SFセミナー2002レポート その1

 

 2002年5月3日(金)、東京・御茶ノ水の全電通労働会館ホールにて、SFセミナー2002が開催されました。当日は晴れてよい天気。11時にJR御茶ノ水駅で、ネット友達の皆と待ち合わせて、おそば屋さんでお昼。

 12時すぎに会場入り。サイン本で売られていた、ハヤカワJコレクションの牧野修『傀儡后』のサインがあまりにかわいい(!)ので衝動買い(笑)。『太陽の簒奪者』(野尻抱介)も。『のーてんき通信』(武田康廣、ワニブックス)を買い、その場でサインをいただく。ダイジマン曰く、これは武田さんのファンダム史だそう。

 会場で、超目立っていたのは「ちよ父」ぬいぐるみ(大)9500円を持っていたリウイチさん。一番後ろの席に陣取って、ちよ父を横に置いてました。舞台から見たら、めちゃくちゃ目立ってただろうなあ。さっそく抱きに行く(笑)。うー、欲しい〜。

 :以下のレポは、すべて私の手書きメモから起こしたもので、発言をテープにとったりは一切してません。あくまで自分の記憶から書いてますので、確実にこのとおりにしゃべったというわけではありません。まあこんな感じでした、という程度に会場の雰囲気だけ受け取めてくだされば幸いです。

 昼企画
「SF入門というジャンル」
「かめ、くらげ、たぬき、北野勇作」
「立ち上がれ新レーベル!編集者パネル」
「小説の可能性を求めて―奥泉光インタビュー」

 合宿企画
「SF十段」
「北野さんといっしょ」
「ほしのこえをきけ〜「ほしのこえ」上映会
「田中香織の部屋」


 1:00、スタート。司会はダイジマンとのむのむさんのメガネくんコンビ(笑)。スーツ姿が決まってました。

 1コマ目。「SF入門というジャンル」。出演は左から野田令子(司会)、川又千秋、巽孝之、小谷真理、牧眞司(敬省略)。のださん、髪が黒いよ!まずは神林長平氏から届いたメッセージを披露。「SFは日々変化しています」というフレーズが印象的でした。

 まずは目次紹介。そして編集にあたっての方針を巽氏が話す。「今までのSF入門とは違うものを作ろうと思いました。読者としてのブックガイドという視点ではなく、完璧に作家の視点から、“書き手の側のためのSF入門”というコンセプトで作りました」ああ、そうだったんですか!

 「1965年に、SFマガジンの編集長である福島正実氏が書いた『SF入門』という名著がありまして。ほかにはハヤカワ文庫の『SFハンドブック』、自由国民社の『世界のSF文学総解説』、筒井康隆の『SF教室』など。しかし1965年から40年近く、『SF入門』というとガイドブック、読書案内、読み手のための本しかなかったんです。で、SF作家倶楽部で出した『SF2001』というアンソロジーが好評だったので、次にノンフィクションを出そうと。書き手に向かって書かれてる本を作ろうと思ったわけです」

 「ひとつ申し上げておきますと、この本はアメリカよりでして。というのは、アメリカでは書き手のための本ってよく出ていて、原稿の書き方・送り方、アドバンスなどについてなどが詳しく書かれたマニュアル本があるんです。でも日本ではそういうのは邪道というか、執筆はもっと精神的なものという気風があり、こういった本はほとんど出てませんでした」

 ここから牧さんが、スライドを使って過去のSF入門書をコメントつきで紹介。時間がなくて、日本のものだけで終ってしまいましたが、ざっとタイトルだけあげておきます(忘れてるのがあったらすみません)右のコメントは牧さんの発言です。

