40号                                                           2001年1月

 

 

書店員はスリップの夢を見るか?

 信じられないが2001年。新世紀も銀河通信をなにとぞよろしくお願い申し上げます。 

 おかげさまで、当サイトが1月28日でついに20万アクセスを迎えた。夢のような話である。皆様に、どれだけ感謝してもし足りないほどである。

 当サイトをオープンする際、“書店員”という強みを活かし、自分の好みの本に限定した「注目新刊速報」というコンテンツを作ってみた。あけてみたらこれがおかげさまで大反響。正直これほどまでに活用されるとは思ってもみなかった。書店員にとっては、発売前の本の情報が入ってくるのは当たり前のことだったから。が、それがいかに本好きのお客様に熱望されていたか、ひしひしと思い知った。書店員として、実にお恥ずかしい限りである。

 これに勇気づけられ、自分の書店でもコルクボードに新刊情報を貼り付ける(よくCDショップでやってるアレ)、というのを実施している。目に留めてくださるお客様も多いようだ。手間はかかるし儲けにはならないと思うが、お客様は何より情報を求めているのだ。「おっ!アレが出るのか!」とにんまりしてくだされば、これほどうれしいことはない。

 

 

今月の乱読めった斬り!

『ライオンハート☆☆☆☆ 恩田陸(新潮社、00.12月刊)

 「あのひとに会いたい」。恋愛は、突き詰めれば、このひとことに尽きるのかもしれない。

 恩田陸、初の恋愛小説。といっても彼女のことだ、タダのラブストーリーじゃない。時空を超えてただひとりを想い続ける、というミステリアスで壮大な恋物語である。5枚の絵画から、ここまでイメージを膨らませる彼女の手腕はいつものごとく素晴らしい。そう、恩田陸という作家は、何かのヒントからするするっと自分で物語を編み出してしまう天才なのだ。ちなみにこの小説は、『ジェニーの肖像』(ロバート・ネイサン、ハヤカワ文庫)のオマージュとのこと。既読の方にはそれだけでおわかりいただけるであろう。私が本書を読みながら思いついたのは、萩尾望都の「マリーン」という中篇だった(こちらも時を越えるミステリアスなラブストーリー)。

 5つの章の始めのページに、章のタイトルと同じ題名の絵画が挿入されており、その絵をモチーフにした物語が書かれている。物語の最初は1978年である。が、そのあと1932年に飛び、さらには1944年へ、と時と場所を軽々と飛び越えて、ある一組の男女のつかの間の出会いと別れがつづられる。その場によって年齢も境遇もさまざまだが、ふたりはいつでも「エドワード」と「エリザベス」なのだ。彼らはいつも擦れ違う運命にある。どれも切なさで胸がしめつけられるようなエピソード。本当にどの話も舌を巻くうまさだが、特に「イヴァンチッツェの思い出」はミステリ的手法が効果的で、あっと驚かされた。

 「二本の手は離れていることで、しっかりと握り合わせることができるのです」

 ひとは誰でもそうやって、「わたしのライオンハート」を探して果てしなく時をさすらっているのだろうか?だとしたら…それはあまりに切な過ぎる旅ではないだろうか。永遠に、巡り会いと別れを繰り返す終りなき想い。それが究極の恋のかたちなのかもしれない。 

 時空を飛び越える、というSFな話をミステリタッチで描く、という魅力的な書き方に思わず一気読み。これに恩田陸の恋愛観が入っているとなればもう、面白くないハズがない。ぐいぐい読まされること請け合い。

 追記:新潮社のPR誌、「波」12月号の恩田陸インタビューはこちら。ぜひご一読を。「ライオンハート」はケイト・ブッシュという女性ボーカリストのセカンド・アルバムのタイトルだそうです。

『永遠の森 博物館惑星』☆☆☆☆ 菅浩江(早川書房、00.7月刊)

 「綺麗ね」美和子の言葉が、まだ胸の中に響いている。美しい余韻をもって。

 地球の衛星軌道上にぽっかり浮かんだ、ありとあらゆる「美」のたっぷり詰まった博物館惑星、それが「アフロディーテ」である。ここでは、データベース・コンピュータに頭脳を直接接続した学芸員たちが、それらの芸術品をめぐって忙しく働いていた。ここの3つの部署の総合管轄の「アポロン」こそ、主人公の田代の仕事場なのである。各部署が田代に持ち込んでくる厄介ごとを通し、「美」とは、「芸術」とは、そしてそれを受けとめる人間とは何なのかが語られてゆく…。

 天空高くに、宝石のように美しい惑星が浮いている、という設定がまずなによりロマンティック。いいなあ、この発想。うっとりしてしまう。面白いと思ったのは、「美」という、杓子定規で語れない実に曖昧模糊としたもの、ひとによって受け取り方が異なる感情的なものを理解分析するのに、最先端のコンピュータが駆使されているという点だ。テクノロジーと芸術という、この一見背中合わせ的なものが、菅浩江の手にかかるとなぜこうもしっくりマッチして違和感がないのだろうか。

 著者の奏でる10の調べは、どれも繊細で、優しさに満ちている。それは、美を感じる人間の心を、そうっと芯に包み込んだ薔薇の花のようだ。抽象画からえもいわれぬ美しいメロディを感じる心、名前のない人形を可哀想に思う心、落ちぶれつつあるダンサーの舞踏をそれでも美しいと思う心、海に溶けた人魚を海ごと抱きしめようとする少年の心…。読者は、ただただほうっと感嘆の溜め息をつくばかり。『雨の檻』を読んだときも感じたが、著者はこういう心の最も柔らかな部分を描くのが本当にうまい作家だと思う。

 日常業務の煩雑さにまぎれて芸術のなんたるかを忘れかけていた田代に、妻の美和子は「綺麗ね」とつぶやく。このラストの一篇、「ラヴ・ソング」のクライマックスは実に圧巻。コンピュータより何より、子どものようにあなたの無垢な心で芸術に向き合い、感動すればそれでいいのだ、と著者は締め括る。そう、芸術はまさに「永遠の森」だ。

 まさに宝石のような1冊。SFファンならずともぜひご一読を。

『螺旋階段のアリス』☆☆☆1/2 加納朋子(文藝春秋、00.11月刊)

 ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』を下敷きにした、7篇の連作ミステリ集。タイトルにはみな「アリス」がついている。

 50を過ぎたサラリーマン仁木が、もうひとつの人生としてトライしたのは、探偵事務所を開くことだった。そこにある日突然現われ、助手を買って出た謎の美少女。彼女が安梨紗である。仁木は彼女の存在に戸惑いつつも、ふたりして事件を解いて行く…。

 安梨紗の醸し出す、どこかふわふわんとした雰囲気についつい惑わされるが、実は案外シビアで苦い話が多い、というのもどこか『不思議の国のアリス』をほうふつとさせる。夫婦間の話が多いのは、もちろん故意であろう。それは彼女の素性と微妙にからんでいるのだが。

 さまざまな夫婦のかたちをミステリに託して描くことによって、著者は何を言いたいのだろう。温かい話もあれば、うすら寒い話もある。しかしどれも、それぞれの愛のかたちであることは確かだ。

