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今年もNHKテレビでウィーン楽友協会大ホールから生中継されたウィーンフィル・ニューイヤーコンサートを楽しみました。
ウィーンフィルのニューイヤーコンサートは、1939年12月31日にクレメンス・クラウスがウィーン楽友協会大ホールでヨハン・シュトラウスの作品の演奏会を指揮したことに始まりますが、
正式に「ニューイヤーコンサート」の名で呼ばれるようになったのは1946年からだそうです。クレメンス・クラウスは、その後も指揮を続けましたが、54年に亡くなり、コンサートマスターであったウィリー・ボスコフスキーが代わって指揮をしました。ボスコフスキーは、ヴァイオリンを弾きながらというシュトラウスの時代と同じスタイルで、1979年までの25回のコンサートを指揮しましたが、
ボスコフスキー降板後はロリン・マゼール、カラヤン、クラウディオ・アッバード、カルロス・クライバーなど超一流の指揮者が指揮し、2002年には小澤征爾が指揮しました。
前回の2011年は オーストリア出身で2010年秋から小澤征爾に替わってウィーン国立歌劇場の音楽監督になった、ウェルザー・メストでした。
今年の指揮者はマリス・ヤンソンス。1943年ラトヴィア生まれという旧ソ連出身の指揮者です。マリス・ヤンソンスは日本での人気は今一つですが、ニューイヤーコンサートは2006年に続いて2回目です。
ウィーンフィル、ベルリンフィル、ロンドン交響楽団のような一流オーケストラに毎年のように客演を繰り返しているうえに、ドイツの名門バイエルン放送交響楽団、コンセルトヘボウ管弦楽団の首席指揮者を務めるとなど現在の指揮者界における中心人物なのです。
その素晴らしい指揮振りから、特にウィーン・フィルの内部より再起用の極めて強い希望があったそうです。今回も茶目っ気たっぷりの指揮ぶりで楽しめました。
また、ウィーン少年合唱団も14年ぶりの出演との事で、美しい歌声を聴くことが出来ました。
演奏曲目は、定番の「トリッチ・トラッチ・ポルカ」「ジョッキー・ポルカ」「ピツィカート・ポルカ」「美しく青きドナウ」「ラコッツィ行進曲」などに加えて、
チャイコフスキーの「眠りの森の美女」〜ワルツとパノラマなど、ニューイヤー・コンサート史上初めて登場する作品が6曲含まれていました。
バレエはウィーンのベルヴェデール宮殿の上宮で3作品が上演されました。 今年は生誕150年のクリムトイヤーなので、帝政オーストリアの画家グスタフ・クリムトの絵の前で、バレエが踊られました。 例年はスターダンサーがゲストで招かれるのですが、今回はなし。でもウィーン国立バレエがたっぷり魅せてくれて、それぞれ、楽しく興味深い踊りでした。 ポルカ「燃える恋」はクリムトの代表作「接吻」をモチーフにしたバレエでした。 振付はダヴィッド・ボンバナ。踊られたバレエは次の3曲でした。 ・ヨハン・シュトラウス2世:ワルツ「人生を楽しめ」(Freut euch des Lebens) (出演)イリーナ・ツィンバル、デニス・チェリェヴィチコ他 ・ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ「燃える恋」(Brennede Liebe) (出演)マリヤ・ヤコヴレワ、キリル・クリラーエフ ・ヨハン・シュトラウス2世:ワルツ「美しく青きドナウ」(An der schonen blauen Donau) (出演)オルガ・エシナ、ロマン・ラツィク |
今回バレエが踊られた、ベルヴェデーレ宮殿は、ラテン語で「美しい景色」という意味の名をもつ宮殿だそうで、
上宮下宮の斜面に広がる噴水のあるバロック庭園の眺めの美しさは有名で、世界10大美景といわれています。
日本からのツアー旅行にはあまり組み込まれないので、さほど知られてはいないようですが、私は2006年に東欧へのツアーの最後にウィーンに立ち寄ったとき、
現地のガイドの勧めもあって、フリータイムに足を伸ばして見てきました。
上宮は19,20世紀の絵画館になっていて、今回のバレエのモチーフにもなった有名なグスタフ・クリムトの「接吻」も見ることが出来ました。
今にしてみると、見てきて良かったと思います。
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ベルヴェデーレ宮殿(2006年東欧旅行) |
なお、ゲストによる解説は頂けない。
今回のテレビ中継は、NHK交響楽団オーボエ奏者・茂木大輔、日本ヨハン・シュトラウス協会・中村哲郎、ウィーン・フィルディスコグラフィー制作・藤本眞一、舞踊評論家・長野由紀をゲストに、
女性アナウンサーの司会による進行でしたが、
場違いと思えるようなゲストばかりを四人も揃えて、それぞれがろくでもない賛辞を繰り返していたのにはうんざりでした。
昨年のゲストは二人でまだましだったし、一昨年は女性アナウンサーが第1部と第2部の冒頭に簡単に説明しただけで、ウィーンからの映像をストレートに流していて、とても良かった。
次回以降は、一昨年のように余計なゲストなど呼ばずに、あっさりとした解説で進行して欲しいと思います。
ともあれ、地球の裏側で行われているニューイヤーコンサートを、同じ時間に日本に居ながらにして、ハイビジョンの高画質で観ることができるなんて、本当に素晴らしいことだと思います。 第1部
1. 祖国行進曲(ヨハン・シュトラウス2世/ヨーゼフ・シュトラウス)★
2. ワルツ「市庁舎舞踏会でのダンス」作品438(ヨハン・シュトラウス2世)★
3. ポルカ「あれか、これか」作品403(ヨハン・シュトラウス2世)★
4. トリッチ・トラッチ・ポルカ作品214(ヨハン・シュトラウス2世)▲
5. ワルツ「ウィーンの市民」作品419(カール・ミヒャエル・ツィーラー)
6. アルビオン・ポルカ作品102(ヨハン・シュトラウス2世)