・『SF入門』福島正実 「SFに対する世間の無知や誤解をといて啓蒙しよう、という熱い本」
・『新版 SFの世界』 
・『SFの眼』
・『SF散歩』
・『SF・ミステリ おもろ大百科』石川喬司「彼はSF界のスポークスマンといった存在」
・『夢探偵』
・『IFの世界』
・『SFの時代』
・『SF英雄群像』野田昌宏 「すれっからしも初心者も楽しめる本」
・『SFパノラマ館』
・『「科学小説」真髄』
・『NHK人間大学 「宇宙を空想してきた人々」』
・『小松左京の「SFセミナー」』
・『SF教室』筒井康隆 「これは名著!子供向けだけど手を抜いてない。今文庫化してもいいのに、と思う」
・『未来の世界 SFの世界』 巽氏いわく「自分が子供の頃初めて読んだSF入門書」
・『もしもの世界』 学研ジュニアチャンピオンコース
・『宇宙・SFの世界』 「金子さんの趣味が出てて面白い。ハードSF寄り」
・『世界SF名作集』 「子供向けアンソロジー」
・『SFワンダーランド』 豆たぬきの本 スタジオぬえ
・『ヨコジュンのSF塾』 
・『SFなんでも講座』
・『世界のSF文学総解説』 「あらすじとか載ってて、今でも役に立つ本」
・『SFを極めろ!この50冊』
・『新・SFハンドブック』 「ニュートラルな、スタンダードな視点から書かれた本」
・『日本SFこてん古典』
・『SFファンタジア』 学研 
・「文春デラックス 宇宙SFの時代」
・「SF再入門大全集 別冊奇想天外」 「アンケート集計の前に、ひとりひとりのベストをのっけてるのがいい」(注・今回の『SF入門』ではアンケート結果をHPで公開予定とのこと)
・「宝島 SFワンダーランド」
・『SF事典』 
・『SF大辞典』 
・『必携 SF手帖』
・『SFキイパーソン&キイ・ブック』
・『SFに何ができるか』 ジュディス・メリル 「日本SF界に与えた影響大」
・『夢の言葉・言葉の夢』川又千秋 「実況中継評論集 今読むとわかんないかも」牧氏「中学のときSFマガジンの連載で読んだけど、“SFファンってカッコいい人種だ”と思った」
・『夢意識の時代』 川又千秋
・『SFとは何か』 NHKブックス 笠井潔
・『乱れ殺法SF控』 水鏡子 「SF読書論、私評論」
・『サイバーパンク・アメリカ』 巽孝之 
・『日本SF論争史』 巽孝之 (イラストとりみき!)
・『SF次元へのパスポート』 「SFファン活動入門書」
・『塵もつもれば』
・『別世界通信』 荒俣宏
・『世界の幻想文学・総解説』
・『SF&ファンタジーガイド 摩由璃の本棚』 神月さんのパーソナルな視点によるガイド
・『夢の仕掛け』 井辻朱美
・『ファンタジーの冒険』 小谷真理 「19世紀から現代までのファンジーを歴史順にまとめて、より多くの作家を紹介しました。古参のファンタジーマニアにもほめられてうれしかった、いわく“自分の知ってることが全部書いてある!”(笑)」
・『ひかわ玲子のファンタジー私説』
・『ゴシック幻想』 「出口なき迷宮」の改訂版
・『ホラー小説大全』

野田「入門ジャンル、というものが存在するとしたら、この『SF入門』は「入門書じゃない!」という気がしますが」

牧「僕は中学から筒井さんが書いたのからずーっと読み続けてる。入門してもしきれない。入門しっぱなし(笑)」

川又「僕は『SF英雄群像』が一番。内容をあまり真に受けちゃいけないんだけど(笑)」

巽「伊藤典夫がディレイニーの『アインシュタイン交点』を訳される前に絶賛してて、でもなかなか訳されなくてずーっと待たされてて(笑)。まだ訳されない作品は夢ですね」

小谷「とにかくこれ、いろんな方(53名?)に執筆お願いしたんで、原稿取るのがいかに大変だったか!特に友成さんの原稿取るのは大変でしたよ!なかなか原稿がこないんで催促すると「絶対書きますから!」。でも待てど暮らせど来ない(笑)。そのうち彼がボンベイに行く日が来ちゃって、電話したらお母さんの声みたいな留守電で「旅立ちました」とか言われて。どうしよう、こうなったらもう自分が書くしかない!と思って書き始めてたら、やっとボンベイからすごい字のファックスが来て。『産霊山秘録』についてなんですが、記憶で書いてたみたいです(笑)」「53名のサイン帳としてもぜひ!(笑)」

