劇場☆新感線 

劇団☆新感線 2000年夏公演
Inouekabuki-Shouchiku-mix 阿修羅城の瞳 BLOOD GETS IN YOUR EYES

(作 = 中島かずき / 演出 = いのうえひでのり)

公演記録

大阪公演 期間 : 2000年08月 3日(木)-12(土) 会場 : 大阪松竹座

東京公演 期間 : 2000年08月17日(木)-27(日) 会場 : 新橋演舞場

CAST
阿修羅城の瞳 病葉出門(わくらばいずも) : 市川染五郎

闇のつばき(やみのつばき) : 富田靖子

安倍邪空(あべのじゃくう) : 古田新太

望月高弥郎(もちづきこうやろう) : 渡辺いっけい
祓刀斎(ばっとうさい) : 渡辺いっけい

桜姫(さくらひめ) : 森奈みはる

安倍海王(あべのかいおう) : 橋本じゅん
安倍龍神(あべのたつがみ) : 粟根まこと
安倍獅子虎(あべのししとら) : インディ高橋

孫太郎(まごたろう) : 河野まさと
賀茂白丞(かものはくじょう) : 吉田メタル
賀茂南雀(賀茂南雀) : 礒野慎吾

笑死(えみし) : 新谷真弓
流しの滝次(ながしのたきじ) : Taki

赤鷲鬼(せきしゅうき) : 川原正嗣
白豹鬼(はくひょうき) : 前田悟
黄熊鬼(こうゆうき) : 大林勝

火縁(ひえん) : 村木よし子
水誼(みなぎ) : 山本カナコ
樹真(じゅま) : 杉本恵美
谷地(やち) : 中谷さとみ
呼鉄(こてつ) : 村木仁

鬼の一党、南北の弟子たち、鬼御門の部下、江戸市民 :
     船橋祐司・武田浩二・佐治康志・藤家剛・フランキー仲村・松本高弥

鬼の一党、女たち、南北の弟子たち、女官たち、江戸市民 :
     北原美智子・篠田紀子・下田智美・白倉由美子・中里安也美・中間千草

四世鶴屋南北(よんせいつるやなんぼく) : 加納幸和

美惨(びざん) : 江波杏子

十三代目安倍晴明(じゅうさんだいめあべのせいめい) : 平田満
十三代目安倍晴明もどき : 平田満

観劇記録
阿修羅城の瞳 [観劇公演] [あらすじ]
ある日、彼らは忽然とその姿を現した。
人を呪い人を喰らい人を滅ぼさんとする闇の一群。
人々は彼らをおそれ、こう呼んだ。
人にあらざる者 − "鬼"と。

時に文化文政。巨大都市江戸。
一見平和に見えるその裏で、
人と鬼との激しい戦いが繰り広げられていた。
江戸の闇から魔を祓うために組織された
特務機関 "鬼御門(おにみかど)"。
病葉出門(わくばらいずも)は、そこで "鬼殺し" と怖れられる
腕利きの魔事師だったが、
五年前のある事件を境にそれまでの
一切を捨て、今では鶴屋南北一座に
弟子入りしていた。
が、謎の女つばきとの出会いが、
彼の運命を狂わせた。
なぜか鬼御門に追われるつばきは彼に
「自分の過去を探してくれ」と頼む。
彼女の瞳の奥に宿る何物かに惹かれていく出門。
執拗につばきを追う鬼御門の先頭に、
出門と兄弟同様に育った安倍邪空がいた。
鬼御門の棟梁十三代目安倍晴明を奸計にはめて葬った邪空。
が、彼は更なる力を求めて、
鬼を率いる美形の妖かし美惨と手を組み、
彼らの前に立ちはだかる。
そして江戸を焼き尽くす業火の中、
巨大な逆しまの城が虚空に浮かんだ。
「阿修羅の城浮かぶとき、現世は魔界に還る。
人も鬼も地獄に堕ちるがいい・・・」
鬼の王 "阿修羅" の悲しき因果に操られ、
千年悲劇の幕が開く。
その先にあるのは、滅びか、救いか−。
(以上、チラシより)


[「直訴だ!目安箱」 過去公演中の直訴]
[感想] 阿修羅城の瞳
最高・・・!

この言葉はこういう時に使うためにあるんでしょう。
今これ書いてるのはもう、このお芝居千秋楽から一週間以上経ってます。
でもいまだにあの感動からは冷めません。鮮明に蘇ってきます。
こんなに引きずってるのも初めて。
「とうとう終わってしまった〜・・・」っていう、「抜け殻」みたいになってしまったと、って引きずり方と違って、「満足」「充実」してのひきずり。
そう、今でもほんと「満足・充実してたぁ。」って気持ちが続いているんです。
「阿修羅城の瞳」、ほんとうに「おいしゅうございました!」

この作品を観る前は、自分の中ででのナンバー1は、ストーリーとしては「LOST SEVEN」、舞台としては「髑髏城の七人」でした。
どちらも凄く好きだったし、思い入れもありました。
逆に「阿修羅城の瞳」は、「劇団最高傑作」という噂が以前からあって、「是非再演してほしい」っていう気持ちが強く、そういう意味で思い入れが深かった作品です。
とはいうものの、「市川染五郎」さん、「富田靖子」ちゃんが主役で、劇団メンバーはその脇を固める今回の作品。
正直、期待度は凄く大きいけど、でも「髑髏城の七人」「LOST SEVEN」を、自分の中で超えることは無いやろうなぁ、って思ってました。
でも今は違います。間違いなく、今まで観た劇団☆新感線を通して、いや劇団☆新感線に限らず今まで観たお芝居、映画、LIVE、等々全てを通しても、この「阿修羅城の瞳」がナンバー1です。
役者さん、脚本の中島かずき先生、演出のいのうえひでのり座長、音楽の岡崎司さん、殺陣のアクションクラブの方々、振り付けの川崎悦子先生、宣伝写真の野波浩さん、他にも照明、音響、大中小道具、特技、衣装、等々・・・全ての要素が絡み合って、その相乗効果でこれだけ素晴らしいお芝居になったように思います。
「1+1=2」って単純な効果でなくって、「1+1」が「10」にも「20」にもなったっていう感じの。
プロデュースした松竹、会場となった大阪松竹座・新橋演舞場、ってのも含めて。
おいらの中で間違いなく「過去最高作品」。おそらく20世紀最高作品でしょう。