 安梨紗という非現実的キャラクターのせいか、どこかメルヘンめいたミステリ。が、その底に流れるのは、人間の心の奥を見据え、善意も悪意もありのまま包みこもうとするような著者の視線である。わりと軽い読み口の一冊。

『依頼人は死んだ☆☆☆1/2 若竹七海(文藝春秋、00.5月刊)

 今まで何冊か(全部ではない)、若竹七海を読んだ。クールでブラックだなあ、という印象があった。が、これはその中でも最たるものである。いやもう、ブラックなんてやさしいもんじゃない。あまりの寒さに身震いがするほどだ。この連作ミステリの底辺には、どれもぞっとするほど冷たい、人間の悪意が潜んでいる。

 『プレゼント』(中公文庫)の続編、といっていいであろう。同じ女探偵、葉村晶が登場する。『プレゼント』未読の方は、ぜひそちらを先にお読みになることをオススメする。つながってる話もあるので。

 どれもこれも、著者はラストの数行で読者を冷たくどんっ、と突き放す。まるで、崖っぷちから突き落とすかのように。読者はくらくらと目眩に襲われながら、今読んだことの内容を把握できずに呆然とするばかり。救いのカケラもない、容赦のなさ。「あたしが怖いのは生きている人間だけよ」そんな葉村のセリフに深く頷いてしまう。

 しかもこれ、話が終ってない(!!)。続きがめっちゃ気になる終わり方。ああ、続編を書いてくれているのだろうか、若竹七海。このままでは葉村が心配でたまらないではないか!

 他の方が、このミステリをどう評価してるのかがとても気になる。ワタクシ的には、衝撃の問題作だと思うのだが。人間というものが、とてつもなく恐ろしく思える1冊。

 

特集 皆の2000年ベスト1

  皆様からアンケートを取り、2000年に読んだ本の中から新刊・既刊を問わず、一番面白かった本を一冊挙げて頂いた。ご協力して下さった方々、ありがとうございました。

(タイトル)『刑事ぶたぶた』

(著者名)矢崎存美

(出版社) 廣済堂出版 

コメント:いやー、イイッス。ぶたぶた最高ッス。
刑事物だがなんせ主人公が「ぶたのぬいぐるみ」なもんで、ニヤつきながら読みまし
た。癒し系ですな、これは。21世紀にはピンクのぶたが刑事をやっているかも?

お名前:ことぶ
メールアドレス:kotobuky@hotmail.com
サイト名、アドレス:http://www5b.biglobe.ne.jp/~kotobuky/


(タイトル12人の指名打者』

(著者名J.サーバー他

(出版社)文藝春秋(文春文庫)

コメント:共通のモチーフ(野球)を名人たちがそれぞれ異なるコンセプトで料理した名
品逸品満載のアンソロジーです。凄まじいほどの粒の揃いっぷり! こういうアンソロ
ジーこそ、真に傑作選/精選集の名に相応しい。サブタイトルに「野球小説傑作選」と
あるのを見て、「野球、よくわからんしー♪」と毛嫌いして読まない方もいたかもしれません。
が、それはあまりにもったいない!野球の知識なんざ、ほとんど必要ありません。
野球はあくまで道具立てなんですから。コミカルな話、シリアスな話、無情な話、
心温かになる話、事実を元にした話からスラプスティックな話まで。様々な趣向が凝ら
されており、見事なまでにハズレなしであります。絶対に読まなきゃ……。久しぶりに
「誰彼構わず読ませたい!」と思える本に出会いました。評価星を付けるとしたなら、
もちろん★★★★★でしょう。とにかく、まず1篇でよいから読んでみていただきたい!

ジェームズ・サーバー「消えたピンチヒッター」、エリオット・アジノフ「ザ・ルーキー」、ポール・ギャリコ「アンパイアの叛
乱」、ホーク・ノリス「双生児の秘密」、ジョン・オハラ「大いなる日」、チャールズ・アインスタイン「夢のカーヴ」、
ウィリアム・プライス・フォックス「待ちわびた一球」、デイモン・ラニヨン「ハッティのお手柄」、
アーノルド・ハーノウ「新米審判」、ウィルバー・L・シュラム「馬が野球をやらない理由」、
ルイス・グレイヴス「十割打者の謎」、フランク・オルーク「閃くスパイク」を収録。

少しでも興味を持っていただければと考えて、以下に〈12人の指名打者〉の内訳を掲載順に記してみます。

(1)パール・デュ・モンヴィル。小人。ストライクゾーンが異常に狭い。どこに投げても
フォアボール。やば……。二死満塁のチャンスに起用されたが、さてさて。
(2)マイク・カットナー。35歳。プロ16年目にして、初めてメジャーの打席に立つ。なんとしても打ち
たい。一発かましてメジャーに残りたい。ネクスト・バッターズ・サークルの焦燥。
(3)ローワン・キャサディ。アンパイア。“コンクリート”の異名を持つ堅物。恋人の要求に負
け、カラフルかつファッショナブルな装いで審判を務める羽目に。
(4)ハーマン・シャウラーとシャーマン・シャウラー。山岳民。通称“ヴー”と“ドゥー”である。無敵の双子バッ
テリーの秘密とは?
(5)ウィリー・ハート。ニューヨーク・ヤンキースファン。野球賭博で儲けたへそくりを何に使おうか。
考えた末、息子ブーカを試合観戦に連れていく。ところが……。
(6)サム・ルイス。通称は“シックス・イニング・サム”である。どんなに好投し
ても、なぜか6回には打ち崩されてしまう。トレードで下位球団に出された彼の心中や如何に。
(7)リーロイ・ジェフコート。41歳。草野球選手。選手の物真似が得意。心底
野球を愛する男なのだが……超へたくそ。サウス・カロライナ州立刑務所チームと対戦。
(8)ベースボール・ハッティ。熱狂的なジャイアンツファン。のちにヘイスタック・ダゲ
ラー投手の妻となる。幽霊になってもジャイアンツ戦を観戦。
(9)ビリー・ニーディ。メジャーリーグの新米審判。マイナーから上がってきたばかり。初めてのジャッジはロビ
ンズ戦。ロビンズのタッド・ラウシュ(監督兼遊撃手)とはマイナー時代、判定を巡って
ちょっとした因縁があった。
(10)ホース・ジョーンズ。馬。ドジャースの三塁手。トレーニング・シーズンでの成績は桁外れ。
打率.538、守備率.997、20盗塁、7HR。文句なしに野球史上最高の三塁手である。
しかし、彼には人知れぬ悩みがあった……。
(11)ルドルフ・スペックルドナー。元フリッツ・シュナイダー食料雑貨転勤務。趣味はフルート。
友人のインド人隠者モハジ・カーンの呪術のおかげで、10割打者に。即ジャイアンツ入り。
(12)デーン・ビョルランド。元ホワイト・ソックスの名遊撃手。八百長疑惑(ブラック・
ソックス事件)に巻き込まれて退団。現在は、流しの旅がらす球団所属。町チームの大学生遊撃手との交流を描く。