7. ポルカ「騎手」作品278(ヨーゼフ・シュトラウス)
第2部
8. 悪魔の踊り(ヨーゼフ・ヘルメスベルガー)
9. フランス風ポルカ「芸術家の挨拶」作品274(ヨーゼフ・シュトラウス)
10. ワルツ「人生を楽しめ」作品340(ヨハン・シュトラウス2世)●
11. シュペール・ギャロップ作品42(ヨハン・シュトラウス2世)
12. コペンハーゲン蒸気機関車のギャロップ(ハンス・クリスティアン・ルンベイ)★
13. 鍛冶屋のポルカ作品269(ヨーゼフ・シュトラウス)▲
14 . 「カルメン」カドリーユ作品134(エドゥアルト・シュトラウス)
15. バレエ「眠りの森の美女」から「パノラマ」(ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー)★
16. バレエ「眠りの森の美女」から「ワルツ」(ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー)★
17. ピツィカート・ポルカ(ヨハン・シュトラウス2世/ヨーゼフ・シュトラウス)
18. ペルシャ行進曲作品289(ヨハン・シュトラウス2世)
19. ポルカ「燃える恋」作品129(ヨーゼフ・シュトラウス)●
20. ワルツ「うわごと」作品212(ヨーゼフ・シュトラウス)
21. ポルカ「雷鳴と電光」作品324(ヨハン・シュトラウス2世)
[アンコール]
22. チック・タック・ポルカ作品365(ヨハン・シュトラウス2世)
23. ワルツ「美しく青きドナウ」作品314(ヨハン・シュトラウス2世)●
24. ラデツキー行進曲作品228(ヨハン・シュトラウス1世)
【演奏】
マリス・ヤンソンス(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン少年合唱団(第1部[4]、第2部[13])
2012年1月1日、ウィーン楽友協会ホール(ムジークフェラインザール)でのライヴ
★ニューイヤー・コンサート初登場の作品、▲ウィーン少年合唱団共演(1988年以来14年ぶり)、
●バレエが踊られた曲 |
1941 クレメンス・クラウス(1) | 1942 クレメンス・クラウス(2) | 1943 クレメンス・クラウス(3) | 1944 クレメンス・クラウス(4) | 1945 中止 |
1946 ヨーゼフ・クリップス(1) | 1947 ヨーゼフ・クリップス(2) | 1948 クレメンス・クラウス(5) | 1949 クレメンス・クラウス(6) | 1950 クレメンス・クラウス(7) |
1951 クレメンス・クラウス(8) | 1952 クレメンス・クラウス(9) | 1953 クレメンス・クラウス(10) | 1954 クレメンス・クラウス(11) | 1955 ボスコフスキー(1) |
1956 ウィリー・ボスコフスキー(2) | 1957 ウィリー・ボスコフスキー(3) | 1958 ウィリー・ボスコフスキー(4) | 1959 ウィリー・ボスコフスキー(5) | 1960 ウィリー・ボスコフスキー(6) |
1961 ウィリー・ボスコフスキー(7) | 1962 ウィリー・ボスコフスキー(8) | 1963 ウィリー・ボスコフスキー(9) | 1964 ウィリー・ボスコフスキー(10) | 1965 ウィリー・ボスコフスキー(11) |
1966 ウィリー・ボスコフスキー(12) | 1967 ウィリー・ボスコフスキー(13) | 1968 ウィリー・ボスコフスキー(14) | 1969 ウィリー・ボスコフスキー(15) | 1970 ウィリー・ボスコフスキー(16) |
1971 ウィリー・ボスコフスキー(17) | 1972 ウィリー・ボスコフスキー(18) | 1973 ウィリー・ボスコフスキー(19) | 1974 ウィリー・ボスコフスキー(20) | 1975 ウィリー・ボスコフスキー(21) |
1976 ウィリー・ボスコフスキー(22) | 1977 ウィリー・ボスコフスキー(23) | 1978 ウィリー・ボスコフスキー(24) | 1979 ウィリー・ボスコフスキー(25) | 1980 ロリン・マゼール(1) |
1981 ロリン・マゼール(2) | 1982 ロリン・マゼール(3) | 1983 ロリン・マゼール(4) | 1984 ロリン・マゼール(5) | 1985 ロリン・マゼール(6) |
1986 ロリン・マゼール(7) | 1987 ヘルベルト・フォン・カラヤン(1) | 1988 クラウディオ・アバド(1) | 1989 カルロス・クライバー(1) | 1990 ズービン・メータ(1) |
1991 クラウディオ・アバド(2) | 1992 カルロス・クライバー(2) | 1993 リッカルド・ムーティ(1) | 1994 ロリン・マゼール(8) | 1995 ズービン・メータ(2) |
1996 ロリン・マゼール(9) | 1997 リッカルド・ムーティ(2) | 1998 ズービン・メータ(3) | 1999 ロリン・マゼール(10) | 2000 リッカルド・ムーティ(3) |
2001 ニコラウス・アーノンクール(1) | 2002 小澤征爾(1) | 2003 ニコラウス・アーノンクール(2) | 2004 リッカルド・ムーティ(4) | 2005 ロリン・マゼール(11) |
2006 マリス・ヤンソンス(1) | 2007 ズービン・メータ(4) | 2008 ジョルジュ・プレートル(1) | 2009 ダニエル・バレンボイム(1) | 2010 ジョルジュ・プレートル(2) |
2011 ウェルザー・メスト(1) | 2012 マリス・ヤンソンス (2) |
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