自分のアンケートでの、好きなキャスト、好きな場面、好きな曲選び・・・今回ほど難しいこと無かった、です。自分で作っておきながら、3人、3場面、2曲で、なんて選べないですよね。
好きな曲も、自分でアンケートに答えたときと千秋楽観終わった時では変わってきたし。
なにより一番変わったのは、「Q7. 最後に・・・あなたは「出門とつばき」のような「恋」をしたいですか?」に対する答え。
「したくない」を選んだけど、千秋楽まで観た結果の今なら「したい」ですね。
最初このお芝居、出門とつばきの恋が凄く悲しい結末に思えたんですよ。
でも、途中から、「本当に悲しい結末か?」と思えるようになってきました。
いやそれどころか、「ハッピーエンドやったやん」と思います。
こういう風に感じ方が変わったのは、何回も観たからやとは思うけど、阿修羅城天守閣での出門とつばきの「逢瀬」のシーンでの阿修羅の表情が凄くいいから。
凄くいい表情ってのが分かったから。
出門役の市川染五郎さん、つばき役の富田靖子ちゃん、このお二方の演技が素晴らしかったから。そしてあの場面(舞台全てを使っての)演出や、「阿修羅城の瞳」って曲、そういった諸々の要素が最高の形で絡み合った結果やと思います。
せやからこそ、最後そう思えるようになったんやと思います。

音楽では、最初は「ASHURA」「愛は鉄砲」が一番好きでした。
「愛は鉄砲」は・・・頭に残りますしね。それに加えて一幕ラスト、いいところでテンポよくかかりますし。
そして「ASHURA」は・・・これはもう、オープニングだけで背筋ゾクゾクさせられましたから、文句無し! でした。
でも、やっぱり「殺戮の街角」や「炎の街」も聴けば聴くほど好きになっていくし、「阿修羅城天守閣」からエンディングにかけての「阿修羅城の瞳」「激しい雨」「夢桜」は未だに毎日頭の中に流れてます。
(「激しい雨」を聞くと何故か元気が出てきます。)
いつもは曲の中心に右近健一さんがいたんで今回のTakiさんはどうなんやろう? って思ってたけど結果は、凄く良かったですね。
それと、Takiさんが歌ったからってのもあるかもしれないけど、「阿修羅城の瞳」「夢桜」が何か今までの「劇団☆新感線」の曲と雰囲気が違うような気がしました。凄く新鮮な感じで。
以上、まぁ、一言でいえば、「全曲好き。」、楽曲も「今までで一番!」って思ってます。

場面では印象に残るのはやっぱり2幕が中心となりますね。
今回、一幕と二幕でかなり雰囲気が変わるお芝居やなぁ、と思いました。
一幕は「いのうえ歌舞伎」でもかなり楽しい、「お笑い」の雰囲気もあったけど、二幕は祓刀斎以外はずっとシリアスで。
ただ言えるのは、一幕、二幕通して、時間が長いのに全くその長さを感じさせられませんでしたわ。
ここで印象的なこと書き始めるときりが無いくらい、いいシーンの連続。ホンマ書ききれないです。
最後の桜の樹のエンディング、阿修羅城天守閣での出門と阿修羅の逢瀬、そして「このシーン」って特定できないけど「花道」での役者の全力疾走(特に祓刀斎の仕事場から出陣する出門、火縁 & 水誼、晴明、バックは「夢桜」、が印象に残ってますけど)、鬼御門屋敷で南北が出門を背後から襲う場面、等々・・・まだまだあります、ありました。

他にもそれぞれの役者さんや、音楽、場面、いくら書いてもきりが無いほど凄かった、素晴らしかった。
また、どれほど感想書いても、きっと書き足りないでしょう。
長々書いてもやっぱり、感じたこと全ては書ききれないですね。
というわけで、細かい感想はもう、実際に観に行った日のレビューにまかせます。

それから、「阿修羅城の瞳」の「感想」からはちょっと外れるかもしれないですけど。
千秋楽で染五郎さんがおっしゃってたように、今回の「阿修羅城の瞳」が、演劇といわれる世界での一つの「事件」となって、またそれがこれっきりで終わるんでなく、続いていって欲しいなぁ、と思いました。
いろいろなインタビューで載ってる、「これぞ現代の歌舞伎」って染五郎さんの言葉が非常に印象深いです。

そして最後に・・・これは楽日のレビューでも書いたことですけど、
主催の松竹さん、作・演出の中島かずき先生・いのうえひでのり座長、染五郎さん & 富田靖子ちゃんをはじめとする役者さん、音楽の岡崎司さん、殺陣・ダンス・衣装・大中小道具等をはじめとするスタッフの方々・・・「阿修羅城の瞳」に関わった全ての方、本当に「ありがとうございました!」
そして、「劇団☆新感線のファンでよかった〜!!!!!」って、心底思います。


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