またしても、SF者のお祭りの季節がやってきた!記念すべき今世紀最後のSF大会が、8月5〜6日(土日)、パシフィコ横浜似て開催されました。やー、今年はプログレスレポートの一番最後の便に入ってた、企画タイムテーブルをみてぶったまげました。こ、この豪華ゲストはいったい何!?さすが世紀末!(?)超大盤振る舞いだよ!!ホント、今回は参加できてよかったと心から思います。いつも思うけど(笑)。いい記念になりました。
住んでる千葉県から近いので、当日5時半起きでダイジマンと会場へ。電車のなかで、悩みまくりつつ、タイムテーブルに赤ペン入れながら泣き泣き今日明日のスケジュールの最終決定。だってあれも見たいこれも見たい、でもでも私のカラダはひとつしかないんじゃ〜!!どうしろっつーの!!ダイジマンの、「2つを中途半端に見るよりは、潔く片方をじっくり見るべし」というお言葉に従う。そうだよね。桜木町駅で、ちはらさんの先輩とわけあって待ち合わせ。でもなーんか、周りにそんなにはSFっぽいひとが見当たらない。そうか、これが都市型コンベンションというものか。フツーの群集にまぎれてるぞ、SF者。ヨコハマは観光客が多いのか。同じ会場で、保育関係のでかいコンベンションがあったせいかもしれないが、子連れ母多し。あらかじめ地図を見ておくとかいう知恵が全くなかった私たちは、受け付け場所を思い切り間違える。なんだよー、そっちのビルなの!?駅からやたら歩いた気が。暑いし。なんだなんだ、あの回廊みたいなのは!あそこから歩けば涼しかったんじゃん、と思っても後の祭り。とほほ。
汗だくになって、9時ちょっとすぎに、やっと受付会場到着。おお、もうひとがいるいる〜。あっ、タカアキラ・ウさんだ!話しかけると、当日飛び込みスタッフだそう。えらいなあ〜。「こんにちは」と肩をたたかれて振り向くと、なんと大森望先生。わっ、御大みずからとはびっくり!あわててご挨拶。実行委員長、木原さんにもご挨拶。こっちは顔をよく存じてるので、すっかりトモダチのように話し掛けてしまったが、今思えばもしかして「これ誰だ?」と思ってらしたかも。すいませーん。あ、リウイチさんも赤い帽子で歩いてる。あ、MZTさんもいたあ!ではいざ受け付けへ。ってどうしてこんな年端も行かない女の子がスタッフしてるんだあ!?おかーさんはびっくりしたぞ!
でも荷物置いてどっこいしょ、と座ってすぐ、ダイジマンが「牧さんのディーラーズ設置のお手伝いに行く」というので、金魚のフン状態でついてって一緒にお手伝い。え?SFマガジン並べる?まかしてください、本業でんがな。なれた手つきで段ボールからぱぱぱと取り出すダイジマンに、皆賞賛の声。だってアナタ、いつも店で一日何箱開けてるとお思いですか?(笑)北原尚彦さん、桐山さんなどにもお会いする。さくさくと並べてたら10時〜11時のオープニングが終ってしまった。まあいいさ。なんでも突然のプロポーズとかがあったとヒラノさんにあとで伺う。
11時。さあ、企画スタートだ!!!私が選んだ最初のコマは、「宮部みゆきトークライブ」。聞き手は大森望氏。
宮部さんが話してるのを見たのは初めてでしたが、ちはらさんみたいでした(笑)。高くてかわいい声の、元気な雰囲気。しぐさもどっか若いカンジ。
宮部「盛況でびっくりしました。夏らしいお祭りですね。なんか、攻略本ナシでダンジョンに入ったみたい(笑)。さっきコスプレのひととか、いたんですよ。あれ見て、「ああ(SF大会に)来たな!」って気がしてうれしかった」
大森「オープニングでプロポーズとかあったんですよ。SFのひとは、そうでもしないとなかなかケッコンできないので(笑)」
宮部「あのどよどよがそうだったんですねー。ちっ、見にいけばよかった!」
大森「どんな生活を?」
宮部「9時5時で仕事場に通って仕事して、あ、仕事場は住まいと別なんです、仕事場にはゲーム機ないですよ。一日のノルマ終った瞬間に家帰ってプレステ2です!(笑)なんかね、これを買ってから、前のプレステがいかに過労死寸前だったかがよくわかりました〜。「がんばれよ、がんばれよ」って立てたりあおいだりしてたんです(笑)。2を買ってから、大事に供養してあげました」>ほほー、そんなにゲーマーだとは存じませんでしたわ。
