'00 MYSCONレポート前編

 後編はこちら!

 2000年3月11日(土)の夕方から12日(日)の朝までのひと晩、東京の鳳明館・森川別館において、MYSCON(ネットミステリものの集い)が開催されました。私はプレみすこんは参加できなかったので、今回がはじめて。ミステリものとしては実に薄く浅く、こんなヤツが参加してもいいのだろうか?とおっかなびっくりだったのですが、うずく好奇心には勝てず、星飛雄馬の姉ちゃんのごとく、柱の影でひっそりと濃い人々を眺めてようかな〜、と思い参加いたしました。

 開始時間は18時だったのですが、当日は仕事があったので、少々遅れて参加。駅に着いてから思いっきり道を間違えたため(あの地図はわかりにくかったっす〜、スタッフ様。私が方向オンチなだけ?)私の到着は19:30ごろ。ううう、最初の講演「井上夢人さん、e‐NOVELSを語る」が聞けなかったよ〜。井上さんの大ファンなのに〜(泣)。でもスタッフのフクさんにメールしたら、テープ起こししてネットにアップしてくださるそうなんで、ホッとしました。これはけっこう盛り上がったそうで、時間もだいぶ延びたとか。

 旅館の方はとても親切で、「皆さん地下にいらっしゃいますよ」と教えてくださり、大広間に直行。ちょうど、2つめの企画「持参本の交換会&歓談」が始まるところでした。参加者107名+ゲスト2名を10個の班に分け、その班のなかで、持ち寄ったオススメミステリ本の交換をしようという試み。私の班名は「エルキュール・ポワロ」でした。メンバーは、shakaさん、kashibaさん(お2人はスタッフ)、てつおさん、夏来健次さん、須川毅さん、隼さん、ひろさん七夜さん、クボミさん、大森望さん、私。一応司会進行はshakaさん。順に自己紹介と自分の持ってきた本の紹介をしていきました。

 ええと覚えてる限りでは、クボミさんが『ケイゾク』の出たばっかりの文庫、kashibaさんが『鬼女の都』、ひろさんが『ウブメの夏』と『電波系』(笑)、shakaさんが『幻の女』、七夜さんが『ステップ・ファザー・ステップ』、あとは『退職刑事』、連城三紀彦のサイン本、『名探偵の掟』、戸板康二、あああと忘れちゃった!ごめんなさい!で、私が持っていったのはもっちろん『時計を忘れて森へ行こう』光原百合でした!これを出した時はねえ、どよめきが起こったのよ〜。七夜さんも、「私もそれにしようかと思ったんです〜!」と叫んでいたし(笑)。未読の方は買って読みましょう、ぜひ!

 で、どうやって交換するかですが、とりあえず自分の欲しい本を言っていき、重ならないところはそれでオッケー、ダブったところは相談して決める、ということに決定。私は迷わず大森さんの出した『わが母の教えたまいし歌』松村光生、ハヤカワ文庫JAを所望!もお、大森さんのご推薦なら文句なしに欲しいっす!誰ともダブらなかったんで、問題なくゲット。うれしい〜!これはSFハードボイルドだそうです。ああ、なぜやはりSFに目が行く、私?私の提供した光原百合は、意外にもスタッフのお2人が手を挙げてました。これはshakaさんの手に。ぜひ読んでくださいね〜!

 というところで時間になり、20:15終了。5分休憩のあと、20:20より「MYSCON大クイズ大会」。これは、司会者の出した問題を、班ごとに正解を話し合って解答する、というもの。クイズのお題は、
「ある男が、お昼頃、ある古本屋の店先の100円均一ワゴンから古本を20冊買ってる男性をみかけました。が、翌日もまた翌日も、7日間連続でその男性はその同じ古本屋のワゴンで古本をきっちり20冊買っていたのです。さて、いったいこれはなぜでしょう?」
というもの(あってるかな?)。正解は特に無く、最もインパクトある、もしくはうまい解答を答えた班をスタッフが選び、それを表彰するということでした。おお、これは北村薫的日常の謎派問題!(笑)。がしかし、私は名探偵ではないので、うーん、なかなかいい解答を思いつかない!shakaさんが、問題を区分分けして、それぞれひとりずつ考えようと提案し、「なぜ昼休みか?」「なぜ100円均一か?」「なぜ20冊か?」などと考察。私の隣にいたkashibaさんは、ぽんぽんと3つくらい立て続けに解答を思いつく。さ、さすが猟奇の鉄人!なんとか皆で智恵を絞った結果、
「男性は豪邸に住んでいて、古本をドミノに使っていた」
「男性は宇宙人で、100円等価交換しか知らなかったので1冊100円の古本しか買えなかった」
「男性はマトリックスで、なんでもいいからとりあえず古本を読み、それを地球人の知識として蓄えていたが、1日20冊分しか脳に蓄積できなかった」
「男性はヤギで、古本を主食にしており、20冊がちょうど一日分の食事だった」
「男性は長編パラパラマンガを書いており、本がどんどん必要だったが、一日のこづかいが2000円だったのでいつもこれだけしか買えなかった」
などの意見で行くことに。

