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日本バレエ協会関西支部「海賊」  (2004.12.11改)

関西で活躍している若きバレリーナ、西田佑子は、先日、東京で主役デビューを果たしました。日本バレエ協会主催の「眠りの森の美女」のオーロラ姫です。彼女は、関西のバレエ界では人気者だそうですが、東京ではほとんど知られていません。彼女の魅力は何といっても可憐で美しい表情。それに、小柄ながら、光り輝く伸びやかなラインをもち、テクニックにも強く、バレエのヒロインとしての条件を完璧に満たしている美しいダンサー。西田さんにとって「眠り」は「子供のころ、テープがすり切れるほどビデオを見た」という大好きな作品だそうですが、いざ踊るとなると大変。ローズアダージョでは、時として見せた険しい表情に、彼女の緊張が伺われました。でも踊りは見事。彼女は今回の公演で、東京の観客に、西に西田佑子ありを、強く印象付けました。
西田佑子は、大阪の法村友井バレエ団に所属していたのですが、 彼女の名前が、同バレエ団のホームページから消えています。 退団してしまったのでしょうか。ファンとしてはとても気がかりなところです。
 
この西田佑子が、数年前にヒロインを踊った、バレエ「海賊」の映像があります。日本バレエ協会関西支部「海賊」(2002年1月)です。
この公演「バレエ芸術劇場」は、マリインスキー劇場キーロフバレエ団、ワガノワ・バレエ学校および日本バレエ協会関西支部の三者共同企画で、 1974年にスタートし今年(2004年)で第31回目を数えます。 バレエの原典たるワガノアメソッドを日本のバレエ芸術家に伝授し、 次世代へ継承してゆくことを目的というこのバレエ芸術劇場には、法村友井バレエ団をはじめとして、多くの関西のバレエ団のダンサーが出演し公演に華をそえています。
小柄で愛らしい感じの西田佑子には、この「海賊」のメドーラはまさに適役。見せ方も心得ている感じです。彼女、バランスが特に得意そうで、要所要所でぴたりと決め、ため息を誘いました。
 
「海賊」で主役メローダの見せ場は、三カ所あります。
まず、第1幕のパ・ド・ドゥ。メドーラとコンラッドのパ・ド・ドゥですが、途中アリの踊りが加わり、3人で踊ります。アリは佐々木大が務めていますが、これがダイナミックで素晴らしい。メドーラの西田さん、アダージョも美しかったのですが、コーダでのグランフェッテが特に見事でした。前半はダブルを入れて軽快に回り、最後までスピードが落ちません。フィニッシュでわずかに足元がふらついたもののご愛敬。踊り終わった笑顔がとても美しかった。
第2幕のパ・ド・ドゥ。この場面が西田佑子の魅力が最大限に発揮できたところのように思います。相手役のコンラッドは同じ法村友井バレエ団の法村圭緒。気心の知れた二人のパートナーシップはぴったり。高いリフトでの倒立のような難しいポーズをぴたりと決め、真っ逆さまに落ちてフィッシュダイブ、西田佑子のテクニックが光りますv。法村圭緒さんのサポートはパワフルで、がっしりと西田佑子を受け止めています。 西田佑子は、安心して身を任せて、法村さんの腕の中を、思いのまま泳ぎ回っている魚という感じでした。 それにしても西田佑子、本当に体が柔らかい。180度近くまで軽々と脚があがります。ダンサーの中には、こんなポーズをすると下品に感じてしまう人もいますが、彼女、こんなに脚を上げても少しもいやらしさを感じさせず、本当に優雅。体の中から自然に出てきたような清潔感に溢れています。本当に素敵なバレリーナだと思います。
そして第三幕夢の場面。クラシックチュチュに着替えた西田佑子、とても可愛らしかった。小柄ながらほっそりと美しいプロポーション、清潔感溢れた彼女には、クラシックチュチュがもっともよく似合います。アダージョでの、両手に花を持ってのバランスは、ぴたりと決まり、ここでも柔和な笑顔が美しかった。 でも、1幕から出ずっぱりの西田佑子、ヴァリエーションでは、やや疲れが出てきたようでした。 動きは柔らかく、とても愛らしい踊りだったのですが、グランジュテの開脚と高さは不十分だったし、終盤のイタリアンフェッテはかなり辛そうでした。 軸足のズレを必死に堪えて難しい回転に挑む姿には、ハラハラして、思わず「頑張れ」と叫びたくなった。 もう少しで終わりという10回目で、軸足のトゥの先が崩れて回転が止まって破綻。でもそこで止めてしまわずに、力を振り絞って、最終の一回を頑張って回りきったのは偉い。 両足を揃えてトゥで立ってのフィニッシュでは、必死に堪えたけれどトゥの先のが乱を止められなかった。 踊り終わってのレヴェランス、西田佑子、笑顔ながらも、納得がいかないという表情。ヴァリエーションの出来が心残りだったのでしょう。 この西田佑子のイタリアンフェッテのミスは、彼女が1〜2幕で頑張り過ぎて、第3幕の終わりで力尽きてしまったのでしょう。 むしろ、彼女、この舞台で、力の配分の難しさを知って一歩成長したと言えるのではないでしょうか。きっと、次回は、力の配分を考えて、一層素晴らしい舞台を見せてくれることでしょう。

ともあれ、西田祐子、初々しく可愛らしく、かつテクニックにも優れ、素敵なメドーラの演技でした。今後の活躍が楽しみなダンサーです。 法村友井バレエ団から名前が消えた彼女ですが、ぜひ、もう一度、彼女の初々しく可憐な、素敵な踊りを見たいものです。
 
「海賊」の映像には、アスィルムラートワ主演のキーロフ版、ケント主演のABT版が定評がありますが、若いダンサーたちのフレッシュな魅力にあふれた、この日本バレエ協会関西支部によるものも、私の大切な宝物の一つです。
    日本バレエ協会「海賊」
    メド-ラ:西田佑子、ギュリナーラ 矢吹智里
    コンラッド 法村圭緒、ランケデム 恵谷彰
    アリ 佐々木大、ビルバンド 奥田慎也
    芸術監督 A.アスィルムラートワ
    演奏 関西フィルハーモニー管弦楽団
    2002.1.20、大阪国際会議場メインホール

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