音量調整ボリュームについて考える

パッシブタイプのラインレベルコントローラー(俗に言うパッシブプリアンプ)
音量調整機能としてはボリュームやアッテネッター単体だけでも、用は足りる場合が多いですね。最近パッシブプリアンプと呼ばれるものがありますが、まさにボリュームだけの調整機能です。意味的にはアンプでない、受動素子だけで構成するコントローラーをパッシブプリアンプと呼ぶ人(中小メーカー)も少なくありません。さすがに大手メーカー、ラックスやマランツはそうは呼びません。増幅しないものをアンプと称して販売しても問題にならないのは、カルトなオーディオの世界ならではのものです。その造語をあえてわかっていて呼ぶ方(その意味を刺がないように説明)と、コントロール=プリアンプと思っている方、アンプと呼ばずパッシブプリという方など、さまざまです。昔はパッシブミキサーというボリュームだけの、簡易マイクミキサー(下段写真)がありました。それを誰も、パッシブミキサーアンプとは呼びませんでした。ボリュームはもともと、部品単品では可変抵抗=バリアブルオーム=バリオームと呼んでいましたが、アンプ的にはその部分をメーカーでボリュームと言っているので、ボリュームと言うようになったのでしょう?まあ古い世代しか、バリオームなんて呼びません。類似のものでバリコン、バリLなどがありますが、今ではバリコンは死語でしょうか?面白いことにガリガリに接触不良になったボリュームはガリオームと今でも呼ばれます。

ソニーのパッシブミキサーMX-8

回路構成から考える

現在のラインレベル(CDプレーヤー等)からすると、プリアンプの必要性はあまり感じられなくなってきました。遡って、思い出すと’70年代後半の中級プリメインアンプは(下図参照)トーンデフィートスイッチを入れるとトーン回路とフラットアンプが外れて入力から直接ボリュームを介して、パワーアンプにつながるような製品も多くありました。少年向け電子工作雑誌でさえも、パワーアンプに直接つなぐと音質向上することは、理論的に説明していました。’80年代のCD(DAD)が出たばかりのころは、入力にCDダイレクトというものがあり、CDに限ってはプリアンプ部を通さずボリュームだけで出力する機能まで搭載されていました。それだけメーカーでも多数の接点、増幅回路を通すことは、どんな優秀な回路であっても音の鮮度が落ちることを認識していた訳です。いわゆる現在パッシブプリアンプという名称で、売っているものは、それらを外部に持ってきただけ(下図B)で特に優れたものではありません。むしろプリメインアンプの内部に入っている場合、後段のパワーアンプまで考慮されていますのでいいのですが、外部にその回路を持ってきた場合は、繋がれるピンコードや、繋がれるパワーアンプにも左右されます。パッシブ回路のボリュームにピンコードを長々と接続することはおすすめできません。ピンコードを変えると、音が変わるといいますが、パッシブタイプで長々と引きまわしては悪影響が出ているだけです。ここで考えてみたいのが、使い勝手と音質をどのようにバランスするかです。良質なボリュームが入手できなくなってきた昨今、自作ではどうするか考えてみました。蛇足です。電線=コード 電纜=ケーブル コードの上に被服があればケーブルでしょうか?コード=安物、ケーブル=高級品のように思われているようですが、電線を減らすことは音質が向上しますが増やすことは低下します売り文句に乗らないようにしたいものです。


間違ったパッシブプリの使い方

最近バイアンプ駆動でパッシブプリを並列にしてパワーアンプを駆動することが一部で行われています。並列にすることで、接続されるCDなどの負荷が重くなり場合によっては、低音域の特性低下を招きます。そして出力ピンコードの寄生容量で高音域劣化。それでは音がやせてしまいます。
上の図で説明しているように中にあるべき回路を外に持ってきただけの弊害です。プリアンプ不要論はアンプ内にボリュームがある場合の話で外部に持ってきた場合は必ずしもそうではありません。パッシブプリの後ろに緩衝アンプがあるだけでケーブルの影響を抑えることが出来ます。ケーブルは意図的に音が変わるように作ってある物も少なくありません。プリではあまり故障まで発展するようなケーブルはありませんが、大蛇のようなケーブルの容量負荷で故障するパワーアンプさえあるのです。音が変われば何でも良しと言うのはいかがなものでしょう?。


