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映画「尼僧物語」(The nun's story)     (2005.2.19)

映画「尼僧物語」は、妖精的な魅力でもてはやされてきたオードリー・ヘプバーンが、演技派女優としての真価を見せた作品だと思います。
ベルギーの医師の娘ガブリエラ(オードリー・ヘップバーン)は、俗世と縁を切って修道院に入ります。ガブリエラが尼院生活を通じて知ったものは、尼僧としての戒律の枠の中にこもった生活より、現実の困難な生活の中に身を挺することにこそ、自分の人間としての本当の生き甲斐があるということでした。彼女は植民地コンゴで看護婦として医療活動に励みますが、やがて第2次世界大戦の勃発し修道院に戻されます。けれど、戒律に縛られた修道院は合わず、追放の形で尼僧院を追われ、古い少女時代の服装で第二次大戦下の厳しい俗界の町へ出て行きます。
オードリーは、晩年ユニセフの親善大使となって、癌に冒されて倒れる直前まで、献身的に福祉活動に身を投じますが、これを連想させる物語です。
 
私は、オードリーの清楚さ、美しさにおいても、この「尼僧物語」が一番と思います。オードリーは日本で最も愛されている女優の一人ですが、その魅力が「清純と気品」にあるとすれば、この「清純と気品」が、「ローマの休日」以上に、最も活かされているのが、この「尼僧物語」でしょう。
オードリーの、華奢で、はかなげな風情と、不安に揺れる大きな美しい瞳は、まさに清純で慎ましい尼僧にぴったり。強い意志と信念をみなぎらせたヒロインを、オードリーは熱演しています。そこには、「昼下がりの情事」や「麗しのサブリナ」のような、ただキュートなだけの人形ではない、怜悧で果敢な「本物の女優」としての意気込みが感じられます。
 
「真昼の決闘」などの巨匠フレッド・ジンネマン監督が人間として自立していくひとりの修道尼の姿を描き、ヘプバーンが神に尽くすよりも人間に尽くそうとするヒロインを見事に演じています。晩年のユニセフ親善大使にも見られる通り、ヘプバーンが偉大かつ神聖な女性であるのを証明した映画でもあり、ヘプバーン映画というと「ローマの休日」がまず挙げられますが、私は、彼女の作品の中での最高傑作だと思っています。
 
  尼僧物語 THE NUN'S STORY    監督: フレッド・ジンネマン
  出演: オードリー・ヘプバーン 、ピーター・フィンチ、イーディス・エヴァンス、
      ペギー・アシュクロフト、ディーン・ジャガー、(1959年アメリカWB映画151分)


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