お名前:mut
メールアドレス:huckfinn@rr.iij4u.or.jp
サイト名:Huckfinn Rocket Punch
アドレス:http://www.rr.iij4u.or.jp/~huckfinn/


1位:『バトル・ロワイアル』
      これはもうブッチギリ。これほどの本には滅多に出会えないでしょう。「中学生が殺し合い」というイメ−ジ
      ばかりが先行してたので、ずっと敬遠してましたが、銀通の書評を読んで、今年になってようやく読了。
      そして驚嘆。そこらじゅうの人間に勧めまくりました。活字嫌いのうちのラグビ−部の連中が半分以上
      読んでいるほどですからその面白さは推して知るべし。先入観で敬遠していた自分を反省。そして先に結末を
      知っていた自分を猛省。そうでなければオ−ルタイムベスト1になったかも。
      個人的には千草貴子の「もう一言オ−ケイですか、神様?」と、秋也のラストの台詞が一押しシ−ン。

ついでに2位:二進法の犬
              ブックオフの100円セ−ルで「分厚いのに安いから」という恐ろしくいいかげんな理由で購入。
              んが、100円ではお釣がじゃんじゃん来るほど満喫しました。もうほとんど一気読み。
              博打とヤクザと純愛(純か?)のお話。花村萬月の他の本も読みたくなりました。
              特に「吉祥寺幸荘物語」は近所が舞台ということもあって目下古本屋で探索中。
 
おまけに3位:少年たちの密室
              これはかなり好きです。特に被害者と真犯人?のゲスっぷり。ここまで嫌な人間を書けるのは
              スゴイとおもいます。このミスに入らなかったのがかなり不思議。

お名前:ゆう


(タイトル)『ハローサマー、グッドバイ』

(著者名)マイクル・コニイ

(出版社)サンリオSF文庫

コメント:
絶版でもう読めない本。でも評判が良いので苦労して読んでみるとやはり
絶品。うむむ、良い本だけが生き残るわけじゃないところが悲しいですな。
この作品はもう古いSFですが、SFが最もSFらしかった70年代の
作品だけあってスゴク楽しめました。この最後の一撃のために私はSFを
読むのです。

お名前:u-ki
メールアドレス:gates@hate.club.ne.jp
サイト名、アドレス(お持ちの方のみ):私立東鳩学園分校No.6
http://www.geocities.co.jp/Technopolis/2665/no_2.html


(タイトル)『鵺姫真話』

(著者名)岩本隆雄

(出版社)朝日ソノラマ  

コメント:
既刊・新刊を問わずと言うことですが、今年出版された岩本
氏の三作品をひっくるめてベスト1と言いたいのが本心。で
も、他の二作品は一応再出版と言うことで『鵺姫真話』を。

最初、現在の自分に不安を抱いていたり絶望していたりする
登場人物たちが、それでも希望を捨てずに前へ進んでいく様
は、夢を見られなくなりつつある今の自分にも、夢を与えて
くれますよね。読んでいて楽しいですし、読み進むにつれて
もっと先をもっと先をと読みたくなり、しかし左手のページ
の厚さが薄くなるのを心のどこかで悲しく感じながら、それ
でも読むのをやめられない。それを久しぶりに味わいました。

岩本氏の作品には、青臭さとかこっぱずかしいほどの正義感
が溢れているんですよね。テレビを見ても暗いニュースばか
りが流れる昨今、岩本作品を読むと心が洗われるようです。

『星虫』の吉田秋緒さんの言葉を借りれば「夢は、叶えるた
めにある」。信じさせるもので溢れています。

お名前:ローリー
メールアドレス:syoueido@lilac.ocn.ne.jp
サイト名、アドレス:http://www3.ocn.ne.jp/~syoueido/


(タイトル)『提督ボライソーの最後』(海の勇士/ボライソー・シリーズ24)

(著者名)アレグザンダー・ケント/高橋泰邦 訳

(出版社)早川書房(ハヤカワ文庫NV969)  

コメント:シリーズ第1巻刊行から20年。ついに運命の日がやって来ました。
主人公のリチャード・ボライソーの戦死は、最初から設定されていたのです。
16歳から59歳までの人生の物語は、本書で完結しました。続きを早く読みたいが、
巻を追う事に主人公の最後は近くなる。何と屈折した思いを持たされたシリーズでし
ょうか。さようなら、われらがディック。今後は、甥っ子アダムが活躍するそうです。
それにしても、長かった。リアルタイムで読んできた私も、いい年になってしまった。

お名前:draken
メールアドレス:draken@lib.bekkoame.ne.jp


(タイトル)『ダンクトンの森』(上・中・下)

(著者名)ウィリアム・ホーウッド

(出版社)評論社

コメント:名作「スカヤグリーグ」の著者による動物ファンタジー(昭和62年刊)。
宮崎駿とジョージ秋山が合作した様な話で、次から次へと襲い来る災難に耐え、力強く生きる
ーまたは、力尽きて死ぬーモグラたちを描く。
前半は文句無しの傑作。胸に黄金の心を秘めた一匹のモグラの無償の愛に泣かされました。
後半、これでもかとばかりに試練、苦難の連続で、読むのがつらいほどだけど、最後の最後に
盛り上がって神話へと昇華する。
2000年に読んだ本の中で、最も感動した作品です。

お名前:河合恭


(タイトル)『ペパーミントの魔術師』 

(著者名)上遠野浩平

(出版社) 電撃文庫

コメント:今更だし、誰もが知ってるから避けるって手もあったの
だが、本読みとしてはそれは出来ないな、と。やはり、こういうの
に弱い模様。

お名前:りゅーし
メールアドレス:ryushi@moon.co.jp


(タイトル)『リサイクルビン』

(著者名)米田淳一

(出版社)講談社ノベルズ  

コメント:
 いやー、自著を書くのは反則というかイタいというか、いろいろ引け目もあっ
たんですが、まあイロモノと言うことで。というか、自著をベストに選ばないと
言うのは自著で手を抜いた引け目があるからなのではないかという疑念もありま
して、実際私のようなアップアップで小説を描いている人間には、資料調べに忙
殺されて他の方の本を読んで批評したり選んだりする余裕はないというのもあ
り、あえて非常に恥ずかしいのですが選びました。確かに文章ヘタいとか構成甘
いとか、なぞ展開とか反省しているところもいっぱいあるのですが、それでもや
っぱり世に送り出した実の子どものような作品、せめて著者だけでも応援してあ
げなきゃ、という気になっております。第一、読んで欲しかった『たましい』に
はいささかの疑念もありませんし。人は歴史の前には皆無力だということとか、
『運がいいとか悪いとか』とかいろいろあります。

 実際『プリンセス・プラスティック』の2142年しか描けなかった私が初めて現
代物に挑戦しただけあって、必死でした。国際線ダイヤのトリックとか、なぞ展
開もよく考えるとちゃんとミステリの文法にしてあったりします。
 密かにリサイクルビン2として『R2』が進行中です。なんだか『SFはダメでー
す♪』と編集さんに言われて『リサイクルビン』を書き出したのに後半部はSFマ
ガジンに載ってしまうような(あ、ネタバレか?)なぞ展開で、『R2』では真面
目に本格ミステリにしようと(いやリサイクルビンも真面目に書いたんですが)
思ったんですが、某筋よりなぞ展開を期待されているのでとんでもないことにな
っています。もう講談社ノベルズからは本は出せないのかな……。なんだかウツ
になっている暮れであります。でも、ヘリコプターに地盤沈下だけでSFというこ
とであればSFじゃない小説って何が楽しいの、とか思う無駄知識普及の会でもあ
ったりします(うわ戦ってるな)。

