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白鳥の湖」〜第三幕・黒鳥のパ・ド・ドゥ: 森本由布子・関口武    (2005.05.01改)
微笑ましいパートナーシップに魅せられる映像があります。森本由布子と関口武の「黒鳥」のパ・ド・ドゥです。 このパ・ド・ドゥ、お互いの協力の気持ちが滲み出ていて、いつ見ても心が和みます。 森本由布子は、1985年モスクワバレエコンクール 第2位・銀賞受賞。1986年 日本バレエ協会公演「眠れる森の美女」で華々しくデビューしましたが、このオーロラ姫は、本当に初々しく華やかで素敵でした。 彼女は、その後特定のバレエ団に所属せずフリーで活躍しました。

この「黒鳥のパ・ド・ドゥ」映像は、森本由布子が、1994年ころ、テレビ東京「バレエ誕生」に出演したときのものです。パートナーの関口武との息はピッタリ、微笑ましさ溢れる踊りです。関口武のサポートは、実に的確。森本由布子の動きを良く見て、丁寧なサポートをしています。 理想のダンスール・ノーブルといったところです。
アダージョでは、森本由布子は、関口武に安心して身を任せているという感じで、実に伸び伸びと踊っています。 アダージョ中盤のアラベスクで、森本由布子は、息を呑む長〜いバランスを保ちました。 左足のポアントで立ち、右足を後方に上げて、関口武がデリケートに支えている右手を、慎重に離して独り立ちし、バランスをグッと堪えます。 後方に伸びた足がグラグラ揺れたけれど懸命に頑張ったのは偉い。 森本由布子が、もうこれ以上は限界とバランスが不安定になりかけたところで、関口武、すかさずウエストに手を添えてホールド。森本由布子は関口武と顔を見合わせて、「上手に支えてくれて、ありがとう」と言っているようにニッコリ。 この場面、日本の有名なダンサーが、女性のサポートを忘れ、女性が、危うく倒れそうになったのを見たことがあり、 「しっかりしろよ」と怒りたくなった。女性のサポートを忘れる男性ダンサーなんて、最低ですよね。
ただ、アダージョ終盤近くのアラベスク・パンシェでは、パートナーをギュッと握り締めた腕がギクギク揺れて不安定なバランスを懸命に堪えたけれど、160度位しか脚が挙がらなかった。 この場面、悪魔オデールのカリスマ性を示すため、脚は上がるだけ挙げたほうがよいとされ、180度を超えて足を上げる人もいるほどなので、もう少し上げて欲しかった。 アダージョを踊り終わった森本由布子の額や胸は汗びっしょり。力を振り絞って懸命に頑張ったのでしょう、ほっとした表情が魅力的です。 ヴァリエーションでの森本由布子の踊りは実に丁寧。心を込めて踊っているという感じです。甲がスッキリ伸びたポアントは美しく、波打つ腕もしなやか。 汗を拭って出てきた彼女でしたが、ヴァリエーションが終わる頃には、再び胸には汗がきらきらと光っていました。体力だけでなく、どんなにか、神経をすり減らしていたかわかります。胸が熱くなります。 最後の難関のグランフェッテでは、連続二回転を連発。極めて重労働な32回転、辛そうな表情ながらも、大ハッスル。後半疲れがでたのか、軸足がわずかにずれてきたものの、歯を食いしばって必死に頑張って回る姿は何ともいじらしく、思わず、「もう少しだ、がんばれ!!」と呼びかけたくなる熱演でした。 最後は、「さあ来い」と身構える関口武を目がけて、大きくジャンプ。高々とリフトされて、バッチリと美しいポーズを決めてフィニッシュ。抱き下ろされて、深々とレヴェランス(お辞儀)をする森本由布子を見て、「うまくいって、良かったね」と言っているような関口武の優しい笑顔が爽やかでした。

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