川又「そのためにわざと余白をあけてあるんですね(笑)」


 「書き手のためのSF入門」だったということに深く納得。「入門書」にしては内容が全然初心者向けじゃないじゃん!と思っていたので(それならタイトルか副題にそう入れればよかったのに、とも思いますが)。スライドで書影を見られたのは、以後古本で探す方にはとても参考になったのではないでしょうか。これに押されて、パネラーのコメントが短くなってしまったのは残念でした。『SF入門』の本じたいの内容についてもうちょっと触れてもよかったかも、と思いました。


2:20、2コマ目「かめ、たぬき、くらげ、北野勇作」

 舞台左から、聞き手は尾山ノルマ、出演は北野勇作(敬省略)。(ちなみに北野さんは関西弁のしゃべりでしたので、そのイントネーションで読んで下さい)

尾山「大阪からその格好でいらしたんですか。今布団から出てきたような…ちなみに下は短パンです(注・上はTシャツ)」

北野「これはよそゆきですよ。けっこう苦しい(会場、笑)」

尾山「SF大賞のご感想は」

北野「うれしいですよ。200万もらえて(会場、笑)」

尾山「専業作家なんですよね」

北野「そうです、たまにバイトする程度で」

尾山「周囲の反応は?」

北野「賞とったのって、どんな話なん?」って聞かれて説明に困るんで、『どーなつ』は工夫したんですよ。目次に全部書いてある(会場、笑)」

尾山「理系的な話を書くわりに、哲学的な言動をなさるんですね」

北野「理系なんて言われたことないですよ。英語のできない理系です。そもそも文系理系ってのはないでしょう」

尾山「では、北野勇作がどう作られたかを。「日本の椋鳩十」ができるまで」

北野「まだできてないて(会場、笑)。日本のチョコエッグくらいにしといてください。それは間違いない。いきなり「椋鳩十」ゆうてもわからんでしょう。まず「和製キングコング」とかいろいろ前ふりがあってから、「椋鳩十」に落ちる、ってもんでしょ(会場、笑)」

尾山「生まれは兵庫県高砂市で」

北野「ブライダル都市です。地元の中学を出て、高校は神戸。怪獣と落語が好きでした」

尾山「怪獣はテレビで?」

北野「はい、だからゴジラは知らなかったです。友人が「すごいんやでー」って教えてくれたんですが、テレビでいつ何チャンネルでやってるか一生懸命探したけど、載ってない(笑)。ウルトラマンが好きでした。ウルトラQは再放送で」

尾山「仮面ライダーとウルトラマンとありましたけど?」

北野「ぼくは仮面ライダーはダメだった。あれは子供だましだ、と小学生ながら思ってました。こんなアホなのあるかい!と。見るのはけっこう厳しかったんですよ。ウルトラマンもセブンまで。「帰ってきたウルトラマン」なんて、「帰ってきた」いうても模様違うやん!(会場、笑)まあ見てない言いながら見てましたけど、こうバカにしてる態度で。イヤな子供でした」

尾山「小説とかは?」

北野「図書室で、『宇宙大戦争』とか読んでたくらいですね。中1くらいで、ジュブナイルシリーズをいろいろ読んで。小松左京、星新一、光瀬龍あたりを読んでました。中1で『N氏の遊園地』を読んで一番衝撃を受けて。ここから自分で本を買うようになりました。星新一を休み時間に1篇読んで、そのあと授業中ずっと読んでた。親からもらう土曜のパン代を本にしたり。自分の町には本屋がなくて、隣町のスーパーセンターに自転車で行って買ってました」

尾山「部活は?」

北野「バレー部でした。踊るほうじゃないですよ。回転レシーブは練習しましたね。意味ないけど」

尾山「一般的なSF少年だったんですか」

北野「クラスに1,2人SF読む人がいて、話したりしてましたね。ファンジンなんて言葉、知らないですよ当時。SF専門誌も知らなかった。かろうじて「SFマガジン」てのがあるらしい、くらいで。神戸の高校に行くようになって、一気にいろいろ入ってきましたね。スターログとか。お金のごまかし方も覚えて(会場、笑)。スターウォーズは高1でした。その頃「未知との遭遇」、「エイリアン」、「2001年宇宙の旅」とか三宮まで観に行きました」