 DASA勢でも倉阪鬼一郎さまがうちの取っている産経新聞の書籍売り上げベスト
テンに入賞したり、浅暮さんも新作を出したり、ちょっとだけ先輩に当たる高瀬
彼方さんがものすごく忙しそうで派手な話ばかり耳に入り、省みれば私は200
0年は『リサイクルビン』一冊で淋しいとはいえ、でも98年99年と2年新作
が出せなかったので、うちの日記で既報ですが『遅れてきた防空巡洋艦・綾瀬』
と『翼の接線』の作業で2001年はなんとかガンバラナクテワと思っておりま
す。

 まあ作家としては地味に、『なんだか名前知らない人が書いているんだけど面
白いよ!』と言っていただけるような本を書くことに専念しようと今も思ってお
ります。
 ただ、DASAとかには自分の知識がいかに間違っているかを反省するために行っ
ているはずなのですが、毎回おちゃらけてしまっていて、作品よりも作者がイロ
モノで目立つという状態になっているようでツライです。なんかキャラ立て間違
えたのかなあ。
 まあ、来年も全力でガンバルので、よろしくおねがいします。ママ様にもお読
みいただける作品が描けますように(2001年の目標)。

お名前:米田淳一
メールアドレス:jyl@ma4.justnet.ne.jp
サイト名、アドレス:
 プリンセス・プラスティック http://www4.justnet.ne.jp/~jyl/index.htm


タイトル)『バトル・ロワイアル』

(著者名)高見広春

(出版社)太田出版                      

コメント:読み終わってまず第一に「上手い」と思いました。42人の生徒が見事に書き分けられていて、すぐ登場人物の名前を忘れてしまう私にも一人一人がはっきりと印象に残りました。物語の中の42個の選択、42個の動機、42個の結末、これらの全てが、あるいは儚く、あるいは激しく、あるいは悲しく、私の中に残りました。これは決して暴力を売りとしたものではなく、私が今までに接してきた何ものよりも人を信じると言う事、人を愛すると言うことについて考える機会を与えてくれました。

お名前:高葦永蒼
メールアドレス:
bkaon100@rinku.zaq.ne.jp


(タイトル)『からくりからくさ』

(著者名)梨木香歩

(出版社)新潮社  

コメント:くわしくは"http://www2.odn.ne.jp/~cbh39000/book2000-3.html#karakuri"にて。
清澄で健気な女性が美しいです。他候補はマイクル・コニイ『ハローサマー・グッドバイ』、
J・R・ランズデール『バッド・チリ』他。

お名前:おおた 
メールアドレス:uporeke@freemail.fresheye.com
サイト名、アドレス:粗忽長屋(http://www2.odn.ne.jp/~cbh39000/index.html)


(タイトル)『モダンガール論』

(著者)斉藤美奈子

(出版社)マガジンハウス

20世紀における女性の地位や、意識の変遷を著者独自の視点で概観した本です。
フェミニズム、ジェンダー関連の本は、とてもかみ砕かれたものか非常に高度なものの両極端なものが多いなか、予備知識の無い人間でもフェミニズム論の推移を知ることが出来るという意味で貴重な本です。
また、そんな難しいことを抜きにしてもこの著者独特の知的でユーモアある文章を読むとわくわくしてきます。
フェミニズムの本なので、銀河通信では不向きかと思ったんですがあんまり面白かったので他の人にも知ってほしくて、この本に投票します。
なお、銀河通信的には同じ著者の「ヤマト」「ガンダム」「エウ‘ア」に登場する女性の役割をとおしてその時代の女性観を探っていく紅一点論もお勧めです。

阿部雄介
bzm10266@nifty.ne.jp


(タイトル)「ハイペリオン」「ハイペリオンの没落」「エンディミオン」
      「エンディミオンの覚醒」
4冊をひとつの物語と考えて。
     それでもいいですか?
      
(著者名)ダン・シモンズ

(出版社) 早川書房 

コメント:こんなに楽しめる本に出会ったのは久しぶりです。
     フランス料理のコ−スのように、オ−ドブルから
     デザ−トまでおいしくて濃厚で満足感たっぷり。
     これを読んだあとは、どの本も物足りなく感じてしまったほどです。

お名前:MAKI
メールアドレス:mochida@mvi.biglobe.ne.jp
サイト名、アドレス:http://www2u.biglobe.ne.jp/~macomo/
                                                  MAKI’s HOME


(タイトル)『三丁目の夕日』

(著者名)西岸良平

(出版社)小学館  

コメント:
サイケデリックな画風をアレンジして描かれた、独特な作風が、
東京オリンピック以前の、日本のどこかにあった夕日町三丁目に、
あなたを、いざないます。
解説が多い点から「なつかしもの」を、看板にしているようですが、
どうしてどうして、しっかりした作品が、多いこと。
例えば、「てぶくろ」という作品は、あの時代の女性の悲劇なんですね。
これが、淡々と描かれており、しみじみと良い。
(ビッグコミックス27巻・マイファーストビック『冬支度』より)
かつての映画や文学が好きだった人は、読むと、ほっとするのでは?

サブテキストには、なぎら健一の『下町小僧』(ちくま文庫)が、ベスト。

西岸先生は、SFも描かれております。(双葉文庫で今も読めます)
好き嫌いが分かれると思いますが、私は、SFも好きです、西岸ワールド。

お名前:ネコネコ


(タイトル)『童話物語』

(著者名)向山貴彦/著 宮山香里/絵

(出版社)幻冬舎  

コメント:
いつまでも物語の世界の中にとどまっていたい・・・そんな気持ちにさせられた一冊
でした。
挿絵の美しさも物語を支える重要な要素になっています。
惜しむらくは、子どもたちにも読んでほしいと思える本なのに、児童向けの体裁では
ないということ。ルビを振り、文字のフォントを大きくして、小学生高学年ぐらいか
ら読めるようにしてほしい。ベストセラーの『ハリー・ポッター』シリーズに勝ると
も劣らないファンタジーだと思います。

名前:Moni
メールアドレス:miotise@shikoku.ne.jp
サイト名、アドレス:Poco a Poco のんびりゆこう   
http://user.shikoku.ne.jp/miotise/


(タイトル)『猫の地球儀』

(著者名)秋山瑞人

(出版社)メディア・ワークス「電撃文庫」  

コメント:
【焔の章】
 凄い作品があったものだ。涙が出るほど愛らしく、身震いするほど格好よく、
適度にミステリアスでとことんエンタテイメント。こんな作品が読みたかった。
子供だましなどではない、こんな本を子供だけのものにして置く事が即ち罪で
ある。SF系の本読みサイトで評判を呼んでいるので、騙されたと思って手に
とってみたところ、これが大当たり。こんな話。

