映画「オーケストラの少女」は大好きな映画の一つです。10年以上も前にVHSビデオテープで買ったときは、数千円と高かった記憶がありますが、先日買った著作権保護期間の終了のパブリックドメイン版は、「素晴らしき哉、人生!」と二枚組で500円。往年の名画のDVDを安く買えるのは大歓迎です。
監督ヘンリー・コスター、音楽アンドレ・プレビン、主な出演者は、ディアナ・ダービン、アドルフ・マンジュー、そして大指揮者レオポルド・ストコフスキー。
1937年のアメリカ映画です。
大まかなストーリーは次の通りです。
トロンボーン奏者カードウェルは、失業中。
今日も楽屋に忍びこみ、楽団員として雇ってくれないかと頼みますが、一向に相手にされません。
疲れ果てて、娘のパトリシアが待つアパートにもどる途中で財布を拾います。彼はその財布を持ち帰り家賃を払い、パトリシアには楽団員に雇われたのだと嘘をついてしまいます。
次の日、パトリシアは、リハーサルだと出ていった父のあとを追って、真相を知り、持ち主のスコット夫人に財布を返しにいきます。
パーティの最中だったスコット夫人は、パトリシアの話を聞き、からかい半分に、パトリシアが失業者たちを集めてオーケストラを編成できたら援助をしてあげると彼女に言います。
パトリシアは、父の仲間である失業音楽家を集めて自分達のオーケストラを結成。大胆にも世界的指揮者レオポルド・ストコフスキーに近づき、彼に指揮を頼み込みます。このとき彼女が歌うモーツァルトの「エクスターテ・ユービラーテ(踊れ、喜べ、汝、幸いなる魂よ)」k.165のアレルヤが見事です。
最後は、父親と仲間を引き連れて強引にストコフスキーの家に忍び込み、オーケストラの演奏を聴いて貰います。
三階から一階まで螺旋状に連なる階段を埋め尽くす彼らの演奏するリストの「ハンガリア狂詩曲第二番」を聴いているうち、知らず知らず、指揮者の腕が動き出し、彼の指揮で父親とその仲間たちのオーケストラ演奏が実現するというサクセスストーリーです。
ラストのシーンで、観客への挨拶に代えて、パトリシアが喜びに満面に称えて歌う「乾杯の歌」、けなげな姿には、思わず涙を誘われます。
とても心温まる善意に満ちた音楽映画です。これがアメリカンドリームとでも言うのでしょうか。
主演のディアナ・ダービンは、かの世紀のソプラノ・マリア・カラスを差し置いて起用されたという天才少女。さすがに素晴らしい歌唱力で、モーツァルトの「アレルヤ」やヴェルディの「乾杯の歌」、「光の雨」、「心は自由」の4曲を歌い、その澄み切った美声は「天使の歌声」と評されたとのことです。
彼女の歌声がなければ有名な指揮者の心も動かなかったでしょう。
当時のクラシック界の大物指揮者ストコフスキーとフィラデルフィア管弦楽団が特別出演している事が大きな話題となり、
ホームドラマにクラシック音楽を組み合わせるという初めての試みに挑んだこの映画は、第10回アカデミー賞では作品賞を含む5部門にノミネートされ、作曲賞を受賞しました。
この映画が作られたのは、1937年。第二次世界大戦の前のことです。この暗黒の時代に、こんなに明るく楽しく、しかも感動的な映画が作られたとは、奇跡と言ってもよいでしょう。
このビデオテープとDVDは、私の宝物のひとつです。
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