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「赤い靴」のモイラ・シアラーの死を悼む      (2006.2.12)

2006年1月31日、英国の女優、モイラ・シアラーが亡くなくなりました。享年80歳。オックスフォードの病院で、夫や子供たちが見守る中、安らかに息を引き取ったそうです。
モイラ・シアラーは、ロンドンのサドラーズ・ウェルズ・バレエ団(現ロイヤル・バレエ団)で活躍し、振付師の故フレデリック・アシュトンによる作品でも重要な役割を果たしました。1948年、アシュトン最初の長編バレエ「シンデレラ」初演のステージで主役を踊り大成功をおさめています。
同じ年、彼女はバレエ映画「赤い靴」(エメリック・プレスバーガー監督)に主演しました。アンデルセン童話を題材に作られた物語の中で、死ぬまで踊り続ける赤い靴を履いた少女の役を演じたシアラーは、その輝くばかりの美しさで世界中の観客を魅了し、一躍世界のスターになったのです。しかし同じサドラーズ・ウェルズ・バレエ団にはマーゴ・フォンティーンが居り、プリマとして君臨していました。シアラーは映画で世界の脚光を浴びたものの、バレエではマーゴを越えるスターになることはできませんでした。27歳で寂しくバレエ界から去って女優に転向、「ホフマン物語」、「3つの恋の物語」、「ブラックタイツ」などの映画に出演しました。しかしもとバレリーナということで、映画の中でもバレエを踊らされることが多く、最後までバレエから脱皮することが出来ず、本格的な映画女優になりきれないで終わってしまいました。結婚後は、しばらく4人の子供の育児に専念、芸能界から遠ざかっていましたが、晩年は執筆活動やラジオの司会、バレエ史に関する講演などで精力的な活動をしていたということです。
モイラ・シアラーは、バレエでは、マーゴット・フォンティーンの影に隠れ、女優としても大成できなかった暗いイメージが漂っていますが、映画「赤い靴」の中では、最高に優れたバレリーナ、かつ最高に美しい女優であり、この名画「赤い靴」を一度でも見た人の心の中に、いつまでも悲劇の、そして理想のヒロインとして長く生き続けていくことでしょう。ご冥福をお祈りいたします。

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