第39回日本SF大会Zero―CONレポートその5

 SF大会2日目。最初の企画は「リレー座談会 SFの20世紀」の「SF雑誌の創刊ラッシュ」。10時スタート。

 森下一仁氏の司会で、向かって右から森下氏、新井素子、神林長平、川又千秋、谷甲州、山田正紀(敬称略)。神林さん以外は、皆様写真でしかみたことない方ばかり。と、新井素子を見た瞬間、デジャ・ヴがふとよぎる。私はこの方をよく知っているハズ…するとダイジマンがぼそっと「三村美衣に似てる」…!そうだっ!そっくり!一卵性双生児並み!

 (これもあまりマジメにメモとってなかったので、レポに全然自信がありません。覚えてる、ごく一部のみ書きます。申し訳ありません。)

森下「1972年は皆さん何をしてらしたんですか?」(これってどこから72年が出てきたのかな?分かる方、情報求む)

新井「私は12歳でした」

神林「ぼくは19歳の学生で、技術者になるもんだと思ってました」

谷「ぼくは21歳。ワンゲルに凝ってまして、こればかりやってたんだけど、就職活動の年になってしまったので、ワンゲルを一時ストップしてSF研を作りました(笑)」

山田「ぼくは22歳でした。大学を卒業して、〈宇宙塵〉に参加したりして、「神狩り」を書いたんですが、これを〈宇宙塵〉に持っていったら「長すぎる」といわれて、SFマガジンを紹介してもらった。デビューしたわけなんですが、相変わらずアパートでぶらぶらしてて、何も変わらない生活だった。ヒマだったんで、小説書くくらいしかやることなくて。それから4,5年くらいたって、やっと「ああ作家になったんだ」と思った。物語を書きたいけど、そこに自分を投影させるのはすごくイヤだったんですよ。ファンや他の作家との交流は、ぼくはあまりなかった」

森下「谷さんや川又さん、ぼくなんかはSFファンあがりでしたよね」

新井「私は最初はミステリとか読んでて、ミステリ作家になりたいなと思ってたんです。それが星さんのファンになって、その本の解説にいろんなSFが紹介されてて、そこから他のを読み始めた。父がSFファンだったので、うちに銀背とかずらっとあって、SFマガジンも創刊号からあったんですよ(笑)。いい環境だったんですね。それから、『狼男だよ』を読んですっかりウルフガイシリーズにハマって!一転してSF作家になりたいと思うようになって(笑)。そしたら、奇想天外新人賞ってのを募集してるのを知って(>ここ、お父さんが教えてくれた、と言ったのかもしれません)、応募したら佳作になって。それが高2のときです」

谷「僕は第2回の佳作でした。1回目は一次も通らなかった。今考えてみれば、横書きだったりしたのが原因かも(笑)。あの頃はネパールにいて、定期的に日本からSFマガジンや奇想天外を送ってもらって読んでました。スターウォーズとかが盛り上がってたみたいだったんですが、「面白い、面白い」といくらかかれても、文字じゃわからん!(笑)というカンジでした」

森下「川又さんはスターウォーズほめてましたよね」

神林「ぼくは自分の書けるものならなんでもいいと思ってた。それがたまたまSFだった。うちは母がミステリマガジンを読んでて、父がSFマガジンを読んでた(笑)」

新井「実は「あたしの中の…」を読んですぐ電話をくれた方というのが、集英社の編集の方で。でもうちではハードカバーじゃちょっと、と言われてコバルト文庫を紹介していただいたんです。『チグリスとユーフラテス』でやっとご恩返しができました。20年振りにその方と仕事ができました」

山田「SFブームっていうか、まずスターウォーズでSFSFって盛り上がって、それから『日本沈没』が大ベストセラーになって、筒井康隆とかがいろいろ出てきたんだよね、で、SF雑誌がうわっと出た」

川又「あれは若年層向けの出版ブームだったんですよね」

森下「…というわけで、SF雑誌の創刊ラッシュの熱気を伝えていただきました」(会場爆笑)