 人類が増え過ぎた人口を宇宙に移民させるようになって既に半世紀が過ぎていた。
過ぎたところで人類は滅び、地球を回る巨大な人口都市には猫たちの社会が築かれ
ていた。ロボットをパートナーとし、「天使」たちの遺産を活用しながら独自の
文化を持つに至った彼等の中に、スカイウォーカーと呼ばれる「種」がいた。
壁の向こうにある「地球儀」に降り立つ事を信じるスカイウォーカー。しかし、
猫社会を統治する大集会は、スカイウォーカー達の「信念」を許す訳にはいかな
かった。これは37番目の、そして最後のスカイウォーカー<幽>の物語。
36番目の<朧>の残した智を託された少女型アンドロイド・クリスと<幽>
の出会いの物語。一方、スパイラル・ダイブというフリー・フォール状態でのロボット
バトルに挑む一匹の若き挑戦者がいた。名を<焔>。伝説のチャンピオン<斑>に
挑戦状を叩き付けた彼に勝算ありや?賭けすら成立しない絶対不利の下馬評の
中、<焔>の勝利を疑わない放浪者<楽>。そして、儀式の鐘は鳴る…。
と、ここまでが37ぺーじ。みたかこの密度!といって、読みにくい訳ではない。
とびきりの設定が時にユーモラスで、時にはしたないまでに格好良いストーリー
に当たり前のように織り込まれているのだ。綺羅星の如きアイデアを惜しげも
なくつぎ込んだ「本物」の手応えがここにはある。どうかこの本を手に取って
欲しい。もう一度言う。こんな話が読みたかった。早く次、読ーもおっと。

【幽の章】
 さて、本年度ベストSFとの呼び声も高い活劇<猫>SFの後編。前編の興奮が
冷めないうちに読むのがお作法と、とりかかった。前編のラストで、最強の白猫
「焔」に対し作法に則った挑戦状を叩き付けた37番目のスカイウォーカーである
黒猫「幽」、その天才の幼年期のエピソードから後編はスタートする。伝説的な
女盗賊であった「ビリビリ尻尾のキジトラ円」率いる菊水一家に拾われた不愛想な
子猫は、どこで身につけたのか、奇跡的なロボット操りの技術を持っていた。
なぜか「円」のお気に入りとなったその黒猫は「幽」と呼ばれるようになる。そして
彼は、あらゆる知識や技法を吸収しては、その「教師」たちを凌駕していくのであった。
語られざる悲劇の後、生っ粋の「まつろわぬ者」として再び一匹(ひとり)になるまで。

 ……時は流れ、<戦闘>という名の友情の幕は開く。戦いの鐘に向かって準備を整える
二匹(ふたり)、その間を好意と親愛を惜しげもなく振りまきながら「楽」は舞い、
震電は踊る。自由落下の中で強き者どもの命は紅蓮に縺れ、時間は加速する。それは、
不器用な格好良さの墓標。許せないのは誰?確かめたいのは何?夢を持つ事が罪と
いいきる事は、別の罪。天空の盆に向かって魂は昇る、どこまでも。涙を失った
猫たちの目に映るその色は、「青」。

 はしたないまでに格好いいキャラクターが思わせぶりの中で漏らす「真実」が痛い。
メカ戦の妙味を知り尽くした作者によるナノ・セコンド単位の戦闘描写が凄い。
夢と夢の遭遇と意地の張り合いはどこまでも心地よく、命の軽さが滂沱の涙を誘う。
巷の感想では「詰め込み過ぎ」との風評もあるが、私にとってはこれで必要充分で
ある。嵌まりました。やはり面白い。惜しげもなくアイデアをぶち込んだ究極の
エンタテイメント。天翔ける猫たちの「神話」に心からの敬礼を送る。もう一度言お
う。
「こんな小説が読みたかった」!!絶賛。

お名前:kashiba
メールアドレス:kashiba@ann.hi-ho.ne.jp
サイト名、アドレス:猟奇の鉄人
http://www.ann.hi-ho.ne.jp/kashiba/


タイトル:『永遠の森 博物館惑星』

著者名 :菅浩江

出版社 :早川書房

コメント:
「末枯れの花守り」から3年。「天上の調べ聞きうる者」が掲載されてから7年。
菅浩江さんの久々の単行本は、待ちに待った「博物館惑星シリーズ」の単行本化。
もうファンとしては言うことがありません。ということで今年のベスト1です。
それぞれの話については、思いが拡散して言葉になりませんが、
私的に一つあげるとすれと「夏衣の雪」がいいかな。

名前:えんど
Mail:jagd@mirage.pobox.ne.jp
Site:終翁邸 http://mirage.pobox.ne.jp/orange/


(タイトル)『エンジン・サマー』

(著者名)ジョン・クロウリー

(出版社)ベネッセ

コメント:
私のイメージでは「クリスタルの切子細工」。
透明感があって静謐。そしてどこか醒めている感があって、
読後にじーんときたSFでした。もうメロメロ〜!
どこかの出版社で復刊してくれるのを願っています。

お名前:H2
メールアドレス:hitoshik@jasmine.ocn.ne.jp
サイト名、アドレス:Tea Garden
http://www2.ocn.ne.jp/~h2tea/


(タイトル)『神無き月十番目の夜』

(著者名)飯嶋和一

(出版社) 河出文庫 

コメント:
今年はいい本に沢山出会ってどれをベスト1にしょうかちょっと迷いましたが、
『神無き月十番目の夜』を私のベスト1にしました。

『始祖鳥記』を読んで作品の出来に感動し、飯嶋和一に興味が湧き、出会ったのが
この『神無き月十番目の夜』でした。
江戸初期に村ごと消えた百姓一揆の話で、なぜ老人から赤子まで亡骸になったのかを
描いた話です。
ほんのちょっとしたズレが積み重なり、それが破滅へ進んでゆく様子は実に圧巻。
『始祖鳥記』もそうだけど、いろいろな場面のデイテール描写が丁寧で、まるで映像を
見ているような感覚になります。特に主人公藤九郎が死ぬシーンでは私の頭の中で
゛無念"という言葉が駆け巡り泣けました。

お名前:みき
メールアドレス:miki-0201@mud.biglobe.ne.jp


(タイトル)『いとしい』

(著者名)川上弘美

(出版社)幻冬舎

コメント
:自分がこの本を好きなことはよくわかっているのに、何が好きなのか
説明しようと試みるのは、どうにも難しいこの1冊。それでもベスト1に押す
のは、「川上弘美」という、自分にとってこの先も読み続けて
いくであろう作家と出逢わせてくれた、思い出深い1冊になったから。
読み返せば今も、物語と一緒に2000年の夏の香りが匂い立つ気がする。

#ちなみに「本」ではないかもしれませんが。
#漫画だと『西洋骨董洋菓子店』(よしながふみ、新書館)が
#文句なくベスト1。これまた出逢えてよかったと思う1冊。
#特に洋菓子好きは、読んで涎を垂らして欲しい。

お名前:ちはら
メールアドレス
chiharak@geocities.co.jp
サイト名、アドレス:いろつきおとつき(http://www.geocities.co.jp/Technopolis/2371/)