 で、時間となり、他の班の代表者がどんどん前に出て解答を発表。こ、これが面白い!!よくもまあ皆、そんなにファンキーな答えを思いつくよなあ〜。しかも発表者の方々が、実に芸達者!笑いを取るのが実にうまいのだ!ミステリものって、みんなこんなんなの?もっと暗くてマニアックでこだわりの激しい方達なのかと思っていたが(偏見で失礼)、皆めっちゃ明るくて面白すぎるぞ!しかし、なんか聞いてると、ミステリ的解答のなかに、SF的解答が多かったような気がしたのは私だけか?以下、解答を箇条書きに。

「明智小五郎」班…「その古本屋の息子の車庫は、暗証番号で開く仕掛けになっていた。で、その番号をワゴンの中に書いていた。その番号を見るため、息子はいつもワゴンから本をどけていた。父はそんなことは露知らず、20冊本が売れたと思って毎日補充していた、それが一週間続いた」
「シャーロック・ホームズ」班…「本を買っていたのは、毎日2000円おこづかいをもらっている老人ホームのおじいちゃんだった。彼は毎日買えるだけの本を買うのだが、ひと晩寝ると買ったことを忘れてしまう(笑)。で、また翌日買いに行く」もうひとつの解答は「男性はSMで、女王さまの命令で毎日本を買っていた」
「金田一耕助」班…「商店街がミレニアムセールをしていて、2000円買うと福引ができた。で、その福引をしたくて毎日本を買っていた。その本で脱税本棚を作っていた」
「神津恭介」班…ファンタジー解答「あれは西村京太郎だった」浅暮的解答「男性は指相撲の選手で、指を鍛えるために本を毎日使っていた(指で本をつかんで破る訓練!)(#ちなみにこれ、ワタクシのイチオシ)」「装丁作家で、本の装丁だけ欲しかった」SF的解答「電波が、“毎日20冊古本を買え〜”と命令していた」
「アルセーヌ・ルパン」班…「客がスパイで、本に暗号が書かれていて、古本屋の主人が日本の情報を流していた」「本を買っていたのは実は問題をだしたフクさんだった」
「亜愛一郎」班…「男性は紙魚を研究していたので、紙魚がどんどん必要だった」
「ファイロ・ヴァンス」班…「近眼のおじいちゃんが絶版本をいっぱい持っていたので、その本を息子がこっそり抜いて売りさばき、かわりにワゴンから買った本を補充していた(が、実は損をしていた)」
「法水麟太郎」班…「その古本屋の袋はラムちゃんの絵がついていたのでそれが欲しかった」「人間灯台(すみません、これよく覚えてない)」「講談社文庫の応募券を集めていた(蔵之助は20冊!)」
「エラリィ・クイーン」班…「男は西澤だった→『七回死んだ男』」

 ふー、よくもまあこれだけ笑える解答が出たもんだ!最初から最後まで爆笑の渦でした。結果発表は、日曜朝の閉会の時とのことで、21:15終了。

 ここで業務連絡。今後の企画の紹介、ワセミスイベントなどの紹介などなど。ださこんの案内ものだ@のだなのださんがしてました。あうう、私はいかれないのだ〜。残念。余談ですが、私の横でkashibaさんがワセミスの同人誌の応募用紙に記入してたんですが、ご意見のところにスヌーピーの絵を書いてました(ってのぞくなよ!>私)。これが超うまいの!何も見てないのに!さ、さすが漫研出身!(笑)このあと22:30まで自由時間。私は寝部屋に荷物を置いて、青木みやさんたちのスタッフ部屋でだべり&軽食。北村薫話などに花が咲く。『六の宮の姫君』についてとか。雪樹さんは調子悪そうでお気の毒。私はすかさず、ノートで掲示板書き込み。

 しゃべってるうちに22:35になってしまい、あわてて第1企画「若ミス・リベンジ」の部屋に。「ホームページの部屋」にも惹かれたんですが、結局ずっとこちらにいてしまった。と、井上夢人さんが廊下にいらっしゃるではないですか!すかさずサインを戴く。ありがとうございました。で、「若ミス」ですが、これは松本楽志くん(が司会でいいのかな?)、内藤さんおおかわさんGAKUさん春都さんの5人で、お題の10冊ほどのミステリについてあーだこーだと語るというもの。楽志くんが、早口の関西弁でスパスパと豪快にミステリを斬って斬って切りまくっておりました(笑)。いやあ、こういう芸風の方だったんですか(芸じゃないってば)。