森下「これからのご予定というか、何か言い残したことは」

新井「基礎体力をつけたい!カラダのことだけでなく、文章を書く基礎体力」

 んー、昨日の「SFというジャンルの確立」におけるお三方の熱さに比べて、わりとパネラーの皆様が淡々としてらっしゃったのが印象的でした。ひとごとっぽいというか。ワタクシ的には、初めて聞いたことばかりだったので面白かったですが。


 お次は12時半から、「ジャンル別「最強」決定戦:SF、ホラー、ミステリ、ファンタジー史上最大の決戦」。立ち見がでるほどの盛況ぶり。大森望さんが司会。「えー皆様大変長らくお待たせいたしました!これからっ!いよいよ史上最強の悪者決定戦を開催したいと思いますっ!」マイクを握って、とうとうたる司会ぶり。ああなんかめっちゃうれしそう&楽しそうだよ!さすがわるもの、本領発揮!(笑)「えー、ジャッジは、不公平があるといけませんので、ほとんどSFを読んだことがない!という18歳の声優、仙台エリ嬢にお願いいたしました。ちなみに会場のウケや拍手は全く関係アリマセン(笑)。彼女に絶対的決定権がありますので、なにとぞご了承のほどを」うっわー、すごい企画じゃ!

 各ジャンルから2名ずつ選手が出て、おのおの自分のジャンルから「こいつが最強の悪者だ!」と思う小説上の人物をあげ、そのわるものぶりを説明し、どっちが強いかを競う勝ち抜き戦というしくみ。ちなみにペアで舞台に出ますが、同じジャンルの相棒を応援してもしなくても可(笑)。選手がプラカードを持って登場しただけで会場は騒然。このメンツをみた時点で、会場に予想アンケートが配られる。優勝者と、準優勝者をあてようというもの(だったと思います)。

 ☆まず第一ラウンド。SF代表、山田正紀氏「リプリー」(映画『エイリアン』)vsミステリ代表、我孫子武丸氏「潘金蓮」(山田風太郎『妖異金瓶梅』)戦。

大森「山田さん、小説の人物ってあれほど言ったのに映画の「エイリアン」の主人公ですね、これ」

山田「まあ聞いてください。彼女がどんなに極悪非道な悪女かをこれからご説明いたします。まず彼女は第一作で、地球に娘を残していますね。しかも長旅だというのに。あれは何故か?それは、あの娘が不倫の子だからなのです!」おおっとお!何だこの展開は!いきなりアツく飛ばしまくってるぞ、山田さん!!会場はいきなり騒然。大森氏もびびる。

山田「彼女はその子を置いて宇宙船に乗るんです。が、ここの船長とダブル不倫をしてるんですよ。で、この船長と不倫相手の女性の乗組員を殺して、ダブル不倫を清算してしまおうと。そこで彼女は完全犯罪をもくろむわけです。あの映画のラスト、彼女だけしか生き残ってないですね?で、帰ってきてことの次第を説明します。彼女はこういいました。「エイリアンがいたから」。なにしろリプリーしか生き残ってないため、証拠がない。彼女がそういうならきっとそうなんだ、と皆思うわけですよ。彼女はアンドロイドの記憶も消してしまった。しかし、監督はバカだったんですね。これはこんな話だったというのに、何故かSFに仕立て上げちゃった」

大森「これ、SFの代表なんですけどね」(会場爆笑)

…すごい。会場はその圧倒的迫力に呑まれまくり。ここまで見事な仮説を彼が持ってくるとは、いったい誰が想像したであろう。またこの芝居がかった口調が実に素晴らしいのよ!ここですでに勝負は見えかけているのであった。

我孫子「潘金蓮は稀代の美女なんです。これは金瓶梅という中国の古典を元に、山田風太郎が書いたミステリ連作短篇集なんです。傑作です。彼女は大金持ちの妾で、かってな思惑で、他の妾なんかをどんどん殺していくんですよ。でも非常に巧妙にやってるんで、アリバイがあるんでつかまらない。が、彼女に横恋慕している見張りの男がいまして、彼だけがそれを見破るんですが、ま、惚れた弱みでキスのひとつでもしてもらって許しちゃうわけですね」