ボリュームの例

接点を多くしたり不要な配線引きまわし、余計なシールド処理や信仰的な電線屑、または●×処理等、それでは、わざわざパッシブコントローラーを作っても、効果は望めない。前述の70年代プリメインアンプのボリュームを外部に引き出したのと同じようなもの。音質低下を招く余計なコードを引き延ばしたに過ぎない。左写真はロータリースイッチで製作した固定抵抗のアッテネッター、音の劣化は少ない。一応私の、リファレンス用として、残してある一台だ。多段ロータリースイッチで使い勝手は、すこぶる悪いものの。機器組込で使用して多数の方から好評をいただいている。機器組込は、的を得た使用方法だ。100本もの抵抗を狭いスイッチに半田するわけだから相当、難儀なものだ。音質最優先だと、操作性が犠牲になる。音量調整だけならボリューム単品、フェーダー又は抵抗式アッテネーターで、用は足りるのでプリアンプは不要論も納得の事実。ここで一般に高級プリメインアンプに用いられるボリュームRK27ならまだしも、それ以下のもので、パッシブコントロールボリュームを構成しても、効果は少ない。かと言って23段程度のアッテネッターでは使い勝手を考えると、全ての人が満足できるものではない。連続可変は使い勝手がとても良い。RK27は高級プリアンプにさえ採用されているので、決して悪いボリュームではない。後段にしかるべきプリアンプ回路が使われて、性能を発揮している場合も少なくない。  
写真上左端アルプスRK27(容易に秋葉で市販品購入出来る又は電即納で直販)写真上右アルプスRK40(機器取り外し品)写真下左市販4回路23接点ロータリースイッチで自作したアッテネーター写真下右アルプスKフェーダーで製作中のもの、色々な物を作って比較してみるた。
ここでまた昔話アッテネッターは音が良い評判があり、廉価品のプリメインアンプにさえボリュームにクリックが付いた時代があった。ボリュームの後ろに溝付きの板が追加されそこに板ばねが摺動して良好なクリック感覚を醸し出すものであった。
メーカー製高級アンプから外したアッテネッター(左)、固定抵抗アッテネッター(中)、フェーダーBOX製作例。この後ろに短いシールドコードでパワーアンプとつなげば好結果が得られるかも知れませんが、これには、ボリュームの抵抗値、コードの容量、などさまざまな影響が出ます。長く引きまわすには、出力アンプが必要と考えます。コードで音が変わると思っている人もいますが、音が変わる事実はその通りでも、その影響を抑えるのが出力アンプです。

カフタイプで製作したフェーダーは実に使いやすい。卓上で音量が自由に調整できる。私のようなリモコンが嫌いな人には良い。


手持ちのピンコードは1mで実測で100PF位の寄生容量がありました。高級なものでも低容量な訳ではありません。それにアンプ側の入力にもCはある。ケーブルに容量は付きまとうものです。ここのところは結構隠している部分でしょう。パッシブタイプの音量調整器は使い方次第です。素材に走る前に良く考えてみましょう。