 1.今邑彩「I(アイ)」…聞きそびれました。残念。

 2.パトリック・クェンティン「2人の妻を持つ男」…楽志くんが「しばきたい!」と叫んでおりました。読んでてイライラ、つっこみどころ満載だそうです。「話をどんどん延ばし延ばしにしてる」「自己を正当化してる」などなど。…面白そうじゃん(笑)。とにかく、これはけちょんけちょんに言われまくりでしたね。みやさんがぼそっと「やっぱり、こういう“ダメ”っていう言葉は“いい”って言葉より強いね」とつぶやいてました。例の北村薫話を思い出していたのでしょう。

 3.中町信「新人文学賞殺人事件」…この方は折原一以前の、叙述トリックの第一人者だそうです。私は全然知りませんでした。構成が非常に美しいとどなたかが絶賛。楽志くんは、「人物はいいかげんだけど、そういう細かいところに目をつむればオッケー」だそう(笑)。受けたのは、おおかわさんが「この人のノベルスで、見返しに「こんなトリックを思いついた」とか書いてて、本文中にそれがホントに出て来るんだよ!」というフレーズ。そりゃすげえ!西の古本女王さま、橋詰さんは彼のファンだそう。マニア受けする作家なのか?

 4.若竹七海「プレゼント」…まず内藤さんが会場に質問。「若竹七海の『ぼくのミステリな日常』を読んだ方は?」ほとんどの方が挙手。私も。でもこの「プレゼント」を読んだ方はあまりいませんでした。内藤さんいわく、「若竹は『ぼくの〜』が有名だけど、この『プレゼント』が彼女の本領を発揮しているので、ぜひ読んで欲しい!彼女は長編より短篇がオススメ!」とのこと。ほほー、そりゃ読まねば。楽志くんは「『ぼくの〜』はネコかぶってる」とコメント。内藤さんがおっしゃってたのかな、「彼女は悪意の描き方がうまい。最後に出てきて、ずしーんと来る。それがストーリーとうまく結びついてる」とコメント。「若竹の登場人物は、女性から見てどうなのか?」という話になり、会場の女性に話が振られる。みのりさんは、「痛いです」と発言。「すごく好きだけど、友達にはなりたくないかも」と。おおむね好評でした。おおかわさんは、「キャラ萌えしちゃう」とぼそっと発言(笑)。『トラブルメーカー』もいいそうです。

 5.マーガレット・ミラー「狙った獣」…内藤さんのオススメ。ハヤカワ版と創元版で訳が違うそう。またイキナリ楽志くんが爆弾発言。「いきあたりばったりで書いてる気がする」「登場人物の女が「放射能が!」とかって突然ヘンなことを言い出す。電波系。そこだけ評価。」っておいおい!(笑)彼はこのあと、「電波系」を繰り返す。GAKUさんは「登場人物に感情移入はしないけど、お芝居を見てるみたいな感じで面白い」。「サプライズ・エンディングにこだわった一冊」だそう。

 6.新保裕一「奪取」…「偽札づくりのじいさんの活躍が面白い。底辺の人間のカッコよさ!」(うーん、これは楽志くん発言だったですか?)「『ホワイト・アウト』より完成度は高い」おおかわさんは「長すぎる。半分でいい」とコメント。ここで会場から発言。shakaさんが「彼は取材したことを全部書きたいですよ。だから長くなる。『奇跡の人』なんかそれで言ったらストーリーなんてホント短くて終わっちゃう。彼はその取材を書くことで重厚さを出してるんであって、それはおそらくテレビディレクターだった影響だろう」。「『奪取』は、話がミステリ、サスペンス、などどんどん変わっていくところが非常に面白い」とのこと。そこでかわかみさんが「新保作品で最初に人に勧めるのってやっぱり『ホワイト・アウト』ですかね?」と質問。かわかみさんも「小説にうまく知識を取り込んでるところを評価」していました。おふたりに言わせると、『奪取』も『ホワイト・アウト』も『奇跡の人』も新保作品としては異色だそう。ではいったい、スタンダードはどれなんざんしょ?でも結局、彼らみんな、新保さんが大好きみたいでした。(ちなみにワタクシ的には『ホワイト・アウト』は和製ダイ・ハードだよ〜!非常に面白かったよ!『奪取』も読みかけですが、面白い!>なら全部読めって)