大森「どのくらい殺してるの?」

我孫子「30人は下らないでしょう」

大森「仙台さん、どうですか?」

仙台「うーん…(淡々と)リプリーかな」よって山田氏、2回戦進出決定。

☆お次はファンタジー代表、高野史緒「アルベルト」(ヨースタイン・ゴルデル『ソフィーの世界』)vsホラー代表、牧野修「高山竜司」(鈴木光司『リング』)戦。

大森「これは先生対決ですね」

高野「アルベルトというのは、ソフィーにいいよるアヤシイ哲学者なんですが、まず彼はいきなり彼女に「あなたはだれ?」という手紙を送りつけるわけですね」

大森「よくiモードのメールで来るやつですね」(会場爆笑)

高野「彼は哲学談義にいたいけな少女をうまーくひきこむわけですよ」

大森「じゅうぶんアヤシイですね(笑)」

高野「さながら新興宗教の勧誘の手口みたいなんです。彼がうまいのは、ソフィーがうちにひとりでいるときに限って電話がきたり、彼女だけが手紙を受け取るように仕組んでる。ストーカーですね」(会場爆笑)

牧野「高山竜司というのは、哲学の非常勤講師なんですが、彼は高校時代にレイプ事件を起こしてるし、講師になってからも三人犯してる、と書いてあるんですよ。悪いヤツでしょ?哲学に加えて論理学などなどの知識もあり、なんでも解説できるヒトなんですね。アヤシげでしょ。で、彼がすごくわるものなところは、こういうセリフを吐くんですよ。「ベイビーちゃんはオネンネかい」(会場、大大爆笑の渦!!!)」

大森「そう書けばベストセラーになるんですね(笑)」

高野「でも、アルベルトなんて、自分のプロモーションビデオまで送っちゃうんですよ!!!」(会場爆笑)

大森「どうです、仙台さん?」

仙台「…プロモーションビデオは見たいと思う…」(この方の感覚はなんかナゾだ)というわけで、アルベルトの勝ち!

☆お次はホラー代表、倉阪鬼一郎「ロマー・マウル」(ジョン・クーパー・ポウイス「ロマー・マウル」)vsファンタジー代表、菅浩江「ウェンディ」(ジェイムズ・バリ『ピーター・パン』)対決。

大森「ロマー・マウルって誰ですか?こんなマイナーなのもってきた時点で勝敗は見えてますね(笑)」

倉阪「これは短篇集に出てくる吸血鬼なんです。吸血鬼って、普通はとても紳士的なんですよ。でもコイツは違う。まず、邪眼持ちなんです。コイツににらまれると、病気になってしまうという。しかもデブ。血ぶくれで、今にも顔から血を吹きそうなんですよ。さらには四天王の中でも一番のヘンタイです。彼はイギリスのブライトンの田舎の村に住んでてですね、湖で泳いでいる水着姿の女の子の“くるぶし”を遠くから見ることに快感を覚えているんですよ。このくるぶしってとこがヘンでしょ?(このあたりから倉阪さんの、一般人には濃すぎてわからないホラー原理主義が炸裂!観客唖然呆然)

大森「それ別に悪いヒトじゃないんでは」

菅「(京都弁で>うまく書けなくてすいません)ピーターパンの話は、原作ではディズニーアニメよりずっとシビアなんです。ウェンディは上流階級の子供で、アパートの4階に住んでるんです。で、空想癖があって、いろいろ空想してたらホントにピーターパンがやってきたんですね。で、彼にそそのかされてネバーランドに行くんですが、自分から行くいうたくせに、急にまた自分で気が向いて「帰る」言い出すんですわ。それでピーターを置き去りにして帰っちゃう。まーなんて言いましょう、うちの娘なら「あんた、ちょっとそこへお座りやす」って説教してやりたいような子なんですわ。ティンカーはかわいいんですよ、自分に正直ですしね。あの子は悪くない。でもウェンディはあたしやったら許せんタイプのオンナですね。上流ぶってるし。この本ご覧下さい、彼女の悪いところに付箋はさんできたんですけど、こんなにあるんですよ。まずこんなとこですね(本を朗読し始める)、寝ながら「こんなお家がほしい、屋根は赤くてうんたらかんたら」ってまー注文の多いこと多いこと!それをひとに作らせておいて、できあがったらその家にひとりで寝て、他の子達は木の下で寝かせるんですよ」

大森「仙台さんどうですか」

仙台「んー、共感できるな」(会場爆笑)