尾山「その頃読んでたのは?」

北野「小松左京、筒井康隆、眉村卓とかかなりいろいろ。小松左京の短篇が一番好きでした。イラチなんですよ、長篇はめんどくさくなっちゃって。小松左京の短篇はホンマにすごいですよ!長篇のほうが有名だけど。「HAPPY BIRTHDAY TO……」(注:『結晶星団』角川文庫収録)というショートショートがあって、これに影響受けてるかも。宇宙船が事故で全部ぐちゃぐちゃになっちゃうんですよ。老人の夢ともいえる、そんな話で」

北野「本は読んでたほうだと思います。その頃はSFマガジン、奇想天外とか読んでて、いろいろえらそうに言ってましたね。「かんべむさしとかいう新人は〜」とか(笑)。新井素子にショックを受けて、あれで自分も書こうと思った。それまで、SFってのは神様のようなひとが書くものであって、自分は大人になったら立派なSFファンになるんだ!と思ってた(笑)。でも、新井素子を見て、「あ、自分で書いてもええんや」とショックを受けて。そんなことできるんやー、って。大学受験の頃、勉強するのがイヤで、「大人になったら立派なSF作家になるんやから(勉強なんてええんや)」と思ってた。逃避ですな」

北野「で、甲南大学に入りまして」

尾山「お坊ちゃん大学じゃないですかー!」

北野「お坊ちゃんいる大学なんですよ。BMBからゴムぞうりまで。落研の部室にたまってました。SF研はなかったんですよ、作る根性もなくて。映研に入ろうと思ってたら、ラジカセから米朝師匠の落語が聞こえてくるんですよ。で、黙って聞いてたら「落語好きなん?入りやー」って誘われて。「落語の研究してりゃいいんや」って言われて入ったんだけど、入ったら「ネタ何にする?」言われて。今更しない言えずに、教卓の上に座布団置いて小噺やって。あ、くわしい落語の話は合宿企画で。とにかく大学時代は落語一色でしたね。だいぶ真面目にやってましたよ」

北野「SF書いてはなかったですね。ショートショートくらいで。リーダーズ・ストーリーに入選しましたよ。これが第一歩で。で、就職の時期が来て、イヤじゃないですか。で、また「SF作家になるんやから」って、就職活動真面目にしてない。授業も真面目に出てないし。で、なんとか酒問屋に就職しまして、そこでフォークリフトに乗って毎日ビールおろしてました。ビールは一番難しいんですよ。フォークリフトはけっこう楽しかった。肉体労働だし。若かったし」

北野「でも1年くらいで営業回されて、これがイヤで「やってられへんなー」って、これからちょっと真面目に(小説)書くようになりましたね。毎日仕事終ってから、1時間喫茶店で書いてた」

尾山「家で書けばいいのに?」

北野「寮に戻るとゆるんでしまうから。5,6年、ずっと同じ喫茶店で書いてました。もう注文しなくても勝手にコーヒーが出てきて。たまにはアイス飲みたいって思ってるときでも」

尾山「その影からの支えで(笑)」

北野「別に支えられてないですよ!金払ってるんだし(会場、笑)。7年くらい勤めてましたね。30までにはなんとかしようと思って、30の時にファンタジーノベル大賞に投稿して。その頃には森下さんのショートノベル塾も終ってて、長篇書けたけどずっとほったらかしてあったのをファンタジーノベル大賞に出したんですよ」

尾山「その頃も営業を?」

北野「や、営業はダメだと会社にみなされて、すぐフォークリフトに戻りましたよ。フォークリフトの中では中堅でした」

尾山「日本SF界広しといえど、フォークリフトにかけてなら!」

北野「フォークリフトなら勝負しますよ!(会場、爆笑)で、その仕事中に新潮社から電話がきて。会社の皆聞いてるから、「はい、はい、はい、わかりましたー」って(会場、笑)。ファンタジーノベル大賞なんて会社で言っても誰もわからん。「ファンタジーノーベル大賞?何発明したんや?」って。でも賞金250万っていったら「そらすごいわー」って(会場、笑)。あ、その前に創作落語大賞とりました。で、SF大賞が200万、って賞金落ちてるやん!(会場、笑)」

北野「デュアルで『火星〜』出したとき、少し直しました。もうどこ直したか覚えてません。『クラゲ〜』のあと、会社やめました」

尾山「クラゲはどうして角川から出たんですか?」

北野「角川の編集の佐藤さんて方が「書いて欲しい」ゆうてきたんです。でも売れなくて、悪いなーと思った。僕は面白いと思ってるんですけどねえ。書評読むと、何読んでも「わからへん」て」

