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スズキ・バレエ・アーツ「くるみ割り人形」  (2004.12.23)
  古谷智子さん、金平糖の精を熱演

12月に入って、今年も各地でバレエ「くるみ割り人形」が上演されています。 こんな中で、今回は、スズキ・バレエ・アーツの公演に行ってきました。花形ダンサーを揃えた贅沢な「くるみ・・・」公演が多い中、こじんまりとした、とても可愛らしい「くるみ割り人形」でした。
スズキ・バレエ・アーツは、鈴木和子さんが主催する神奈川県の大船にあるバレエ研究所。毎年夏に行う発表会では「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「コッペリア」等、数々の名作に取り組んでおり、冬にはクリスマス定番の「くるみ割り人形」の全幕公演も行い、団員たちが豊富な舞台経験が出来るようにしているようです。元英国ロイヤルバレエ団の古谷智子さん、英国ノーザンバレエの雨森景子さん等が講師をしています。
 
今回の「くるみ割り人形」は、スズキ・バレエ・アーツの18回公演とのことで、金平糖の精に、古谷智子さん、王子は、谷桃子バレエ団の今井智也さんが務めました。古谷智子さんは、スズキ・クラシック・バレエ・アカデミーで鈴木和子に師事。'91年ローザンヌ国際舞踊コンクールでエスポワールを受賞、'94年に英国ロイヤルバレエ団入団しました。ロイヤルバレエ退団後、バレエ指導者の資格APDTDISTD(imperial Society of Teachers of Dance)およびPDTD(professional Damcers Teaching Diploma)を修得。現在ロンドンをベースに活躍中です。以前、青山バレエフェスティバルでゼンツァノの花祭りのパドドゥを踊っていたビデオが手元にありますが、とても楽しそうな軽快な踊りですv。 また2002年頃、一時帰国して、昌宏さんとスズキ・バレエ・アーツのコッペリアに主演しましたv。この時の古谷さんは、さすがにロイヤルのプリマに相応しく、技巧的な踊りに加え、主役としての演技の幅を見せました。志村さんの手に掴まり、思い切り180度まで脚を上げたアラベスクのポーズが美しかったのを記憶していますv。 この時は、あまり痩せてはだめ、もう少し肉をつけたほうが良いと言われたそうで、少しふっくらした感じでした。今回は、一転、かなり痩せたようでしたが、ぎすぎすした感じではなく、ほっそり、清らかな容姿でした。でも、白鳥のオデットやジゼルにはとてもよく似合いそうですが、甘い金平糖の精には、もう少しふくよかな感じも欲しいかな、と感じました。
その他にも、ドロッセルマイヤーをはじめとする男性陣は、谷桃子バレエ団からの応援を受けていますが、クララや雪の女王など女性の主要な役やコールドバレエは、スズキ・バレエ・アーツのダンサーが務めました。
クララの採田亜矢子さん。終始美しい笑顔で、体がとても柔らかく、可愛らしい踊りでした。雪の女王の染谷安友美さん。かなり緊張しておられたようで、動きがやや固い気がしましたが、懸命に踊る姿に感動しました。一緒に踊った雪の精の新井望さんと山本理紗さんは、柔らかで軽快な踊りで、またアラベスクのポーズも幻想的で美しかった。特筆すべきは、二幕最初の、大森和子さんの海の女王の踊り。ロイヤルフランダースバレエ団からフリーに転向したそうですが、さすが経験豊富と感じました。 また、シンガポールダンスシアターからの客演の清水さくらさんのスペインの踊り、見事なグランフェッテで大きな拍手を受けていました。 その他のソリストやコールドバレエの皆さん、日頃からの練習の成果を披露しようと、頑張って全員でステージを盛り上げようとしているのがよくわかりました。
クライマックスの金平糖の踊り。奥から、今井智也さんの王子と古谷智子さんの金平糖の精の登場すると、ひときわ大きな拍手がわき上がりました。王子と金平糖の精が、ゆったりとお互いがお互いに、手を差し伸べて、静かに前に出てきて、丁寧な微笑ましいパートナーシップを見せます。 古谷さんは、最初、笑顔を見せる余裕もないほど緊張しておられたようで、アダージョ出だしの見せ場の二度のアチチュードでは、今井さんに掴まっている腕がギクギク揺れて安定せず、ハラハラしましたが、歯を食いしばって必死にバランスをとる姿に感動、思わず、頑張れ!!と声をかけたくなりましたが、次第に落ち着いてきたようで、アダージョ中盤から踊りも安定してきました。 支えの今井さんは、実際は、かなり力が必要だったでしょうが、懸命に、でもデリケートに古谷さんを支えていました。また、古谷さんを、回転させるときは、かすかな、ふんわりとした指先で、静かにリードしていました。 古谷さんは、的確な今井さんのサポートを受けて、次第に調子を取り戻し、美しく踊っていました。リフトでも凛として魅力的でしたが、高々とリフトをしたとき、今井さんの足元がわずかにぐらつき一瞬ハッとした部分もありましたし、リフトの肩に乗るとき、またリフトから降ろされるとき、なんとなくギクシャクしていたのが気になりました。 ただ、アラベスクでは、思い切り180度を超えるまで脚をあげて技術をアピールし、ひとつひとつの決めのポーズを、「ピタッ!」と、決めていたのは見事でした。
今井智也さんは、谷桃子バレエ団所属で、第5回青少年のためのバレエコンクールシニアの部第1位の実力者。今井さんのソロは、力強さは感じられませんでしたが、ジャンプも高く、優雅で品の良いものでした。ただ、フィニッシュでわずかに乱れたのが惜しかった。
古谷さんのソロは、繊細な中にも、甘い砂糖菓子ように愛らしく、かつ、気品ある金平糖の精でした。古谷さんの、しっかり伸びた脚の甲、そして、指先の動きは、非常に繊細で、その美しさに見とれていました。古谷さんの指先は、先の先まで、本当に神経が行き届いているのが、分かりました。さすが、ロイヤルで鍛えられただけのことはある、と感心しました。笑顔がとても素敵な古谷さんですが、きらきらと砂糖がこぼれ落ちるような、華やかな中にも繊細な古谷さんの踊りは、決して、笑顔だけではない、しっかりと実力の伴ったプリマとしての貫禄を感じました。 ただ、コーダでは、二人のテンポがやや崩れ、ステップが揃っていませんでした。アダージョのリフトでの乱れとや、コーダでのステップの不一致、このあたりは、今井さんがゲストで、古谷さんと、まだ、踊り込んでいないせいかな、と感じました。この点は、二人の課題でしょう。 でも、フィニッシュのフィッシュ・ダイブでは、今井さんは、古谷さんをがっちりと受け止め、古谷さん、思い切り大きく仰け反った優雅なポーズ。二人で協力して、止めるところは、しっかり止めて、観客の大きな喝采が、会場全体を包みました。
最後のカーテンコールでは、ジングルベルの調べにのって、出演者たちから客席にたくさんの飴が投げ込まれ、楽しいステージが終わりました。 

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