大森「菅さんも実は…」

菅「(はんなりと凄みをきかせて)もっかい言うてみ」

大森「では仙台さん、ジャッジをどうぞ」

仙台「あのー実は最初から、あの(倉阪さんの)肩のネコが気になるんですけど」

大森「さわってみます?あれはミーコちゃんといいましてですね」

仙台「ネコは嫌いなんです(といいつつ撫でてたような)。えっとー、ウェンディにすると私がわるものになってしまうんでー」(会場爆笑)

大森「ネットではわるものですよね」

仙台「ひどーい、大森さんに言われたくないですよー」

大森「でもあの吸血鬼みたいなひとはこの会場にはけっこういそう(笑)。いいひとですよこのひと。共感と言う点ではこちらのほうが」というわけで、菅さんの勝利!

☆お次はミステリ代表、田中啓文「双葉山の殺人鬼」(綾辻行人『殺人鬼』)vsSF代表、野尻抱介「アラハバキ神」(梅原克文『カムナビ』)戦。

田中「僕は綾辻行人の代わりということで。ほかにも誰かが欠席したらファンタジーの代わり、SFの代わりというなんでも使える人間として今日はきました。5分なにかしゃべればいいそうで」(会場笑)

田中「えー、今回の戦いの趣旨はですね、「最強の悪者」ですよね。要するに、誰が一番強いか、ということで。じゃ、この悪役と悪役を戦わせたら誰が一番強いだろうか、と考えたんですわ。例えばウェンディと双葉山の殺人鬼が戦ったら、どっちが強いと思います?(笑)ウェンディの首をちょん切って終りですよ。なにせこの人、500人くらい殺してますからね。で、この双葉山ってのは埼玉の大宮の近くの山なんです。大宮は埼京線にあるでしょ。だから埼京(最強)と」(会場爆笑)

野尻「アラハバキ神について説明しちゃうと思いっきりネタバレになっちゃうんですけど、どうしましょう、この会場内でネタバレして欲しくない方います?でも、ま、これネタバレしてもあまり話のオモシロさに変わりはないですから(笑)」(会場、意味ありげな笑い)

野尻「まず、ものすごい高温で焼かれたらしい謎の焼死体が発見されるんです。で、どうもこれが天からのビームだということがやがてわかる。ではいったいこの原因は何か?ということなんです。おおざっぱに言いますと、太陽系を球形の黒いものが包んでいるんです。この外側は、他の星々のすごい光で満ちてて、この黒いものがそれを阻止している。で、これにアラハバキ神がピュっと小さい穴をあけると、そこから光のビームが地球にばしゅっと落ちるわけです。アラハバキ神はこの宇宙に住んでる。僕はこの宇宙が悪いと。こんな間違った宇宙に住んじゃいかん!と」

田中「(ぼそっと)でも戦ってみたら、意外と殺人鬼のほうが勝つんじゃないの?」(会場笑)

大森「アラハバキ神が針でぷつっと穴をあけたら、ひとがじゅっと焼けると(笑)」

我孫子(田中の応援)「でもアラハバキ神って、その光から、地球を守ってくれてるんじゃないの?それに星空って癒しじゃないの?」

野尻「癒しと言う言葉は僕は嫌いです」

大森「どうです、仙台さん?」

仙台「殺人鬼って、わるものというより、ただの犯罪者じゃないの〜?」(会場笑)悩んだ末、やっぱり殺人鬼に決定!

大森「ここまでやってきて、どうですか仙台さん何か感想は?」

仙台「特にない」…あくまで淡々としてる彼女。天然ボケっぽい(笑)

☆さて、準決勝!まずはSF代表、山田正紀の「リプリー」vsファンタジー代表、高野史緒の「アルベルト」戦

山田「こうして一作目では、リプリーは完全犯罪をなしとげたわけなんです」

大森「いきなりそのまま続いてますね(笑)」

山田「彼女は無事回収されました。エイリアンも、半信半疑だけど皆に信じてもらえた。ところがなんと、二作目でそのエイリアンの星に移住するハメになってしまった。これはウソがばれてしまう。非常にヤバイ状況です。で、彼女はそこに行く船にまたムリやり乗るんですね。彼女は、証拠を消せばいいと考えた。「惑星ごと消せばいい」。(会場爆笑)映画評では、二作目はいたいけな少女を守る彼女の母性愛が出ててうんぬんなんて言われてますが、3作目ではどうでしょう、あの少女も、いいアンドロイドも死んでるわけです。彼女は3作目では刑務所で断罪を受けるはずだったんですが、逃げ出したんです」

