【山口's HP TOPへ戻る】

ドンキホーテ〜パドドゥ：安川千晶、ジョージ・バラニ　　(2016.1.27)
とても素敵なドン･キホーテ〜パ･ド･ドゥを見ました。You tubeに投稿されていた映像です。 踊っているのは日本人の安川千晶と キューバ人のジョージ・バラニ(Jorge Barani)で、 American Dance Competition (ADC|IBC) 10th(2015)の Anniversary Galaでの踊りです。 安川千晶はOrlando Ballet、ジョージ・バラニはKentucky Balletのプリンシパルです。 安川千晶は、少し緊張していたようで、時折険しい表情をみせましたが、むしろこの真剣な表情が何とも魅力的。 ジョージ・バラニの暖かいサポートによって、破綻なく踊り抜いたのは立派でした。 のりが良く、どちらかというとアクロバティチック的な要素の強いドン･キホーテ〜パ･ド･ドゥですが、 安川千晶の踊りは、決めるところはしっかり決めて、爽やかながらも、アダージョは、しっとりとした踊り。 パートナーのジョージ・バラニは、安川千晶の動きを良く見て、しっかりサポートしています。
　
安川千晶はピルエットがとても素晴らしい。 アダージョ序盤のパートナーに腰を支えてもらってのピルエットは何と10回転。この部分、回転が止まってしまい、男性が無理矢理、女性の腰を回していたのを見たことがあるけれど、見苦しいことこの上なかった。 その点、安川千晶のピルエットは全く回転が落ちず滑らかで美しかった。 またバランスへの拘りに感動。アダージョ終盤の見せ場の二度のアチチュードのバランス、にわかに安川千晶の表情が険しくなった。バランスが思うように決まらないのか、支えのパートナーからなかなか手を離せない。 でも意を決して、手を離してグッと堪えます。一度目のバランスでも観客の拍手を誘ったけれど、二度目は、ハッと息を呑む長〜い長〜い超絶のバランス。 グラグラと危うい上体の揺れを懸命に堪えて、歯を食いしばって必死に持ちこたえたバレリーナの健気な努力に、観客は溜息を誘われ、思わず『オーッ!』とどよめきました。 どんなに危うくなっても、それをのりこえて見せ場を作れる精神力と技術力は流石です。 以前中村祥子が「バレエの喜びは『オフバランス』。音を聴きながら、遊ぶ、挑戦する、音楽をひっぱる、自分のバランスをため、どこまでいけるか・・・・」と言って素晴らしいバランスを見せましたが、 今回の安川千晶のバランスはそれを上回るほどで、自分自身、バランスの妙技を楽しんでいるようでした。 続くアラベスク･パンシェの180°の開脚も見事。弛まぬ稽古の賜物でしょう。 最後のリフトからのフィシュダイブ。二人の息がぴったりで、バッチリ決まり観客の拍手を誘いました。 手の指先と爪先まで神経の行き届き、大きく弓なりになった体のラインが美しかった。 女性のヴァリエーションはまさに安川千晶の世界。180°開脚のグランジュテ、楽々脚が上がるグラン･バットマン、エシャペの繰り返しに続くアティテュードでの回転の美しいこと、イキなパス･ピエの正確な繰り返し・・・、 どれも完璧で、観客の拍手とブラボーの叫びが鳴り止まなかった。 安川千晶、コーダのグラン･フェッテ･アントゥールナンの前半は果敢にダブルを連発。観客は大喜びで拍手が鳴り止まなかった。 終盤さすがに疲れが出たのか、体が左右に大きく揺れ爪先もズレてきて、とても辛そうだったけれど、歯を食い縛って頑張ったのは偉い。感動しました。 回り終えて『うまく出来た！！』と、思わずこぼれた微笑みが魅力的。さぞホッとしたことでしょう。 終盤のシェネ、最後の力を振り絞って、高速回転で少しも乱れずに、スムーズに移動。大いに盛り上がりました。 ラストは、再びパートナーに腰を支えてもらっての、高速のピルエット。 バッチリ決めてフィニッシュ。 力を振り絞って踊りきった安川千晶、終始柔和な笑顔を崩さなかったのは流石だったし、レヴェランスでは胸が大きく波打ってハアハアという吐息が聞こえるようだったけれど、殆ど汗をかかなかったのも立派でした。

ワクイバレエ団で基礎を磨き、渡米し努力してプリンシパルまで上り詰めた安川千晶。 長い手足のプロポーションにクラシック･チュチュがとても良く似合い、鍛えられて幾分マッチョな体格ながら、ふっくらとしてほのかな色気が漂い、繊細で上品な身のこなしと誠実さがにじみ出ているような端正な踊りで、とても魅力的なバレリーナです。 彼女は女児の母とのこと。中村祥子や佐久間奈緒もそうだけれど、結婚し子育てを両立できているバレリーナは、心身ともに豊かさが増してくるようで、この踊りを見る限り、安川千晶は強さと色気を兼ね備えて精神的にも肉体的にも充実しているようで立派。 若さの芸術と言われるバレエ、そろそろ辛くなる年齢に近づきながらも、力を振り絞って若さ溢れるジョージ・バラニに負けまいと懸命に踊っている健気な姿は美しく、彼女の努力に敬服します。
　　Chiaki Yasukawa and Jorge Barani dancing the Pas de Duex from Don Quixote.
　　ADCIBC 10th Anniversary Gala 2015 →
　　安川千晶さんのブログは→
【山口's HP TOPへ戻る】