 ここで時間がないのであと飛ばし。10.山田風太郎「妖異金瓶梅」は全員絶賛、言うことなし!だそう。

 9.柴田よしき「RIKO」…青木みやさんがこれをぜひ!というのでラストに俎上に。春都さんの「リアルじゃなくて、“生々しい”」という発言に、深くうなずくみやさんでした。で、みやさんはどうなの?という振りに、「単に好き。女性のある部分を生々しく書いてる」。りなりなさんは「”女ってこんなものなのよ”という認識の押し付けがカンにさわった。オバさんくさい」と発言。右側の彼は「『RIKO』よりも『少女達がいた街』が断然オススメ!」とおっしゃってました。そうですか。読まねば。私は『RIKO』は最初のほうをちょっと読んで、あまりに痛そうなんで挫折したのでした。雪樹さんは「『RIKO』は自己中心が強調されちゃってるから(ここでみやさんが「デビュー作だし、リキ入っちゃってるんで」とつぶやく)、二作目の『マドンナ〜』がいいです、こっちとあわせて読むべし」と発言。ほお。締めくくりは、「RIKOというより、書いてる人の成長小説」ということでした。なるほどね。みやさんから『少女〜』をもらってしまいました。ラッキー。

 23:45、終了。もうひとつの部屋は23:30に終了してました。そちらも行きたかったな。

 00:00、第2企画開始。「海外ミステリを読もう!」「ミステリ大喜利」の2本。後者はまた楽志くんの漫才(?)だそうなので、前者のマジメ路線に決定。

 フクさん、ジョニィさんを司会に、森英俊さんと藤原義也さんの選んだ初心者向け海外ミステリのプリントをもとに話が弾みました。まず藤原さんが本格から5点、非本格から5点セレクト。本格の5冊は、この部屋に集まった方ほとんどが読破なさってたよう。すいません、私は2冊のみです(冷や汗)。タイトルはたいてい知ってましたが。みやさんは、「なんだ、この部屋の人皆読んでる人ばっかじゃん。どっちかっていうと、読んでない若手の初心者にこっちに来てほしかったのに、若い子はみんな楽志漫才にいっちゃったなあ。読みがハズれた」とつぶやいておりました。確かにこっちの会場、ミステリの玄人ばっかりだわ(笑)。

 kashiba掲示板でよくお名前を拝見する森さんにはじめてお会いできて感激。穏やかで落ち着いた話しぶりがとても素敵な、やせた背の高い、品のいいおじさまでした。森さんのオススメは、本格もの、非本格もの、短編集・アンソロジーの3つに分類されてました。面白いのは、「森博嗣が好きな人向け」などとコメントが入ってること。このコメント理由をひとつひとつ説明していただきました。そっかー、ジャック・フィニィ『ふりだしに戻る』を早く読まなきゃ。『踊る黄金像』ウェストレイクもね。ホックの「長い墜落」は『密室殺人傑作選』に入ってるんでしたっけ?「傑作!!」と絶賛したらしたので、読まねばなるまい。

 shakaさんの「新しい人があまり入ってないのはなぜ?」という質問に、「アメリカのミステリはあまり好きじゃないから。イギリスのが好き。で、後味のいいのが好き」とコメント。

 shakaさんは「ミステリファンに、ディック・フランシスはどのくらい読まれているのか?」と話を振ってました。ううむ、私もあまり読んでないっす。うちのダンナは大ファンですが。これは、「競馬シリーズ」となってるんで、「競馬」=「ギャンブル」、というのが苦手な人に敬遠されるのでは、とのこと。

 ジョニィさんは「ミステリの人は、SFの人に比べて、国内ミステリしか読まない、海外ミステリしか読まないという方がけっこういますが、あれはなぜ?」と質問。森さんは、「ミステリは出版点数が多いので、国内だけ読んでも足りるからでしょう、SFは絶対的出版点数が少ないから」とコメント。フクさんは「本国のミステリファンは何を読んでるんでしょう?」と質問、森さんは「本格読んでる人、多いですよ」と答えてらっしゃいました。

 会場から質問。「この一覧は入手しやすいオススメですが、入手しにくいオススメを教えて下さい、古本屋に行く楽しみのために」(笑)。森さんは、「東都書房の『まだ殺されたことのない君たち』、かな。これは幽霊探偵もの。あとは『ヨット船上の殺人』かな」とコメント。

 ラストに「これからの出版情報を教えてください」と質問。いろいろおっしゃってましたが、ゴメンナサイ、私にはよくわかりませんでした。が、お答えを聞いて「ああ、あれが出るのかあ〜!そうかああ〜〜!!」と皆がとても喜んでいたのが印象的でした。国書刊行会の発売予定もいろいろ。隔月発売というのだけ覚えてますが。あ、ちなみに森さんのオススメ21冊をすべて読破していたのは、この会場内では、みすべすのともさんただお一人でした!素晴らしい!さっすがあ!

 00:35、終了。もうひとつの企画は00:50終了。

 続きは後編をどうぞ!(間違いなどの指摘がございましたら、掲示板でもメールでもけっこうです、なにとぞご一報くださいませ。お詫び申し上げたのち、謹んで訂正いたしますので。)


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