(タイトル)『永遠の森 博物館惑星』

(著者)菅浩江

(出版社)早川書房  

今年の私のベスト1は迷わずこれに決まり!です。
これですっかり菅作品のとりこになり、読み終えた次の日から
書店と古書店をハシゴし、ネットを使い、今までに出版された本を買い揃えました。
美しくて、やさしくて、少しせつない、素敵な物語だと思います。

凍月
wbs45442@mail.wbs.ne.jp
今宵、月の裏側で。
http://www2.wbs.ne.jp/~tsukiura/index.htm


(タイトル) 『鉄の夢』

(著者名)  N・スピンラッド

(出版社)  早川書房(SF文庫)

コメント:いろんな意味で今年一番楽しみました。
     本トに奇書ですな、これは。
     あんまり強くお薦めは出来ないんだけど、
     予備知識無しで読んでいただきたい作品です。

お名前:πR
メールアドレス:smile@aa2.mopera.ne.jp


(タイトル)『第三の警官』

(著者名)フラン・オブライエン(アイルランドの作家です)

(出版社)筑摩書房 (世界文学大系が入手しやすい)

コメント:あふれるイメージと奇想の数々。幻想と哄笑の文学です。マイオールタイムベストは確実。幻想文学ここにあり!

お名前:土田裕之
メールアドレス:pooh@02.246.ne.jp
サイト名、アドレス:幻想文学館/www.02.246.ne.jp/~pooh 


(タイトル)『ハンニバル』(上、下)

(著者名)トマス・ハリス

(出版社)新潮社  

コメント:今年は、あまり本読みませんでした。ビジネス書ばかり読んでた
ような気がします。この本は、待っていたこともあり一気にいけました。

お名前:相澤 健一
メールアドレス:ken-a@tkf.att.ne.jp
サイト名、アドレス:http://www.geocities.co.jp/Bookend/4420/index.html


(タイトル)『陰陽師 生成り姫』

(著者名)夢枕獏

(出版社)朝日新聞出版

コメント:これを読んでいた時、まだまだ寒い初夏のイギリスにいました。日本の自然はしっとりと華やかで暖かく、日本の女性の情は、じんわりと怖くも、美しいと思ったものです。獏さんが、これほど、美しい描写を出きる人だと知りませんでした。

お名前:堀田康彦
メールアドレス:yasuhiko@hotta.fsnet.co.uk


(タイトル)『光の帝国 常野物語

(著者名)恩田陸

(出版社)集英社文庫

コメント:
なんてきれいな小説なんだろう。
まぎれもなくぼくが今年読んだ小説の中ではベスト。
今年は恩田陸の小説ばっかり読んでいた気がするのですが
(2000年中に何冊刊行されたんだろう?)、
その中でも一番のお気に入りです。
文庫化をきっかけに購入したのですが、
親本をチェックしていなかったのがちょっと悔やしい。

「七瀬ふたたび」を思わせる悲劇的描写があったりもするんだけれど、
そういった部分よりむしろ日常描写、自習のシーンや唄を歌うシーンなどを
読んでいると泣けて泣けて、たまりませんでした。
いやあ、すばらしかったです。

お名前:くろっくはち
メールアドレス:hachi@rr.iij4u.or.jp


(タイトル)『コールドマウンテン』

(著者名)

(出版社)新潮クレストブックス  

コメント:(南北戦争時代アメリカ南部はファンタジー世界であった)

お名前:浅暮三文
メールアドレス:asagure@interlink.or.jp
サイト名、アドレス:浅暮魂


(タイトル) 『亡国のイージス』

(著者名) 福井晴敏

(出版社) 講談社  

コメント:
今年の私的1位は金城一紀『GO』で決まりと思っていたのだが、『永遠の子』
『白夜行』と並ぶ1999年の「三強」といわれたこの小説を年始めに読んでい
たのだ。これを読んでしまうと、どうしても他の本は吹っ飛んでしまうなあ。

海上自衛隊ミサイル護衛艦の幹部自衛官が叛乱を起こす。米軍の毒ガス兵
器を奪った北朝鮮のテロリストと結託しての行動である。ミサイルの弾頭にそ
の毒ガス兵器を積み、東京都民1千万人の命を「人質」にとって……

650頁2段組のボリュームだが読み出すと止まらない、まるでハリウッド映画
を観ているような錯覚に陥るスケールの大きな傑作。こういう、ぶ厚い本がの
めり込むくらい面白いと、本好きで良かったなあ、と幸せな気持ちになる。

お名前: ヒゲうんちく
メールアドレス:higeun@mail.goo.ne.jp
サイト名、アドレス:http://www5a.biglobe.ne.jp/~yosenabe/index.htm


(タイトル)『雪の中の三人男』

(著者名)エーリヒ・ケストナー

(出版社)東京創元社  

コメント:ほのぼのとしていて、安心して読みました。
     こういう本はいつまでも残してもらいたいと思う。

お名前:慎吾
メールアドレス:singo@mxb.mesh.ne.jp


(タイトル)『レキオス』

(著者名)池上永一

(出版社)文藝春秋  

コメント:
 今年は他にも「西条秀樹のおかげです」(森奈津子)、「麦の海に沈む果実」(恩田陸)が
印象に残りましたが、「レキオス」ほど私の心のわしづかみにしたものはありませんでした。
実家が沖縄のせいか、出てくる場所が知っているところばかり(当たり前か)。変な人々を
書かせると池上永一はキラキラと輝きます。次回作は3年後かなぁ?

お名前:オクマン
メールアドレス:okuman@za2.so-net.ne.jp


(タイトル)『私が殺した少女』

(著者名)原寮

(出版社)ハヤカワ文庫  

コメント:
私は本当はハードボイルドが苦手なのですが、この作品の圧倒的な面白さにくらくらしました。

お名前:隼
メールアドレス:hayabee@mac.com
サイト名、アドレス:ブラボー・ブタカツ
http://kyoto.cool.ne.jp/hayabi/


(タイトル)『永遠の森 博物館惑星』

(著者名)菅 浩江

(出版社)  早川書房

コメント:
「美しいと思う心はどこにあるんだろう」腰巻きにあるこの文と、表紙の絵でつかみはOK!
「美」をめぐる9編の物語。各物語は、色々な角度から「美」に対して光を当て、それぞれが独自の輝きを放っている。
そして、9編を通して物語りを眺めたとき、それぞれの輝きが一つの物語を写し出して来る。
それは、読んだ人それぞれの想いを映し出しているのでは無いでしょうか?
私は、ラスト近くで主人公の妻が呟く、「この幸せな気分も一緒に覚えてね」
と言う言葉。この言葉によって、私なりの物語をつむぎ出しました。
あなたは、どんな物語を見付けますか?

