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吉田都主演の2つの「くるみ割り人形」   (2004.1.24)

二つの吉田都さんの金平糖の精の映像が有ります。一つは、1994年に、バーミンガム・ロイヤルバレエの時のレーザーディスク。もう一つは、一昨年(2001年)に撮影されたロイヤルバレエでのDVDです。
 
今回、この二つをじっくりと見比べてみましたが、吉田都さんというバレリーナが、7年の間に、なんて素晴らしい成長を遂げたのだろうと、改めてびっくりしました。7年後のものの方が、格段に素晴らしく感じます。
ロイヤルバレエのプリンシパルという、バレエの世界の頂点にありながら、いまだ一層の成長を続ける吉田さんに、本当に驚きです。マーゴ・フォンティーンは、舞台で踊れなくなるまで成長していったと言われています。その陰には、血のにじむような努力があったのでしょうが、同様に、吉田都さんのこの成長は、たゆまぬ、精進の結果に違いありません。
 
特に感じたことを述べます。
まずは、新しいDVDのロイヤルでの吉田さんの笑顔。この笑顔がこの上なく美しいのです。7年前のバーミンガムの映像でも美しい笑顔を見せていましたが、比べてみると、どことなくぎこちない感じがしします。新しいDVDの笑顔は、何ともいえず、自然にあふれ出てきた感じで、微笑みという言葉がふさわしいような、皆を幸せにしてしまうような笑顔なのです。 この穏やかな笑顔、都さんの舞台に対する自信が、裏付けになっているのだと思います。
 
それに、変わらぬ初々しさ。7つも年をとったというのに、その初々しさは、少しも衰えず、むしろ、前にも増したくらいなのです。
普通、ダンサーは年齢がたつに従って、技術にかわって、円熟味を増してくるのですが、都さんの場合は、技術は相変わらず素晴らしいし、円熟味というより、初々しさが増してきたように感じられるのです。
 
それに、何ともいえぬ品の良さです。特にレヴェランスの礼儀正しさには本当に感心しました。相手役のジョナサン・コープに良いサポートをご苦労様といった気持ちを体一杯に表現し、観客にも、自分を観てくれて有り難うというような感謝のまなざしを投げかけます。
 
彼女が昨年(2001年)、NHKテレビに出演し、万田久子さんと対談したとき、「大ぶりで激しい演技をする欧米のダンサーに対し、感情をあらわにせず、端正な奥ゆかしさや、抑制された表現で演じることを心がけるている」、さらに「舞台から客席に伝わるまでの時間と空間を大切にする為にとマイムを重視している」と言っていました。これが吉田さんの能の舞に通じるような気高さを感じさせるバレエの秘訣なのかもしれません。
 
吉田都さんは、ロイヤルで舞台裏のスタッフに特に人気のあるダンサーだそうです。トップダンサーでありながら飾らない人柄、穏やかな物言い、日本的な思考から生まれる気遣い、これらが、個性の強い外国のダンサーの中にあって、ことさら好感を持たれているのでしょう。 こんな謙虚で控えめな性格だからこそ、吉田都さんの踊りは、テクニックを持ちながら、決してそれを押しつけがましく誇示するのではなく、優雅さと気品に溢れて、誰からも愛される素晴らしいものになっているのだと思います。
 
今回、二つの「くるみ・・」の映像を観て、日本の誇る世界のバレリーナ「吉田都」の素晴らしさに対する認識を新たにしました。
 
吉田都(金平糖の精)の新旧の映像は次の通りです。
新盤(DVD):英国ロイヤル・バレエ
 出演:吉田都、ジョナサン・コープ、
    アンソニー・ダウエル、アリーナ・コジョカル
    ハンス=ペーター・イヴァン・プトロフ
 振付:ピーター・ライト、レフ・イワノフ
 指揮:エフゲニー・スヴェトラーノフ
 収録:2001年コヴェントガーデン王立歌劇場
      
旧盤(LD):バーミンガム・ロイヤルバレエ
 出演:吉田都、イレク・ムハメドフ
    サンドラ・マドウィック
    ジョゼフ・シポーラ
 振付:ピーター・ライト&レフ・イワノフ
 指揮:バリ−・ワーズワース
 収録:1994年 バーミンガム・ヒポドローム劇場
     

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