高野「リプリーの犯罪は、でも結局何の証拠もないですよね。でもアルベルトには、れっきとした物証があります。まずあのアヤシいプロモーションビデオがあります。しかもこれ、いきなり現代から古代ローマに言ってプラトンなんかにインタビューしちゃうというビデオなんです。彼は特撮オタクのひとなんですね」

山田「(芝居がかった口調)私は今のを聞いてて涙を禁じ得なかった(会場大爆笑!!!)。どうしてその男心がわからないのか?たとえば僕が恋をしているとしましょう!いきなり彼女の手を握れますか?いやできない!彼はなんとかその熱い気持ちを伝えようとしたんですよ」

高野「でも、やり方がずるい。ソフィーは、ついには親にウソをついてまで外出するんです。そのやり方がですね、自分の犬をソフィーの家に迎えにやらせるんです。で、彼女はその犬についていく。一見、他のひとには少女が犬を散歩させてるようにしか見えません。で、アルベルトは、自分のアパートでコスプレして待ってるわけですよ!」

山田「(また芝居がかって)僕は思う。世の中でもっともいけないことは、可能性を消滅させることだと。リプリーは惑星をひとつまるごと消滅させています。ここに、どれほどの生命の未来があったと思いますか?そのあらゆる生命の可能性を抹消した彼女。これほどの悪があるでしょうか?」(会場、大爆笑&拍手の渦!!!)

大森「どうですか仙台さん?」

仙台「コスプレはイヤです」(会場笑)でも山田氏の圧倒的パワーにより、リプリーの勝利!!

☆準決勝第2戦。ミステリ代表、田中「双葉山の殺人鬼」vs菅「ウェンディ」戦。

大森「もう時間も押してますんで、サクサクいきましょう」

田中「ぼく、ゼッタイ、アラハバキ神の勝ちだと思ってたんでー、5分間のダジャレしか考えてこなかったんで」

我孫子(田中の応援)「(冷たく)もう飽きました」

大森「もうウェンディでいいですね」

☆さて、決勝戦!!最初の予想通りのメンツの戦いに。山田「リプリー」vs菅「ウェンディ」戦。

大森「さて、まだネタありますか大丈夫ですか?もしネタ切れだったら、相手を責めるという手もありますからね」

山田「(ぼそっと)そうかっ、その手があったか!」(会場爆笑)うおお!勝ちに出てるよ山田さん!!!

菅「とにかくこのウェンディってのは上流ぶったところがイヤなんですよ。しゃべり方とか。子供の癖に、「あの、どうして泣いてらっしゃるんですの?」なんて言うんですよ!うちのムスメならハタきますよ!」

大森「それは翻訳の問題では(笑)」

菅「彼女はお嬢さんというのを鼻にかけてるんですよ、それと母親の真似をしたがる。お母さん役をやりたいんですよ」

山田「(芝居口調)私は涙した。(会場またもや大爆笑)ここに母になりたいというムスメがいる。対して、母を拒否するリプリー。さて、どちらが悪人か?」

菅「ウェンディは決して母になりたいわけではないんです。母という偶像に憧憬を抱いていて、真似してるだけなんです。歪んだ性格なんですよ」

山田「(芝居口調)リプリーの不幸は、自分の娘を愛せなかったところにある。私は考えた。このふたりが家族になったらどんなによかったろうかと!!私は、このふたりの生まれた時代が違ったことを心から悔やむ」(会場、割れんばかりの大爆笑!!!)

菅「世界最悪の親子ですね」

大森「どうですか仙台さん?」

仙台「ん〜、ウェンディみたいな喋り方の子は、アニメではいっぱいいるから、別にたいしたことない」おお、声優らしい見解。というわけで、山田正紀氏、もう文句ナシの圧勝!!優勝〜〜〜〜!!