大森「もともとこの企画の趣旨は、『クロスファイア』映画化記念ということで。ガメラの金子監督といい、『蒲生廷事件』でSF大賞受賞の宮部さんといい、まさにうってつけですね」
宮部「私ってつくづく運がいいなあと。ある人にだまされたんですが、「SF大賞というのはね、プロレスのチャンピオンベルトのように前の人を倒して受賞しないといけないんだよ、ガメラ倒すの大変だね」って言われて。でも私のときは「エヴァ」が同時受賞だったんで、エヴァにガメラを倒してもらってラッキーでした(笑)」
大森「超能力モノって前から書いてましたよね」
宮部「ええ、私は昔から「超能力があるって、ホントに幸せなのか?すごいのか?」って思ってて、そういう主人公を書いてたんです。でもね、今って人生の目標が立ちにくい時代でしょ。そういう時代に、こういうものを書くのって、書き方をよく考えなきゃいけないなって思いました。映画のできあがった映像がね、もうバイオレンスでびっくりしたんですよ」
大森「最後、ガメラでしたからね(笑)」
宮部「ものすごい暴力性というか。あれを見たとき、思わず「私、こんなの書いてたんですね」って言ってしまった。もちろん大好きな監督でうれしかったんですけど、ああいう破壊的な力を書くときにどうしたらいいか?ってことを考えて書かなきゃいけないなって。小説の影響力ってのはたいしたことないですけど、映像は強烈でしょ。あれが子供たちにどう受け取られるのか、って。規制はよくないとは思うんですけど。いったん規制しちゃうと、今度それがシステムとして使われちゃうから。規制ではなく、あくまで自分がどう考えるか、と。こないだ荒俣さんとの対談で話したんですが、そもそも暴力をコントロールするために、物語と言うのは必要だから、あくまで自由に書かれるべきだ、間接的に創作物というのはとても大切だ、って」
大森「暴力、ってたとえば宮部さんがスリッパ投げたこととか?(笑)」
宮部「そうそう、でもあれはね、でもぱふぱふのだったんですよ、しかも壁に向かって投げたんですからね、っていいわけしたりして」
大森「暴力と言えば、『バトル・ロワイアル』も映画化ですね」>おお、奇しくも、私の99年ベストは1位バトロワ、2位クロスファイア!暴力小説好きなのか、私?
宮部「私、撮影現場見にいったんです。監督のいる前に。藤原竜也がいて、「いる〜〜〜〜!」って(笑)。オバサン丸出し(笑)。でも面白くなりそうですよ。私、映画監督ミーハーなんです。今度持込みしようかと。「わ、私の原稿使ってください」って。」
大森「ビートたけしが先生ですからね、あんな先生いたらコワイよね」
宮部「やっぱり、たけしさんがくると、場のテンションが上がるんですって。そういうとこ、怪優だなって。深作監督ってね、ハリセン持ってるんですよ。8日間で2回使ったそうですよ。」
宮部「話変わりますけど、こないだwowwowの京極さんのドラマ「巷説百物語」撮ったんですよ。私も第4話で、女戯作者って役で出たんです。これで、私のことを佐野史郎さんが紹介するセリフがあって、代表作とかも言うんですね。で、どうしようかって相談して、名前は「みゆき亭お初」、代表作は「火炎十字娘」でいこうと(笑)。ちゃんとこれセリフで言いますから、聞いててください。私、演技でちゃんと字かいてるんですよ。「こうせつものがたり わうわうにてぜっさんほうえいちゅう」ってひらがなで(笑)。私あれに京極さんのサインもらおうと思ってたのに、どっかいっちゃったんですよね、どこいったんだろ。残念。」
大森「今ごろYahoo!オークションに出てるんですよ(笑)」
宮部「これからは日本推理作家協会も、役者として地方巡業しなきゃですかね、なにしろお金なくて(笑)。私、会計なんですけど、といってもちゃんと会計士の方がいらっしゃるんですが、ホントにお金ないんですよっ!」
大森「売れないのはSFだけじゃないと(笑)」