尾山「賞の審査員の方々は?」

北野「けなされてましたよ。なんでわからへんかなー、こんなにやさしい文章なのにー」

尾山「理系的アイデアについてはきっちりと考えるんですか?」

北野「知ってることしか書いてないんだけど」

尾山「大学の専門は何を?」

北野「X線解析です。でもあまり真面目にやってませんよ。卒業実験のときも、途中で機械が壊れて中止になって。でも高い機械だから、買いなおしもできず、その「中止」のままで提出して卒業しました(会場、笑)。理系では落ちこぼれやと思うてますけど。途中で向いてないと思った。きっちりしたことは向いてない。グラフかいてても、僕のグラフはすぐ汚くなるの(笑)」

尾山「そのあとは仕事は?」

北野「ぽつぽつ短篇をSFマガジンに書くくらい。どうしたらいいかわかんなくて、ダラダラしてた。ちょうど『クラゲ〜』出した次の年に神戸地震があって、住んでたアパートが全壊して。で、今の嫁さんのいる大阪に転がり込んで。未婚だったんですけど、「被災者やー」いうてご飯食べさせてもらって(笑)。あと貯金で細々と暮らしてました」

尾山「芝居もやってたんですよね」

北野「やってました。ノルマあるし、きつかったですね、お金。バイトとかもして。で、いつのまにか結婚することになって。「誰やねん思てるでー」言われて。よく収入もないのに結婚許してもらったと思うけど、まあ書いた本あるし、作家だってことはわかってたみたいで。年収は100万以下でしたね。奥さんのほうが200万くらいで。でもそんなに困らなかったですよ。あ、奥さんの話はまた合宿で」

北野「そんで『かめくん』書いたんですけど、こんなタイトル、持ってっても誰も出してくれませんよ。で、小松左京賞に応募したんですが落ちて。へこみましたよー。それで次のバイト探しに行って、劇団の女の子に松屋梅田店を紹介されて。そしたら徳間から声がかかって、出してくれることになりました」

尾山「これが10月に日本SF大賞を受賞したんですね」

北野「小松さんが選んだものなので、小松左京賞に落ちたのには文句ないですよ、へこんだけど。僕は小松さんで育った子供みたいなもんで、まあ子供のやってることに親は理解ないものだし(会場、笑)。そうであって当たり前で。SF大賞も、賞金ついてなかったら、うれしさは半減したかも」

尾山「でも『かめくん』はネットでは大人気ですよ!」

北野「でも売れてないみたいですよ。まあ僕は250万あったらいいんですよ。小説書いて、バイトして、幸せな暮らしやから。高校のとき、理想としてた暮らしよりずっといいですわ。賞金入ったから、チョコエッグばんばん買ってますよ。そしたら、ネズミばっかり出るんですわ!」

尾山「北野さんにとって小説とは?」

北野「小説書くのは、遊びです。一番面白い遊びです。次は角川ホラー文庫で書きます」

尾山「内容は?」

北野「ホラーです。ホラ、じゃなくてホラー。のびるほうですよ(会場、笑)」

ここで会場から質問をいくつか。「仮面ライダーはダメ、とさっきおっしゃってましたが『ザリガニマン』で使ってたけど?」「ああいう、改造されて巻き込まれていくという話は好きなんです。ただ、安易に作られてる話があって、あれがイヤだったんです」など。


 まるで漫才の掛け合いのような、実に楽しいトークでした。淡々とした顔で、おかしいことを言うのがまたよくて。北野さんの人となりがよくわかりました。時間切れで、作品内容に深く突っ込んだ話がお聞きできなかったのが残念でしたが(これは合宿で少し聞けたので私としては満足。これについてはまた書きます)。


 このあとは、舞台上にて北野勇作新刊のハヤカワJコレクション『どーなつ』サイン会が行われました。イラストの西島大介さんもいらして、北野サイン&西島イラストというダブルサインをいただき、とてもうれしかったです。西島さんの人工知熊がかわいいー!しかもひとりひとり違うイラストにしてくださり、感激。私は熊とどーなつを描いていただきました。

 その2へ その3へ (以下続きます、02.5.5 安田ママ)