お名前:山崎 晃
メールアドレス:r-man@din.or.jp


(タイトル)『レキオス』

(著者名)池上永一

(出版社)文藝春秋

コメント:
このノリの凄さに欠点もふっとびます。

お名前:青木みや
メールアドレス:live@sam.hi-ho.ne.jp
サイト名、アドレス:Life and Diet
http://member.nifty.ne.jp/live/


(タイトル) 『星虫』

(著者名) 岩本隆雄

(出版社) ソノラマ文庫 

コメント:今年はとりあえず目標の月10冊を達成できました。
思い返すとハインラインの『夏への扉』を初めて読んだのも今年だし、
あれもこれもと色々読んでいて31日ぎりぎりまで読んでから選んだのは結局『星虫』でした。
読後に「自分もやらなきゃ」って思わせてくれたっていうのが選んだ一番の理由ですね。
今後、何度でも読んでみようという本に出会えるということはそうないことですからね。
来年も良い本にいっぱい出会えますように・・・。

お名前: スー
メールアドレス: susuki@rouge.plala.or.jp


(タイトル)  『ターザンの復讐』

(著者名)エドガー ・ ライス ・ バロウズ

(出版社) 早川書房

コメント:
バロウズさんの、作品は、火星シリーズは、大好きでしたが、ターザンについては、
あんまりだったのです。どうしても、アメリカ映画のあのイメージが強すぎて・・
そして、ターザンの第一作目は、小学生のとき、子ども用の本を読んで、それには、
ジェーンとしあわせになる予感で、おわっていたので、私の心の中のターザンは、
それで、終っていました。

しかし、今、この年(40・・・ん歳ね。)になって、きちんと、バロウズさんの、ターザン
1巻目2巻目を読んで、ターザンというバロウズさんの、創り出した人間が、
どんなに、奥の深いキャラクターか、初めてわかりました。
特に、2巻目にあたる、この本では、自分の真実の愛を、居場所を求めて、彷徨する
ターザンが、描いてあって・・・・

ターザンをほかの方は、どう読まれるか私には、わからないけれど、それは、それは、
素敵な愛の物語だと思いました。
さらに、これは、今の年読んでよかったと・・・

若い頃、読んで、今みたいに感動できたか、どうか、私には、わかりません。
もちろん、若い頃には、それなりの感想があるかもしれないけれど・・・・

私は、今読んでよかった・・・そう思いました。

そして、今年、東京創元社からも、ターザンの帰還というタイトルで、
再刊されたことも、とても、とても、よかったです。
                       

お名前:おかぴー
メールアドレス:ZUM05374@nifty.ne.jp


★海外SFの部 
『ハイペリオン』
『ハイペリオンの没落』
『エンディミオン』
『エンディミオンの覚醒』 
ダン・シモンズ 早川書房 

『ハイペリオン』の文庫化を機会に、ちょっとはすに構えて読み始めたが…
読んでいる間も読んだあとも、現実世界とハイペリオン世界の区別がつかなくなる有様。
読み終わってしまうのがあまりにも惜しい、ほんとうに素晴らしい作品でした。
未読の人は、新世紀の最初に「読めっ!」

★海外幻想の部 『魔術師マーリンの夢』 ピーター・ディキンスン 原書房  

自分の別な時代における人生で必ずや知っていたと思われる物語たち。
深いところに根ざす感覚を呼び起こされる。

★海外児童文学の部 "Holes" Louis Sacher A Yearling Books 
(邦訳 『穴』 ルイス・サッカー 講談社)

一応「児童文学」に入れはしたが、その範疇に治まらない、これは思いがけぬめっけもの。
だまされたと思って手にとってご覧になることをお薦めする。

★国内の部 『風車祭(カジマヤー)』 池上永一 文藝春秋 

『バガージマヌパナス』『レキオス』のどちらかでも良かったのだが、彼の世界に
どっぷりひたる喜びを考えるとやはりこれが一番。六本足のプタの妖怪ギーギーにま
た会いたい。『レキオス』のろみひーも捨てがたいキャラクター。

★特別賞 『山尾悠子作品集成』国書刊行会

収録作のほとんどは幸いに昨年(1999年)中に読むことが出来たが、こうして美
しい書物の形をとってそれらが一つにまとまったことは特筆すべきことだ。山尾悠子
さんと関係者の皆さんに感謝です。

ニム♪♪♪
yomise@iblard.com
http://www.mars.dti.ne.jp/~gmotaku/index.htm


(タイトル)『女ともだち』 全6巻

(著者名)柴門ふみ

(出版社)双葉社 

コメント:10数年ぶりに読み返してあの頃はまだ希望があったなと感じた。
    
お名前:やまたか
メールアドレス:uokiyo3852@muc.biglobe.ne.jp


(タイトル)『アナン(上、下)』

(著者名)飯田譲治 梓河人共著

(出版社)角川書店

これが僕の今年のベスト1です。もう読んでるときは滂沱の涙でした。今も思い出すと涙腺が緩みます。
温かく、美しく、優しいお話です。これ以上は画面が霞んで書けません(T_T)

お名前:bo2ta


(タイトル)『戦後「翻訳」風雲録』

(著者名)宮田昇

(出版社)本の雑誌社

コメント:心踊る本、ではない。資料の労作、でもない。
しかしこれは、翻訳現場の最前線で闘ってきた
男による、鬼籍に入りたる戦友達へのレクイエムである。
哀悼の意を表す方法は、記録に書き留めることしかない。
その、赤裸々とも言える「神々」だった翻訳者の
人間臭いエピソードは、同時代を歩んだ同志のみが
果し得る、誠意の表れに思えてならない。
早川的翻訳文化に育った者には、ぼくらを楽しませて
くれた生身の翻訳者を窺い知る必読の書であり、
まさに時を経ねば描き得なかった一冊である。
神々の残した多くの遺産、それは、文士達の夢の跡…。

お名前:ダイジマン
サイト名:銀河通信オンライン


(タイトル)『慟哭』

(著者名)貫井徳郎

(出版社)創元推理文庫

コメント:これか『星降り山荘の殺人』か散々迷いましたが、
やっぱり今年のベスト1は号泣モノのこちらに軍配が上がりました。
あまりに救いのない悲劇。最後の一文を思い出すだけで、胸が詰まります。
ミステリとしても、綿密に練られた仕掛けにあっと驚く超超超一級品!
これがデビュー作とは、おそるべし貫井徳郎!!
今年はこの作家に出会えたのが何よりの収穫でした。他のも読まなきゃ!

名前:安田ママ
サイト名:銀河通信オンライン


 

ダイジマンのSF出たトコ勝負!

 ウ〜ム、21世紀である。そしてぼくは、おもむろに「自分の持っている本が、前世紀のものばかり」なことに気が付いた。記憶の大半も前世紀のものなので、だからどうって訳でもないけどネ。とは言え、「世紀が変わった所で、実際なーんも変わらないジャン」という感慨とは裏腹に、つい最近までタイヘンな意味を有していた左様な言葉(でしょ!?)が、一夜にしてありふれた事象を示すに過ぎない、価値無き発言に堕するのだ。世紀の進展は知らぬ間に、コペルニクス的転回を我々の意識に与えているらしい。…そうか! 劇的に変貌した21世紀への第一歩は、コレなのか〜!!<違います。

 さてさて、それならばいっそのこと、前々世紀の本を取り上げてみよう、と天啓の如くひらめいた。我ながら名案と申すほかあるまい。

 …えーと、どの本がいいかな…?

