品2(ヨハン・シュトラウス)
ワルツ「シェーンブルンの人々」作品200(ヨーゼフ・ランナー)
ポルカ「勇敢に進め!」作品432(ヨハン・シュトラウス)
第2部
喜歌劇「騎士パスマン」からチャールダーシュ(ヨハン・シュトラウス)
ワルツ「別れの叫び」作品179(ヨハン・シュトラウス)
リストの主題による「狂乱のギャロップ」作品114(ヨハン・シュトラウス父)
メフィスト・ワルツ 第1番(フランツ・リスト)
ポルカ・マズルカ「遠方から」作品270(ヨーゼフ・シュトラウス)
スペイン行進曲 作品433(ヨハン・シュトラウス)
バレエ音楽「イベリアの真珠」から ロマの踊り(ヨーゼフ・ヘルメスベルガー)
カチューチャ・ギャロップ 作品97(ヨハン・シュトラウス父)
ワルツ「わが人生は愛と喜び」作品263(ヨーゼフ・シュトラウス)
ポルカ「ブレーキもかけずに」作品112(エドゥアルト・シュトラウス)
ワルツ「美しく青きドナウ」作品314(ヨハン・シュトラウス2世)
ラデツキー行進曲 作品228(ヨハン・シュトラウス1世)
管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮:フランツ・ウェルザー・メスト
2011年1月1日 オーストリア・ウィーン楽友協会から中継
歴代ニュー・イヤー・コンサートの指揮者 ( )は回数
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