宮部「でも、この2,3年でSFの胎動って感じますね。でももう、来年「2001年宇宙の旅」の年になるんですよねえ」
大森「宇宙開発については遅れてますね」
宮部「ヒトゲノムの解析なんかは進んでるみたいですけどね。先日姪っ子に聞かれて、「今度瀬名さんに聞いてくるね」ってごまかしたんですけど(笑)。今ブラジルでは整形美容が流行ってて、やってない人のほうがむしろ少ないんですって。ちょっと太っちゃうと、吸引脂肪とかしちゃうみたいですよ」
大森「今そういう技術は進んでるけど、日本はそんなにわっと殺到したりしないね」
宮部「国民性でしょうかね。でもこれからはわかんない。こういうの、当たり前かも。でもみーんな美男美女に整形しちゃったりしたら、小説の中のとびきりの美女とかが書きにくくなりますね。私、職業病で、何を見ても「これを文章で描写するには?」って考えちゃうんですよ。でも、最近の女子高生のあのやまんば化粧をする気持ちがどうしてもわかんないんですよね(笑)。だから、実はああいう子を小説に登場させたこと一度もないです、白状しちゃうと」
大森「あれは反社会的ファッションというか。昔で言うと長髪とか」
宮部「私の頃はニュートラ、ハマトラでしたね。でもあれとは違うような」
宮部「科学が発達するのは便利なことなんですが、これからはそれに「娯楽」という要素が入ってくるような気がします。「2001年宇宙の旅」は実現できないけど、疑似体験なら今の技術でできる。でも、これで知的好奇心が満足しちゃって、本当に実現しようという開拓心がなくなっちゃわないかな、と。娯楽の持つ力が大きいだけに、これからが大変だと思います。でもかえって、疑似体験していっそう実際にやりたいと思うのかな。どっちに振れるかわからないですよね」>ここんとこ、ものすごく共感!!!
宮部「某クリエイターの方がおっしゃってたんですが、「これからは読書、ゲームなどなどのエンタテイメント産業は、そのひとに限られた時間をどう使ってもらうかという競争、せめぎあい」だと。例えば、私はスティーヴン・キングが神様で、ゲームやってても彼の新作が出ればゲーム中断して『骨の袋』を読もう、と。でもいろんな書評家の方々に「これ読みました?面白いですか?」って聞きまくって、評判よかったらトライする。現代人て時間が限られてるから、その中で何を優先するかの取捨選択なんですよ。だから今回のFF9も、ただクリアするだけなら短いでしょ。これで50時間も60時間もとったら、他の業界の方に悪い、と。これからは短めの10時間くらいでクリアできるRPGを出すのがテかもしれないですね。小説は長編化が進んでますが(苦笑)」>ここも、ものすごく共感!
大森「でも長く楽しませる、という見方もある。これからは長くやりたい人vs短く早く終わりたい人、の2種類に分かれるかもしれないですね」
宮部「私ゲーム雑誌ってよく読むんですが、これはとても勉強&参考になります。ゲームの広告って、なんかすごく楽しそうじゃないですか。うまいですよね。でも、本の広告って、相変わらずタイトルと著者の顔写真だけ。もっとケレン味を出して、あざとくしてもいいんじゃないかと思いますね。ゲーム界って、とんがった宣伝の仕方をしてる。ゲームユーザーのことをすごく考えてるんですね。でも小説って、本作りをするひとたちが、読者のことを考えてないのが多い。たとえばこの本はどうやったって通勤電車では読めない判形だろう、みたいな。」
宮部「ゲームって、SFのマインドを取り入れたもの多いですよね。このあたりはマネしていきたい。SFぽいRPGは、「取材」と称してやったりしてます(笑)。私、ハードSFは読みづらくてダメなんです」
大森「宮部さんのはちゃんと立派な「SF」ですよ!「SFぽい」ではありません!」
宮部「いいんですか、私なんかで?実は私、SF的な仕掛けを使って書きたいのがひとつあって。「レプリカント」を書きたいんです。新潮で来年あたり、かな。長い話になりそうです。舞台は近未来か異世界」
大森「異世界SFだと、最近では森博嗣が『女王の千年密室』というのを書いてますね。あの世界はなんて名前だっけか」