 いやはや、考えることは誠にもって自由であり、勝手ですらある。しかし戦前の本でさえ、ぼくなどがおいそれと持ってる訳ないという、動かし難い現実に辿り着くまで、そう時間は掛からないのだった。

 何しろ20世紀は偉大である。世界初のSF雑誌〈アメージング・ストーリーズ〉創刊が1926年。E・R・バローズの作家デビューが、1911年のこと。テーマ/アイデアをほとんど網羅した現代SFの父、H・G・ウエルズ『タイム・マシン』が1895年でギリギリ脱出、という時の厚みが20世紀なのだ。日本なら、大正時代さえ全てが20世紀に内包され、明治33年がようやっと1900年という始末。こりゃホントーに古典SFの時代ですな。

 それでもなんとか出て来たのが、『拍案驚奇 地底旅行』という本。

地底旅行 地底旅行 中身

 明治18年2月の出版というから、1885年ですか。ご存知ジュール・ヴェルヌの『地底旅行』が原作で、その本邦初単行本であり、ついでに言えば初版本。翻訳は三木愛華と高須墨浦の共訳で、発行元が九春堂。ただし奥付では、訳者名がそれぞれ三木貞一、高須治助と表記されている。書影では分からないだろうけど、植物をあしらった図案(唐草模様にあらず)で少し凹凸のある表紙に、金押しの題字。函やカバーが存在したかは不明だが、それにしても時代を感じさせる本である(当たり前か)。

 なにせ奥付の訳者名で、三木に「千葉縣平民」、高須に「東京府平民」という、身分が併記されていたりするのである! しかも「府」だし。まだまだあるぞ。見慣れぬ活字は多々あれど、本文は総ルビなので、根気さえ有れば(!)勘で読めないことはない。しかし序文が全くの漢字の羅列で、「レ」だとか「上・下」とかが盛んに振られているのはどうよ?(笑)

 つまりは完璧な漢文なのである。訳者による“地の文章”であるはずの所の序文が、なぜこうなのかはナゾ。まさか日常語? こんなの教科書でしか見たこと無いや。

 それにしても、当時の読者はスラスラ読みこなせたんでしょうか。今でこそ、ヴェルヌ作品は良質のジュヴナイルとして広く親しまれているが、明治期においては科学啓蒙の手段として輸入された経緯もあり、かなりのインテリ層が主要読者だったのかもしれない。

 さて本書は、舞台や登場人物に大胆に手を加える「翻案」が珍しくなかった時代にしては、真面目な翻訳と言える。それは「凡例」として、7項目に渡り訳出に際しての但し書きを寄せていることからも伺える。大体、オリジナルなのか原著があるのかすら、不明なことの多い時代ですから。でもまあ、扉ページで「英國ジユルスウヱル子原著」(本文では「英國 ジユールス、ウヱル子著」と表記)とあるのはご愛敬。英語版からの重訳だったのだろうか。ところで「ウヱル子」ってダレ?(笑)

 出せない活字がいくつもあるので直接引用できないが、この凡例自体が実に興味深いので、全項目の大意を紹介してみよう。

 「一、この書を翻訳するに当たり大いに心を用いたのは、文体と詳略の度合である。原書のまま直訳すると複雑になってしまうが、我国の小説を読むものは甚だ直訳体を好まず、複雑だと簡単に放り出してしまう。複雑になるのはしょうがないのに、これを訳者の技量が足りないせいにされてしまう。故に略すべきは略した。」

 「一、末段に至っては、学術上最も有益のものと思われるので詳細に訳出した。但し前段は遊戯の文に近く、これの為に大部になることを憚ると言えども、後段はこれに異なる。」

 「一、毎回題目を付して、一目で大意が分かるようにした。」

 「一、動植物名の多くは原語のままを用いた。従来の翻訳書はこじつけの訳名が多く、却って人を誤らせる恐れあり。しかし強いて訳名を付けようとすると、これを免れないので、適切な訳語が無いものには造語を当てずに、むしろ原語にした。しかし、時には注釈を下してその意を説いた。」

 「一、原語と言えどもコンパス(磁石)、チョッキ(衣類)のように、既に一般に流通している言葉は、ことさら原語にしなかった。」

 「一、図画は原書と毫髪を差ず」

 「一、前段、地底の旅行は、主にして賓なり(つまり、旅行が主だけど、実は客/添え物)。後段、地質学と動植物学は、賓にして主なり。作者が書に題せしは旅行にあれど、その意図は後段にあり。故に、前段は影なり。読者が影を好んで形をなおざりにすることは、作者の意にあらざる也。」

 さあ、どうです。色々とオモシロイじゃないですか!?

 「前段」「末段/後段」とあるのは、いわゆる『地底旅行』の翻訳に加え、「地球の出生及び沿革」に始まる科学解説が併録されているから。本文235ページ中、この科学解説パートが3分の1を越すのだから、かなりのもの。しかし、肝心の小説部分が「遊戯」で「賓」で「影」とは、相当な言われよう(笑)。ヴェルヌに託された役割から分かるけど、にしても最初に断言しなくても(笑)。

 物語パートは省略部分あれども、かなり忠実。地底に旅立つ一行は、アクセルが「アクセリ」、ハンスは「ガンス」と訳されており、リデンブロック教授は「叔父」で名は登場せず、というところ。

 また、恐竜や動植物はど原始生態を細密に描き込んだ、銅版画(?)が本文を飾っていることも、本書の大きな魅力である。これはどう見ても日本の画風ではないと思ったけど、凡例の第6項「図画は原書と毫髪を差ず(ごうはつをたがえず)」とあったので解決した。「ほんのわずかも/いささかも違わない」というコトですな。いやナニ、辞書引かなきゃ当然知りませんでしたともさ(笑)。

 ともあれ、全8ページの挿絵は、翻訳底本にも使用されていたものであるらしい。こうして見ると、研究が進んだ現代の恐竜像と比較しても、パッと見のディテールだけでは大差無いですね。でもイグアノドンとかはいいとして、マンモスを「マモンツ」と紹介するのはどうかと思うぞ(笑)。

 本編では登場しないと思われるマンモスなども挿絵入りで紹介されているから、やはり科学解説パートも原書に収録されていたものなのだろうか。これがヴェルヌ自身の筆になるものかはともかく、少なくとも翻訳底本を突き止める手掛かりにはなりそうである。

 それにしても昔の本って、広告とかがまた面白かったりするんだよねえ。「漢文躰」「譯書文躰」「訓傍及び平かな文」と、わざわざ明記分類された九春堂の巻末既刊案内も、味があって結構なシロモノですよン。間違っても探そうなんて、とてもとても思いもしないけど。いや、ホント。

 明治時代はワンダーランド。されど俗人(オレだオレ)、危うく近づくなかれ!なのね〜。なんでこんな本、持ってたんだろ…(笑)。

 

あとがき

 昨年秋の入院騒ぎ以来、密かに欠かさず実行していることがある。それは、帰宅後、必ずうがい薬でうがいをすること。これはかなりオススメ。マジで風邪をひかなくなりましたよ!おためしあれ!(安田ママ)


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