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大切にしている古い4トラック2チャンネルのオープンリールテープがあります。内容は潮田益子のヴァイオリン、小澤征爾指揮日本フィルハーモニー交響楽団によるシベリウスとブルッフのヴァイオリン協奏曲です。
添付のリーフレットによると、録音は1971年6月、杉並公会堂。潮田益子は30才前、小澤征爾は30代半ばという若い二人の共演です。
東芝がプロデューサー:ピーター・アンドリー、ミキサー:カーソン・テイラーという英国EMIの技術者を招き、日本の演奏家による日本のホールで録音したという、当時としては珍しいもので、これ以降、国内録音が本格化していったので、クラシック国内録音の草分け的存在です。
当時は、アナログLPレコードの時代でしたが、オープンリールテープデッキを所有していた私は、あえて、併売していた4トラックオープンリールテープを買いました。4トラックオープンリールテープはスクラッチノイズのないクリアーでかつ温かみのある音質で、当時オーディオマニアの間では人気が高かったのです。ちなみに、その1年後にフジテレビと文化放送の放送契約の打ち切りにより、日本フィルは新日本フィルと分裂し、その後自主運営による財団法人として再出発したので、この録音は分裂前の旧日本フィルの貴重な遺産にもなったといえるでしょう。
当時、日本人ヴァイオリニストでは、藤川真弓と潮田益子が注目されていて、私もこの二人の演奏のレコードをいくつか買いました。シベリウスとブルッフともに楽しめますが、ブルッフが特に素晴らしく、第二楽章のじっくりしみじみとした演奏は、何度聴いても飽きず大好きです。小澤征爾指揮の日本フィルは、スケールこそ大きくないようですが、真摯にとてもリズム感よく、迫力のある潮田益子の演奏をサポートしています。小澤征爾と潮田益子は、桐朋学園時代からの先輩、後輩の関係のせいか、とても息のあった演奏です。
LP時代が終わりCDの時代になって、この録音もCDで再発売されました。東芝EMIの録音を山野楽器、タワーレコード、新星堂が復刻してくれたのです。私のオープンリールテープデッキも寄る年波で各所に障害が出始めたこともあり、このCDを購入しました。
CDケースの小澤征爾と潮田益子がまだすごく若く、録音がうまくいったときの笑顔か、こちらも微笑んでしまいます。ただCDは4トラックオープンリールテープに比べ綺麗な音ですが、何となく物足りなさを感じます。演奏の雰囲気というか、音の温かみというか・・・、どこか違うのです。ディジタル化されると仕方がないのかもしれませんが・・・。
シベリウス: ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 Op.47、ブルッフ: ヴァイオリン協奏曲 第1番 ト短調 Op.26
【演奏】 潮田益子(Vn)、小澤征爾(指揮)、日本フィル、【録音】1971年6月20、21日 東京・杉並公会堂 |
4トラックオープンリールテープ |
CD |
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