宮部「名前ですか!そこまでこらないといけないのねー(笑)。こういうものを書く一方で、モダンホラーも書いてみたい。書いたことないので」
大森「宮部さんにとって、『クロスファイア』は何に入りますか?」
宮部「なんだろう、暴力小説?映画観たときはそう思いましたね。超能力モノかな?『鳩笛草』のサイコパス女刑事とか」
大森「あれは面白かったですね」
宮部「あれ書いたときね、昔読んだSF文庫の『内なる死』ですか、シルヴァーバーグなんですか?すごくあれが頭にあって。図書館で借りたんですけど、あの本欲しくてね、どうしても欲しい!って言ったら、某集英社の方が「ガメちゃえば?」って(笑)。そしたらハードカバー版が出て、でもやっぱりあの文庫のが欲しくて、そしたらその方「ハードカバーのと取り替えちゃえば?」でも心の隅っこの、モノ書きとしての良心がかろうじて勝って、そしたらその方、こいつはホントにやるかもと思ったんでしょうね、神田じゅう探して買ってきてくれました(笑)」
大森「今ならお金さえ出せば、ネットオークションでなんでも買えますけどね」
宮部「私、キングのパシフィカ版の『シャイニング』の初版を探してるんです!!映画版のカバーのは持ってるんですけど、これじゃなくて。ずっと探してるんです、どなたかお持ちの方、ご一報を!よろしかったら譲ってください!!!」
宮部「『竜は眠る』のハードの初版も少ないんですよ。それこそウン千部」
大森「『リング』の初版なんか持ってる人います?あのビデオテープのイラストの表紙のやつ。あれも少ないですよね」>おお!私ね、実はこれ読んでるんです!出た当時!確か、本の雑誌の新刊めったくたガイドで紹介されてて、読んだの(笑)。あのレビューは大森さんだったんかな、もしや?心底こわかったなあああ。あーでもあれ、借りたんだよね。買えばよかった、ってでもあんなコワイ本、うちにおいときたくないっす(笑)。
宮部「映画『リング』の何がコワイかって、あの画面からぼうっと貞子が出るんじゃなくて、エアダクトから「よいしょっ」って出てくるトコ!あのリアルさが怖かった!「ああ、真田さん、今逃げればいいのに!!!」と思って観てました(笑)」
宮部「モビル・スーツとか出てくる小説を書きたいな。そこそこ大きい、5メートルくらいの。あーでも名前とか考えなきゃいけないのか」
大森「ぜひ書いてください!朝日新聞に連載するとか。日経でもいいですよ(笑)科学朝日に連載して、科学考証はやらせるとか。実験して、「その設定なら大丈夫です!」とか」
宮部「私、実生活が仕事とゲームしかしてないんで、エッセイのたぐいは書くことがないので、一切お断りしてるんです。でも日経でやりたいことがあって、日経を長く読んでる方から都市伝説を集める、っていう企画だったらやってみたいな」
宮部「ホント科学技術弱くて、『蒲生亭事件』なんてあの小説のままだと、屋敷の見取り図かけないんですって(笑)。すいません」
大森「それでいいんですよ」
宮部「『ディファレンス・エンジン』って本があったでしょ。あれって蒸気で機械を動かすそうじゃないですか。私の頭だと、どうしてもあれはパソコンの上にピーピーケトルが乗っかってるという図しか想像できないんですよ。って言ったら、井上夢人さんが「ああー、読まなくていいですいいです」って(笑)」
大森「取材と称して、「スーパーロボット対戦」やればいいんですよ」
大森「まとめとしては、レプリカントSFをこれから書く、と!」
宮部「パワードスーツとか、色々勉強します。でも誰かの真似になっちゃうんだよなあ。だれか業者に頼んで、絵描いてもらうか」
ここで質問タイム。2つほど質問がありました。ひとつは、宮部さんは古い下町育ちなんでということ、もうひとつは宮部さんはロジカルより感情でものを書くひとだということ、ってとこでしょうか。
宮部さんははきはきとよくしゃべる楽しい方でした。でもどっかほわほわしてて、聞いてて気持ちのよい方でした。彼女の温かみがどこかにじみ出る、いい対談でした。彼女の1ファンとして、は〜、幸せ。