ケーブル(シールド線)のお話
’70年代には飽き飽き語られて来たことなのですが、最近は語られません。素材重視というか、売り手の言葉に騙されているようにさえ思えます。線材は短く、出来れば無い方が良いのです。短ければ短いほど良いし、ピンジャック(RCA)は構造的にどう思います?安いので使うほうは、良いのですが、XLRに比べたらどうでしょう?。答えはご自分でどうぞ!さて、本題です。シールド線は構造から静電容量を持っています。寄生容量と言われるように無用のものです。小さいもので1mで数100PFはざらです。もし大きいもので1000PFあったとします。2mで2000PFこれで計算してみましょう。f=1/(2πCoRo)Hzで求めることが出来ます。これは-3dB落ちる周波数でそこから6dB(*1)オクターブで減衰します。そのオクターブ下の周波数までがフラットということと考えると、容易く音に影響が出るのではと考えてしまいます。超高域を減衰させて落ち着いた音のケーブルと言っているのかも知れません。計算結果は何と約32KHz(-3dB)になります。この他にアンプの入力に1000PFの容量があったとしましょう。3000PFで21KHzとなります。一般的な25Kオームの出力インピーダンスとしての計算です。だからパッシブで使う場合は短い線が必要なのです。高いパッシブプリアンプを売りつけ、今度はケーブルを売りつけるそんな商法とはおさらばしましょう。もっと賢明な方は出力アンプで、出力コードの影響を抑えることを考えますね。
古い電線屑でシールド構造なしでピンコードを作って音が良くなったのは、電線屑によるものだけでしょうか?もうお分かりですね。
半田付けを覚えて自分で実験するのが一番です。市販の高級ケーブル1本にも満たない安い費用で実験出来ます。
自作で音量調整器としている分には、何も構いませんが、デメリットを隠しパッシブの良いことだけを言うのはいかがなものでしょう。電線の影響は隠せません。

(*1)オクターブ:その基準周波数の2倍をオクターブ上と言います。10KHzのオクターブ上は20KHzになります。オクターブ下は半分の5KHzです。


1、録音もしないし、聞くだけなので音量調整ができればよい場合
@パワーアンプの入力にボリュームを付けて使う(真空管アンプに多い例)。この場、都度パワーアンプのボリュームを廻すので、特に床に置いてあるパワーアンプの場合すこぶる操作性が悪い。
ACDとパワーアンプの間に減衰器(ボリューム又はアッテネーター)を入れる
市販のボリュームやアッテネーター(パッシブプリアンプという増幅しないアンプ???を購入する)を自作する。
600Ωやそれ以下の超低インピーダンスのアッテネーターでの入力アンプなしで使ってはダメ。自作では、過負荷なのに単純にやる方もいる。
2、録音も、したいし多数の機器を持っているので切替操作も、したいし操作性重視で聴きたい場合
@市販のコントロールアンプを購入(今ではいわゆるハイエンド機しかない)
A切替機能や、音質を考慮したパッシブコントローラーを購入又は自作する
Bまともに、増幅機能の付いたプリアンプを購入又は自作する。
3、いわゆるフルデジタルの将来に希望して待つ


ボリューム通過で音の劣化が気になり出したら、固定抵抗式アッテネッターを考えてみましょう

さて、本当にボリュームを入れると音が悪くなるのでしょうか?答えはイエスと言えます。これは古くから言われて来たことですが、多くの方がはっきりとした違いを感じてもらえる部分です。もしご使用のCDプレーヤーに出力を下げられる機能(手で回すボリュームはダメ)電子アッテネッターが付いていたら出力を絞りコントロールアンプのボリュームを最大にしましょう。音質変化がわかります。ボリュームを最大にすると入力出力がほぼダイレクトにつながる構造です。下図1(B)の出力の矢印が入力につながるわけです。

1図

1図(A)は固定抵抗による切替方式の回路です。この組み合わせをロータリースイッチで切り替えて行けば良い。
有利な点
1)音の変化が少ない。最小限の2本だけの抵抗使用
2)抵抗が少ないことは抵抗の線の引き出しキャップ(鉄)による音質低下を僅少に抑えられる(非磁性体キャップは音響用抵抗で高価)
不利な点
1)多段ロータリースイッチを、使用するので、重くて操作性が悪い。
2)ロータリースイッチの接点不良が悪環境下では起きやすい。
3)配線が面倒でお休み状態の抵抗が多いので損な気がする。。
1図(B)は直列型のアッテネッター例で、多数の固定抵抗を1つの接点だけで切換えるもの、
有利な点
1)接点は1個で直列で立体配線もしやすい。
不利な点
1)抵抗直列数が多いことは、抵抗のキャップ(鉄)による音質低下が気になるところ高品位抵抗は、全体的なコストアップにつながる。
2)1本の抵抗の音質劣化はわからないが多くなればわかる。

