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横浜開港150周年記念バレエ公演「創作・人魚姫/オーロラ姫の結婚」  (2009.12.10)
関内ホールでは、横浜開港150周年を記念して、未来を担う若手バレリーナに門戸を広げるため、平成20年に、プレ記念公演として「エリアナ・パブロワを偲んで〜バレエの名作集/パキータ」を上演し、高い評価を受けました。 そして、2009年9月、このプレ公演を踏まえ、より横浜らしさを生かす市民創作バレエ「人魚姫」と、開港記念のお祝いにふさわしい華やかな舞台「オーロラ姫の結婚」を上演しました。 この舞台のダイジェストが、TVKテレビで放送されました。
 
第1部 オーロラ姫の結婚
これは「眠れる森の美女」の第3幕部分に、プロローグの妖精達のパ・ド・シスを足したもの。ドラマがハッピーエンドを迎えたあとの賑やかな結婚式の場面なので、ストーリーを気にせずにダンサーの踊りだけを見るというディベルティスマン。 オーロラ姫は下村由理恵、デジレ王子は逸見智彦、リラの精は友利知可子。下村由理恵は逸見智彦と組むのは初めてとのことで、 DANZAのホームページのDANZA 7月号(5月28日発行)に下村由理恵のインタビューが載っています。 下村由理恵の「彼には一度もここ(ウェスト)を支えてもらったことがないので未知数です。 サポートされるとその方のことがわかるんです。」という言葉にはバレリーナらしからぬ嫌らしさのようなものを感じました。
一方逸見智彦は「僕の方が緊張してしまった」と言っているほど、5歳以上も年上のベテランに圧倒されて萎縮してしまったのか、 下村由理恵にリードされっぱなしで、うまく合わせて踊るのに精一杯で、 フィアンセであるオーロラ姫に対する愛情を表現する余裕がないといった感じでした。 下村由理恵は「彼の演じる王子にふさわしい女性らしいオーロラ姫を作り上げないと」と言っていたけれど、 ミスせずそつなくこなしたという感じで、新妻オーロラ姫の不安と喜びが入り混じった乙女心をうまく表現できたとは言えず、 「女性らしいオーロラ姫」とは思えなかった。バランスやフィッシュダイブの正確さなど、アラフォーになっても踊りのうまさは変わらないけれど、さすがに、かっての初々しさと可愛らしさの衰えは否めない。 オーロラ姫を踊るバレリーナの卵にアドバイスをと聞かれて、 下村由理恵は「オーロラ姫はクラシックバレエの基本。格調高い作品ですから基礎が出来ていないとならない。 派手なテクニックはないので基本的なラインを要求されるので、毎日きちっと稽古をして下さい」と教科書的なありきたりの答えだったのは残念。 彼女は指導者としても定評があるので、もっとしっかりとしたアドバイスをして欲しかった。

第2部 創作・横浜の人魚姫
東京バレエグループを主宰する横井茂の作。これは、とても良かった。 実際に尾ひれのように見える足の動きなど、人魚姫を踊った島田衣子の踊りに加え、振付そのものも素晴らしかった。 前半、人魚姫に救われる青年はボードセイリングをする現代の若者として登場するし、後半では横浜の街並みを映像で流しながら、実在の病院やホテルを舞台にして話が展開します。 人魚姫を踊った島田衣子は、井上バレエ団の若きプリンシパル。赤い鱗模様の入ったユニタードを着て、コンテンポラリー的な踊り。 本当に尾ひれのように見える足の動きなど見事でした。後半に入って横浜各所のランドマークをスクリーンに映して紹介しつつ踊っていく シーンでは、人魚姫の存在を忘れてしまいそうになります。陸に上がった人魚姫が助けた若者と舞踏夜会の中で再会するまでの話を 軸にしながら、群舞がたびたび挿入されます。若者役は東京シティ・バレエ団の小林洋壱。前半に比べるとかなりクラシックバレエな 感じのパ・ド・ドゥを踊りました。
島田衣子は「トゥで立ったままで膝をついたり、ゴロゴロ転がったりで、膝などに青あざが一杯出来てしまって、タイツの下は とてもお見せする状態ではない」とかなり苦労した様子ですが、「でも、とても楽しかった」と可愛らしい笑顔でした。未来のプリマに 一言と聞かれて「いろいろな舞台をみたり、学校の勉強も含めて、いろいろなことにアンテナを張って、吸収したことを自分の踊りに 取り入れて、素敵なダンサーになって下さい」と言っていました。今回の素晴らしい舞台を見ると、この言葉には納得。説得力があります。 自分自身が「いろいろなことにアンテナを張って」吸収したからこそ今回の素敵な人魚姫の踊りが生まれたのでしょう。 終わった時、可愛い額と胸は汗びっしょり。文字通りの熱演に感動でした。 結婚によって心は充実し、いつもの井上バレエ団とは違った新しい経験をして、また一歩成長した島田衣子。 一層の活躍を期待したい。

この横浜開港150周年記念バレエ公演、「オーロラ姫の結婚」はピークを過ぎた大物役者の顔見世のようで余計な出し物に思えてしまった。 島田衣子の熱演が素晴らしかっただけに、プログラムは独創的な「横浜の人魚姫」だけの方が良かったような気がします。 尤も、前日9月20日の「オーロラ姫の結婚」は 下村由理恵に代わって、若い関口淳子が踊ったそうですから、 こちらは新鮮味があって良かったかもしれません。   前日の様子は、 →こちら
それにしても島田衣子は素晴らしい。小さな体に公演の責任をずっしりと受け止め、見事に大役を果たしたという感じです。 爽やかで軽々とした身のこなし、リズム感、ゆるぎないバランス感覚、どれもこの上なく美しい。 現在、日本で最も美しいバレエダンサーの一人でしょう。
    横浜開港150周年記念バレエ公演「創作・人魚姫/オーロラ姫の結婚」
    <オーロラ姫の結婚>(監修:牧阿佐美)
    オーロラ姫:下村由理恵、デジレ王子:逸見智彦、
    フロリナ王女:大滝よう、青い鳥:今勇也
    <創作・横浜の人魚姫>(作:横井茂)
    人魚姫:島田衣子、若者:小林洋壱

    関内ホール、2009年9月21日
 

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