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映画「ロイヤルバレエ」    (2003.7.20)

1960年、まだ私が中学生の頃、コベントガーデン王立歌劇場で一本の記録映画が作られました。 その映画の名は、「ロイヤル・バレエ」。
この映画の制作者ポールツィンナーは、名画の誉れ高いカラヤン指揮ウィーンフィルのリヒャルトシュトラウス「薔薇の騎士」の制作者です。 「薔薇の騎士」はザルツブルク音楽祭のライブで、シュワルツコップ、ユリナッチ、ローテンベルガーといった夢のようなキャストによるオペラの映画でした。
 
この映画「ロイヤルバレエ」は、まだフォンティーンがルドルフ・ヌレエフと出会う前、30代の終わり頃の彼女が最も脂の乗り切った時代の映像で、絶頂期のフォンティーンを知ることが出来る貴重なフィルムだと思います。 この後、フォンティーンは、更に20年ほど活躍するのですが、彼女はヌレエフの刺激を受けて、 内面的に充実してくるものの、やはり年齢には勝てず、技術的には、この映画の頃が絶頂だったと思います。
映画は3部から成っています。第1部:白鳥の湖〜第2幕、第2部:火の鳥、第3部:オンディーヌ。振り付けは、フレデリック・アシュトン。フォンティーンが駆け出しの頃からの振り付け師で、フォンティーンとお互いを知り尽くしたコンビです。
フォンティーンのパートナーは、マイケル・サムス。これまた、長年のパートナー。後のパートナーのヌレエフが、フォンティーンと芸を競い合うようなところも見せたのと違い、ソームスはフォンティーンのサポート役に徹しています。
 
3作はともに見ごたえがあります。第1部白鳥の湖第2幕はマーゴ・フォンテーンならではの端正な踊り、第2部は躍動的な火の鳥、少しコミカルな感じでなかなか楽しめました。そして、特に際立って、彼女の本領発揮とも思えるのが、第3部「水の精:オンディーヌ」です。
このバレエは、アシュトンがフォンティーンのために振付けた21番目のバレエで、この映画にほぼ全編が収録されています。
この映像を見るとフォンティーンが単なるダンサーというだけでなく、このうえなく優れた演技力の持ち主であることが分かります。マーゴ独特のエレガントな踊りに留まらず、ものすごい迫力に圧倒されます。約一時間半、フォンティーンはほとんど出ずっぱりでかなりの重労働でしょう。でもどの場面も少しの疲れも感じさせず、凄い演技に引き込まれて目を離せません。
ラストでのパートナーの上に倒れ掛かるところは、息も絶え絶えになるほどの熱演。鳥肌が立つほどの迫力でした。
1960年制作とは言え、映像はとてもきれいです。この映画「ロイヤルバレエ」は、海外では評判だったそうですが、残念ながら日本では、あまり話題にならなかったようです。 当時の日本では、バレエは一部の愛好家のものだったので仕方がないかもしれません。 一時、ビデオでも出ていたようですが、現在は廃盤らしいので、是非、DVDで再発売をして欲しいものです。
 
私は、この映画「ロイヤルバレエ」を、CS放送のクラシカ・ジャパンで見ました。 CS:クラシカジャパンの受信料はとても高い(月額3000円)。でもこのような優れた番組を放送してくれると、受信料の高さも納得いきます。 これからも、このような素敵な番組の放送を希望します。
 
それから、NHKさんにお願いです。 NHKは1970年代まで、「NHKバレエの夕べ」とか「新春バレエコンサート」などのバレエ番組がありました。新進バレリーナの紹介もあり、とても楽しみにしていました。 でも、プロデューサーが替わったとかで、これらの番組はなくなってしまいました。
今ではバレエ鑑賞の人口も増えました。視聴率にとらわれずに、ぜひ、これらの番組を復活して下さることを希望します。

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