この説明で、わかっていただけたと思いますが、いくら音の良いと一般に言われる固定抵抗でも直列に大量に使えば1本に付き2か所さらにはんだの接合部2か所合計4か所にもなるのです。これのn倍の接点通過、これが許せますか?ボリュームでは印刷抵抗を摺動子が移動し連続的に抵抗比が変わる。これがステップに変わるだけで操作的な動作は同じである。抵抗2本の分圧方式が、いかに優れているかがおわかりいただけると思います。ただしこの直列型も本数増加しないように考慮した回路もあります。ボリュームだと印刷した抵抗面をブラシが摺動摺るわけですからあまり良いことはありません。かつてはセラミック印刷した、厚膜抵抗にトリミングして正確なアッテネッター構成で多数タップが出いて、そのタップから金メッキ接点があり実質図1(B)のようなタイプでありながらRK40の外観、操作性の真のクリック付きボリュームがありました。日本も本当に音質を追及していた時代でした。


パッシブ派ではありません。

今まで述べてきたことで私はパッシブ派と思われるかも知れません。パッシブタイプは影響を受けやすいものです。出力にバッファアンプを入れることにより、ピンコードの影響を抑えることができると考えています。この度合いとパッシブタイプにして音質劣化を抑えるかの選択になります。いくつもアッテネッターBOXやフェーダーBOXを製作して実験したため、パッシブタイプのものが出来上がっただけです。単体の音質比較用です。実際にはこれらのBOXの後にアンプ回路を付けて実験用としています。その他に使い勝手も重要な要素と考えています。言葉尻をとらえているだけの、アンチパッシブ派とは思わないでください。プリアンプでないことを分かってもらえることに越したことはありません。それゆえに弊害もあることを理解してケーブル交換という泥沼から抜け出してください。

パッシブ関連は、ネット上で沢山検索できるますが、正しい見解で立証しているページは、非常に少ないです。下記URLは全て計算して検証して、この方式を理解してやられている方です。頭が下がる思いです。
http://www.vlsi.iis.u-tokyo.ac.jp/~majima/html/e/component/preamp.html へのリンク


ボリュームの入手が難しくなってきた中での案

ボリュームという使い勝手の良さに重点を置きたい方のために!
最近は、ミニデテントRK27型は入手できてもデテントRK40型は入手出来ません。まさかその上のRK50真鍮削り出しケースに入ったものを3万以上出して買うのには躊躇します。ここで比較的安いもので、アルプスのKフェーダーというものがあります。これはストロークが100oもあり大変使いやすいものです。2本並べることによりバランス調整的な使い方も出来るボリュームとなります。単連の回転ボリュームでは、並べても2つ一緒に回せませんが、スライドタイプでは可能です。機械的なバランス機能も可能と相まってがあって、バランスボリューム排除まさに一石二鳥です。何より内部の印刷抵抗と構造に安定性があります。電即納で入手可能なのもうれしいです。

Kフェーダー内部。卓用途なので構造が素晴らしい。ストローク100oは細かく音量調整できます。数年前に思いついて準備していたが、直線穴加工が面倒で放置していた。新品の保管品なので全くすり減っていない。いわゆるガリと呼ばれる摺動雑音もない。
RK501がこれ、4連タイプ、パッシブタイプに使う気は全くないバランス(平衡)プリアンプ製作に使用する予定。ヤフオクで入手。軸が一般的な6ミリだったのでノブで悩む必要はない。これが最高峰のボリュームと言われている。
RK501で実機製作しましたご参照ください。

おまけ、直列構造のアッテネッターの等価回路(抵抗直列本数の増加が抑えられている回路)