 ここで、スタッフのみらい子さん登場。最初のアンケートを見て、みごと優勝・準優勝を当てた方4名にサイン本のプレゼント。そして大森さんから、優勝者の山田氏に、賞品として韓国海苔をプレゼント。と思いきや、山田氏、舞台から見事にずっこける。おわっ、大丈夫ですか?痛そうながらも「韓国海苔、大好きです」とコメント。仙台エリ嬢は「楽しかったです」。大森さんは「世の中には、いろんなわるものがいるということがよくわかったでしょ?」とご満悦。


 はあ〜っ、なんていうか、もうとにかく山田氏の一人舞台でしたわ。この彼の活躍を見ただけでも、今回のSF大会に参加した意義はじゅうぶんあったと言っても過言ではないでしょう。「やはり大物は違う!」これが私の、いやこの企画を見ていた全ての方の感想ではないでしょうか。

 以下、大森さんの掲示板から、対戦結果早見表を引用させて頂きました。勝手にスイマセン、大森さん。

 【一回戦】

○山田正紀:リプリー(アラン・ディーン・フォスター『エイリアン2』など)【SF】
×我孫子武丸:潘金蓮(山田風太郎『妖異金瓶梅』)【ミステリ】

○高野史緒:アルベルト(ヨースタイン・ゴルデル『ソフィーの世界』)【FT】
×牧野修:高山竜司(鈴木光司『リング』)【ホラー】

○菅浩江:ウェンディ(ジェイムズ・バリ『ピーター・パン』)【FT】
×倉阪鬼一郎:ロマー・マウル(ジョン・クーパー・ポウイス「ロマー・マウル」)【ホラー】

○田中啓文:双葉山の殺人鬼(綾辻行人『殺人鬼』)【ミステリ】
×野尻抱介:アラハバキ神(梅原克文『カムナビ』)【SF】

【準決勝】
○山田正紀
×高野史緒

○菅浩江
×田中啓文

【決勝】
○山田正紀
×菅浩江


  もう企画はすべて見尽くした、というかもう自分の中では山田氏の活躍を見て燃え尽きてしまったので(笑)、ディーラーズルームに戻ってぶらぶら。来年の幕張開催のSF大会の受付をすませたり、友人のおみやげに天野喜孝グッズを買い込んだり。今回は、本もあまり買わず。オークションがあまりにマニアックで、私なんかお呼びでないという雰囲気だったし。200円の、奇想天外のマンガを3冊買った程度。でも私の欲しい、大島弓子の載ってるやつではありませんでしたが。

 あ、書き忘れたけど、昨日ヒマな時間を見て、武部本一郎の原画を見ました。意外と小さくてびっくり。ダイジマンに見せてもらった画集の絵のほうが大きいくらい。ずいぶん無造作にそのへんの紙に書き付けてある、みたいな印象を受けました。でもやっぱりキレイでした。やー、「火星のプリンセス」ナマで見ちゃったよーん。

 16:00、エンディング。もう会場はパンパンで、通路に座り込む。しかも舞台からかぶりつきの特等席(笑)。さて、今回のエンディングは、2003年のSF大会の開催地を全員の投票によって急遽決定するという事態が。大阪と栃木(だよね?)の方がそれぞれ短く演説。私はそうね、温泉でゆっくりお泊りがいいかな、と思って(去年のやねこんがこじんまりしてて非常によかったので)こっちに。さ来年の島根はちょっちキビシイなあ〜。どうしよ。

 というわけで、会場を出たところで投票をすませて、お開き。いやー、スタッフ&ゲストの皆様お疲れさまでした。今年も楽しませていただきました。また来年お会いしましょう!

 総体的感想としては、やはり想像どおり、豪華すぎ、というカンジでした。アレも見たかったこれも見たかった!ひとりで見られる企画なんてほんとにひと握りしかない。人類補完計画じゃないけど、みんなの脳みそをつないでさあ!データを共有しようよお!とか思っちゃいましたね。リレー座談会「SFの20世紀」なんかは、ぜひ来年の大会で、ビデオを売りましょう!売れるってばさ!貴重な資料だよ、たぶん。スタッフの皆様、なにとぞご一考を!来年も楽しみにしております。長々とお読みいただき、ありがとうございました。

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